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使用人体験
てんらんかい、なな
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業務用スーパーにて飲料水をダースで購入。今日と明日、明後日と、三日……いや、時間にすれば丸二日程度か。このくらいは使うだろう。
「よっ……と」
「ダース片手で抱えるとか見た目を裏切らないね」
「重い」
「だろうね、手伝わないよ」
叔父は涼斗に──恋人に頼まれていたのを思い出したと洗剤を買っていた。雪風に似た彼が所帯染みているのに萌えてしまった自分が憎い。
「お前が手伝うとおじい様が飲まなくなるからいいよ」
「……小学校のイジメみたいに思えてきた。ほら、何とか菌ってやつ」
「ボイパ強要イジメとかレベル高いな」
「ちょっと前小学生やりがちだったよね何とかキン」
「お前本当にムカつく……」
「ボケに乗ってあげたのに」
乗れることそのものが腹立たしいと言い、帰宅。ついでに買っておいた紙コップに水を注いで渡した。
「……そんな潔癖症のくせに人の家のソファには平気で座るんだね。この前の休み、そこでヤったのに」
祖父は水を含んだままの口を押さえ、潤んだ目で俺を見上げた。すぐに俺の膝に座らせ、落ち着くように背を撫でる。
「生命として当然の営みを汚いとして忌避するのは、生き物として異常だと思うね」
「……おじい様の潔癖はお前のせいだろ」
「雪也、やめろ……アイツは覚えてない」
「何……? 別に、大声で悪口言ってくれてもいいんだよ、嫌われるのは慣れてる」
ふいっと顔を背けた叔父の手にはスナック菓子があり、彼は向かいのソファに寝転がってそれを食べ始めた。俺から見ても後で掃除が必要なその行為に祖父が耐えられるわけもなく、音も聞きたくないとばかりにテレビの音量を上げた。
しばらくして家主が帰ってくる。そう、螺樹木 涼斗がこの家の主。叔父はタチの悪いヒモ男だ。
「ただいま戻りました……」
線の細い黒髪メカクレの男。彼は雪風よりは歳下だったかな? 確か、教師をしているとか聞いたな。
「邪魔してるぞ」
「お邪魔してます」
祖父が娘と呼んでいたのは彼のことだ。何でもウエディングドレスを着ていたのを見たそうで、それから娘扱いしているのだとか。
「涼斗さんっ、おかえりなさい。酷いんですよ二人とも俺のことを……!」
「ソファにお菓子こぼさないでくださいって何度言ったら分かるんですか! 手掴みで食べたら洗うまで他のところ触らないでください!」
「……っ、と、とか言って……俺がこぼした食べカスも集めたりしてるんでしょう? 可愛い涼斗さん」
「凪さんの口から零れたならともかく、口に着くまでに落ちたものは流石に……か、可愛いなんて言葉で誤魔化せるなんて思わないでください!」
叔父がああなのだ、叔父の恋人がまともな人間のわけはない。
「怒らないでください……俺、涼斗さんの笑った顔が好きだな。ほら、美味しいの分けてあげますから」
叔父は声を低くしながらスナック菓子の粉で汚れた指で涼斗の唇を撫でた。
「………………二人の前でそんなの、嫌です」
きゅっと叔父の手首を弱々しく握り、俯き、リビングから出ようと促す。叔父は扉をくぐる寸前俺達に勝ち誇った笑みを浮かべた。
「涼斗……男の趣味以外はいい子なんだがな。まぁ、趣味が悪くなけりゃ俺の娘にもならなかったわけだが……玉に瑕だな」
「半球くらいに割れてるレベルの欠点ですね」
違いないと笑い合い、祖父のザッピングに付き合う。彼の御眼鏡に適う番組はなかったようで、サブスクに移った。
「雪也、好きな映画ジャンルは?」
「割となんでも……あ、メッセージ性強いのとか問題提起あるやつはちょっと苦手ですね。おじい様は何がお好きですか?」
