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同族見つけた嫌われた
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翌朝、肩の傷が消えていることを手探りで確認した。まだ眠っている弟の腹を恐る恐る撫でて、穴が空いていないことを確認。
「…………本当に治ってる」
骨が砕けてぷらぷらしていた手もしっかりと治っていた。
「……兄さん?」
「おっ、おぅ! おはよう! 怪我ホントに治ってるな、良かった良かった」
手をぎゅっと握っていたことを不思議がられてはたまらないので、少々不自然ながら誤魔化した。
「……で、今日はどうする? 産まれてから何も食べてないよな……」
「同種がどこかに固まってるはずです。探しましょう、狩場を教えてもらわないと」
淫魔の群れか。良い響きだ、一人ですら搾り尽くされるようなサキュバスが大勢居るなんて。確実に干からびるけれど確実にエロいぞ。
「じゃ、とりあえずこの板外して…………うわっ、おっぱい……」
立てかけていた板を外すと目の前に豊満な胸が。いや、同種の女性らしき方が。
「…………何アンタ、キモ……」
早速嫌われた。つい口から出てしまっとはいえ初対面で「おっぱい」は酷過ぎる。
「……アンタらインキュバスよね?」
「そうです。お姉さんはサキュバスさん……?」
「そ。大樹の魔力減ってたから、久しぶりに何か産まれたって見に来たのよ。同種で良かったわ」
この大木からは複数の種類の魔物が産まれるのか? 恐ろしやビックマザー……初めに出会ったのが同じインキュバスで良かった。そうでなければ転生して三分で合体なんてとんでもない目に遭うところだった。
「僕達サキュバスやインキュバスが固まってるところがあるならそこに入れて欲しいって話してたんです。狩場とか教えて欲しくて……」
「うち来る?」
「お願いします……」
「……アンタだけがいいんだけどねー」
チラ、と俺を見る目は酷く冷たい。女に嫌われ男にモテる……か、逆が良かったなぁ。
十数分森を歩くと淫魔の集団に出会った。やはりサキュバスはとんでもなくエロい、見た目が。だが女に嫌われる特性を持っている俺には皆冷たく接するし、そもそも淫魔同士ではヤらないらしい。女神はサキュバス好きの俺の好みを──とか何とか言っていたが、嫌がらせにもほどがある。
「森を出てちょっと言ったところに人間の村があるの。私は普段そこで食事してる」
「魔力溜まってきたら皆大きな街探しに行くのよ、アタシももうちょっとで行けそうなのよね」
いやホント可愛いなこの子達……パソコンの画面越しで顔が分かりにくい男とのセックスの様子をただ眺めるしかしてこなかったサキュバスが目の前に居るのに、俺にはとても冷たい……辛い。
「兄さん、今晩からはその村に行きましょう。何か食べないとそろそろ死んじゃいます」
「ぁ……うん…………もう死んでもいいかな」
「…………どうして」
おっと、サキュバスに冷たくされたショックで「死んでもいい」なんて口走ってしまった。これはいけない、昨日命懸けで助けてくれた弟には冗談にならない。
「どうしてっ……なんでそんなこと言うんですか兄さん! 駄目です、嫌です、兄さん、兄さん死んだら嫌です。兄さん死んだら僕もう生きていけません。どうして死んでもいいんですか? 昨日コボルトに襲われたのがそんなにショックだったんですか? 分かりました兄さん食事が終わったら僕がこの森のコボルト絶滅させますからお願いですから生きていてください。僕、兄さんがいないと生きていられません。お願い、兄さん、死んじゃ嫌です……」
「い、いや……違う違う。ちょっとぼーっとしてて……変なこと言ったな。悪い……その、本当にごめん。死ぬ気はないから、生きたいから、心配するな」
「………………そう、ですか。ならいいです……」
すごい勢いで詰め寄られた。急に落ち着いた。ちょっと怖いなこの子……いい子なんだけどな。
「何か食べないとか……確かに腹減ったな。俺達人間の村に行って食べ物もらえるのか?」
「へ? いや……寝込みを襲うんですよ? 寝ている人間の近くに行って、念じて、術をかけられたら部屋に忍び込むんです」
そりゃそうだよね淫魔だもんね。いやいや人間だった俺には厳しい、厳し過ぎる。サキュバスは超肉食系のお姉さんとしか認識していなかったが、そもそも淫魔なんてタチの悪い強姦魔だよな。
「……念じてって?」
「…………こう……こう、こう! です……よね?」
両の手のひらを広げてパッパと振り、弟が振り返ると近くに居たサキュバスが頷いた。
「……………………うん、頑張ろう……」
