412 / 667
くるーざー、さん
しおりを挟む
歯並びのいい口内を丁寧に蹂躙して、息苦しくなってきた頃に口を離した。少しくらい絆されてくれると思っていたが、雪風は俺を突き飛ばした。
「……バカ、バカっ、バカバカバカバカばかぁっ!……このバカ犬! ふざけんな! お前を……お前を忘れるためにっ……俺は」
「……何したんだよ」
「…………抱かれた」
やはり、そうだったか。そんな気はしていた。叔父に抱かれようとした時のように、他の奴と寝るのだろうと、何となく分かっていた。分かっていたのに、それを聞く覚悟もあったのに、ショックは大きい。
「……だからっ、もう……いいだろ? 俺なんか。目ぇ離すとすぐ他の奴と寝るんだよ……辛そうな顔してるぞ? 犬、ショックなんだろ? 俺に情が沸いたんだろうけど、とっとと振り切らないと大変だぞ? いくらお前の腕の中で甘えて喘いでいようと、それは他の男と同じ反応なんだよ」
口角を歪に釣り上げて、潤んだ赤い瞳を見開く。辛そうな顔をしているのは雪風の方だ、辛いのは雪風の方だ。ショックを受ける権利は俺にはない、身勝手に傷付けているのは俺なのだから。
「勘違いさせて悪いな、でも、筆下ろしさせてもらったからっていつまでも執着すんなよな。迷惑だ」
「……雪風、愛してる」
「…………迷惑だ、って言ってるだろ。俺は! お前なんかどうっでもいい! お前が居なくたって、他にもセフレはいくらでも居る! お前だって嫌だろ? 嫌だって言えよ! こんなビッチ嫌いだろ!?」
「愛してる」
「……っ、やめ、ろよ……やめろ、やめてくれよ。やめて……お願い、やめて……」
無理矢理作っていた笑顔が完全に崩れて、瞳に溜まっていた涙が一気に溢れる。ソファの上に蹲って子供のように泣いている。
俺はそんな雪風の背を摩って、頭を撫でた。
「お前は……雪兎が、好きなんだろ」
「それはポチだ。俺じゃない、俺は真尋で、俺が好きなのは雪風だ」
「……ふざけんなよっ! それで雪兎が納得してないんだろ!? する訳ない、そんな言い訳して浮気してるだけだよお前は!」
「雪風が言ったんだろ? そうしろって」
真っ赤な双眸は俺を睨んでいる。当然だ。恨まれて、憎まれて然るべきだ。けれど分かる、雪風はまだ俺を好きでいてくれている。嫌いになったと心の底から言われるならともかく、好きだと喚く心のまま関わるなだなんて泣かれて、首を縦に振れる訳がない。
「雪兎にはお前しか居ないんだよ、俺が少しでも盗る訳にはいかないんだよっ……そりゃ最初に手を出したのは俺だけど、それは謝るから……」
「……雪風には誰か居るのか?」
「いっ、居るに……決まってんだろ。俺だぞ? この顔で、この頭で、この財産で……誰も居ないなんてありえないだろ」
「俺を忘れるために抱かせた奴、どうだったんだよ。そいつ、好きなのか?」
雪風は弱々しく首を横に振る。こういうところで素直なのは助かる。
「……愛されてるのか? 優しくされたか?」
また、首を横に振る。
「雪風……お前には、愛し合える奴は居るのか?」
「お、お前っ、は……雪兎の、もので。雪兎はっ……俺のこと、嫌いで、父親なんて要らないらしくて…………お兄ちゃん、に……電話したけど、恋人と旅行中とか言われて……だ、れも……俺を」
「……俺は愛してる」
苦しそうな呼吸をして、涙でぐしゃぐしゃになった顔を隠すように、俯いて首を横に振る。
「雪風、本気なんだよ。俺は本当に雪風を愛してる。雪兎だって本当は父親が恋しいはずなんだよ、居ないところじゃ寂しがってる。上手くそれを雪風の前で出せてないだけなんだ、お前もそうだよ、そんだけ雪兎のこと思ってるくせに……だから、今回の旅行で……」
「だ、れもっ……俺を、愛しては……くれないけど、せんせっ……は、せんせ、は……殴ってくれた。また……いっぱい、ぶってくれた」
「………………は?」
「ダメな……子だから、出来ない、からっ……ぶって、もらえた。誰にも、愛されない……けど、せんせはぶってくれた……! 愛されないからっ、殴ってくれた!」
俺は蹲る雪風の身体を力づくで開かせる。足をソファから下ろさせて、シャツのボタンを引きちぎって、真っ白な肌を……真っ白だったはずの痣だらけの肌を外気に曝した。