「どんでん返し監禁デスゲーム」
「わぉ」
意外な趣味に言葉が出なかったが、もちろん嫌いじゃない。賛成して再生した。
「よっ……と」
「ダース片手で抱えるとか見た目を裏切らないね」
「重い」
「だろうね、手伝わないよ」
叔父は涼斗に──恋人に頼まれていたのを思い出したと洗剤を買っていた。雪風に似た彼が所帯染みているのに萌えてしまった自分が憎い。
「お前が手伝うとおじい様が飲まなくなるからいいよ」
「……小学校のイジメみたいに思えてきた。ほら、何とか菌ってやつ」
「ボイパ強要イジメとかレベル高いな」
「ちょっと前小学生やりがちだったよね何とかキン」
「お前本当にムカつく……」
「ボケに乗ってあげたのに」
乗れることそのものが腹立たしいと言い、帰宅。ついでに買っておいた紙コップに水を注いで渡した。
「……そんな潔癖症のくせに人の家のソファには平気で座るんだね。この前の休み、そこでヤったのに」
祖父は水を含んだままの口を押さえ、潤んだ目で俺を見上げた。すぐに俺の膝に座らせ、落ち着くように背を撫でる。
「生命として当然の営みを汚いとして忌避するのは、生き物として異常だと思うね」
「……おじい様の潔癖はお前のせいだろ」
「雪也、やめろ……アイツは覚えてない」
「何……? 別に、大声で悪口言ってくれてもいいんだよ、嫌われるのは慣れてる」
ふいっと顔を背けた叔父の手にはスナック菓子があり、彼は向かいのソファに寝転がってそれを食べ始めた。俺から見ても後で掃除が必要なその行為に祖父が耐えられるわけもなく、音も聞きたくないとばかりにテレビの音量を上げた。
しばらくして家主が帰ってくる。そう、螺樹木 涼斗がこの家の主。叔父はタチの悪いヒモ男だ。
「ただいま戻りました……」
線の細い黒髪メカクレの男。彼は雪風よりは歳下だったかな? 確か、教師をしているとか聞いたな。
「邪魔してるぞ」
「お邪魔してます」
祖父が娘と呼んでいたのは彼のことだ。何でもウエディングドレスを着ていたのを見たそうで、それから娘扱いしているのだとか。
「涼斗さんっ、おかえりなさい。酷いんですよ二人とも俺のことを……!」
「ソファにお菓子こぼさないでくださいって何度言ったら分かるんですか! 手掴みで食べたら洗うまで他のところ触らないでください!」
「……っ、と、とか言って……俺がこぼした食べカスも集めたりしてるんでしょう? 可愛い涼斗さん」
「凪さんの口から零れたならともかく、口に着くまでに落ちたものは流石に……か、可愛いなんて言葉で誤魔化せるなんて思わないでください!」
叔父がああなのだ、叔父の恋人がまともな人間のわけはない。
「怒らないでください……俺、涼斗さんの笑った顔が好きだな。ほら、美味しいの分けてあげますから」
叔父は声を低くしながらスナック菓子の粉で汚れた指で涼斗の唇を撫でた。
「………………二人の前でそんなの、嫌です」
きゅっと叔父の手首を弱々しく握り、俯き、リビングから出ようと促す。叔父は扉をくぐる寸前俺達に勝ち誇った笑みを浮かべた。
「涼斗……男の趣味以外はいい子なんだがな。まぁ、趣味が悪くなけりゃ俺の娘にもならなかったわけだが……玉に瑕だな」
「半球くらいに割れてるレベルの欠点ですね」
違いないと笑い合い、祖父のザッピングに付き合う。彼の御眼鏡に適う番組はなかったようで、サブスクに移った。
「雪也、好きな映画ジャンルは?」
「割となんでも……あ、メッセージ性強いのとか問題提起あるやつはちょっと苦手ですね。おじい様は何がお好きですか?」
「どんでん返し監禁デスゲーム」
「わぉ」
意外な趣味に言葉が出なかったが、もちろん嫌いじゃない。賛成して再生した。
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