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どらいぶ、さん

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当然のことながら電灯のない貸し別荘までの道を歩き、使用人が開けてくれた木製の扉から中に入る。灯りを点ければこの貸し別荘はドラッグパーティが行われているという想像すらつかないほど穏やかなログハウスだと分かった。

「わぁ……! すごい、こんなところ本でしか見たことないよ! 来て来てポチ来て! 探検するよ!」

「おい、もう寝るぞ! 朝から遊ぶんだろ! ったく……ガキ共め」

雪風は早々に寝室に引っ込んでしまったが、俺は雪兎に引っ張られるままに貸し別荘を走り回っていた。階段を駆け上がって二階の部屋を見て回ったら再び一階に向かい、壁にかけられた絵を眺める。

「……あれ? この絵、雪風? なんか……あの、真珠の耳飾りの……とか言うのに似てますけど」

壁にかけられていたのは風景画や動物画が多かったけれど、その中に一枚だけ人物画があった。振り返ってこちらを見つめる雪風に見える、誰かに描かせたのだろうか。

「あぁ、これひいおじいちゃんだよ。ひいおじいちゃんのお友達が描いたんだって」

「へぇ、フェルメール好きなんですかね」

雪兎は首を傾げて飾り暖炉の方に向かったが、俺はまだ絵を眺めた。当然髪型は違うが曾祖父がモデルだというこの絵は雪風に瓜二つだ、この一族はまさか顔のパターンが一種類しかないのか?

「……ひいおじい様、あなたの義理の曾孫の雪也と言います。雪風と雪兎を命をかけて守る所存です、どうか見守っていてください」

写真にしたいところだが、この際絵でも構わない。

「ポチ、ひいおじいちゃん生きてるよ」

飾り暖炉に飽きたのか雪兎が背後に立っていた。

「…………そうですか、そういえば昔に曾祖父がどうとか聞いた気がしますよ」

美しい絵画を見上げつつ俺は「どうせ曾祖父もほとんど老けていなくてこの絵のままなんだろうな」と考えていた。

「もう探検も終わったし……寝ようかな。ポチ、行こ」

手を引かれて行けば就寝前のスキンケア中の雪風が待つ寝室に到着、キングサイズのベッドが二つ隙間なく並んでいる。雪風の楽そうな寝間着姿は何とも無防備で、唆る。

「着替え終わりっと……雪風、僕にもちょうだい」

しまった、雪風に見とれていて雪兎の着替えを見るのを忘れていた。まぁいいや、まだスキンケアが残っている。

「……何? ポチ、ポチもしたい?」

ベッドに腰かけてじっと見つめていると雪兎が小首を傾げる。まん丸い赤紫の瞳が愛らしい。

「いえ、お可愛らしいなぁと」

「何さ……もう、そんなこと言っても何もないよ」

ふいっと背けた顔は赤い。スキンケアが終わるのを待って傍に座ると、化粧水のボトルを雪風に投げ返した雪兎は俺の膝の上に乗った。太腿の半分も隠さない丈の短い寝間着は俺の欲を煽る。

「……ねぇ、ポチ。ポチが僕のこと可愛いって言ってくれるの、僕嬉しいよ?」

俺の服をきゅっと掴んで俺を見上げた雪兎は不安そうな顔をしていた。

「いっつも照れちゃって嫌がってるように見えるだろうけど、ちゃんと嬉しいんだ。ごめんね、愛想悪くて……」

「いえいえ、素直になれないところもお可愛らしいです」

後頭部に腕を添えて支え、唇を重ねる。舌は入れない数秒のキスは雪兎の機嫌を治すのには最適だ。

「…………やっぱり恥ずかしいよ、すぐにありがとうって言えない」

「ユキ様は何をしていらしても可愛らしいので構いませんよ」

膝に乗せたまま優しく押し倒して雪兎の下から足を抜き、覆い被さる。

「……今日はしないよ。明日いっぱい遊ぶんだから、ちゃんと充電しておくの」

「おや、残念……では俺は布団にならせていただきます」

「やーだー、暑苦しい! ポチは抱き枕!」

覆い被さったまま抱き締めると胸を叩かれてしまった。雪兎の横に寝転がって雪兎と抱き締め合っていると向かいに雪風が横たわる。

「俺にも抱き枕寄越せよ、真尋」

密着していた俺と雪兎の身体の隙間に雪風の腕が入り込む。

「もぉ……久しぶりにポチと二人で寝ようと思ったのに」

「十余年分のスキンシップしよーぜー? ユーキー」

「頬っぺた擦り付けないでよもぉー! ジョリジョリ痛い!」

「俺生まれてこの方髭生えたことないんだけど!?」

「耳元で大声出さないでよぉ……ジョリジョリは嘘だから騒がないで」

雪兎の背に回していた腕を雪風の方まで伸ばす。ぎゅっと抱き締めると俺の胸元に顔を埋めさせられた雪兎が文句を言い始め、なかなか寝付けなかった。
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