俺の名前は今日からポチです

ムーン

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うぇっとすーつ、いち

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聞こえてくる鳥の声も日本とは違う気がする。電灯が消され、カーテンが開け放たれた明るい部屋で鳥の声を聞きながらそう思った。
全身に宿った重み、怠さ、そして局所的な皮膚の痛み。火傷と擦り傷を足したようなヒリヒリとした痛みだ。

「……うっ……ぐ…………無理、無理無理……」

起き上がろうとするも腹筋に力が入らない、横を向いた方が起きやすいかと寝返りを試みて、尻や太腿がシーツに擦れて、思わず声が漏れるような痛みを味わう。

「クソっ……調子乗りやがって」

薬が効いていたとはいえ、鞭を悦ぶなんて。自分から「前もして」とねだったなんて。昨日の俺自身を憎み、起き上がれない現状にため息をついた。

「…………ユキ様ー……?」

雪兎が来る気配はない。来たとしても雪兎の力では俺を引っ張り起こすことなど出来ないし、そうされた方が皮膚への痛みは大きくなり長引くだろう。
歯を食いしばって痛みを堪え、一気に起き上がれば何とかなる。そんな楽観的な考えに着地し、実行した。

「よっ……!?  痛っ!?  ひっ……ひだっ……ぁ、無理、もう無理ぃっ」

何とか立ち上がったが、立ち上がったことにより皮膚の痛みだけではない関節や筋肉の痛みも増して、足の力が抜けてベッドに勢いよく腰を下ろした。

「ひぁんっ!?  なっ、何……ぁ、尻尾…………ふざけんなよぉ……」

前立腺を小突かれて矯正を上げ、配慮なく座ったせいでバッドジュエルが押し込まれたのだと気が付き、情けなさに涙が零れた。

「ふーっ……寝たら体力全快ってファンタジーなんだなー……」

雪兎との行為が激しさを増す度に考えてしまう。明日に響かなければもっと出来るのにな、と。

「…………行くか」

腹も減ったし、寝室を出よう。服なんて着たら皮膚への痛みで悶絶してしまうだろうから、このままの格好で。
壁伝いにがに股で歩く姿はこの美しい別荘には似合わない。磨かれた大理石に自分の姿が映ってしまう気がして、俺は必死に目線を上げた。

「ユキ様ー……ユキ様ー?  どこですかー?」

立ち止まり、声を上げるも雪兎からの返事はない。

「……居らんの?  居らんのやったら…………ぁー、やることねぇなー」

朝食は、いや、もう昼食か?  何を食べようか、用意してくれていると嬉しいのだが。
震える足を進めてリビングに辿り着く。存在も曖昧なほど美しく磨かれた窓の向こうにはプールが──雪兎が居た。日陰に一人佇んでいる。

「ユキ様ー!  ゆ、き、さ、まぁっ!」

窓を開けて顔を出し、大声を上げて手を振ると雪兎は驚いたようにこちらを見て、満面の笑みを浮かべた。
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