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第二章 下界
23.入隊
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二人は部屋に戻ると渡された書類を一読した。
途端、クリスはそれを机に放り投げた。
「なんですかこれ。どこに国のために命を懸ける馬鹿がいるんですか。」
呆れ顔で持っていた酒を煽ると立ち上がって窓辺に腰かけた。
「俺は将軍を守る為に命を懸ける。」
ヒューは書類に二本線を引いて、その箇所を勝手に書き換えていた。
「あっ!それいいですね。俺もそうしよう。」
クリスも喜々として書類に横線を引くと副将軍を守るのに命を賭けるに書き換えた。
二人は書類にサインをして机に置くとシャワーを浴びて、その日はすぐに眠りについた。
翌朝。
二人は朝食を済ますと見慣れた試合会場を通り過ぎ、奥の守備隊がある門に向かった。
門にいた兵士がすかさず槍を突き付けるが二人が書類を見せるとすんなり通してくれた。
門の中には入ってすぐの所に広場があり、そこでは兵士がそれぞれ槍や剣で訓練をしていた。
二人はそれを横目で見ながら奥に向かった。
すぐに目的の建物を見つけてそこに向かって歩いていると彼らに気がついたガタイのでかい兵士が二人に駆け寄ってきた。
「あんたらかい。今回採用になった兵士は?」
「そのようだな。」
ヒューはめんどくさそうに彼らに近寄ってきたガタイのでかい男に答えた。
その返事を聞いたガタイのでかい兵士が何を思ったのか、ヒューに突然殴りかかった。
「新人のくせにそのデカい態度はなんだぁ!」
ヒューは寸前で右に避けると背後に回り、逆に相手の腕をねじ上げた。
イッテテテテ
「離せ!」
「言っておくがまだ書類を受理されていないんでね。ここの新兵ではない。だからヒラのお前にとやかく言われる覚えもないぞ。」
「くそっ離せ。」
ヒューは左後方に体を流しながら手を離した。
ガタイのでかい男は踏鞴を踏んで地面とご対面した。
男はすぐに真っ赤な顔で起き上がると自分を無視して、建屋に向かって歩いていくヒューの背後を狙って、腰にさしていた剣を振り上げた。
男の行動はヒューの左隣りにいたクリスに気づかれて、あっさり首に手刀を受けて気絶した。
「やれやれ。せっかく手加減してやったのに。」
ヒューがそう呟けばそれを聞いたクリスがうんざり顔で呟いた。
「ヒュー。こういう輩は手加減するだけ無駄ですよ。」
ヒューは地面に横たわっている男を見て頷いた。
「わかった。今度からは手加減なしでやる。」
「そうして下さい。」
二人がそんな会話をしていた。
周囲の兵士は簡単にガタイのでかい男を倒した二人を唖然とした表情で見ていた。
二人はそのまま建物の廊下に足を踏み入れると小さい少年が二人を見つけてやってくる。
「こっちです。」
小さい少年が二人を案内してくれた。
二人は少年に連れられて建物の奥にある隊長室に向かった。
「こちらで隊長がお待ちです。」
少年がノックをすると中から野太い男の声が聞こえた。
少年が扉を開けると彼らを中に案内した。
部屋の中にはつい最近、試合会場でヒューが倒した人物が偉そうな軍服に身を包んで座っていた。
「隊長。お二人をお連れしました。」
「ああ、ありがとう。二人ともそこに座ってくれ。」
二人は隊長と呼ばれた男に言われるままにそこに腰をかけた。
「まずは宣誓書を出してくれ。」
二人はバサッという音を立てて机にサインした書類を放った。
隊長がそれに一通り目を通す。
「おい。この二重線はなんだ!」
「「それが許可されなければ、ここには入らん。」」
「なんだと。」
机をドンと叩いて立ち上がった隊長を二人は睨み付けた。
思わず隊長の方がビクッとして頽れるように椅子に腰を戻した。
隊長は威厳を取り戻すように空咳をすると何ごともなかったような態度でその書類にサインをした。
「まっどちらにしろ将軍と副将軍に忠誠を誓うのであれば、国に忠誠を誓うのと変わらないかので、それでヨシとしよう。」
隊長はそう呟くと二人に隊長がサインした書類を返した。
そこにタイミングよくドアがノックされ、それとともに女と見紛うほどにきれいな金色の髪をした美しい顔の男が現れた。
「隊長。お呼びだと言われましたので来たんですが?」
「サラ。こいつらが今度お前の隊に入る新人だ。」
サラと呼ばれた美麗顔の男が二人を見た。
「んっ・・・まあいい男ね。」
そう呟いた途端、さきほど部屋に入ってきた人間とは思えない動きでヒューとクリスの尻にサラの手が伸びた。
ヒューはその手を難なく捕まえ、捻りあげた。
クリスはバシッとサラの手を叩いた。
「あらん。二人とも連れないのね。」
「俺。女専門なんだ。」
クリスの答えにサラの目がヒューを見た。
「俺もだ。」
ヒューは捻り上げたサラの手を放しながらそう呟いた。
「あら。もったいない。」
「サラ。ここは隊長室だ。男漁れはやめて、さっさと二人を連れて行け。」
隊長の声が聞こえてサラはニッコリ微笑むと二人に手を振った。
