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みずさし
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膝の上に乗った雪兎の髪を撫でつつ、そっと耳に唇を寄せる。吐息に反応してピクっと跳ねた足に手を這わせ、髪を撫でていた手を頬に移す。
「……したいの? ポチ」
雪風で発散していたから大して溜まってはいないけれど、このところ疲れたと言ってはすぐに寝てしまう雪兎とのこういった時間は久しぶりで、ずっと同じベッドで寝てはいるけれど体温が恋しくなっていた。
「何日もいい子で我慢してたもんね、僕の寝込み襲ったりもしなくてさぁ……一人でしてた?」
「はい……」
「ふぅん……じゃあ、どんな妄想してたか言ってみて? 気が向いたら再現してあげる」
どんな妄想、と言われてもここ最近のオカズは旅行中の行為の反芻だ。だが、再現してくれると言うのなら欲望を叩き付けなければ。
「マジですか! じゃ、じゃあメイド服でデニール濃いめのタイツで踏んでください!」
「却下」
「じゃあ、ナース服で「あぁ腕怪我してちゃ出来なくて溜まりますよね、抜いてあげましょうか」的な……」
「却下」
「じゃあ体操服着てください。マット運動で「これは補助であって痴漢ではないんだよ」セクハラプレイを」
「却下」
「…………何ならいいんですか!」
「よくそれだけ妄想出来るよね。気持ち悪い通り越して尊敬しちゃうよ」
これはまだ百分の一にも満たないということは言うべきだろうか。言って照れてくれる未来とドン引きされる未来、後者の方が確率が高いが、ドン引き顔はそれはそれでイイものだ。
「ユキ様がお可愛らしいからいけないんですよ。そりゃ妄想も暴走しちゃいますよ」
脚色無しの褒め言葉を使えば妄想の多彩さに照れてくれる未来を引き寄せられるだろうか。そんな計算をしつつ、膝丈のズボンの裾から手を入れる。
「ぁ、こら……もぅ、仕方ないダメ犬だなぁ」
内腿を撫で回しても大して怒らない。これは久しぶりだからだろうか? このまま恋人のようなイチャラブになだれ込むことは出来るだろうか。雪兎の機嫌を伺いながら加減を探っていると、部屋の隅に放置された鞄から着信音が鳴り響いた。
「……あ、叔父さん鞄忘れて行ったんだ。どうしよ」
雪兎は俺の膝の上から降り、鞄を持って俺の隣に座る。何の躊躇もなく鞄を漁る雪兎からは確かな血筋を感じた。
「携帯……鳴ってるけど、どうしよっか。鞄忘れたって気付いた叔父さんかもだし、出た方がいいかな?」
鳴り響く携帯端末を見つけ、雪兎は今更躊躇った。人見知りなところがあるのだろう。
「変態かもしれませんし俺が出ますよ」
「……まぁ、なくはないよね……」
雪兎から携帯を受け取り、表示された名前を見ずに耳に当てる。
「もしもし──」
『今どこですか!? どうして帰ってきてくれないんですか? 凪さんの好きなものいっぱい作りましたよ? 読みたいって言ってた本も買いましたし、観たいって言ってたドラマも録画してます! 何が不満なんですか? もう飽きちゃったんですか? 嫌いになったんですか?』
「…………すいません、あの……」
『…………誰ですか。何……浮気? 嘘だ』
「いや、そのですね、これ忘れ物で」
『……………………今行きます』
人の声も雑音も消え、画面を見れば初期設定だろう美しい景色が出迎えた。
「ポチ? 叔父さんだった?」
「…………多分あの人刺されますね」
男なのか女なのかは判別しづらい声だったが、あの粘っこい早口は面倒臭さと鬱陶しさの象徴だ。おそらくは恋人だろう。
「え……脅迫電話?」
「いえいえラブコールですよ。愛されているようで何よりです」
