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そろそろ潮時

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白いシーツを掴み、踏み締め、綺麗に敷かれていたそれを乱していく。

「イくっ、イくっ、イくっ、イくぅうっ! もぉやらぁっ、乳首おかひくなりゅぅっ!」

ぷるんと赤く膨れた乳首をネメシスにつままれ、彼の指先から電流が途切れ途切れに送られる。胸だけでの強制絶頂からはシーツを掴んでも、仰け反っても、何をしても逃げられない。

「もぉやらぁっ、イくのいやぁあっ! イくぅううっ! ぁ、ひゃ、ぁああっ、も、くるしっ、イくのぉっ、くるしぃのっ」

「嫌なの? こんなに硬くしてるくせに」

乳首をつまむ力が強くなり、ぐにぐにと揉むようにもなる。電流は変わらずに流されるからただ快感が増えて俺はますます声を張り上げる。

「イぐぅうっ! イくっ、イくぅっ! イくのやらっ、もぉいやっ、もぉイかせないでぇっ! びりびりやだぁあっ! ゆるしてっ、もぉやぁあっ!」

「許してって……僕は君を気持ちよくさせてあげたいだけなのに。分かったよ、そんなに嫌がるならやめる。後からやっぱりやめないで欲しかったなんて言わないでね」

ネメシスは拗ねた顔をして俺の胸から手を離し、俺の隣に寝転がった。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…………ぁぁ、はぁ……」

連続絶頂の余韻でまだ身体が震える。

「大丈夫?」

「ん、ん……」

何度か頷き、自由が戻り始めた手がシーツを離す。あまり自分の身体という感覚がない。

「ねめ、しす?」

「何?」

少しだけムスッとした様子のネメシスは体を横にして俺を見つめている。俺はそんなネメシスに向かい合うため重だるい身体で寝返りを打った。

「……やっぱり可愛いね、君は」

何故かため息をつくネメシスの首に腕を絡めてやると彼は金色の綺麗な瞳を見開いた。

「僕……もしかして今求婚されてる?」

「……俺旦那いるから」

言いながら瞼の裏にアルマの姿を描く。愛おしいアルマ、俺の優しい夫、彼は今あの島で何をしているのだろう。子供の世話だろうか、壊された王都の片付けだとかもやっていそうだな、案外と俺が居ないのをいいことに故郷に戻っているかもしれない。

「なんか拗ねさせちゃったみたいだからさ」

ネメシスの足に足を乗せ、そっと絡ませる。すぐにネメシスの方からも絡ませてきた。

「よしよし、なーんて……」

短髪のネメスィとは違う、サラサラのボブヘアを撫でる。手触りのよさに少し驚き、光に透かして金色を楽しむ。

「サク? 何?」

「綺麗な髪だなーって」

「……僕はサクの髪の方が好きだな、僕のお父さんも黒髪なんだよ」

ネメシスの父親らしき人は見た覚えがある。確かによく似ていた、ゲーム風に言えば2Pキャラのように。

「……ふふ、羽揺れてる」

耳の上辺りを撫でられる心地よさに思わず頭羽が揺れてしまっていた。犬の尻尾のように機嫌が分かる部位があるのは未だに恥ずかしい。

「顔赤いよ? なんか、嬉しいな……君とこうして居られるなんて夢みたいだよ。君は……消えてしまうんだって思ってたから。僕は、それに反対できなかった……そんな僕に君が体を許してくれた」

「心も許してるぞ、割と」

「……ふふふふ」

頬を頬に擦り寄せてくるネメシスの髪がくすぐったい。

「俺も今度こそ死ぬんだと思ってたよ。お前の叔父さん言葉足らずだよな」

「本人はちゃんと言ったつもりでいるからね……」

「心読めるくせに」

「むしろ自分が読めるからかも」

「あー……ありそう」

その後もくだらない話を続け、快感の余韻が消えたらまたネメシスの服を借りた。魔法使いのローブのようなデザインに少しだけ心が躍る。

「僕の服そんなに嬉しいの? 腰バタバタしちゃってるよ」

腰羽と尻尾が服の中で揺れて腰に妙な膨らみが出来てしまっていた。

「い、いや、別に嬉しいとかじゃ……って、お前どうしたんだよそれ」

ネメシスの金髪をかき分けて黒い羽がパタパタと揺れていた。

「あっ……あはは、君の羽見てたから間違って生やしちゃったみたい。言ったろ? 僕はすぐに自分の形を忘れるから…………気持ち悪い?」

頭羽を手で隠し、髪に撫でつけると羽は消えた。

「え? いや、可愛いと思うけど……」

しまった。この言い方じゃ自分の頭羽を可愛いと思っているみたいだ。シャルの羽は可愛いと思うし、ネメシスが生やしてしまった羽も可愛いと思うけれど、自分自身のものは何とも思っていないのに。

