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はじめてをみたあとで、いち
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任意という名の強制参加の勉強会があると先日雪兎は面倒臭そうに零していた。帰りが遅くなるからと夜更けまで唾液を交換し続け、眠そうに目を擦りながら学校へ送られた。
「車通学とか庶民とは格が違いますよね。車で寝るのも気持ちいいですし、多分寝てるんでしょうね」
まだ車が平気だった頃に居眠りをした経験を思い出し、父母の顔がチラついて憂鬱な気分になる。
「……どうぞ」
世間話に応えてくれなかった使用人が玄関の前に停まった車の後部座席のドアを開く。礼を言って乗り込み、庭を車で走れる不思議から目を逸らす。
流れていく景色を見ないように俯き、車の揺れに反芻される嫌な思い出から気を逸らすためにパズルゲームをしていたが、ステージは一つも進まなかった。
「着きましたよ、どうぞ」
車から降りてサングラスとマスクを着ける。使用人達と同じようにスーツを着ているので、ガラスに映る自分は自分じゃない気がした。
「ここから先の立ち入りは禁止されていますので……」
あの日と同じようにエレベーターに乗り、地下に向かい、社長室の扉を叩く。返事が聞こえたら中に入り、扉の前で待っていたらしい雪風の抱き着きを受け止める。
「まーひろぉーっ! 久しぶりだな、真尋。会いたかった……!」
心底嬉しそうな顔を見上げ、首の後ろに手を回し、背伸びをして口付ける。
「早速……って言いたいんだけどな、真尋、俺今から上で会議なんだよ」
「……え」
「ごめんな? 前日に言われても調整できないんだよ」
昨晩、雪兎の用事を聞いた俺は雪風にメッセージを送った。会いたい、行きたい、ただそれだけの無愛想な言葉だ。
「…………だよな、俺が悪いよな」
「落ち込むなよ真尋ぉ、すぐ終わらせるからさ」
「……会議中机の下に潜ってしゃぶるってのは」
「興奮するな。採用! って言いたいとこだが流石に無理だ」
仕事関係では割と常識がしっかりしている、その分他がおかしいのだが……貞操観念とか。まぁ、その辺りは俺と恋人になったことで常識が身についてきたと思いたいけれど。
「大丈夫、真尋が暇にならないようちゃんとビデオ用意したから」
「ビデオ……? なんか映画とか?」
「俺のハメ撮り」
全然身についてなかった。
「は……? ぇ、何、また誰かと寝たの……」
「違うって! 昔のやつ!」
俺との行為を隠し撮りしたもの、という回答が欲しかった。どうして愛しい恋人が知らない奴とヤってる動画を見なければならないんだ。
「……なんでそんなもん見なきゃいけないんだよ、いいよ、ゲームして時間潰すから」
「えー、せっかくパソコンで見れるようにしたのに。見ーてーくーれーよぉー」
俺の腕を掴んで左右に揺らしてねだるなんて、そんな子供っぽい仕草を自分より背の高い男にされても……可愛いな? 子持ちとは思えない可愛さだ。
「…………なんで見せたいんだよ」
「真尋を興奮させる、真尋に嫉妬させる、そうすると真尋のセックスがねちっこく激しくなる、そうすると俺めっちゃ気持ちいい」
「………………変態だなー」
過去のものとはいえ他人との性行為の様子を恋人に見せるのに躊躇いがないのはどうなんだ。興奮させて嫉妬させて……なんて、酷いな。
「俺の初体験とぉ、めっちゃ気持ちよかった時のやつ何個か、会議が長引かなければ足りると思うから、自分で抜くなよ?」
「はいはい……行ってらっしゃい」
上等な椅子の座り心地に雪風の要求を思わず飲んでしまった。ヘッドホンをつけさせられ、手を振って部屋を出ていく雪風に手を振り、幾つか並んだファイルを順番に見ていくことにした。
「車通学とか庶民とは格が違いますよね。車で寝るのも気持ちいいですし、多分寝てるんでしょうね」
まだ車が平気だった頃に居眠りをした経験を思い出し、父母の顔がチラついて憂鬱な気分になる。
「……どうぞ」
世間話に応えてくれなかった使用人が玄関の前に停まった車の後部座席のドアを開く。礼を言って乗り込み、庭を車で走れる不思議から目を逸らす。
流れていく景色を見ないように俯き、車の揺れに反芻される嫌な思い出から気を逸らすためにパズルゲームをしていたが、ステージは一つも進まなかった。
「着きましたよ、どうぞ」
車から降りてサングラスとマスクを着ける。使用人達と同じようにスーツを着ているので、ガラスに映る自分は自分じゃない気がした。
「ここから先の立ち入りは禁止されていますので……」
あの日と同じようにエレベーターに乗り、地下に向かい、社長室の扉を叩く。返事が聞こえたら中に入り、扉の前で待っていたらしい雪風の抱き着きを受け止める。
「まーひろぉーっ! 久しぶりだな、真尋。会いたかった……!」
心底嬉しそうな顔を見上げ、首の後ろに手を回し、背伸びをして口付ける。
「早速……って言いたいんだけどな、真尋、俺今から上で会議なんだよ」
「……え」
「ごめんな? 前日に言われても調整できないんだよ」
昨晩、雪兎の用事を聞いた俺は雪風にメッセージを送った。会いたい、行きたい、ただそれだけの無愛想な言葉だ。
「…………だよな、俺が悪いよな」
「落ち込むなよ真尋ぉ、すぐ終わらせるからさ」
「……会議中机の下に潜ってしゃぶるってのは」
「興奮するな。採用! って言いたいとこだが流石に無理だ」
仕事関係では割と常識がしっかりしている、その分他がおかしいのだが……貞操観念とか。まぁ、その辺りは俺と恋人になったことで常識が身についてきたと思いたいけれど。
「大丈夫、真尋が暇にならないようちゃんとビデオ用意したから」
「ビデオ……? なんか映画とか?」
「俺のハメ撮り」
全然身についてなかった。
「は……? ぇ、何、また誰かと寝たの……」
「違うって! 昔のやつ!」
俺との行為を隠し撮りしたもの、という回答が欲しかった。どうして愛しい恋人が知らない奴とヤってる動画を見なければならないんだ。
「……なんでそんなもん見なきゃいけないんだよ、いいよ、ゲームして時間潰すから」
「えー、せっかくパソコンで見れるようにしたのに。見ーてーくーれーよぉー」
俺の腕を掴んで左右に揺らしてねだるなんて、そんな子供っぽい仕草を自分より背の高い男にされても……可愛いな? 子持ちとは思えない可愛さだ。
「…………なんで見せたいんだよ」
「真尋を興奮させる、真尋に嫉妬させる、そうすると真尋のセックスがねちっこく激しくなる、そうすると俺めっちゃ気持ちいい」
「………………変態だなー」
過去のものとはいえ他人との性行為の様子を恋人に見せるのに躊躇いがないのはどうなんだ。興奮させて嫉妬させて……なんて、酷いな。
「俺の初体験とぉ、めっちゃ気持ちよかった時のやつ何個か、会議が長引かなければ足りると思うから、自分で抜くなよ?」
「はいはい……行ってらっしゃい」
上等な椅子の座り心地に雪風の要求を思わず飲んでしまった。ヘッドホンをつけさせられ、手を振って部屋を出ていく雪風に手を振り、幾つか並んだファイルを順番に見ていくことにした。
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