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へんたいとともにあるもの

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横文字の説明書を読み終えた雪兎は棚を漁って手錠を指に引っ掛け、無邪気に笑った。

「手、上げて」

促されるままに寝転がり、頭の上で手を組む。手錠がはめられベッドに固定され、俺は腕の自由を失う。

「……足も縛った方が良さそうだね。っていうか身動き取れないようにしなくちゃかも。ごめん手錠無し、縄にするよ。ベッド降りて、ここ座って」

手錠を外されて誘導されたのは姿見の前。あまり見たくない自分の全身が映っている。

「なんで動いちゃダメなんですか?」

「危ないからだよ」

まぁ、強制連続なんて名前の時点で察しは付く。跳ねたり震えたり、器具を無意識に触る可能性があるからだろう。それでなくても精密機械だろうし、仕方ない。

「……んっ、ぅ…………ぁ……」

「変な声出さないでよ」

「縛られるだけでも、これっ……結構、気持ちいんですよ……ゃ、んっ……」

足首と太腿をまとめて縛られ、更に膝に通した縄を胴の縄と結び、太腿と脇腹をぴったりとくっつけた状態で固定される。膝を曲げて開脚し、両腕は後ろ、身動きが取れず全てをさらけ出す……そんな状況に俺は興奮を覚えるよう躾られてきた。

「よし、出来た。ほらポチ鏡見て、分かるかな?」

雪兎に全てを見られるのはいい。辱めるような言葉もまぁいい。だが、自分のあられもない姿を自分で見るのは嫌だ。

「……ポチって本当に体格いいよね。スポーツ選手とか格闘家とか向いてたんじゃない? ま、そんな可能性は僕が踏みにじってるんだけどね!」

雪兎は折り畳み式の座椅子を持ってきて俺の足首をその肘掛けに縛った。ひっくり返ってしまわずに自分の痴態を見続けろということだろう。

「厚い胸板、割れた腹筋、筋肉の房が集まってるって感じの手足、はっきり浮かんだ首筋に鎖骨……見た目より実用なアンバランスさもイイよね」

「……筋肉フェチか何かですか」

「そうかも? ふふ、ポチが来るまではそんな趣味なかったよ?」

白く細い手が身体中を撫で回す。品定めのようなその手つきと赤紫の視線に俺の吐息は熱くなっていく。

「でも何よりたまらないのはこの実用的で強そうな筋肉と同居してるえっちさだよね」

「……それの意味分からないんですよねー」

「叩かれただけでイっちゃうお尻とか、脚開かされただけでひくひく欲しがってる穴とか、瞳孔開ききってる切れ長な三白眼とか」

「瞳孔開いてませんよ……」

簡単に手折ってしまえそうな指先が俺の唯一柔らかい肉に沈み、形を歪ませ、穴の口を広げる。その様子は全て鏡に映っている。

「ポチは僕に縛られないようにすることが出来た。この首輪の紐だってこの腕ならちぎれる。ポチが殴ったら僕は簡単に倒れる。なのにポチは僕のペットとして僕に服従してこうやって僕に遊ばれてる。どうして?」

「……愛、ですかね」

「…………格好付けちゃって、そういう趣味なだけだろ、この変態」

最初の理由は立場で、その後の理由は快楽、そして今の理由はきっと愛情。少なくとも俺はそう思っている。
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