上 下
530 / 667

でんわばっかり

しおりを挟む
家に到着し、車を降りる。すっかり暗くなった空を一瞬見上げ、特に何の感想も抱かずに邸内へ。マスクを捨て、サングラスを外し、携帯端末を操作する。

「……もしもし、今時間いいですか?」

『室内犬、夜帰りとはいいご身分だな』

俺の外出を知っているのか。いや、別に不自然ではないが、興味を持っているとは思わなかった。

『何の用だ、手短に話せ』

「雪凪の連絡先を知っていたら教えて欲しいんです」

祖父と話しながら廊下を歩き、部屋に向かう。雪兎はもう帰っているだろうから通話しながら入るのはやめて、部屋の扉の前で止まった。

『雪凪ぃ? あの出来損ないか。何故知りたい?』

「……ちょっと話したいことがあるんです」

『ふぅん……? 悪いがアレの連絡先なんか残してない、汚点は切り落とす主義だ』

いくらクズとはいえ実の息子に対して酷い言い様だ。祖父がこんなだから叔父もあんなになってしまったんじゃないのか? 雪風が泣いてしまう原因は祖父によるところも多いんじゃないのか? なら、コイツも……?

『アレの妻の連絡先ならあるぞ、妻は優秀だからな』

「……妻? 結婚してたんですか?」

『婚姻したかは知らん、興味がない』

「はぁ……それじゃ、とりあえずその人の連絡先お願いします」

叔父には男の恋人が居たと記憶しているが……まさか不倫? ちょっと浮気を匂わせただけでカッターを振り回す彼と? 勇気があるなぁ。

「……ポチ? おかえり。何してるの?」

祖父は「分かった」と言った直後に電話を切った。誤操作だろうか掛け直そうかと考えていたら扉が開き、雪兎が顔半分を覗かせた。

「ただいま帰りましたユキ様、ちょっと電話中でして」

「……早く入りなよ」

赤紫の瞳からは不機嫌が感じ取れた。俺は携帯端末をポケットに突っ込み、部屋に入った。

「…………寂しかった」

扉を閉めると雪兎は表情を幼く変え、両手を広げた。意識することなく条件反射で雪兎を抱き上げ、ゆっくりと回転して雪兎を楽しませる。雪兎の頬が緩んできたらベッドに優しく投げて、その先でクスクスと笑ったら成功だ。

「ふふ……ポチは力持ちだね、楽しかったよ」

抱き上げて振り回して遊ぶなんて流石に雪兎にしかできない。雪風は少し大き過ぎる、体重はともかく身長が俺より大きくてはどうしようもない。

「ポチ、今日はスーツ着てるんだね、格好良い」

「そうですか? ありがとうございます」

「……使用人さんみたい」

機嫌を治したらしい雪兎はクスクスと笑いながらベッドの横に膝立ちになった俺のネクタイを引っ張り、きゅっと首を絞めた。

「…………苦しいですよ」

「好きでしょ?」

「……はい、とても」

ネクタイは締めたままシャツのボタンを上から二つほど外され、小さな白い手にシャツの中に侵入された。

「肌着は着てないんだ?」

「……はい」

雪兎の手がシャツから抜け、シャツを下に引っ張った。白い無地のシャツに盛り上がった胸筋の形が浮かぶ。

「ダメだよポチ、ちゃんと肌着着ないと。こんなの見られたら恥ずかしいでしょ?」

二つの突起がシャツを持ち上げている。雪兎はその突起をシャツの上から指で弾いた。

「あっ……」

思わず声を漏らすと雪兎は悪戯っ子のような笑顔で俺を見つめる。

「こんなに敏感なのに、肌着も着ないで目立たせて、どういうつもり?」

「……ジャケットで隠れるし、いいかなって」

常に勃たせている訳でもないし、そう続けようとした口から喘ぎ声が漏れた。先程突起を弾いた指が今度は爪で押し潰すようにしてきたのだ。

「隠れてないけど? どうするの? 僕にこうされたら何て言うの?」

シャツ越しに乳頭に爪がくい込んでいく。痛みはあるが、それも込みで快感だ。

「……っ、直接……してください。爪、挿して……ぐりぐりって回してください」

「ふぅん、ポチは僕が格好良いなぁって思ってるスーツを簡単に脱いじゃうんだ。自分のしたいようにしちゃうんだ」

「…………ゃ、やっぱり……着たまま、このまま、ぐりぐりしてください……」

「どうして着たままがいいの? 直接の方が気持ちいいんじゃない?」

「……ユキ様がスーツを格好良いと言ってくださったので、着ていたいんです」

硬く膨らむ乳首をの中に侵入するような雪兎の小さな爪がゆっくりと回転する。

「もう一回聞くよ、ポチ。どうして肌着を着ずに目立たせてたの?」

「ユ、ユキ様に、こうしてもらいたかったからです……ぁ、あっ……! 痛っ、ぁ、ぃ、あっ……!」

押し込む力が強くなる。

「……僕を誘ってたの?」

「はっ、はいっ……!」

「そう、主人を誘うなんて生意気なペットだね」

「ごめんなさいっ…………ぁっ」

指先での愛撫をもっと受けようと胸を突き出すと雪兎は指を離してしまった。

「主人を誘うような淫乱で生意気なペットなら、主人にしてもらえなくなったら自分でやりだすんじゃないかな?」

乳首が刺激を求めて疼いているのを感じる。俺はきっと雪兎の言葉がなくとも自分で自分の乳首を摘み、体を反らしていただろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

