過労死で異世界転生したのですがサキュバス好きを神様に勘違いされ総受けインキュバスにされてしまいました

ムーン

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宴の熱は冷め、侵入の目的は添い寝

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宴会を終えてホテルに戻り、カタラ筆頭に人間棟の者は酒場に向かった。俺達は素直に自室に戻ることにした。

「おやすみ、サク。良い夢を」

インキュバス棟の入口、アルマと唇を重ねる。

「おやすみアルマ、またね」

赤い巨体が見えなくなるまで手を振って、見えなくなったらシャルと手を繋いで部屋に入った。一人で眠るのは寂しいのでいつもどちらかの部屋に泊まっているのだが、今日はなんとなくシャルの部屋にした。

「服、戻しますか」

「そうだな、スカート動きにくいし」

マーメイドドレスからいつもの丈の短いシャツとタイトなダメージジーンズに戻す。露出は増えたが、やはりこの姿が落ち着く。

「はぁ……やっと落ち着けます。もう、兄さんったら。僕にまでドレスを着せなくたっていいでしょうに」

「可愛かったぞ」

「……もぉ」

拗ねながらも照れるシャルは愛らしい。頭羽の揺れ方から察するに、俺の褒め言葉を喜んでくれてはいるようだ。

「羽にリボンくらいはいつもつけててもいいんじゃないか?」

「……僕はそんなオシャレする必要ありませんよ」

「まぁ確かにそのままでも可愛いけどさ」

「そっ、そうじゃありません! 兄さんがより可愛くなれば皆さん喜びますけど、僕が何をしたって、そんな、何の意味もありません……」

俺に背を向けたままベッドに腰掛けたシャルを背後から抱き締める。

「俺は喜ぶし、おじさんも喜ぶ。カタラあたりも可愛いって言ってくれるよ」

「……別に嬉しくありません」

「俺が可愛いって言っても?」

「そ、それは……ずるいです兄さん、僕が兄さんにそんなこと言われて嬉しくないわけない……でも、別に、僕が必要以上に可愛くなる理由はありません……」

「オシャレに理由求めるなよ~、自分が楽しけりゃそれでいいの」

シャルを引っ張り倒して共にベッドに寝転がる。灯りを消して暗い部屋で二人、手を繋ぐ。

「俺に可愛いって言われて嬉しくなるなら、俺に可愛いって言われる格好したくなるだろ?」

「…………はい」

「それでいいんだよ。意味も理由もいらない、服なんか気分だ。気分が乗らなきゃ全裸で寝てりゃいい」

「……はい」

少し声が明るくなった。やはりシャルは何かと考え過ぎるきらいがある。それも可愛いところではあるが、シャル自身は過ごしにくいだろう。

「明日は子供んとこ行くか」

「はい……!」

シャルも宴会は楽しんでくれていたはずだ、楽しい記憶だけを残すには我が子が一番。我が子に悩みなんて話さないだろう? 可愛い我が子の笑顔を見ながら楽しかった思い出だけ話していれば、些細な悩みなんて覚えていられなくなる。

「おやすみ」

「はい、おやすみなさい兄さん」

指を絡めて、足を絡めて、尻尾を絡めて、双子のような俺達は同時に眠りに就いた。



翌日はドラゴンの棟に向かい、シャルと共に紫のドラゴンと楽しく話した。他の子達も気になって部屋を覗いてみたところ、各々の父親が遊びにきていた。

「カタラ、お前二日酔いとか大丈夫か?」

「おぅサク、お前も来てたのか。二日酔い……大丈夫だな、何ともねぇよ」

「結構飲んでたように思ったけど、酒強いんだな」

「いやでも昨日宴会の最後の方は全然覚えてねぇよ? どうやって帰ったんだっけな」

この分では昨日二次会として酒場に行ったことも覚えていないんだろうな。

「きゅ、ママぁ、パパくさイ……」

「だってよパパ。アルコールかな?」

「……すっげぇショックだな」

「酒はほどほどにっていい教訓になりそうだな。じゃ、俺他の子見てくるから。またなカタラ、カタラJr」

ネメスィもアルマもそれぞれの子の元にいる。となれば俺が向かうべきは黒いドラゴンの部屋だ。

「ぴゃっ! ママぁ! ぴぃいぃ……!」

「よ、元気か? よしよし……」

多分、この子だけが俺の子なのだろう。あの強姦魔のドラゴンと俺の特徴を継いでいる。他の子はあの強姦魔ドラゴンと各々の男との子と言えるのだろう、俺の腹を借りただけで。まぁ、腹を貸したからには全員我が子だと思ってるけど。

「……お前にはパパが居ないんだよな」

他の子達は各々の男と俺の子ということで夫婦が揃っているふうになっているが、この黒いドラゴンには父親に位置する者が居ない。

「おじさん……そうだ、おじさん来たか?」

「ぴぃ? おととイ……?」

「なんだ、来てるのか。今日はたまたまかな、あの人こそ二日酔いだったりしてな」

二日酔いが何か分からないのだろう、黒いドラゴンはその大きな頭を傾げている。酒について軽く説明してやったが、飲んだ次の日に頭痛を引き起こす恐ろしい液体という認識になってしまった。

「ぴぃい……ゼッタい、飲まなイ」

「大人じゃなきゃ飲めないけどな。まぁ、飲めないなら飲めない方がいいよ」

説明下手な俺のせいで飲む前から酒嫌いになってしまった。まぁ、これはこれでいいだろう。この巨体で酒好きになられたら財政的にも厳しくなるし、酔っ払って暴れたら大惨事だ。

「そんな怯えるなよ、無理矢理飲ませたりしないって。ほら、なでなでしてやるから……」

俺を丸呑みに出来る巨体のくせに怖がりで、甘えん坊。そんな愛らしいドラゴンを心ゆくまで撫で回してやった。

「そろそろ飯の時間か? じゃ、お母さん帰ろうかな。またすぐに会いに来るからな」

「ぴぃ」

食欲を満たしている最中の生き物が傍にいるとインキュバスの本能が刺激される、特に骨ごと食べるような相手はダメだ。

「……おじさんとこでも行くかな」

他の子達も食事中だろう。俺はドラゴン棟から出て人間棟へ行き、査定士の部屋の扉を叩いた。返事はない。

「…………開け方教えてもらってんだよな~」

シャルに魔力で鍵を開けるコツを教えてもらった。転生直後にガラス窓を外した手口と同じだ、扉に手を当てて念じ、数秒後にカチャリと音がした。

「おーじーさーんっ」

査定士はベッドに横たわっていた。彼がこの時間に寝ているなんて珍しい、昨日の酒が残っているのだろうか。

「……おじさーん」

いつもちゃんとした服を着ている彼の寝間着はなんだか新鮮だ。毛布をめくって眺め、寒いのか彼が縮こまるのを楽しむ。

「…………添い寝してやろ」

俺は査定士の横に寝転がって毛布をかけ直した。彼が起きるまでここに居よう。
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