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第二章 下界

12.宿屋

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さあて捜しに行きますか? 隊長じゃなく何て呼べばいいんですか?」

 クリスは歩きながらヒューに話しかけた。

「そうだな。まっ好きに呼べばいいさ。」
 ヒューは視線を前方にある街に向けながらぶっきらぼうに答えた。

「えっそう言われると困るんですがね。それじゃ御主人様っていうのはどうですか?」
「なんだか寒気がするから却下だ。」
 ヒューは鳥肌の立った腕をさすった。

「はぁ注文多いですね。じゃあジェシカに倣ってヒュー様でどうでしょう?」
「ちょっと気に入らんが妥協してやる。」
「じゃヒューで。」
「おい。さっきは”様”がついてなかったか?」
「気のせいですよ。それよりとにかくすぐに探しに行き来ましょう。」
 ヒューとクリスは街の中心に向かって足を進めた。

 かなり賑やかな通りを中心に向かって進んでいくと大きな宿屋があった。
 けっこうきれいな造りなのに店の横には古ぼけた伝言板が置いてあった。

「なんだか不釣合いですね。」
「ああ、そうだな。」
 ヒューは何とはなしにその古びた伝言板に目を止めた。
「おいクリス。これを見て見ろ!」
「これって・・・。メリル様とジェシカからの伝言じゃないですか。さすが俺のジェシカだ。」
 クリスが伝言板を握りつぶしそうな勢いで掲げたので慌ててヒューがそれを止めた。
「おいもうそれを離せ。とにかく中に入ってその伝言を受け取ろう。」

 二人が宿の中に入って店主に声をかけると逆に店主から質問を受けた。

「それじゃ証拠の提示をお願いします。」
「「証拠?」」
 二人でおうむ返しに問いかけてしまった。
「ええ、あなたがヒューと呼ばれた人物であるかどうかの証拠です。」
 ヒューは考えた末に一枚の金色の羽を店主に見せた。

 店主は目を瞠った後カウンターから奥に引っ込むと一枚の古びた羊皮紙を持って現れた。

 ヒューは店主にお礼を言うとその場でその宿屋に部屋を取った。
 部屋を取るとすぐにもらった羊皮紙をもって、クリスと部屋に入った。
 部屋に入ると窓際にあった小さなテーブルの上にその羊皮紙を広げた。
 その羊皮紙には広大な土地の地図が描かれていた。
 地図には一か所にだけ印が描かれていた。

 どうやら二人はこれからこの印の場所まで旅をしなければならないようだ。
「これはまた遠そうですね。飛べればすぐですが、さてどうしますか?」
 クリスが隣で地図を眺めているヒューをチラリと見た。
「飛べないから何かに乗っていくしかないだろ。クリス、お前乗馬はできるのか?」
「出来るわけないでしょ。俺飛ぶの専門ですもん。それこそ隊長じゃなかったヒューこそどうなんですか?」
「俺は当然やったことはない。」
「なら徒歩ですね。」
「それしかないか。とにかくお腹も空いたし食事を済ませて宿屋の主人に移動手段について聞いてみよう。」
「そうしますか。」

 二人は連れ立って下の食堂に降りた。
 さっきより賑やかな喧騒の中二人は端の空いている席に座ると食事を頼んで食べ始めた。
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