俺も一応はインキュバスだ。何か術を使うようだが、きっとそう難しくはないはずだ。生後二日目にして童貞卒業のチャンス、これを逃せば餓死だ。絶対に成功させなければ。
「…………本当に治ってる」
骨が砕けてぷらぷらしていた手もしっかりと治っていた。
「……兄さん?」
「おっ、おぅ! おはよう! 怪我ホントに治ってるな、良かった良かった」
手をぎゅっと握っていたことを不思議がられてはたまらないので、少々不自然ながら誤魔化した。
「……で、今日はどうする? 産まれてから何も食べてないよな……」
「同種がどこかに固まってるはずです。探しましょう、狩場を教えてもらわないと」
淫魔の群れか。良い響きだ、一人ですら搾り尽くされるようなサキュバスが大勢居るなんて。確実に干からびるけれど確実にエロいぞ。
「じゃ、とりあえずこの板外して…………うわっ、おっぱい……」
立てかけていた板を外すと目の前に豊満な胸が。いや、同種の女性らしき方が。
「…………何アンタ、キモ……」
早速嫌われた。つい口から出てしまっとはいえ初対面で「おっぱい」は酷過ぎる。
「……アンタらインキュバスよね?」
「そうです。お姉さんはサキュバスさん……?」
「そ。大樹の魔力減ってたから、久しぶりに何か産まれたって見に来たのよ。同種で良かったわ」
この大木からは複数の種類の魔物が産まれるのか? 恐ろしやビックマザー……初めに出会ったのが同じインキュバスで良かった。そうでなければ転生して三分で合体なんてとんでもない目に遭うところだった。
「僕達サキュバスやインキュバスが固まってるところがあるならそこに入れて欲しいって話してたんです。狩場とか教えて欲しくて……」
「うち来る?」
「お願いします……」
「……アンタだけがいいんだけどねー」
チラ、と俺を見る目は酷く冷たい。女に嫌われ男にモテる……か、逆が良かったなぁ。
十数分森を歩くと淫魔の集団に出会った。やはりサキュバスはとんでもなくエロい、見た目が。だが女に嫌われる特性を持っている俺には皆冷たく接するし、そもそも淫魔同士ではヤらないらしい。女神はサキュバス好きの俺の好みを──とか何とか言っていたが、嫌がらせにもほどがある。
「森を出てちょっと言ったところに人間の村があるの。私は普段そこで食事してる」
「魔力溜まってきたら皆大きな街探しに行くのよ、アタシももうちょっとで行けそうなのよね」
いやホント可愛いなこの子達……パソコンの画面越しで顔が分かりにくい男とのセックスの様子をただ眺めるしかしてこなかったサキュバスが目の前に居るのに、俺にはとても冷たい……辛い。
「兄さん、今晩からはその村に行きましょう。何か食べないとそろそろ死んじゃいます」
「ぁ……うん…………もう死んでもいいかな」
「…………どうして」
おっと、サキュバスに冷たくされたショックで「死んでもいい」なんて口走ってしまった。これはいけない、昨日命懸けで助けてくれた弟には冗談にならない。
「どうしてっ……なんでそんなこと言うんですか兄さん! 駄目です、嫌です、兄さん、兄さん死んだら嫌です。兄さん死んだら僕もう生きていけません。どうして死んでもいいんですか? 昨日コボルトに襲われたのがそんなにショックだったんですか? 分かりました兄さん食事が終わったら僕がこの森のコボルト絶滅させますからお願いですから生きていてください。僕、兄さんがいないと生きていられません。お願い、兄さん、死んじゃ嫌です……」
「い、いや……違う違う。ちょっとぼーっとしてて……変なこと言ったな。悪い……その、本当にごめん。死ぬ気はないから、生きたいから、心配するな」
「………………そう、ですか。ならいいです……」
すごい勢いで詰め寄られた。急に落ち着いた。ちょっと怖いなこの子……いい子なんだけどな。
「何か食べないとか……確かに腹減ったな。俺達人間の村に行って食べ物もらえるのか?」
「へ? いや……寝込みを襲うんですよ? 寝ている人間の近くに行って、念じて、術をかけられたら部屋に忍び込むんです」
そりゃそうだよね淫魔だもんね。いやいや人間だった俺には厳しい、厳し過ぎる。サキュバスは超肉食系のお姉さんとしか認識していなかったが、そもそも淫魔なんてタチの悪い強姦魔だよな。
「……念じてって?」
「…………こう……こう、こう! です……よね?」
両の手のひらを広げてパッパと振り、弟が振り返ると近くに居たサキュバスが頷いた。
「……………………うん、頑張ろう……」
俺も一応はインキュバスだ。何か術を使うようだが、きっとそう難しくはないはずだ。生後二日目にして童貞卒業のチャンス、これを逃せば餓死だ。絶対に成功させなければ。
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