賢者様が大好きだからお役に立ちたい〜俺の探査スキルが割と便利だった〜

柴花李
BL
 オリンドは疲れていた。生きあぐねていた。見下され馬鹿にされ、なにをしても罵られ、どんなに努力しても結果を出しても認められず。  いつしか思考は停滞し、この艱難辛苦から逃れることだけを求めていた。そんな折、憧れの勇者一行を目にする機会に恵まれる。  凱旋パレードで賑わう街道の端で憧れの人、賢者エウフェリオを一目見たオリンドは、もうこの世に未練は無いと自死を選択した。だが、いざ命を断とうとしたその時、あろうことかエウフェリオに阻止されてしまう。しかもどういう訳だか勇者パーティに勧誘されたのだった。  これまでの人生で身も心も希望も何もかもを萎縮させていたオリンドの、新しく楽しい冒険が始まる。  ※年齢指定表現は「賢者様が大好きだからお役に立ちたい〜大人の時間を探査版〜」にて一部抜粋形式で投稿しています

成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世
恋愛
 異世界転生キタコレー! と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎  えっあの『ギフト』⁉︎  えっ物語のスタートは来年⁉︎  ……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎  これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!  ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……  これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー  果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?  周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎

元会計には首輪がついている

笹坂寧
BL
 【帝華学園】の生徒会会計を務め、無事卒業した俺。  こんな恐ろしい学園とっとと離れてやる、とばかりに一般入試を受けて遠く遠くの公立高校に入学し、無事、魔の学園から逃げ果すことが出来た。  卒業式から入学式前日まで、誘拐やらなんやらされて無理くり連れ戻されでもしないか戦々恐々としながら前後左右全ての気配を探って生き抜いた毎日が今では懐かしい。  俺は無事高校に入学を果たし、無事毎日登学して講義を受け、無事部活に入って友人を作り、無事彼女まで手に入れることが出来たのだ。    なのに。 「逃げられると思ったか?颯夏」 「ーーな、んで」  目の前に立つ恐ろしい男を前にして、こうも身体が動かないなんて。

学年揃って異世界召喚?執行猶予30年貰っても良いですか?

ばふぉりん
ファンタジー
とある卒業式当日の中学生達。それぞれの教室でワイワイ騒いでると突然床が光だし・・・これはまさか!? そして壇上に綺麗な女性が現れて「これからみなさんには同じスキルをひとつだけ持って、異世界に行ってもらいます。拒否はできません。ただし、一つだけ願いを叶えましょう」と、若干頓珍漢な事を言い、前から順番にクラスメイトの願いを叶えたり却下したりと、ドンドン光に変えていき、遂に僕の番になったので、こう言ってみた。 「30年待ってもらえませんか?」と・・・ →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→  初めて文章を書くので、色々教えていただければ幸いです!  また、メンタルは絹豆腐並みに柔らかいので、やさしくしてください。  更新はランダムで、別にプロットとかも無いので、その日その場で書いて更新するとおもうのであ、生暖かく見守ってください。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

高嶺の花屋さんは悪役令嬢になっても逆ハーレムの溺愛をうけてます

花野りら
恋愛
花を愛する女子高生の高嶺真理絵は、貴族たちが通う学園物語である王道の乙女ゲーム『パルテール学園〜告白は伝説の花壇で〜』のモブである花屋の娘マリエンヌ・フローレンスになっていて、この世界が乙女ゲームであることに気づいた。 すると、なぜか攻略対象者の王太子ソレイユ・フルールはヒロインのルナスタシア・リュミエールをそっちのけでマリエンヌを溺愛するからさあ大変! 恋の経験のないマリエンヌは当惑するばかり。 さらに、他の攻略対象者たちもマリエンヌへの溺愛はとまらない。マリエンヌはありえないモテモテっぷりにシナリオの違和感を覚え原因を探っていく。そのなかで、神様見習いである花の妖精フェイと出会い、謎が一気に明解となる。 「ごめんねっ、死んでもないのに乙女ゲームのなかに入れちゃって……でもEDを迎えれば帰れるから安心して」 え? でも、ちょっと待ってよ……。 わたしと攻略対象者たちが恋に落ちると乙女ゲームがバグってEDを迎えられないじゃない。 それならばいっそ、嫌われてしまえばいい。 「わたし、悪役令嬢になろうかな……」 と思うマリエンヌ。 だが、恋は障壁が高いほと燃えあがるもの。 攻略対象者たちの溺愛は加熱して、わちゃわちゃ逆ハーレムになってしまう。 どうなってるの? この乙女ゲームどこかおかしいわね……。 困惑していたマリエンヌだったが真相をつきとめるため学園を調査していると、なんと妖精フェイの兄である神デューレが新任教師として登場していた! マリエンヌはついにぶちキレる! 「こんなのシナリオにはないんだけどぉぉぉぉ!」 恋愛経験なしの女子高生とイケメン攻略対象者たちとの学園生活がはじまる! 最後に、この物語を簡単にまとめると。 いくら天才美少女でも、恋をするとポンコツになってしまう、という学園ラブコメである。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

処理中です...