「じゃあ二人とも私についてきて頂戴。」
二人はサラに言われるまま彼の後についていった。
途端、クリスはそれを机に放り投げた。
「なんですかこれ。どこに国のために命を懸ける馬鹿がいるんですか。」
呆れ顔で持っていた酒を煽ると立ち上がって窓辺に腰かけた。
「俺は将軍を守る為に命を懸ける。」
ヒューは書類に二本線を引いて、その箇所を勝手に書き換えていた。
「あっ!それいいですね。俺もそうしよう。」
クリスも喜々として書類に横線を引くと副将軍を守るのに命を賭けるに書き換えた。
二人は書類にサインをして机に置くとシャワーを浴びて、その日はすぐに眠りについた。
翌朝。
二人は朝食を済ますと見慣れた試合会場を通り過ぎ、奥の守備隊がある門に向かった。
門にいた兵士がすかさず槍を突き付けるが二人が書類を見せるとすんなり通してくれた。
門の中には入ってすぐの所に広場があり、そこでは兵士がそれぞれ槍や剣で訓練をしていた。
二人はそれを横目で見ながら奥に向かった。
すぐに目的の建物を見つけてそこに向かって歩いていると彼らに気がついたガタイのでかい兵士が二人に駆け寄ってきた。
「あんたらかい。今回採用になった兵士は?」
「そのようだな。」
ヒューはめんどくさそうに彼らに近寄ってきたガタイのでかい男に答えた。
その返事を聞いたガタイのでかい兵士が何を思ったのか、ヒューに突然殴りかかった。
「新人のくせにそのデカい態度はなんだぁ!」
ヒューは寸前で右に避けると背後に回り、逆に相手の腕をねじ上げた。
イッテテテテ
「離せ!」
「言っておくがまだ書類を受理されていないんでね。ここの新兵ではない。だからヒラのお前にとやかく言われる覚えもないぞ。」
「くそっ離せ。」
ヒューは左後方に体を流しながら手を離した。
ガタイのでかい男は踏鞴を踏んで地面とご対面した。
男はすぐに真っ赤な顔で起き上がると自分を無視して、建屋に向かって歩いていくヒューの背後を狙って、腰にさしていた剣を振り上げた。
男の行動はヒューの左隣りにいたクリスに気づかれて、あっさり首に手刀を受けて気絶した。
「やれやれ。せっかく手加減してやったのに。」
ヒューがそう呟けばそれを聞いたクリスがうんざり顔で呟いた。
「ヒュー。こういう輩は手加減するだけ無駄ですよ。」
ヒューは地面に横たわっている男を見て頷いた。
「わかった。今度からは手加減なしでやる。」
「そうして下さい。」
二人がそんな会話をしていた。
周囲の兵士は簡単にガタイのでかい男を倒した二人を唖然とした表情で見ていた。
二人はそのまま建物の廊下に足を踏み入れると小さい少年が二人を見つけてやってくる。
「こっちです。」
小さい少年が二人を案内してくれた。
二人は少年に連れられて建物の奥にある隊長室に向かった。
「こちらで隊長がお待ちです。」
少年がノックをすると中から野太い男の声が聞こえた。
少年が扉を開けると彼らを中に案内した。
部屋の中にはつい最近、試合会場でヒューが倒した人物が偉そうな軍服に身を包んで座っていた。
「隊長。お二人をお連れしました。」
「ああ、ありがとう。二人ともそこに座ってくれ。」
二人は隊長と呼ばれた男に言われるままにそこに腰をかけた。
「まずは宣誓書を出してくれ。」
二人はバサッという音を立てて机にサインした書類を放った。
隊長がそれに一通り目を通す。
「おい。この二重線はなんだ!」
「「それが許可されなければ、ここには入らん。」」
「なんだと。」
机をドンと叩いて立ち上がった隊長を二人は睨み付けた。
思わず隊長の方がビクッとして頽れるように椅子に腰を戻した。
隊長は威厳を取り戻すように空咳をすると何ごともなかったような態度でその書類にサインをした。
「まっどちらにしろ将軍と副将軍に忠誠を誓うのであれば、国に忠誠を誓うのと変わらないかので、それでヨシとしよう。」
隊長はそう呟くと二人に隊長がサインした書類を返した。
そこにタイミングよくドアがノックされ、それとともに女と見紛うほどにきれいな金色の髪をした美しい顔の男が現れた。
「隊長。お呼びだと言われましたので来たんですが?」
「サラ。こいつらが今度お前の隊に入る新人だ。」
サラと呼ばれた美麗顔の男が二人を見た。
「んっ・・・まあいい男ね。」
そう呟いた途端、さきほど部屋に入ってきた人間とは思えない動きでヒューとクリスの尻にサラの手が伸びた。
ヒューはその手を難なく捕まえ、捻りあげた。
クリスはバシッとサラの手を叩いた。
「あらん。二人とも連れないのね。」
「俺。女専門なんだ。」
クリスの答えにサラの目がヒューを見た。
「俺もだ。」
ヒューは捻り上げたサラの手を放しながらそう呟いた。
「あら。もったいない。」
「サラ。ここは隊長室だ。男漁れはやめて、さっさと二人を連れて行け。」
隊長の声が聞こえてサラはニッコリ微笑むと二人に手を振った。
「じゃあ二人とも私についてきて頂戴。」
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