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21.大暴れ
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先に砦前の魔獣の群れの真ん中に着地したシェルは魔力全開で魔法をぶっ放し始めた。
美野里はちょうどシェルが魔法を周囲にまき散らしているちょうどその反対側に飛び降りるとこちらも同じように魔獣の群れに魔法を放つ。
なので克也と若い兵士が北の砦前に着いた時には一時的だが砦の周囲には魔獣が一匹も居なくなっていた。
「すごい。」
「はぁあーなんでまたこんなことするかな。」
「何を言ってるんですか。これでもう安心じゃないですか。」
「イヤまあそうか?」
克也と若い兵士は魔獣がいなくなったので雪があるほうではなく正面側にやって来た。
そこではシェルと北の砦の門番が言い争っていた。
「ちょっと早く門を開けなさいよ。何をやっているの?」
「あのーですね。開けたくても開けられないんです。」
「はぁあ開けられないですって。どういうことなの?」
「あの辺境伯がここを出られる時念には念を入れろとおっしゃって鍵を掛けて行ったのでこの門を開くことが出来ないんです。」
シェルと美野里はお互いに顔を見合わせた後二人は同時に魔力探査を砦の周囲に走らせた。
終わった瞬間シェルが前に進み美野里は二歩ほど後ろに下がった。
「ちょっと城門の上にいるなら後十分ほどで小さな揺れがあるから気をつけなさい。」
シェルはそれだけ警告すると目を瞑って鉄門の前で長方形の線を描くとそれに魔力を練り入れながら眉間に皺をよせ、丹念に砦の周囲に張られている魔力の糸をほぐしてそこにシェルが編んだ糸を織り交ぜていった。
きっかり十分後に立っていられないくらいの酷い縦揺れが起こりそれがおさまると鉄門に人間が一人がゆうゆう通れるほどのドアが出来ていた。
シェルがそのドアを押すと鉄の扉が開いて砦の中がそのドア向こうに広がっていた。
「さあどうぞ。」
シェルが後ろにいた二人に先に通るように促した。
美野里はさりげなく彼らの後ろに下がっていた。
若い兵士はお礼を言いながらそのドアを通って砦の中に入った。
「さあショウも入りなさい。」
シェルがドアを抑えながら先を促したので克也もおっかなびっくりそのドアを潜りぬけた。
「さすが美野里ね。もう二人が入ったんだから通れるって証明出来たでしょ。」
美野里は肩を竦めてシェルが押さえているドアを潜って砦に入った。
その後ドアを押さえていたシェルが砦に入ってドアから手を離すと扉は自然に閉じ扉自体も跡形もなく無くなった。
「なんでドアが消えるんだ?」
「あれはシェルが魔法を編み込んで創ったものだから本人がドアから手を離せば空間は閉じて無くなるのよ。」
「もし通っている最中にドアから手が離れたらどうなるんだ。」
「文字通り閉鎖された空間に閉じ込められるわ。」
その話を聞いて克也はドキリとした。
焦って美野里をみると克也の心配していることを汲み取ってもう少し詳しく説明してくれた。
「でも閉じ込められたとしてもその聖剣があれば文字通り空間を切り裂いて外に出られるから大丈夫よ。
」
「なるほど。」
克也はホッとして肩の力を抜くが美野里は爆弾も付け加えた。
「でも聖剣で無理やり空間を切り裂くんでその余波で砦自体は木っ端みじんになるわね。」
「おい。それはシャレにならないんだけど。なんでシータが扉を創らなかったんだ。」
美野里ならシェルと違って空間に閉じ込められる心配をしなくて済む。
「世の中はそんなに上手くいかないのよ。この北の砦で使われている防御魔法は”黒の書”の持ち主である魔術師団長が創ったものなの。当然”白の書”の持ち主であるシータにももちろんで出来るけど。」
シェルが美野里を見た。
「反作用のものがぶつかり合うので聖剣と同じ働きをして・・・。」
美野里は克也に視線を向けた。
「木っ端微塵になるのか。」
克也は何とも言えない気持ちで結論を口に出しそれに二人が頷いた。
そこに先に砦に入った若い兵士が厳つい顔をしたがっしりとした体格で茶髪の老齢の兵士を連れ、三人の前に現れた。
「私は辺境伯が居られない間、砦の留守を預かるもので王都出身のガイウスといいます。」
老兵士は疲れた顔で三人の前で自己紹介した。
シェルは三人を代表して前に出ると手を差し出して挨拶した。
「私は魔術師団所属のシェルでこっちが同僚のシータ。」
「俺は兵士見習いのショウです。」
三人はそれぞれそ老兵士と握手した。
「あーまあ立ち話もなんですのであっちに少しばかり食料がありますから食事でも。」
老兵士は三人を食堂に案内しようとしたがそれをシェルに止められた。
「食事より先にこの砦の中を案内してほしいわね。特にこの砦の執務室に案内してくれないかしら。」
老兵士は疑問におもいながらもシェルに頷くと素直に三人をこの砦の中で一番見晴らしのいい部屋に案内した。
「こちらが執務室です。」
鍵もかかっていない部屋に彼らを案内した。
シェルと美野里が先に執務室に入るとその瞬間にズンという重圧で体が潰れそうになった。
「あの辺境伯が使っていた執務室ね。」
すぐにシェルが確認の為に最後に入って来た老兵士に尋ねると彼は素直に頷いた。
”シェル。ここにはもう黒い想念が重くのしかかってる。”
精査魔法を執務室全体に飛ばし美野里が悲壮な念話をシェルに寄越した。
すぐ傍でも同じように精査魔法を飛ばしたシェルが無言で頷いた。
この砦でこの黒い想念を払うには一苦労ねぇー。
「はぁあーでもやっぱりここも私がやるしかないわね。シータ、あなたはここにいる重症患者の治療をお願い。」
「ちょっ・・・全員の治療を今日中に!」
美野里はシェルの無茶ぶりに思わず声を荒げた。
この黒い想念が厚く凝り固まった砦内で重症患者の治療とか効率が悪すぎて考えたくない。
「当然でしょ。そんなに悠長に言ってられないくらい予測できるでしょ。討伐にその後始末も考えると一週間以内にすべて終わらせないとダメなことくらいわかるわよね。」
「わ・・・わかりました。」
美野里は反論しようとして口を噤んだ。
王都にいる自分のクラスメイト達や何も知らない市民。
彼等を魔獣から守るためにもこの砦の魔法結界がきちんと機能するように修復してすぐさま魔獣が発生した原因元を特定する必要がある。
それはわかっているが美野里にとって正反対の性質を持つ黒の結界の中での治療とかは普通の思考ならありえない。
思わずシェルを睨めば逆に爽やかな笑顔でお願いされた。
「じゃそっちは宜しく。」
シェルに言われ美野里は諦め顔で素直に執務室のドアを開けると出て行った。
それを見ていた克也は彼女を手伝おうとするがそれをシェルに止められた。
「おい!」
肩に置かれた手を強引に振り払うがシェルは魔法で克也を足止めした。
「ダメよ。この執務室の精査が終わったら今度は外でテントの設置をやるんだから。」
「テントぉー。この砦内で泊まればいいだろ!」
「シータに負担がかかっても構わないってことね。」
「おい、なんでここに泊まると彼女に負担になるんだよ?」
「さっき説明したでしょ?」
「どの説明がそれに当たるかわからんがシータの負担になるなら仕方ない。」
「あら以外に素直ね。じゃテントを砦の広場に一つ持って来て頂戴。」
シェルの言葉に頷いた老兵士が執務室を出て行こうとしたがその寸前に彼の背にシェルが声を掛けた。
「後で広場にテントを設置するわ。その時にこっちが持って来た食料の一部を提供するわ。その代わりに討伐に・・・。」
「討伐には協力します。任せて下さい。」
老兵士はシェルの要請に重なるように返答するとすぐに部屋を出て行った。
「必要なのか?」
「ええ、三人では少々襲って来る魔獣の数が多過ぎになるからその分を彼らに振り分ける必要があるのよ。」
シェルは克也と話しながらも何かをしていたらしく額にはうっすらと汗をかいていた。
しばらくすると肩の力を抜いたシェルがぐったりした表情で突然執務室の中央から扉に向かって歩き出した。
「シェル?」
「ここはこれでもう問題ないわ。さあ今度は今日寝る場所の下準備よ。」
シェルはそういうと執務室からも見える外の景色を確認してから部屋を出た。
克也もなんとなくシェルの視線が気になってそこから外を見てみるが特に何も見えなかった。
なんだ?
