過労死で異世界転生したのですがサキュバス好きを神様に勘違いされ総受けインキュバスにされてしまいました

ムーン

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着飾りにキス

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触れれば吸い付く白い肌。蠱惑的な首筋。人を惹きつける強い引力を持つ鎖骨。その全てを扇情的に汚した赤赤とした血液。

「は、むっ……ん、んんっ」

血は鉄臭いもの、それは前世の常識、今世は違う。弟の血ほど美味しいものはない。

「……兄さん。そんなに舐めても、もうそこは血なんてないでしょう?」

人間よりも遥かに長い舌で人間と同じ形の首元を舐め回していると注意を受けた。場所を移そうかとも思ったが、シャルの首筋は想像以上の色気があり、その肌の甘さをもっと堪能したくなった。

「……っ、兄さん……そんな、そこばかり……」

息継ぎのために押し付けていた唇を離し、俺の唾液に濡れた首を見る。鮮血ほどの美しさはなく、鬱血痕まであった。

「うわ、キスマーク……ごめんシャル」

自分では見えないから何のことか分からないのだろう。シャルにキスマークとは何かを教える前に再生能力のせいで消えてしまったし、彼には一生縁のないものかもしれない。

「……ま、なければない方がいいよな」

それよりもまだ耳たぶに少し血が残っている。俺は再びシャルの肩を掴み、今度は耳たぶを口に含んだ。小さく薄いが弾力があり、ついつい甘噛みして噛み心地を楽しんでしまう。

