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郊外の一軒家

はじめての……じゅうよん

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カウンセリングが始まってから長い時間が経って、雪兎の目を隠していた布が外された。けれど雪兎自身にはまだ不安があるようで、山の訓練場にこもりきりになった。

「ユキは今日も訓練か……」

「危ないからって見学もさせてもらえないし、食事中や寝る時だって俺が近くに居ると手で目ぇ隠して蹲っちゃうし……目隠ししてた時の方がマシな気がするよ」

「スキンシップ面ではな」

目隠しを外してからは同じ部屋で眠ることもなくなった。暴発させたことなんてないくせに、寝ぼけて暴発させたら危険だからと俺は雪兎の部屋から追い出された。

「俺は元から雪兎と常に一緒に居た訳じゃねぇから、目隠し中の添い寝がレアケースだし、今も別にそんなキツくはねぇんだが……お前は辛そうだな」

「……当たり前だろ。ずっと一緒に居たんだ、引き取られてからずっと、ずっと雪兎と……留学してからずっと寂しくて、喜んじゃいけない理由だけど留学が終わって嬉しくて……なのに、雪兎の意思で雪兎の傍から追い出されるなんて」

「まぁまぁ、そのうち雪兎の納得のいく制御が出来るようになるだろ。そう落ち込むなよ……追い出されたって言っても、お前を嫌った訳じゃない……真尋、お前が大切だからこそ遠ざけてるんだ。分かってるだろ?」

「…………分かってる、でも」

「寂しい?」

雪風に弱みを見せるのは嫌だ。彼の恋人として、幼い頃から心に酷い傷を負ってきた彼のため、しっかりと自分の足で立っていたい。

「………………うん」

でも、今は、今だけは、無理だ。雪風の恋人の真尋に戻れない、飼い主を玄関先で待ち続ける潤んだ目の犬でいてしまう。

「よーし……また夜、雪風さんが癒してやるよ」

雪兎の部屋から追い出された俺の寝床は雪風の部屋だ。雪兎が独りで眠っている中、毎晩楽しむのは罪悪感があるけれど、救いになっている。

「……違う。雪風を雪兎の穴埋めになんて使ってない……雪風は雪風で、ただ愛してる」

「真尋…………それって、俺と居ても寂しさ埋まらねぇってこと?」

「悪い方に解釈するなよな。雪風が仕事中で会えない間とかに感じた寂しさは癒されてるよ」

「お前本当に俺もユキも必要なんだなぁ」

「前からそう言ってる……じゃあ、俺そろそろ訓練に戻るから……雪風も仕事真面目にやれよ」

雪兎が能力の制御を訓練するのなら、俺も訓練漬けにならなければ。料理修行や秘書としての勉強は後、今は雪兎に能力を使わせずにあの窮地を脱せる程の強さを手に入れるのが先だ。

「ポチ様、お待ちしておりました」

「お待たせしました。今日は棒術でしたっけ……さっさとやりましょう。早く強くなりたいんです、強く……強く」

二度と、雪兎が人を殺さないよう、俺が雪兎に仇なす全ての人間を先に殺そう。

「制圧ではなく人体の破壊、もしくは殺害を目的とした体術を学びたいとのことでしたが……気持ちにお変わりはありませんね?」

それは二度と雪兎に殺人という咎を犯させないためではない。雪兎の頭が俺以外のモノで満たされるのを避けるため、俺が先に殺すのだ。そうすれば雪兎のために殺人を犯した俺の方が、死んだ者よりも印象強く雪兎に残るだろう。

「はい、人の壊し方と殺し方教えてください」

幸い、俺は殺人に罪悪感を覚えるタイプではないと分かった。いつかまた訪れる窮地で独占欲を満たすため、まずは術を学ぼう。
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