28 / 40
第二章 下界
28.禍々しい剣と第二王子
しおりを挟む
ドーナンは何度も医師が来るまで第一王子を揺さぶったが目を覚ますことはなかった。
「どうなされた?」
近衛兵に呼ばれて宮廷医師が第一王子の寝室にやってきた。
「さきほどから何度も呼んでいるんですが目を覚まさないのだ。」
ドーナンがベッドから下がると入れ替わりに宮廷医師が第一王子の手を取ると脈を診た。
次に瞼を開けてそこに光を当て瞳孔の様子を観察する。
さらに意識のない第一王子の口を開けて宮廷医師が持ってきた検査器具を当てるとしばらくして何かの反応があった。
「どうだ?」
ドーナンはいてもたってもいられなかったがグッと我慢して宮廷医師の診察結果を待った。
宮廷医師はドーナンに話しかけられてからしばらく検査器具の結果を眺め、おもむろに診察結果を口にした。
「寝ておられる。」
「はっ?」
あまりに意外なことを言われて、もう一度聞き返してしまった。
「だから寝ておられるだけだ。」
「どういうことだ?」
「理由はわからないが深い眠りについておられるようだ。」
「どうすれば目覚めるんだ?」
「これが自然に起こっているならば疲れが取れれば目覚めるはずだが・・・。」
「自然ではない場合とはどういう状態を指している。」
宮廷医師は問いかけてきたドーナンを逆に見返した。
「私は医師であって魔術は専門外じゃ。」
ドーナンはハッとすると近づいて第一王子に探索魔法をかけた。
途端。
何かの術式が浮かび上がった。
しかし一度も見たことがないような非常に複雑なものだったのでドーナンでもお手上げの状態だった。
「くそっ。なんて複雑な術式なんだ。」
「だがそれを解呪しない限りは目覚めんよ。」
昔からドーナンを良く知る医師は彼の肩を叩いた。
「分かっています。」
ドーナンはその場で近衛兵の二人と宮廷医師に第一王子は呪いではなく病気で療養中だと言い含めると解呪に向けて全力で取り組み始めた。
昨晩、剣に魅入られた第二王子は欲望の赴くまま第一王子の寝所に向かった。
寝室の扉の前に第二王子が立ってもなぜか近衛兵には彼の姿が見えないようで無反応だった。
第二王子はそれをいいことにそのまま扉を開けると第一王子の寝室に入った。
そこでは美しい愛妾が彼の腕の中でスヤスヤと眠っていた。
くそっ、いつも、いつも、こいつは美味いことばかりして・・・。
おのれ・・・。
彼の欲望に呼応して剣から黒い靄が立ち上り第一王子を包み込んだ。
その異様な気配に腕の中で寝ていた愛妾が目を覚ました。
途端、悲鳴をあげようと口を開いた。
うざいぞ、お前。
第二王子の思いに反応して愛妾も黒い靄に包まれ、ぐったりとベッドに倒れ伏した。
ざまぁみろ。
第二王子はぐったりとした愛妾をベッドから抱え上げると第一王子の寝室を後にした。
どこに行く、主よ。
黒い靄を纏わせた剣から声がかかった。
第二王子は面倒くさそうに剣を見つめた。
お前が将軍を殺せと命じたんじゃないのか?
確かにそうだ。
なら国境沿いの砦を落とせばいい。
そうそればすぐに将軍がやってくるさ。
なるほどさすが主だ。
すばらしい。
剣の気配がさらに禍々しくなった頃第二王子は自国の警護任務に就いている兵士が駐留する砦に向かった。
「どうなされた?」
近衛兵に呼ばれて宮廷医師が第一王子の寝室にやってきた。
「さきほどから何度も呼んでいるんですが目を覚まさないのだ。」
ドーナンがベッドから下がると入れ替わりに宮廷医師が第一王子の手を取ると脈を診た。
次に瞼を開けてそこに光を当て瞳孔の様子を観察する。
さらに意識のない第一王子の口を開けて宮廷医師が持ってきた検査器具を当てるとしばらくして何かの反応があった。
「どうだ?」
ドーナンはいてもたってもいられなかったがグッと我慢して宮廷医師の診察結果を待った。
宮廷医師はドーナンに話しかけられてからしばらく検査器具の結果を眺め、おもむろに診察結果を口にした。
「寝ておられる。」
「はっ?」
あまりに意外なことを言われて、もう一度聞き返してしまった。
「だから寝ておられるだけだ。」
「どういうことだ?」
「理由はわからないが深い眠りについておられるようだ。」
「どうすれば目覚めるんだ?」
「これが自然に起こっているならば疲れが取れれば目覚めるはずだが・・・。」
「自然ではない場合とはどういう状態を指している。」
宮廷医師は問いかけてきたドーナンを逆に見返した。
「私は医師であって魔術は専門外じゃ。」
ドーナンはハッとすると近づいて第一王子に探索魔法をかけた。
途端。
何かの術式が浮かび上がった。
しかし一度も見たことがないような非常に複雑なものだったのでドーナンでもお手上げの状態だった。
「くそっ。なんて複雑な術式なんだ。」
「だがそれを解呪しない限りは目覚めんよ。」
昔からドーナンを良く知る医師は彼の肩を叩いた。
「分かっています。」
ドーナンはその場で近衛兵の二人と宮廷医師に第一王子は呪いではなく病気で療養中だと言い含めると解呪に向けて全力で取り組み始めた。
昨晩、剣に魅入られた第二王子は欲望の赴くまま第一王子の寝所に向かった。
寝室の扉の前に第二王子が立ってもなぜか近衛兵には彼の姿が見えないようで無反応だった。
第二王子はそれをいいことにそのまま扉を開けると第一王子の寝室に入った。
そこでは美しい愛妾が彼の腕の中でスヤスヤと眠っていた。
くそっ、いつも、いつも、こいつは美味いことばかりして・・・。
おのれ・・・。
彼の欲望に呼応して剣から黒い靄が立ち上り第一王子を包み込んだ。
その異様な気配に腕の中で寝ていた愛妾が目を覚ました。
途端、悲鳴をあげようと口を開いた。
うざいぞ、お前。
第二王子の思いに反応して愛妾も黒い靄に包まれ、ぐったりとベッドに倒れ伏した。
ざまぁみろ。
第二王子はぐったりとした愛妾をベッドから抱え上げると第一王子の寝室を後にした。
どこに行く、主よ。
黒い靄を纏わせた剣から声がかかった。
第二王子は面倒くさそうに剣を見つめた。
お前が将軍を殺せと命じたんじゃないのか?