何かあるのか?
不思議に思ったがスタスタと歩いて行くシェルに克也も仕方なく続いて歩き出した。
美野里はちょうどシェルが魔法を周囲にまき散らしているちょうどその反対側に飛び降りるとこちらも同じように魔獣の群れに魔法を放つ。
なので克也と若い兵士が北の砦前に着いた時には一時的だが砦の周囲には魔獣が一匹も居なくなっていた。
「すごい。」
「はぁあーなんでまたこんなことするかな。」
「何を言ってるんですか。これでもう安心じゃないですか。」
「イヤまあそうか?」
克也と若い兵士は魔獣がいなくなったので雪があるほうではなく正面側にやって来た。
そこではシェルと北の砦の門番が言い争っていた。
「ちょっと早く門を開けなさいよ。何をやっているの?」
「あのーですね。開けたくても開けられないんです。」
「はぁあ開けられないですって。どういうことなの?」
「あの辺境伯がここを出られる時念には念を入れろとおっしゃって鍵を掛けて行ったのでこの門を開くことが出来ないんです。」
シェルと美野里はお互いに顔を見合わせた後二人は同時に魔力探査を砦の周囲に走らせた。
終わった瞬間シェルが前に進み美野里は二歩ほど後ろに下がった。
「ちょっと城門の上にいるなら後十分ほどで小さな揺れがあるから気をつけなさい。」
シェルはそれだけ警告すると目を瞑って鉄門の前で長方形の線を描くとそれに魔力を練り入れながら眉間に皺をよせ、丹念に砦の周囲に張られている魔力の糸をほぐしてそこにシェルが編んだ糸を織り交ぜていった。
きっかり十分後に立っていられないくらいの酷い縦揺れが起こりそれがおさまると鉄門に人間が一人がゆうゆう通れるほどのドアが出来ていた。
シェルがそのドアを押すと鉄の扉が開いて砦の中がそのドア向こうに広がっていた。
「さあどうぞ。」
シェルが後ろにいた二人に先に通るように促した。
美野里はさりげなく彼らの後ろに下がっていた。
若い兵士はお礼を言いながらそのドアを通って砦の中に入った。
「さあショウも入りなさい。」
シェルがドアを抑えながら先を促したので克也もおっかなびっくりそのドアを潜りぬけた。
「さすが美野里ね。もう二人が入ったんだから通れるって証明出来たでしょ。」
美野里は肩を竦めてシェルが押さえているドアを潜って砦に入った。
その後ドアを押さえていたシェルが砦に入ってドアから手を離すと扉は自然に閉じ扉自体も跡形もなく無くなった。
「なんでドアが消えるんだ?」
「あれはシェルが魔法を編み込んで創ったものだから本人がドアから手を離せば空間は閉じて無くなるのよ。」
「もし通っている最中にドアから手が離れたらどうなるんだ。」
「文字通り閉鎖された空間に閉じ込められるわ。」
その話を聞いて克也はドキリとした。
焦って美野里をみると克也の心配していることを汲み取ってもう少し詳しく説明してくれた。
「でも閉じ込められたとしてもその聖剣があれば文字通り空間を切り裂いて外に出られるから大丈夫よ。
」
「なるほど。」
克也はホッとして肩の力を抜くが美野里は爆弾も付け加えた。
「でも聖剣で無理やり空間を切り裂くんでその余波で砦自体は木っ端みじんになるわね。」
「おい。それはシャレにならないんだけど。なんでシータが扉を創らなかったんだ。」
美野里ならシェルと違って空間に閉じ込められる心配をしなくて済む。
「世の中はそんなに上手くいかないのよ。この北の砦で使われている防御魔法は”黒の書”の持ち主である魔術師団長が創ったものなの。当然”白の書”の持ち主であるシータにももちろんで出来るけど。」
シェルが美野里を見た。
「反作用のものがぶつかり合うので聖剣と同じ働きをして・・・。」
美野里は克也に視線を向けた。
「木っ端微塵になるのか。」
克也は何とも言えない気持ちで結論を口に出しそれに二人が頷いた。
そこに先に砦に入った若い兵士が厳つい顔をしたがっしりとした体格で茶髪の老齢の兵士を連れ、三人の前に現れた。
「私は辺境伯が居られない間、砦の留守を預かるもので王都出身のガイウスといいます。」
老兵士は疲れた顔で三人の前で自己紹介した。
シェルは三人を代表して前に出ると手を差し出して挨拶した。
