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さんかん、なな

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中庭に人気はなく、面する校舎の窓からも人は見えない。皆教室か食堂で食べているようで、廊下を歩いている者は居ないのだ。

「綺麗なところですね、他に人が来てないのが不思議です」

目の前の噴水とその周りのベンチを眺め、普通なら大人気になるだろう場所なのにと不思議に思う。

「ずっとあるところだからね、いつでも行けるから一度も来ないんだよ」

「あぁ……宇佐に行ってアメリカに行ったって言うみたいな」

「全然違うし意味分かんない」

確かに解釈はかなりズレていると思う。しかし「意味分かんない」は酷くないか?

「そういう小ボケいいから、ほら、おいで」

雪兎は小さなレジャーシートを木陰に敷き、そこに座った。俺が座るだけの広さはない。

「噴水のとこ座らないんですか?」

「ちょっと濡れるし、日向だし」

失念していた、雪兎は色素が薄く肌も弱いのだ、あまり直射日光の元に出していてはいけない。

「……ユキ様の口から「ちょっと濡れる」なんて、興奮します」

「気持ち悪いよ?」

シートの上で体育座りをした雪兎は小さなお弁当箱を膝に乗せて食べている。内容の豪華さにおののきつつ、小動物のような愛らしさに笑みを零す。

「……何してるの? ポチ。早く脱ぎなよ」

「…………座りなよ、とか。食べなよ、とか。そういうのじゃないですか? 普通」

「ポチ、僕ね? さっきポチを描いてる途中からずーっと興奮しちゃってるんだ。シャツ描きながらその下のポチの裸想像して、ネクタイ見ながら首輪引っ張るの想像して、先生も言ってたように男の色気を溢れさせてるポチがメス犬になるの想像して、ちょっとおっきくしちゃってたんだよ?」

小エビを食べながら淡々と語られる事実に俺の心も高鳴った。雪兎が俺で興奮してくれているのだと、主人を悦ばせられているのだと、誇らしくなった。

「だからねポチ、ポチの裸を僕に見せてよ」

「……は、い……見ててください、ユキ様……」

「ぁ、待って。もうちょっと右に……そう、そこ。そこならどこの窓からも見えないよ、調べておいたんだ」

雪兎が座った木陰の隣の木の影は死角らしい。しかし薬のせいもあって興奮している俺は、きっと死角でなくても脱いだだろう。
ネクタイを解き、ジャケットを脱ぎ、シャツのボタンを外してベルトを抜いて──雪兎とは正反対の褐色の肌を彼だけに晒す。

「……綺麗だよ、ポチ」

「…………何言ってるんですか」

「本当に綺麗だもん、彫刻みたい。僕の理想の肉付きなんだよ、ポチは。腹筋は綺麗に割れてて、胸板は厚くて、腕も足も筋がハッキリ浮いて……本当に綺麗だよ。見せ筋じゃない、実用的な、あえて付けたんじゃないって、結果を求めた訳じゃないって分かる体だもん」

残念だったな雪兎、俺は別に大した努力はしていない。筋肉が付きやすい体質だったので、ちょっとモテようと軽く鍛えただけだ。軽くだから尻や太腿に脂肪が残っているんだ、その辺り鍛えるの面倒だし見えないからいいと思って……

「何言ってるんですかユキ様……彫刻って大体ちっちゃいじゃないですか。見てくださいほら、俺の」

「……昔は小さい方が良いとされてたんだよ、おっきいとバカっぽいって」

平均を大きく上回っているはずの性器は今は反り返って透明の汁をダラダラと溢れさせている。

「…………巨根で絶倫ってとんでもないよね……しかもドM」

「ぁ、やっぱり大きいですよね俺。ドMは余計です」

「ま、将来的には勝つけどね。ほらポチ、もっと足開いてよく見せてよ、手は頭の後ろで組んで、腰落としてね」

手を頭の後ろで組み、膝を曲げて腰を落として開脚する。そのポーズは鏡で見なくても分かるほどにみっともなく、情けない。歳下に服従していると考えると尚更、男の尊厳とか言うのを自身で踏み躙ってしまう。

「……っ、ふ……ユキ様ぁ……」

「なぁに、ポチ」

「そんなにじっと見ないでください……恥ずかしいです」

赤紫の視線に射抜かれて羞恥心を覚えてはいるのに、今すぐに服を着たいとは思っているのに、俺は更に足を開いて性器を揺らし、身体を反らして尖った乳首を目立たせた。

「……変態」

そう呟いて笑われ、胸が締め付けられるような気分になる。恥辱が快感だなんて……そう自己嫌悪を抱くこともできないほど、俺は堕ちていた。
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