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ひとはすてて

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雪兎はしばらくの間大人しく腕枕されていたが、眠気はもう覚めてしまったようで意味もなく起き上がった。俺は疲れて眠くて仕方なかったから退屈そうな雪兎の横顔を眺めていた。

「……綺麗に通った鼻筋、イーラインだかハリウッドラインだか…………柔らかそうなほっぺに唇はついついしゃぶりつきたくなる。長い睫毛は透明に近くて光を反射しとても美しい、髪も眉も同様、雪兎という完璧な美少年の輝きはそういったところから物理的にも供給され──」

「ねぇ何言ってんの気持ち悪いよ」

正直な感想を淡々と語っただけなのにどうして気持ち悪いなんて言われなくてはならないのだろう。

「飼い主からのまさかの心無い言葉に傷付きました」

「事実だもん……恥ずかしいし、やめてよそういうの」

色素の薄い肌は紅潮がよく分かる。雪兎は頬をほんのり赤く染めてそっぽを向いた。

「……飼い犬のラブコールに恥じたらしい美少年は頬を赤らめる。その様はもはや美術館から来いと言わんばかりの芸術作品」

「もう意味分かんないんだけど! 褒めるならさ、もっと普通に褒めてよ! 何、美術館から来いって」

「そりゃあその細っこい足に美術館まで御足労はちょっと……」

美術品には気軽に触れられないから美術館にはやはり来ないでもらいたいな、なんてふざけた思考は頭に留めて、雪兎の腰に腕を回して太腿に頭を乗せた。

「ユキ様の太腿はマジふにふにふわふわで尊くてやばみがつらたん……」

「さっきまで割と賢そうなこと言ってたのに……」

「ユキ様の太腿は最高です。略してYFS」

「それ以上僕のこと言わないで!」

言うなと言われては仕方ない。寝返りを打って雪兎に後頭部を向け、爪先の方に目を向ける。布越しにも感じる太腿の柔さを堪能しつつ、中途半端な丈のズボンからはみ出た膝小僧を撫でるでもなく手のひらで覆う。そのうちに興奮も収まって睡魔が再来する。

「ポチ…………何寝ようとしてるの?」

優しく頭を撫でたかと思われた雪兎の手は頭頂部から下に向かうと首輪に繋がる紐を絡めて引っ張った。

「ポチはわんちゃんになるんだよ。最近犬の自覚が薄れてるみたいだからね……こんなものを用意したんだ!」

俺の頭を躊躇なく落として立ち上がった雪兎はベッドの下から紙袋を引っ張り出すと再びベッドに座った。

「とりあえずカチューシャ……あ、服脱いでね、全部」

「……はーい」

着心地が良くて気に入っている寝間着を脱いで、全裸な俺は犬耳カチューシャで頭を飾る。次に渡されたカチューシャの毛と同じ色のタンクトップらしき物はへその少し上までの丈だった。

「お腹出るんですけど」

「そういうデザインだよ。ちなみにタイツみたいな素材でちょっと透けてる」

胸元を見つめて微笑む雪兎に無意味に微笑み返し、同じ素材のパンツらしき物を受け取る。こちらは鼠径部の溝が半分程見えて、太腿の半分までの丈。雪兎がその可愛らしい手に揺らしている尻尾から目を逸らしつつ、後ろに空いた穴は何用だろうと現実逃避した。
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