「私は魔術師団所属のシェルでこっちが同僚のシータ。」
「俺は兵士見習いのショウです。」
三人はそれぞれそ老兵士と握手した。
「あーまあ立ち話もなんですのであっちに少しばかり食料がありますから食事でも。」
老兵士は三人を食堂に案内しようとしたがそれをシェルに止められた。
「食事より先にこの砦の中を案内してほしいわね。特にこの砦の執務室に案内してくれないかしら。」
老兵士は疑問におもいながらもシェルに頷くと素直に三人をこの砦の中で一番見晴らしのいい部屋に案内した。
「こちらが執務室です。」
鍵もかかっていない部屋に彼らを案内した。
シェルと美野里が先に執務室に入るとその瞬間にズンという重圧で体が潰れそうになった。
「あの辺境伯が使っていた執務室ね。」
すぐにシェルが確認の為に最後に入って来た老兵士に尋ねると彼は素直に頷いた。
”シェル。ここにはもう黒い想念が重くのしかかってる。”
精査魔法を執務室全体に飛ばし美野里が悲壮な念話をシェルに寄越した。
すぐ傍でも同じように精査魔法を飛ばしたシェルが無言で頷いた。
この砦でこの黒い想念を払うには一苦労ねぇー。
「はぁあーでもやっぱりここも私がやるしかないわね。シータ、あなたはここにいる重症患者の治療をお願い。」
「ちょっ・・・全員の治療を今日中に!」
美野里はシェルの無茶ぶりに思わず声を荒げた。
この黒い想念が厚く凝り固まった砦内で重症患者の治療とか効率が悪すぎて考えたくない。
「当然でしょ。そんなに悠長に言ってられないくらい予測できるでしょ。討伐にその後始末も考えると一週間以内にすべて終わらせないとダメなことくらいわかるわよね。」
「わ・・・わかりました。」
美野里は反論しようとして口を噤んだ。
王都にいる自分のクラスメイト達や何も知らない市民。
彼等を魔獣から守るためにもこの砦の魔法結界がきちんと機能するように修復してすぐさま魔獣が発生した原因元を特定する必要がある。
それはわかっているが美野里にとって正反対の性質を持つ黒の結界の中での治療とかは普通の思考ならありえない。
思わずシェルを睨めば逆に爽やかな笑顔でお願いされた。
「じゃそっちは宜しく。」
シェルに言われ美野里は諦め顔で素直に執務室のドアを開けると出て行った。
それを見ていた克也は彼女を手伝おうとするがそれをシェルに止められた。
「おい!」
肩に置かれた手を強引に振り払うがシェルは魔法で克也を足止めした。
「ダメよ。この執務室の精査が終わったら今度は外でテントの設置をやるんだから。」
「テントぉー。この砦内で泊まればいいだろ!」
「シータに負担がかかっても構わないってことね。」
「おい、なんでここに泊まると彼女に負担になるんだよ?」
「さっき説明したでしょ?」
「どの説明がそれに当たるかわからんがシータの負担になるなら仕方ない。」
「あら以外に素直ね。じゃテントを砦の広場に一つ持って来て頂戴。」
シェルの言葉に頷いた老兵士が執務室を出て行こうとしたがその寸前に彼の背にシェルが声を掛けた。
「後で広場にテントを設置するわ。その時にこっちが持って来た食料の一部を提供するわ。その代わりに討伐に・・・。」
「討伐には協力します。任せて下さい。」
老兵士はシェルの要請に重なるように返答するとすぐに部屋を出て行った。
「必要なのか?」
「ええ、三人では少々襲って来る魔獣の数が多過ぎになるからその分を彼らに振り分ける必要があるのよ。」
シェルは克也と話しながらも何かをしていたらしく額にはうっすらと汗をかいていた。
しばらくすると肩の力を抜いたシェルがぐったりした表情で突然執務室の中央から扉に向かって歩き出した。
「シェル?」
「ここはこれでもう問題ないわ。さあ今度は今日寝る場所の下準備よ。」
シェルはそういうと執務室からも見える外の景色を確認してから部屋を出た。
克也もなんとなくシェルの視線が気になってそこから外を見てみるが特に何も見えなかった。
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何かあるのか?
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