確かにそうだ。
なら国境沿いの砦を落とせばいい。
そうそればすぐに将軍がやってくるさ。
なるほどさすが主だ。
すばらしい。
剣の気配がさらに禍々しくなった頃第二王子は自国の警護任務に就いている兵士が駐留する砦に向かった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ざまぁ対象の悪役令嬢は穏やかな日常を所望します
たぬきち25番
ファンタジー
*『第16回ファンタジー小説大賞【大賞】・【読者賞】W受賞』
*書籍化2024年9月下旬発売
※書籍化の関係で1章が近日中にレンタルに切り替わりますことをご報告いたします。
彼氏にフラれた直後に異世界転生。気が付くと、ラノベの中の悪役令嬢クローディアになっていた。すでに周りからの評判は最悪なのに、王太子の婚約者。しかも政略結婚なので婚約解消不可?!
王太子は主人公と熱愛中。私は結婚前からお飾りの王太子妃決定。さらに、私は王太子妃として鬼の公爵子息がお目付け役に……。
しかも、私……ざまぁ対象!!
ざまぁ回避のために、なんやかんや大忙しです!!
※【感想欄について】感想ありがとうございます。皆様にお知らせとお願いです。
感想欄は多くの方が読まれますので、過激または攻撃的な発言、乱暴な言葉遣い、ポジティブ・ネガティブに関わらず他の方のお名前を出した感想、またこの作品は成人指定ではありませんので卑猥だと思われる発言など、読んだ方がお心を痛めたり、不快だと感じるような内容は承認を控えさせて頂きたいと思います。トラブルに発展してしまうと、感想欄を閉じることも検討しなければならなくなりますので、どうかご理解いただければと思います。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
元悪役令嬢はオンボロ修道院で余生を過ごす
こうじ
ファンタジー
両親から妹に婚約者を譲れと言われたレスナー・ティアント。彼女は勝手な両親や裏切った婚約者、寝取った妹に嫌気がさし自ら修道院に入る事にした。研修期間を経て彼女は修道院に入る事になったのだが彼女が送られたのは廃墟寸前の修道院でしかも修道女はレスナー一人のみ。しかし、彼女にとっては好都合だった。『誰にも邪魔されずに好きな事が出来る!これって恵まれているんじゃ?』公爵令嬢から修道女になったレスナーののんびり修道院ライフが始まる!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~
ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉
攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。
私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。
美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~!
【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避
【2章】王国発展・vs.ヒロイン
【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。
※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。
※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差)
ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/
Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/
※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。
【完結】何も知らなかった馬鹿な私でしたが、私を溺愛するお父様とお兄様が激怒し制裁してくれました!
山葵
恋愛
お茶会に出れば、噂の的になっていた。
居心地が悪い雰囲気の中、噂話が本当なのか聞いてきたコスナ伯爵夫人。
その噂話とは!?
聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?
渡邊 香梨
ファンタジー
――小説3巻&コミックス1巻大好評発売中!――【旧題:聖女の姉ですが、国外逃亡します!~妹のお守りをするくらいなら、腹黒宰相サマと駆け落ちします!~】
12.20/05.02 ファンタジー小説ランキング1位有難うございます!
双子の妹ばかりを優先させる家族から離れて大学へ進学、待望の一人暮らしを始めた女子大生・十河怜菜(そがわ れいな)は、ある日突然、異世界へと召喚された。
召喚させたのは、双子の妹である舞菜(まな)で、召喚された先は、乙女ゲーム「蘇芳戦記」の中の世界。
国同士を繋ぐ「転移扉」を守護する「聖女」として、舞菜は召喚されたものの、守護魔力はともかく、聖女として国内貴族や各国上層部と、社交が出来るようなスキルも知識もなく、また、それを会得するための努力をするつもりもなかったために、日本にいた頃の様に、自分の代理(スペア)として、怜菜を同じ世界へと召喚させたのだ。
妹のお守りは、もうごめん――。
全てにおいて妹優先だった生活から、ようやく抜け出せたのに、再び妹のお守りなどと、冗談じゃない。
「宰相閣下、私と駆け落ちしましょう」
内心で激怒していた怜菜は、日本同様に、ここでも、妹の軛(くびき)から逃れるための算段を立て始めた――。
※ R15(キスよりちょっとだけ先)が入る章には☆を入れました。
【近況ボードに書籍化についてや、参考資料等掲載中です。宜しければそちらもご参照下さいませ】
英雄になった夫が妻子と帰還するそうです
白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。
愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。
好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。
今、目の前にいる人は誰なのだろう?
ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。
珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥)
ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる