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こうそく
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いつものように、と言うのもどうかと思うがいつものように手錠がかけられた。
俺の手首を保護する気はないらしく、金属製の固くて冷たい物だった。柔らかいカバーが欲しい。
「手はこれでいいとして……えっと、体育座りして」
「はいはい、三角座りですね」
「ジェネレーションギャップだ……」
「数年差ですよ? 世代って言うより地域でしょう」
膝を折ると雪兎は黒い革のベルトを取り出す。両端に輪を作る、明らかにそういうプレイ目的で作られたベルトだ。
輪は足首と太股の付け根に巻かれ、俺は足を伸ばせなくなる。もちろん両足ともだ。
「……結構キツいですね」
「緩める?」
「あぁそういうんじゃなくて、この体勢ですよ。足伸ばせないのはちょっと……」
「お仕置きだからね」
「そうでしたね。抵抗出来ないってのは興奮するんですけど、足伸ばせないのは単純に辛いです。本当にお仕置きですね」
足を伸ばせない苦痛も快楽に変わる日が来るのだろうか? それはそれで嫌だな。
「ん、足開いてみて?」
「こうですか? うわ……なんか嫌だ」
開脚には羞恥が付き物だが、膝を曲げてとなるとそれが倍以上に膨らむ気がする。いわゆるM字だ。
雪兎は更に赤いロープを取り出し、膝の裏に通す。そのロープの先はベッドの足に結ばれ、俺は足を開いたまま固定される。
「…………あの、これは流石に」
「お仕置き、だよ?」
「そうでしたね……」
俺は今大きな枕を背に座っている。ベッドの上端に固定された状態だ。
仰向けで縛られなかったのは雪兎の良心かもしれない、仰向けで後ろ手に縛られると肩から腕、背中まで全体的な筋肉痛が引き起こされるのだ。
「で、これね。サテン生地だから安心して」
「金持ちを見せつけてきますね」
「お金持ち関係ないと思うけど……」
何の変哲もない黒く細長い光沢のある布。雪兎はそれで俺の目を隠し、頭の後ろでキツく縛った。
今までにされた目隠しは繊維の隙間から微かに見えていたのだが、この布はそうもいかない。
そもそもが細かい繊維なのに加えて、何度か重ねて折られている。本当に何も見えない。光すらも感じられない。
「……ユキ様、そこにいますよね?」
「いるよ?」
「ですよね……目隠し、怖いです」
「あ、ポチって暗いの嫌いだっけ」
「は……い、怖い、です」
何も見えない暗闇に浮かぶ二つの光。それは少しずつ近づいてきて──
「……っ!? ユ、ユキ様……ユキ様、いますよね?」
「いるけど」
「外して、外してください。これは嫌です。お仕置きだとか言ってる場合じゃないんですよ、本当に怖いんです」
「だーめ。そろそろ克服しないとね」
「……だって、だって車が……車、が、こっちに」
突っ込んでくる、ぶつかってくる、壊れてしまう、潰れてしまう。
「ここは家の中だよ。車なんてない」
「だって……」
「何が怖いの? ポチ、まだ車に乗ったこともないでしょ?」
「え……ぁ……あぁ、そう、ですね。ポチは……」
ポチになってからは乗っていない。
ポチになってからは誰の死に目も見ていない。
ポチになってからは……ずっと、幸せだ。
俺の手首を保護する気はないらしく、金属製の固くて冷たい物だった。柔らかいカバーが欲しい。
「手はこれでいいとして……えっと、体育座りして」
「はいはい、三角座りですね」
「ジェネレーションギャップだ……」
「数年差ですよ? 世代って言うより地域でしょう」
膝を折ると雪兎は黒い革のベルトを取り出す。両端に輪を作る、明らかにそういうプレイ目的で作られたベルトだ。
輪は足首と太股の付け根に巻かれ、俺は足を伸ばせなくなる。もちろん両足ともだ。
「……結構キツいですね」
「緩める?」
「あぁそういうんじゃなくて、この体勢ですよ。足伸ばせないのはちょっと……」
「お仕置きだからね」
「そうでしたね。抵抗出来ないってのは興奮するんですけど、足伸ばせないのは単純に辛いです。本当にお仕置きですね」
足を伸ばせない苦痛も快楽に変わる日が来るのだろうか? それはそれで嫌だな。
「ん、足開いてみて?」
「こうですか? うわ……なんか嫌だ」
開脚には羞恥が付き物だが、膝を曲げてとなるとそれが倍以上に膨らむ気がする。いわゆるM字だ。
雪兎は更に赤いロープを取り出し、膝の裏に通す。そのロープの先はベッドの足に結ばれ、俺は足を開いたまま固定される。
「…………あの、これは流石に」
「お仕置き、だよ?」
「そうでしたね……」
俺は今大きな枕を背に座っている。ベッドの上端に固定された状態だ。
仰向けで縛られなかったのは雪兎の良心かもしれない、仰向けで後ろ手に縛られると肩から腕、背中まで全体的な筋肉痛が引き起こされるのだ。
「で、これね。サテン生地だから安心して」
「金持ちを見せつけてきますね」
「お金持ち関係ないと思うけど……」
何の変哲もない黒く細長い光沢のある布。雪兎はそれで俺の目を隠し、頭の後ろでキツく縛った。
今までにされた目隠しは繊維の隙間から微かに見えていたのだが、この布はそうもいかない。
そもそもが細かい繊維なのに加えて、何度か重ねて折られている。本当に何も見えない。光すらも感じられない。
「……ユキ様、そこにいますよね?」
「いるよ?」
「ですよね……目隠し、怖いです」
「あ、ポチって暗いの嫌いだっけ」
「は……い、怖い、です」
何も見えない暗闇に浮かぶ二つの光。それは少しずつ近づいてきて──
「……っ!? ユ、ユキ様……ユキ様、いますよね?」
「いるけど」
「外して、外してください。これは嫌です。お仕置きだとか言ってる場合じゃないんですよ、本当に怖いんです」
「だーめ。そろそろ克服しないとね」
「……だって、だって車が……車、が、こっちに」
突っ込んでくる、ぶつかってくる、壊れてしまう、潰れてしまう。
「ここは家の中だよ。車なんてない」
「だって……」
「何が怖いの? ポチ、まだ車に乗ったこともないでしょ?」
「え……ぁ……あぁ、そう、ですね。ポチは……」
ポチになってからは乗っていない。
ポチになってからは誰の死に目も見ていない。
ポチになってからは……ずっと、幸せだ。
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