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夏休み
どっぐらん、よん
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雪兎のご学友の愛犬達は犬らしくバカみたいに走り回っているが、俺はカフェから閉め出されて落ち込んだ気分のまま柵にもたれていた。
「はぁ…………ん?」
足元にボールが転がる。ハッハッと息を荒くしてシェパードがキラキラした瞳で俺を見上げている。
「ぁん? あぁ、投げろって? はいはい……取ってこーい」
ボールを拾って投げると素晴らしいスピードで追いかけていった。そんな遊びを何度か繰り返すと、遊び回っていた犬達が水飲み場に集まる。
「流石に休憩か……肩疲れるっての」
暇だし筋トレでもしていようかな、なんて欠伸をしつつ犬の集会を眺める。犬も井戸端会議するのかな?
「ん……?」
一匹こちらに来た、ボールは持っていない。
「おー、ハスキーだったかな……はは、パッと見えげつねぇ三白眼。お揃いだな」
ハスキーだ、オッドアイが特徴的な犬。そんな彼……彼? 彼女 どっちでもいいや、彼は俺のデニムを噛んで引っ張る。
「おいやめろ、歯型つくだろ……何? 何だよ、来いって? はいはい……」
水飲み場までついて行くとハスキーは他の犬の方へ行ってしまう……いや、何匹か俺の方に連れてきている?
「…………お前まさか俺がぼっちだと思って? いや、まさか……いやでも、ハスキーって犬の中でも群れ意識が強い犬種とか……」
群れる生き物である犬にとって、孤立は命の危機。頭のいい大型犬は特に一人ぼっちの人間に寄ってくると聞く、ハスキーなどは群れに入れようとし、レトリバーなどは寄り添うと……犬っていいなぁ。
「英語分かんねぇからってハブる連中よりあったけぇ……物理的にも温かい、もふもふ……何だよ腹見せやがって~、撫でて欲しいのか? ははは人懐っこ~い可愛~い」
多くの動物にとって腹を見せる姿勢は降伏の証、野生が薄れた飼い犬なら友好的な態度程度だろうか? 俺も寝転がってみよう。
「うわめっちゃ群がるじゃん。あははっ、舐めんなよ、やばい起きれな……ひゃんっ!? 耳舐めんなぁ! ちょっ、重、乗らないで……」
大量の犬の傍で寝転がると危険だと分かった。
「お? 何だ、また遊具行くのか? どんなのあるんだ? どうやって遊ぶんだよ、あー……結構楽しそうだな! 俺もやる俺もやる!」
山なりになっているだけの台や、トンネル、シーソー、人間が楽しめるものではないと思っていたが、犬と一緒に走り回りながらだとなかなか楽しい。
「やっべぇ楽しい、お前ら見とけよ次逆立ち歩きでシーソー行くからな!」
友人がいなかった俺には誰かと一緒に公園で遊ぶなんて経験がない。生まれて初めての種類の楽しさだ。汗だくも息切れも気にならない。
『……すごいね。君の恋人、犬と一緒に遊んでるよ。あそこまで犬になりきれって言ったのかい? それとも元々犬並みなのかい?』
『後者かな』
雪兎の声が聞こえたような──居た、柵の向こうにいる。
「ユキ様ぁーっ!」
柵の向こうに雪兎を見つけた俺は遊ぶのをやめてそちらへ走り、柵にガシャンとぶつかって雪兎に笑いかけた。
「ユキ様! ユキ様、ドッグラン楽しいです! 連れてきてくださってありがとうございます!」
「……そろそろ喉乾いたろ? 中においで」
「はい!」
雪兎が柵を開けに向かった。視線を下ろすと隣に俺と似たような姿勢のハスキーが居た、雪兎と一緒にやってきたこの男の飼い犬なのだろう。
『驚いた……本当に犬並みだな』
男は俺とハスキーを交互に見て何やら笑っている。彼に興味はないので雪兎の元へ走った。
「はぁ…………ん?」
足元にボールが転がる。ハッハッと息を荒くしてシェパードがキラキラした瞳で俺を見上げている。
「ぁん? あぁ、投げろって? はいはい……取ってこーい」
ボールを拾って投げると素晴らしいスピードで追いかけていった。そんな遊びを何度か繰り返すと、遊び回っていた犬達が水飲み場に集まる。
「流石に休憩か……肩疲れるっての」
暇だし筋トレでもしていようかな、なんて欠伸をしつつ犬の集会を眺める。犬も井戸端会議するのかな?
「ん……?」
一匹こちらに来た、ボールは持っていない。
「おー、ハスキーだったかな……はは、パッと見えげつねぇ三白眼。お揃いだな」
ハスキーだ、オッドアイが特徴的な犬。そんな彼……彼? 彼女 どっちでもいいや、彼は俺のデニムを噛んで引っ張る。
「おいやめろ、歯型つくだろ……何? 何だよ、来いって? はいはい……」
水飲み場までついて行くとハスキーは他の犬の方へ行ってしまう……いや、何匹か俺の方に連れてきている?
「…………お前まさか俺がぼっちだと思って? いや、まさか……いやでも、ハスキーって犬の中でも群れ意識が強い犬種とか……」
群れる生き物である犬にとって、孤立は命の危機。頭のいい大型犬は特に一人ぼっちの人間に寄ってくると聞く、ハスキーなどは群れに入れようとし、レトリバーなどは寄り添うと……犬っていいなぁ。
「英語分かんねぇからってハブる連中よりあったけぇ……物理的にも温かい、もふもふ……何だよ腹見せやがって~、撫でて欲しいのか? ははは人懐っこ~い可愛~い」
多くの動物にとって腹を見せる姿勢は降伏の証、野生が薄れた飼い犬なら友好的な態度程度だろうか? 俺も寝転がってみよう。
「うわめっちゃ群がるじゃん。あははっ、舐めんなよ、やばい起きれな……ひゃんっ!? 耳舐めんなぁ! ちょっ、重、乗らないで……」
大量の犬の傍で寝転がると危険だと分かった。
「お? 何だ、また遊具行くのか? どんなのあるんだ? どうやって遊ぶんだよ、あー……結構楽しそうだな! 俺もやる俺もやる!」
山なりになっているだけの台や、トンネル、シーソー、人間が楽しめるものではないと思っていたが、犬と一緒に走り回りながらだとなかなか楽しい。
「やっべぇ楽しい、お前ら見とけよ次逆立ち歩きでシーソー行くからな!」
友人がいなかった俺には誰かと一緒に公園で遊ぶなんて経験がない。生まれて初めての種類の楽しさだ。汗だくも息切れも気にならない。
『……すごいね。君の恋人、犬と一緒に遊んでるよ。あそこまで犬になりきれって言ったのかい? それとも元々犬並みなのかい?』
『後者かな』
雪兎の声が聞こえたような──居た、柵の向こうにいる。
「ユキ様ぁーっ!」
柵の向こうに雪兎を見つけた俺は遊ぶのをやめてそちらへ走り、柵にガシャンとぶつかって雪兎に笑いかけた。
「ユキ様! ユキ様、ドッグラン楽しいです! 連れてきてくださってありがとうございます!」
「……そろそろ喉乾いたろ? 中においで」
「はい!」
雪兎が柵を開けに向かった。視線を下ろすと隣に俺と似たような姿勢のハスキーが居た、雪兎と一緒にやってきたこの男の飼い犬なのだろう。
『驚いた……本当に犬並みだな』
男は俺とハスキーを交互に見て何やら笑っている。彼に興味はないので雪兎の元へ走った。
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