「……バカ、バカっ、バカバカバカバカばかぁっ!……このバカ犬! ふざけんな! お前を……お前を忘れるためにっ……俺は」
「……何したんだよ」
「…………抱かれた」
やはり、そうだったか。そんな気はしていた。叔父に抱かれようとした時のように、他の奴と寝るのだろうと、何となく分かっていた。分かっていたのに、それを聞く覚悟もあったのに、ショックは大きい。
「……だからっ、もう……いいだろ? 俺なんか。目ぇ離すとすぐ他の奴と寝るんだよ……辛そうな顔してるぞ? 犬、ショックなんだろ? 俺に情が沸いたんだろうけど、とっとと振り切らないと大変だぞ? いくらお前の腕の中で甘えて喘いでいようと、それは他の男と同じ反応なんだよ」
口角を歪に釣り上げて、潤んだ赤い瞳を見開く。辛そうな顔をしているのは雪風の方だ、辛いのは雪風の方だ。ショックを受ける権利は俺にはない、身勝手に傷付けているのは俺なのだから。
「勘違いさせて悪いな、でも、筆下ろしさせてもらったからっていつまでも執着すんなよな。迷惑だ」
「……雪風、愛してる」
「…………迷惑だ、って言ってるだろ。俺は! お前なんかどうっでもいい! お前が居なくたって、他にもセフレはいくらでも居る! お前だって嫌だろ? 嫌だって言えよ! こんなビッチ嫌いだろ!?」
「愛してる」
「……っ、やめ、ろよ……やめろ、やめてくれよ。やめて……お願い、やめて……」
無理矢理作っていた笑顔が完全に崩れて、瞳に溜まっていた涙が一気に溢れる。ソファの上に蹲って子供のように泣いている。
俺はそんな雪風の背を摩って、頭を撫でた。
「お前は……雪兎が、好きなんだろ」
「それはポチだ。俺じゃない、俺は真尋で、俺が好きなのは雪風だ」
「……ふざけんなよっ! それで雪兎が納得してないんだろ!? する訳ない、そんな言い訳して浮気してるだけだよお前は!」
「雪風が言ったんだろ? そうしろって」
真っ赤な双眸は俺を睨んでいる。当然だ。恨まれて、憎まれて然るべきだ。けれど分かる、雪風はまだ俺を好きでいてくれている。嫌いになったと心の底から言われるならともかく、好きだと喚く心のまま関わるなだなんて泣かれて、首を縦に振れる訳がない。
「雪兎にはお前しか居ないんだよ、俺が少しでも盗る訳にはいかないんだよっ……そりゃ最初に手を出したのは俺だけど、それは謝るから……」
「……雪風には誰か居るのか?」
「いっ、居るに……決まってんだろ。俺だぞ? この顔で、この頭で、この財産で……誰も居ないなんてありえないだろ」
「俺を忘れるために抱かせた奴、どうだったんだよ。そいつ、好きなのか?」
雪風は弱々しく首を横に振る。こういうところで素直なのは助かる。
「……愛されてるのか? 優しくされたか?」
また、首を横に振る。
「雪風……お前には、愛し合える奴は居るのか?」
「お、お前っ、は……雪兎の、もので。雪兎はっ……俺のこと、嫌いで、父親なんて要らないらしくて…………お兄ちゃん、に……電話したけど、恋人と旅行中とか言われて……だ、れも……俺を」
「……俺は愛してる」
苦しそうな呼吸をして、涙でぐしゃぐしゃになった顔を隠すように、俯いて首を横に振る。
「雪風、本気なんだよ。俺は本当に雪風を愛してる。雪兎だって本当は父親が恋しいはずなんだよ、居ないところじゃ寂しがってる。上手くそれを雪風の前で出せてないだけなんだ、お前もそうだよ、そんだけ雪兎のこと思ってるくせに……だから、今回の旅行で……」
「だ、れもっ……俺を、愛しては……くれないけど、せんせっ……は、せんせ、は……殴ってくれた。また……いっぱい、ぶってくれた」
「………………は?」
「ダメな……子だから、出来ない、からっ……ぶって、もらえた。誰にも、愛されない……けど、せんせはぶってくれた……! 愛されないからっ、殴ってくれた!」
俺は蹲る雪風の身体を力づくで開かせる。足をソファから下ろさせて、シャツのボタンを引きちぎって、真っ白な肌を……真っ白だったはずの痣だらけの肌を外気に曝した。
0
お気に入りに追加
1,424
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる