上 下
248 / 559
夏休み

どっぐらん、さん

しおりを挟む
ポチと名付けられ、食事は床で行い、雪兎の飼い犬として暮らしている。だが、それでも、俺の身体は人間だ。ドッグランに行っても何も出来ない。

「ドッグラン……ですか」

「ワンちゃんたくさんいるよ。お友達できるといいね」

何かの隠語だろうか? 特殊プレイ用の施設とか? だが、道具程度なら楽に揃えられるだろうし……一体何なんだ?

「若神子グループ的に将来付き合っていくことになるだろう同学部の人達とたまに話すんだけど、愛犬家が結構いてね。そのうちの一人が経営すらドッグランに遊びに行くって約束しちゃったんだよ」

「なるほど‪……?」

金持ちの社交界みたいなものか? 俺みたいなのを連れて行っていいのか?

「僕はその人達とお話するけど、ポチは気にせずワンちゃん達と遊んでてね」

ペットシッター的な役割を担わされるのだろうか。俺は犬として暮らしているが犬の扱いなんて何も知らない、不安だ。



車内ということもあって不安が拭い切れないままドッグランに着いてしまった。何の隠語でもなかったようで、本当にただのドッグランだ、広い芝生に遊具が点在している。

『こんにちはー、来たよー』

併設されているカフェに入ると既に数人の青年が席についており、雪兎は突然英語を話し始めた。

『若神子さん、久しぶり』
『来てくれて嬉しいよ、そちらの方は?』

ミスター若神子とか言ってる……俺もハローくらい言っておいた方がいいかな?

『彼が僕の愛犬……というていの恋人だよ。彼は英語が分からないし、分かっても僕達の会話には入れない。だから、今日は犬として……ね。君達は全員愛犬家だし』

俺を紹介している様子の雪兎がマイハニーとか言ってくれた。流石に犬として紹介したりはしないらしい。ドッグとかも頻繁に聞こえるけれど……分からない、英語を勉強するべきだろうか?

『ははっ、面白いね。犬種は何かな?』

『日本の雑種。君の犬と遊ばせてもいいかな?』

『うちの? あぁ、構わないよ。珍しい形の犬だから、噛んでしまったらすまないね』

何を話しているかさっぱりなので、カフェのテーブルや椅子に繋がれた犬を眺めることにした。ドーベルマンなどの大型犬からポメラニアンなどの小型犬まで、その大きさや姿は様々だ。

「ポチ、ワンちゃん達と遊んでいいってさ」

「はぁ……」

俺が気乗りしていないのを分かっているかのように、尻尾は揺れない。ランダムという俺の予想はハズレか? いや、きっと偶然だ。

『外で好きに遊ばせてこよう、俺達はコーヒーでも飲みながら話そうか』

「ポチ、犬は外で遊んで来いってさ」

「えぇ……クーラー効いた部屋から出たくないです……ユキ様のお傍に居たいですし」

「ダメ、遊んできて」

雪兎の側仕えが俺の将来の仕事とはいえ、十数匹の犬と共に外に出された瞬間、今日は家で待っていればよかったと本気で思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

タイは若いうちに行け

フロイライン
BL
修学旅行でタイを訪れた高校生の酒井翔太は、信じられないような災難に巻き込まれ、絶望の淵に叩き落とされる…

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

調教専門学校の奴隷…

ノノ
恋愛
調教師を育てるこの学校で、教材の奴隷として売られ、調教師訓練生徒に調教されていくお話

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

処理中です...