「んっ……にぃ、さっ……もう、血は……」

耳の先端の方との噛み心地の違いが気になり、俺は血なんてついていない尖った先端を口に含んだ。

「ぁむっ……ん、んん……」

咥えたままちゅうちゅうと吸い、口内の先端を舌先でピンピンと弾く。

「ひぁっ! ゃ、兄さっ……待っ、ゃ……んっ……」

体を跳ねさせるシャルを強く抱き締め、その反応を全身で楽しむ。いつも感じさせられてばかりだからこういう機会は限界まで楽しまなければならない。

「……カタラ、ちょっと俺の顔に引っ掻き傷でもつけてくれないか」

「おぅ、奇遇だな旦那。俺も今頼もうと思ってた」

背後から不穏な会話が聞こえたのでシャルへの愛撫を中断し、二人の怪我し合いを阻止した。

「はぁ……もぉ、兄さん、血だけだと思っていましたのに……」

座り込んだシャルは上気した顔をそのままに潤んだ瞳で俺を見上げた。

「ごめんごめん……シャル可愛いから」

更に頬を赤くして俯いてしまった。ピコピコと揺れる頭羽からシャルの喜びようを察し、頭を撫でる。

「……アクセ、誰かにやるならみんなにもやらないとな」

不公平は不和の元だ。ドラゴンがくれたのは箱だと思い、中身はみんなに配ろう。

「シャル、ピアスの他に付けられないものとかあるか?」

「多分ないと思いますけど……」

宝石箱の中を探ったが、黒い宝石が使われているものは一つしかなかった。銀細工の髪留めだ。

「これつけられるか?」

「……僕にくれるんですか? ありがとうございます! 嬉しいです……!」

「いや、つけれるかどうか見てからな」

カタラが髪を切ってしまったから髪留めを使えそうなのは後、シャルとネメシスだけだ。ネメシスにはピアスをあげようと思うから、つけられるといいのだが。

「どう使うのかよく分からなくて……」

「髪留めだよ。ほら、この辺の前髪を取って、これに挟んで……」

シャルの重たい前髪の右側を少し取り、髪留めで耳の上へと留める。残った前髪を散らして軽めにし、まんまるの紫色の目を見つめる。

「うんっ、雰囲気変わったな。可愛いぞ」

「あ、ありがとうございます……兄さん」

留めた髪に手を向かわせ、しかし崩れるのを危険視してか触れはせず、伏し目がちに顔を赤らめる。

「…………可愛いなぁお前は!」

「わっ……あ、ありがとうございます兄さん……そんなに似合いますか? 兄さんの色の宝石似合うなら、僕とても嬉しいです」

「仕草だよ態度だよお前自身が可愛いんだよ」

頬を撫でながら反対側の頬にキスをしていると、ぐいっと尻尾が引っ張られた。

「ひゃんっ!? な、何すんだよ……カタラ? なんだよ」

「…………俺にも何かくれよ」

拗ねた目で見つめられ、カタラがシャルを羨んでいると分かった。アルマの方を見れば彼もカタラと似た視線を俺に向けている。査定士はガラクタの山から掘り出した別の宝石に夢中だ。

「ぁ、あぁ……ちょっと待ってくれ、二人ともピアスはダメだし……えっと」

宝石箱の中を探ると綺麗なデザインの指輪が見つかった。アルマの指に人間用の指輪は合わないから、カタラ用かな。

「これとかどうだ? カタラ髪も肌も白いから何色でも似合うけど、目と合わせて青とか」

「……黒ねぇの?」

「ない、ピアスと髪留めだけ」

「あぁそう……ま、サクが選んでくれたもんなら何でもいいや」

カタラの薬指に指輪を──入らない。第一関節で止まってしまう。

「……女の人のっぽいし、無理か。カタラも所詮は男だな」

「所詮って何だよ所詮って。あーぁ、サクになーんももらえねぇのか」

「い、いや……あっ、これはどうだ? ブレスレットかな……」

「アンクレットだな、足のだ。目立たねぇから自慢は出来ねぇけど……まぁ、その方が色っぽいか?」

カタラを座らせてその前に屈み、彼の足に青い石のアンクレットをはめる。ズボンの裾の中に隠れてしまうけれど、チラチラと覗く色白な足首を宝石が飾っているのは確かにセクシーだ。

「……うん、いいと思う。色っぽいよ、カタラ」

「ぅ……真正面から言われると照れるな」

誤魔化しながらも目線を逸らして頬を赤らめるカタラ、彼の色白な肌では紅潮の誤魔化しが効かない。

「…………あの、さ。俺にキスはないわけ?」

おふざけ混じりの可愛いおねだりをクスリと笑い、熱い頬を撫で、反対側の頬へキスをする。

「……っ、あ、ありがと……うぅ、くそ、顔熱い……」

カタラの元を離れ、宝石箱を漁りながらアルマの膝の上に登る。

「……サク、俺に合う大きさの物なんてないだろう? 残りはサクの物にするといい、装飾品も可愛いサクに使ってもらった方が喜ぶよ」

遠慮しようとするアルマの首に真珠らしきネックレスを巻く。鎖骨まで垂らして使うものなのだろうそれはアルマの太い首に巻いても指数本分の余裕がある。

「サク…………ありがとう、似合うかな?」

「うん、アルマ肌の色濃いから白いの目立っていい感じ。あんまりゴテゴテしたのは微妙そうだからそれにしたけど……似合うねっ」

「……ありがとう」

アルマは自身の右頬を指でトントンと叩いた。要求を察し、シャルとカタラにしたように頬を撫でながらキスをした。

「……サクは可愛いな」

アルマはこういったことでは照れてくれない、逆に照れさせられてしまった。

「そ、それじゃ……また後でねっ」

宝石箱を持って査定士の元へ走る。彼の首に金細工に赤い宝石のネックレスをかけ、頬へのキスも続けてしてしまう。

「サク……? サク、どうしたんだい突然。可愛いね、何か用かい?」

ネックレスをかけられたことにすら気付いていないようだ。プレゼントだと指してやるとようやく気付き、大声を上げた。

「こっ、この鎖の細工は……間違いない、あの職人の……!」

落ち着いてから改めて感想を聞こう。後はネメスィとネメシスだな、戻ってきたら贈ってやろう。
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