叔父が刺されるのなら願ったり叶ったりだ。短冊にでも書いておこうか、二度と俺達の前に現れませんようにと。
「……したいの? ポチ」
雪風で発散していたから大して溜まってはいないけれど、このところ疲れたと言ってはすぐに寝てしまう雪兎とのこういった時間は久しぶりで、ずっと同じベッドで寝てはいるけれど体温が恋しくなっていた。
「何日もいい子で我慢してたもんね、僕の寝込み襲ったりもしなくてさぁ……一人でしてた?」
「はい……」
「ふぅん……じゃあ、どんな妄想してたか言ってみて? 気が向いたら再現してあげる」
どんな妄想、と言われてもここ最近のオカズは旅行中の行為の反芻だ。だが、再現してくれると言うのなら欲望を叩き付けなければ。
「マジですか! じゃ、じゃあメイド服でデニール濃いめのタイツで踏んでください!」
「却下」
「じゃあ、ナース服で「あぁ腕怪我してちゃ出来なくて溜まりますよね、抜いてあげましょうか」的な……」
「却下」
「じゃあ体操服着てください。マット運動で「これは補助であって痴漢ではないんだよ」セクハラプレイを」
「却下」
「…………何ならいいんですか!」
「よくそれだけ妄想出来るよね。気持ち悪い通り越して尊敬しちゃうよ」
これはまだ百分の一にも満たないということは言うべきだろうか。言って照れてくれる未来とドン引きされる未来、後者の方が確率が高いが、ドン引き顔はそれはそれでイイものだ。
「ユキ様がお可愛らしいからいけないんですよ。そりゃ妄想も暴走しちゃいますよ」
脚色無しの褒め言葉を使えば妄想の多彩さに照れてくれる未来を引き寄せられるだろうか。そんな計算をしつつ、膝丈のズボンの裾から手を入れる。
「ぁ、こら……もぅ、仕方ないダメ犬だなぁ」
内腿を撫で回しても大して怒らない。これは久しぶりだからだろうか? このまま恋人のようなイチャラブになだれ込むことは出来るだろうか。雪兎の機嫌を伺いながら加減を探っていると、部屋の隅に放置された鞄から着信音が鳴り響いた。
「……あ、叔父さん鞄忘れて行ったんだ。どうしよ」
雪兎は俺の膝の上から降り、鞄を持って俺の隣に座る。何の躊躇もなく鞄を漁る雪兎からは確かな血筋を感じた。
「携帯……鳴ってるけど、どうしよっか。鞄忘れたって気付いた叔父さんかもだし、出た方がいいかな?」
鳴り響く携帯端末を見つけ、雪兎は今更躊躇った。人見知りなところがあるのだろう。
「変態かもしれませんし俺が出ますよ」
「……まぁ、なくはないよね……」
雪兎から携帯を受け取り、表示された名前を見ずに耳に当てる。
「もしもし──」
『今どこですか!? どうして帰ってきてくれないんですか? 凪さんの好きなものいっぱい作りましたよ? 読みたいって言ってた本も買いましたし、観たいって言ってたドラマも録画してます! 何が不満なんですか? もう飽きちゃったんですか? 嫌いになったんですか?』
「…………すいません、あの……」
『…………誰ですか。何……浮気? 嘘だ』
「いや、そのですね、これ忘れ物で」
『……………………今行きます』
人の声も雑音も消え、画面を見れば初期設定だろう美しい景色が出迎えた。
「ポチ? 叔父さんだった?」
「…………多分あの人刺されますね」
男なのか女なのかは判別しづらい声だったが、あの粘っこい早口は面倒臭さと鬱陶しさの象徴だ。おそらくは恋人だろう。
「え……脅迫電話?」
「いえいえラブコールですよ。愛されているようで何よりです」
叔父が刺されるのなら願ったり叶ったりだ。短冊にでも書いておこうか、二度と俺達の前に現れませんようにと。
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