「……僕はきっと、一人でいたら人間の形を忘れてドロドロに溶けてしまう。目玉や口だけを浮かび上がらせて……そんなの気持ち悪いよ」

「ショゴスってそんなもんじゃん。形忘れたら島に来てくれよ、俺のことまでは忘れないだろ?」

「…………ドロドロに溶けててもいいの?」

クリーチャーには慣れている。ネメスィの時は彼がそうだと知らずに気味悪がって傷付けてしまった、最初から分かっていたら大して驚きもしないはずだ。

「まぁちょっとびっくりしたり身構えたりはするかもだし、見た目自体は気持ち悪いって思うだろうけど、お前のことはきっと好きなままだよ」

「……変わってるよ、君」

薄く笑ったネメシスの髪が跳ね上がり、先程消したはずの頭羽がバタバタと激しく揺れる。ネメシスはすぐにまた羽を手で押さえて消してしまったが、その顔は真っ赤だ。

「…………ほんっと、性格が可愛いよお前」

「君に言う? それ……あんまり見ないでよ」

この歳下感、ほだされてしまうな。

「ほら、魔神王様のところに行こう」

差し出された手を握り、二人で共に玉座の間に向かう。魔神王は下手くそに縫い合わされたぬいぐるみを手に俯いていた。

「……やぁ、ネメシス、サク君。サク君、帰る気になった?」

「あ、はい……」

深いため息をついて立ち上がり、肘置きにぬいぐるみを置く。本当に縫い方が下手くそだ、初めて針を持つ小学生でももう少し上手い。

「…………君が居た世界の教育システムはいい出来だよね。検討させてもらうよ」

ジトっとした目で睨まれて彼を小学生以下だと思ってしまったことが伝わったのだと悟り、自分の思考を公開する。

「考えちゃうものは仕方ないよ、声に出さなければ善良だ。ほら、島に送るよ」

「あ……あのっ、魔神王様、僕も……僕も、少しだけ島の様子を見たい、です」

「うん、復興の様子は定期的に見てもらうつもりだったから……って言うかしばらく住み込みでやってきてよ、こっちに居ても暇だろ?」

「魔神王様……! ありがとうございます!」

復興って……魔神王が壊滅させたんだよな、王都は。邪神を倒すだけなら人間は殺さなくてよかっただろうし、やっぱりついでで壊滅させたのかな……魔王らしい。本当に彼がこの世の長でいいのか?

「ちゃんと魔物に転生させるからそんなに善性を求めないでよ」

「あ……い、いえ」

「僕だって殺したくはないけどさ、考え方変えさせるより殺して別の存在に生まれさせて最初から考え方を誘導する方が楽なんだもん」

魔王だなって感じがする。

「……君が僕のこと気に入らないのはよく分かったよ」

「そ、そんなことは! 俺はあなたのおかげで……!」

魔神王城の玉座の間から廃墟の街へと景色が変わる。

「…………ここ、箱庭の離島か? 王都だよな」

「建物の造りから見た感じそうだね」

「……誤解、解きたかったな。魔王らしさがちょっと怖くてドン引きしてるだけで、体作ってもらったのは感謝してるのに」

「人気ないねぇ……君の家族や彼氏達はどこに居るのかな」

「そう言われると俺ヤバい奴みたいじゃん」

いや、実際ハーレムを築いているようなものだしヤバい奴なのか?

「なんか探す方法ないかな」

俺には探す手段がないのでネメシスを頼ろうと彼を見上げたその時、空に大きな影が差した。鳥──違う、コウモリのような羽だ。長い尾はまるでトカゲだし、目の前に降りた家よりも巨大な彼には硬そうな黒い鱗がある。

「ママ……? ママ! ママぁ!」

大きさを考えず、道に敷き詰められたタイルを鋭い爪と体重で破壊しながら俺に突進してくる黒いドラゴン。大型犬サイズとして記憶していた俺の息子と大きさ以外の見た目は全て一致していた。
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