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こんどこそ

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俺は雪風の前に跪いてその俯いた表情の全貌を知る。そして自分が何をしてしまったのかも。
涙を零しながらも表情は無く、呼吸の乱れもない。俺が覗き込んでも瞳は全く動かず、ただ泣くだけの趣味の悪い人形に見えた。

「……雪風様、雪風様! ごめんなさい、俺……すっごい酷いことしたんですよね」

頬に手のひらを添えて親指で涙を拭うと赤い瞳はようやく俺の方を向いた。

「…………まだ居たのか。気にするな、俺の勝手な思い込みだ。頭おかしいんだろうな、迷惑かけて悪かった」

「いえ、本当に……俺が悪いんですって。お願いだからそう諦めないでください」

「……諦めなかったら、何だ?」

無表情だった美顔に怒りが宿る。

「諦めなかったらどうなるんだ?」

「……分かりませんけど。でも、そんなふうに壊れた人形みたいになったり、しないでください」

「とっくの昔に壊れてるんだよ、バーカ」

「…………どうやったら直せますか?」

見慣れた腹の立つ笑顔に変わるも、今はその笑顔が恐ろしく見えた。このまま放っておいたら、いつか、誰にも見つからない場所で死んでしまう気がした。

「そうだな……お前が愛してくれたら、直ったかもな」

過去形であることに呼吸の仕方を忘れてしまいそうな程の不安を抱きながらも雪風の顔を引き寄せ、唇を重ねた。舌を絡ませたまま頬から肩に手を移し、ゆっくりと立ち上がって雪風をベッドに押し倒した。

「んっ……ふ、ふっ……ははっ! あははっ! 何だその顔、情けないな……泣きそうだな?」

「雪風様っ……優しくしますから、その態度やめてくださいよ」

尊大な虚勢は痛々しくて仕方ない。

「…………分かった」

ゆっくりと目を閉じ、開け、笑顔を消した。
俺はその切り替えの上手さと今の表情が本心なのかが不安で恐ろしさを覚えた。だが、まぁ……雪風が感じやすいのは事実なのだから、快感を与えてやれば嘘は吐けなくなるはずだ。俺はそう考えて愛撫を始めた。


少し触れただけでビクンと跳ねて、少し力を込めただけで甘い声が漏れる。俺にもその傾向はあるのかもしれないけれど、そんな人を愛撫するのはとても心が満たされる行為だ。

「雪風様……他はどこが好きですか?」

好きな場所と仕方を聞きながら蕩かしていく。

「もぅ……無い」

「……そうですか。なら、初めからもう一周行きますね」

胸板に手のひらを優しく押し当てただけで身体が反って、期待に満ちた目が俺だけを映す。僅かに浮かせて手のひらをゆっくりと動かすとその期待に少し応えたことになる。指先で乳首を摘んで優しく抓ると雪風の期待は満たされる。片方を摘みながら背に腕を回し、もう片方を舌で弄ぶと期待以上の行為に雪風は混乱と強い快楽を覚える。

「ひぁああっ!? 真尋っ、真尋ぉ……それ、もっとっ、ぁ、あっ、ぁあんっ! もっとぉっ!」

腰に長い足が絡み、胸にしゃぶりつく頭を抑えるように腕が頭に置かれる。

「そこっ、もっと吸って……ぁあっ! そっ……そうっ、真尋……」

息が苦しくなって顔を上げようとすればその腕は簡単に首の方へ落ち、息を整えていると赤い瞳が「もうやめるの?」と切なげな問いかけをしてくる。

「……胸だけで失神するまでイかせてあげますよ」

そう言うと切なげな表情は照れ混じりの悦びに変わって、俺の興奮を煽る。先程のように我を忘れないよう自分を戒めながら、俺は愛撫を続けた。
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