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夏休み
かいがいでのおさんぽ、さん
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犬耳カチューシャを外されたらまずはシャンプーだ。椅子の背もたれが倒されて頭に湯がかけられる。しっかりとした日本語で湯加減や水圧が気に入っているか尋ねられる。
「……っ、ん……」
店員の器用で手慣れた指で頭皮を擦られるのはとても心地よいものだ。それ自体は問題じゃない、顔に被せられた布が何よりの問題だ。
「ふ……ぅっ……」
前立腺マッサージ器具を挿入されたままの俺の呼吸は不規則だ。普通にしていれば気付かれずに日常生活を送れるレベルだが、布を被せられると呼吸がおかしいのがバレてしまう。バレてしまうと思うと更に呼吸のリズムが乱れ、下腹に力が入ったりしてしまう。
「……っ、く……」
きゅんきゅんと疼く前立腺を自らの腸壁の動きでこねて、その快感で更に下腹に意識が集中する。前立腺マッサージ器具が引き起こすこのスパイラルはとんでもないものだ、人類最高にして最悪の発明だ。
「あの……雪也様、と仰られるのですよね」
店員が怪しい敬語で尋ねてきた。雪也は俺が若神子の養子になった時につけられた名前だ。
「はい」
「若神子家と遠縁の方で、跡継ぎ様とは本当のご兄弟のように仲がよろしいとお聞きしました」
は……? 養子やペットではなく、親戚?
「犬好きの跡継ぎ様のために可愛らしいカチューシャや尻尾をつけて、首輪まで引かせるなんて、お優しいお兄様ですね」
「は、はぁ……ありがとうございます」
「実は、街の者はみな若神子グループの社員なのですが……」
グループ? 若神子製薬ではなく? 呼び名が違うだけだろうか、何か差異があるのかな。
「みな、跡継ぎ様を弟のように可愛がり犬の散歩ごっこまでさせてあげるあなたの愛情に胸打たれております」
大袈裟だな。いや、今彼らの感情の誇張はどうだっていい。問題は俺と雪兎が親戚で微笑ましくも兄弟のような関係を築いていると思われていることだ。
「……っ、あの……」
薄手のシャツ越しに革ジャンに擦れる乳首や、挿入されたままの前立腺マッサージ器具、それらの快感に俺が屈して街中で声を上げたり座り込んだりしてしまったら、どうなる?
「はい、どうされましたか?」
俺のことを性的な意味でのペットだと知っている自宅の使用人にプレイを見られるのとは訳が違う。
「右耳の後ろ……ちょっと痒くて、お願いします」
街の通行人が社員だと予想して勝手に安心していたが、俺の役割を知らないのなら話は同じだ。何も知らない赤の他人に痴態を見られるのなんて絶対に嫌だ。
「はい、ここですか?」
「ぁ……はい、ありがとうございます…………もういいです」
この美容院でも、髪を切った後に行う散歩やショッピングでも、快楽に屈することは出来ない。
「シャンプー流しまーす」
「はーい……」
親戚の仲良しのお兄ちゃんとおさんぽするの、なんて触れ回ったのはきっと雪兎だ。通行人が仕込みだと気付いても俺に羞恥心を与えるために──
「椅子起こしますね」
「……はい」
──あぁ、俺のご主人様はなんて素晴らしい人だろう。俺の思考を読んで羞恥プレイを設計するなんて、流石としか言えない。
俺はその頭脳と手間と期待に応えなければならない。雪兎への敬愛で既に下腹は気が狂いそうなくらいに疼いているが、最後まで痴態を晒さずに今日を終えてみせようじゃないか。
「……っ、ん……」
店員の器用で手慣れた指で頭皮を擦られるのはとても心地よいものだ。それ自体は問題じゃない、顔に被せられた布が何よりの問題だ。
「ふ……ぅっ……」
前立腺マッサージ器具を挿入されたままの俺の呼吸は不規則だ。普通にしていれば気付かれずに日常生活を送れるレベルだが、布を被せられると呼吸がおかしいのがバレてしまう。バレてしまうと思うと更に呼吸のリズムが乱れ、下腹に力が入ったりしてしまう。
「……っ、く……」
きゅんきゅんと疼く前立腺を自らの腸壁の動きでこねて、その快感で更に下腹に意識が集中する。前立腺マッサージ器具が引き起こすこのスパイラルはとんでもないものだ、人類最高にして最悪の発明だ。
「あの……雪也様、と仰られるのですよね」
店員が怪しい敬語で尋ねてきた。雪也は俺が若神子の養子になった時につけられた名前だ。
「はい」
「若神子家と遠縁の方で、跡継ぎ様とは本当のご兄弟のように仲がよろしいとお聞きしました」
は……? 養子やペットではなく、親戚?
「犬好きの跡継ぎ様のために可愛らしいカチューシャや尻尾をつけて、首輪まで引かせるなんて、お優しいお兄様ですね」
「は、はぁ……ありがとうございます」
「実は、街の者はみな若神子グループの社員なのですが……」
グループ? 若神子製薬ではなく? 呼び名が違うだけだろうか、何か差異があるのかな。
「みな、跡継ぎ様を弟のように可愛がり犬の散歩ごっこまでさせてあげるあなたの愛情に胸打たれております」
大袈裟だな。いや、今彼らの感情の誇張はどうだっていい。問題は俺と雪兎が親戚で微笑ましくも兄弟のような関係を築いていると思われていることだ。
「……っ、あの……」
薄手のシャツ越しに革ジャンに擦れる乳首や、挿入されたままの前立腺マッサージ器具、それらの快感に俺が屈して街中で声を上げたり座り込んだりしてしまったら、どうなる?
「はい、どうされましたか?」
俺のことを性的な意味でのペットだと知っている自宅の使用人にプレイを見られるのとは訳が違う。
「右耳の後ろ……ちょっと痒くて、お願いします」
街の通行人が社員だと予想して勝手に安心していたが、俺の役割を知らないのなら話は同じだ。何も知らない赤の他人に痴態を見られるのなんて絶対に嫌だ。
「はい、ここですか?」
「ぁ……はい、ありがとうございます…………もういいです」
この美容院でも、髪を切った後に行う散歩やショッピングでも、快楽に屈することは出来ない。
「シャンプー流しまーす」
「はーい……」
親戚の仲良しのお兄ちゃんとおさんぽするの、なんて触れ回ったのはきっと雪兎だ。通行人が仕込みだと気付いても俺に羞恥心を与えるために──
「椅子起こしますね」
「……はい」
──あぁ、俺のご主人様はなんて素晴らしい人だろう。俺の思考を読んで羞恥プレイを設計するなんて、流石としか言えない。
俺はその頭脳と手間と期待に応えなければならない。雪兎への敬愛で既に下腹は気が狂いそうなくらいに疼いているが、最後まで痴態を晒さずに今日を終えてみせようじゃないか。
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