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てであらって
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手を動かさないなんて無理だ。とは言ったがこうやって庇護欲だけを煽っていてくれれば問題ない。
そう言える好青年だったら良かったのにな。
「あ、ポチ。腕洗う時はポチが動かして」
「解禁ですか」
「違う。腕だけ。あと背中も、かな?」
俺はボディソープを足し、手のひらに窪みを作って擦り合わせ、泡立たせる。満足のいく泡立ちになったら両手で包むように洗っていく。
「……うん、上手だよポチ、気持ちいい」
「こうされるのが気持ちいいんですか?」
「…………聞き方は気持ち悪いね」
「ユキ様がよく言ってることなんですけどね」
全体的に平等に少し強めに洗っていけば、多少揉んでいても気付かれない。今がそうだ、二の腕を一揉みしたが雪兎は何も言わなかった。俺は心の中でガッツポーズを決めながら、表情を必死に誤魔化した。
雪兎の手を俺の両手で挟んで、指を絡める。ぬるぬるとした感触や指を絡め合う感覚や絵面、それを見ているとなんだか気持ちが高ぶってくる。
「……ねぇユキ様、ユキ様はこんな感じで指絡まっててもムラムラしないんですか?」
「なんかして当然みたいな言い方してるけど普通しないからね」
「普通しますよ? 知ってますかユキ様、こんな感じで指を絡め合うことを「恋人繋ぎ」って言うんですよ」
「街中でたまに見るね」
「つまりムラムラするのが普通なんですよ」
「街中で? 外で? ねぇポチ、ポチは「つまり」の使い方知らないの?」
雪兎は俺を馬鹿にし過ぎだ。俺は日本語だけは堪能だ。定期テストでも現国は英語の二倍の点だった。
「……もうそれはどうでもいいからさ、次背中お願い」
「はーい」
雪兎は浴槽に背を向けて座る。俺は膝立ちになって両手で雪兎の背中を流す。
頭のてっぺんから爪先まで完璧な美しさの雪兎の唯一の瑕、大きな火傷痕。かなり昔のものらしく、触れても凹凸はないし、皮膚の色の違いも微々たるものだ。けれど雪兎はこれを見られるのを泣くほど嫌がっていた。
だが、今はこうして俺に背中を洗わせるほどにまでなった。雪兎のことだから傲慢に振る舞いながら痕を俺がどう思っているのか気にしているのだろう。
「小さくって洗いやすい背中ですよね」
「……それ褒めてるつもり? それとも嫌味?」
「可愛いって言ってるんですよ。それに、綺麗です。肩甲骨の形も、この背筋の窪みも、腰の曲線も、何もかも」
俺は雪兎が痕を気にしないように、少し大袈裟に褒めた。逆効果にならなければ良いのだが……どうだろうか、雪兎に限って表情と声色は参考にならない、どうやって確かめようか。
「褒めてくれるのは嬉しいよ。だからってご褒美はあげないけどね」
当然の事ながら痕の話題は出さないし、声色からも何も分からない。
「でも、背中見て変な気分にはならないでしょ?」
「……ねぇユキ様、男はね、好きな相手を四つん這いにさせて腰掴んで突きまくりたいっていう欲望を持ってる生き物なんですよ。その時見えるのは背中でしょうねぇ。なら今はその疑似体験をしているのでは……なーんて」
「男じゃなくてポチだろ。僕そんなの思ったことないし」
「えっ……嘘。マジで?」
おかしいな。あの体位に憧れる男は多いと思ったのだが。おかしいのは俺の感覚なのか。
「じゃあ何したいんですか?」
「え……? うーん、縛って寝転がして遊びたいな」
「…………よくやってません?」
「かもねー」
雪兎の好きな体位でも聞き出してやろうと思ったが、答えられたのはプレイ内容だった。その上経験済み。
俺は少し気を落としつつも、雑談の間に雪兎の背中を流し終えた。
そう言える好青年だったら良かったのにな。
「あ、ポチ。腕洗う時はポチが動かして」
「解禁ですか」
「違う。腕だけ。あと背中も、かな?」
俺はボディソープを足し、手のひらに窪みを作って擦り合わせ、泡立たせる。満足のいく泡立ちになったら両手で包むように洗っていく。
「……うん、上手だよポチ、気持ちいい」
「こうされるのが気持ちいいんですか?」
「…………聞き方は気持ち悪いね」
「ユキ様がよく言ってることなんですけどね」
全体的に平等に少し強めに洗っていけば、多少揉んでいても気付かれない。今がそうだ、二の腕を一揉みしたが雪兎は何も言わなかった。俺は心の中でガッツポーズを決めながら、表情を必死に誤魔化した。
雪兎の手を俺の両手で挟んで、指を絡める。ぬるぬるとした感触や指を絡め合う感覚や絵面、それを見ているとなんだか気持ちが高ぶってくる。
「……ねぇユキ様、ユキ様はこんな感じで指絡まっててもムラムラしないんですか?」
「なんかして当然みたいな言い方してるけど普通しないからね」
「普通しますよ? 知ってますかユキ様、こんな感じで指を絡め合うことを「恋人繋ぎ」って言うんですよ」
「街中でたまに見るね」
「つまりムラムラするのが普通なんですよ」
「街中で? 外で? ねぇポチ、ポチは「つまり」の使い方知らないの?」
雪兎は俺を馬鹿にし過ぎだ。俺は日本語だけは堪能だ。定期テストでも現国は英語の二倍の点だった。
「……もうそれはどうでもいいからさ、次背中お願い」
「はーい」
雪兎は浴槽に背を向けて座る。俺は膝立ちになって両手で雪兎の背中を流す。
頭のてっぺんから爪先まで完璧な美しさの雪兎の唯一の瑕、大きな火傷痕。かなり昔のものらしく、触れても凹凸はないし、皮膚の色の違いも微々たるものだ。けれど雪兎はこれを見られるのを泣くほど嫌がっていた。
だが、今はこうして俺に背中を洗わせるほどにまでなった。雪兎のことだから傲慢に振る舞いながら痕を俺がどう思っているのか気にしているのだろう。
「小さくって洗いやすい背中ですよね」
「……それ褒めてるつもり? それとも嫌味?」
「可愛いって言ってるんですよ。それに、綺麗です。肩甲骨の形も、この背筋の窪みも、腰の曲線も、何もかも」
俺は雪兎が痕を気にしないように、少し大袈裟に褒めた。逆効果にならなければ良いのだが……どうだろうか、雪兎に限って表情と声色は参考にならない、どうやって確かめようか。
「褒めてくれるのは嬉しいよ。だからってご褒美はあげないけどね」
当然の事ながら痕の話題は出さないし、声色からも何も分からない。
「でも、背中見て変な気分にはならないでしょ?」
「……ねぇユキ様、男はね、好きな相手を四つん這いにさせて腰掴んで突きまくりたいっていう欲望を持ってる生き物なんですよ。その時見えるのは背中でしょうねぇ。なら今はその疑似体験をしているのでは……なーんて」
「男じゃなくてポチだろ。僕そんなの思ったことないし」
「えっ……嘘。マジで?」
おかしいな。あの体位に憧れる男は多いと思ったのだが。おかしいのは俺の感覚なのか。
「じゃあ何したいんですか?」
「え……? うーん、縛って寝転がして遊びたいな」
「…………よくやってません?」
「かもねー」
雪兎の好きな体位でも聞き出してやろうと思ったが、答えられたのはプレイ内容だった。その上経験済み。
俺は少し気を落としつつも、雑談の間に雪兎の背中を流し終えた。
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