俺の名前は今日からポチです

ものたりないもの

マネキンに取り付けて腰を振っていた時は何度でも絶頂を迎えられると思っていたディルドだが、入れただけではそんな効果はない。

「ユキ様ぁっ、動かして、これ動かしてくださいよっ」

振動も抜き挿しもなくては、入れられた瞬間の刺激で欲情した俺は抑えられない。まぁ、縛られているから何も出来ないのだけれど。

「ポチは僕に腱鞘炎になれって言いたいの？」

「バ、バイブ機能は……？」

「これにはないね」

「ならこのちょっと出てるとこにローター貼り付けるとかでもいいですからぁ……動かしてぇ……」

腰をくねらせても縛られた膝が痛むだけでディルドは刺激を与えない。そこまでの圧迫感もなく、何もかもが物足りない。

「ぶるぶる欲しいぃ……ずぼずぼして欲しいぃ……ユキ様、ユキ様ぁ、お願いします、これしてくれたら後でいくら放置してくださっても構いませんからぁ」

「ポチ、君に交渉の権利はないんだよ？　それに今日はもうダメ、今日だけで何回イったと思ってるのさ、体に悪いよ」

今更何を言っているんだろう。

「じゃあ自分でするから解いてください……」

「自分で？　一番ダメだよそんなの。ポチは僕に全部管理されるの」

雪兎の手が頬に置かれたかと思えば、親指が唇を割って入ってくる。

「吸うの禁止、舐めるのも禁止、何もしないで口開けてて？」

やろうとしていたことを言い当てられ、禁止され、俺は泣きたい気分になりながら口を開けた。動きを禁じられた舌を引っ張られ、むにむにと弄ばれ、嘔吐いても続けられる。

「ゆっ……ぅ、んん……んふぅ……」

「ポチ、これは好き？　好きなら何が好きか、嫌いなら何が嫌いか説明してごらん？」

雪兎の指が口から出て行った。摘まれ揉まれ上手く動かない舌、嘔吐いて整わない呼吸、それらはそのままに言葉を紡ぐ。

「ユキしゃまにぃ……全部、握られてるって感じが、たまりません……」

「何が気持ちいい？」

「……喉の奥、つっつかれるの」

そう言った直後雪兎は俺の口をこじ開け、人差し指の先で喉の奥を突いた。

「ぉ、んゔぅ……ほっ、はぁっ……」

「気持ちいい？」

人差し指の腹が粘膜を撫でる。柔らかくぬるぬるとしたその感触を楽しむように、俺に快楽を与えてくれる。

「ひほ……ひぃ……」

「きもちぃ？　そっかそっか、喉を指でなら何回でも……でもいちいち面倒臭いね。また何か考えておくから、今日はこの辺で、ね？」

雪兎は指を引き抜き、俺の鎖骨あたりで拭うと俺から離れた。喉を弄ばれたことで興奮が冷めるどころか熱く昂り、俺は意味もなく腰をくねらせ続けていた。