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雪の降らない日々

たんじょーびのよくじつ

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朝目が覚めると雪風は既に隣に居らず、寝室を出るとパソコンを弄っている雪風を見つけた。俺はため息をつきながら雪風を背後から抱き締め、耳の端を噛んだ。

「ひゃんっ!? おまっ……今リモート会議中だぞバカ!」

「えっ、あ」

「あ、じゃねぇバカ! ったく……お前らちょっと待ってろ!」

パソコンを指差してそう言うと、雪風は俺の腕を掴んでカメラの範囲外に出た。怒った顔はすぐにふにゃんとした笑顔に変わり、俺の頭を抱き締めて唇を重ねた。

「んっ……へへ、真尋ぉ、おはよ」

立ち上がった雪風を見て俺はようやく彼が下半身に下着しか身に付けていないことに気付いた。

「……おはよう、雪風。ごめんな、仕事中に」

「いやいや、お前の誕生日祝ったばっかなのに仕事してる方が悪い」

「そんな……もう一日経ってるし」

「ふふっ、愛してるぜ真尋ぉ、朝からシちまうか?胸から上は服乱さないでくれよ?」

「…………ミュートしなくていいのか?」

こちらの音が部下達に丸聞こえだと教えてやると雪風は顔を赤くし、カメラに下半身を映さないようコソコソと席に戻った。

「……昼飯までには、終わらせるから」

「あぁ、一回部屋帰るよ。またな」

俺は一旦雪兎の部屋に戻り、一人寂しく朝食を食べた後、使用人によって部屋に届けられたダンボール箱を開封した。

「……ユキ様!」

箱の中には可愛らしい包装紙に包まれた何かと、雪兎からの手紙が入っていた。手紙にキスをしてから開き、手書きだろう文字を指でなぞって匂いを嗅いだ。

「いい匂い……ユキ様、ユキ様……」

雪兎が愛用している乳液の匂いがほんのりとする。塗ってすぐに書いたのだろう、紙に触れていた手から移ったのだ。

「はぁ……お字も綺麗でいらっしゃる。ユキ様フォント作りたい……」

雪兎からの手紙の内容は簡潔に言えば「お誕生日おめでとう」という内容のものだった、それを詩的で素敵な言葉で飾り立てつつ性を匂わせて俺の下腹を疼かせる完璧と言っていい出来だった。俺は手紙をラミネート加工でもして保存することを決め、一旦机の上に置いてプレゼントだろう物を開封した。もちろん包装紙を破くことなく丁寧に。

「……箱?」

包装紙の中にはプレゼントボックス。リボンを解いて開けるとまたプレゼントボックス。

「マトリョックス……」

某国の某民芸品を思い出しながら某SF映画のような言葉を生み出す。

「考えすぎのふんふふふーん、ふーふふふんふんふふふんふーん……」

リボンも箱も全て取っておくつもりなので、丁寧に丁寧にゆで卵の白身を傷付けずに殻を剥くくらい丁寧に開けていった。

「草ーも生えない砂ーのふふふん……お、やっと終わりか」

プレゼントボックスは全部で十九箱あり、全て開け終わるまでに鼻歌が何度か切り替わって某民芸品が全く関係なくなってしまった。

「薄い……何入ってんだろ。何もないってオチかな。いやいやユキ様はそういう意地悪はしないだろ、するかな……長い間会ってないからもう分かんない……ユキ様、会いたいです、ユキ様ぁ……」

半泣きで最後の小さな箱を開けるとアメリカ行きの航空券が一枚現れた。

「………………パスポートぉお!」

その航空券の意味を察した俺はプレゼントボックス達を片付けることもせず部屋を飛び出し、仕事中の雪風に「パスポートが欲しい」と喚いて困らせた。
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