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第一章 天上界
10.メリルとお揃い
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ヒューは全身の痛みで目が覚めた。
「体調はどうだ?」
リチャードがベッド脇で珍しく心配そうにヒューの顔を見ていた。
「体がバラバラになりそうなくらい痛むが、なんとか生きているようだ。」
「お前は本当にいつも無茶をやるな。等価交換の魔法に翼を使うアホは初めて見たぞ。」
「おかげで同じ属性の白竜を倒せた。クリスは?」
ヒューは自分をサポートしてくれたクリスを慌てて捜した。
「お前より少し前に気がついて今も隣のベッドで寝ているよ。」
「いやーまだ体中が痛むんで動けませんよ。」
相変わらず陽気な声の回答にヒューは心底安堵した。
「流石に俺も今すぐに下界に降りようとは言わないさ。」
リチャードは二人の会話を聞いて隣から話に加わった。
「それなら俺が明日にでもお前たちを下界に送ってやるよ。」
ヒューは訝しげにリチャードを見た。
「まだ気がついていないのか。お前の片翼は完全に等価交換で失なわれているんだ。」
ヒューは翼を広げて自分の視界にあるはずの翼がないのに気がついた。
「そうか。」
「なんだか嬉しそうですね。」
クリスが思わずヒューの表情を見て突っ込んだ。
「そうだな。これでメリルとお揃いかと思うとかなり嬉しいな。」
リチャードはヒューの顔を見てうんざりした。
「お前の頭の中にはメリルしかいないのか?」
「もちろんだ。」
嫌味を言ったのに逆に肯定されたリチャードは毒気を抜かれ、その場に突っ伏した。
さすが翼の国に名を轟かすバカップル、翼より恋人とお揃いがいいらしい。
そこにバタバタと音を立てて女王が現れた。
「ヒュー体調は?」
「お陰様で生きています。」
「そう。」
女王は安堵の顔で肩の力を抜いた。
「アン女王。執務がまだ終わっていませんし白竜が現れて、街はまだ混乱しています。」
後ろから宰相が現れ、女王の行動をたしなめた。
「わかっているわ、今すぐ行きます。宰相も自分の息子のケガなんだから、もう少し気にしたら。」
宰相は何も言わず女王を見た。
「わかっているわよ。今すぐ街に行きます。」
「宜しくお願いします。」
宰相は慇懃な礼をするとチラッとヒューに目線を止めると、そのまま何も言わずに病室を出ていった。
「体調はどうだ?」
リチャードがベッド脇で珍しく心配そうにヒューの顔を見ていた。
「体がバラバラになりそうなくらい痛むが、なんとか生きているようだ。」
「お前は本当にいつも無茶をやるな。等価交換の魔法に翼を使うアホは初めて見たぞ。」
「おかげで同じ属性の白竜を倒せた。クリスは?」
ヒューは自分をサポートしてくれたクリスを慌てて捜した。
「お前より少し前に気がついて今も隣のベッドで寝ているよ。」
「いやーまだ体中が痛むんで動けませんよ。」
相変わらず陽気な声の回答にヒューは心底安堵した。
「流石に俺も今すぐに下界に降りようとは言わないさ。」
リチャードは二人の会話を聞いて隣から話に加わった。
「それなら俺が明日にでもお前たちを下界に送ってやるよ。」
ヒューは訝しげにリチャードを見た。
「まだ気がついていないのか。お前の片翼は完全に等価交換で失なわれているんだ。」
ヒューは翼を広げて自分の視界にあるはずの翼がないのに気がついた。
「そうか。」
「なんだか嬉しそうですね。」
クリスが思わずヒューの表情を見て突っ込んだ。
「そうだな。これでメリルとお揃いかと思うとかなり嬉しいな。」
リチャードはヒューの顔を見てうんざりした。
「お前の頭の中にはメリルしかいないのか?」
「もちろんだ。」
嫌味を言ったのに逆に肯定されたリチャードは毒気を抜かれ、その場に突っ伏した。
さすが翼の国に名を轟かすバカップル、翼より恋人とお揃いがいいらしい。
そこにバタバタと音を立てて女王が現れた。
「ヒュー体調は?」
「お陰様で生きています。」
「そう。」
女王は安堵の顔で肩の力を抜いた。
「アン女王。執務がまだ終わっていませんし白竜が現れて、街はまだ混乱しています。」
後ろから宰相が現れ、女王の行動をたしなめた。
「わかっているわ、今すぐ行きます。宰相も自分の息子のケガなんだから、もう少し気にしたら。」
宰相は何も言わず女王を見た。
「わかっているわよ。今すぐ街に行きます。」
「宜しくお願いします。」
宰相は慇懃な礼をするとチラッとヒューに目線を止めると、そのまま何も言わずに病室を出ていった。
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