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いっしょにいたいの

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雪兎を撫でながら考える。先程の男達は芝居を打ったのではないか、と。
雪兎に俺を嫌わせない為に、雪兎を泣き止ませる為に、あえて乱暴に俺を連れて行こうとしたのではないか。

「…………ポチ、ごめんなさい。嫌いじゃないよ、大好きだよ、ごめんね」

「ユキ様……いえ、俺が悪いんですから」

「ポチは僕のペット、僕とずっと一緒に居なきゃいけないの。ずっと、死ぬまで僕が面倒見なきゃいけないの。捨てたり殺したりしちゃダメなの」

「…………ユキ様。俺を捨てませんか?」

「捨てないっ!  絶対捨てないからぁ……約束するからぁ」

胸の中で愚図る雪兎を慰めながら、俺はぼーっと考えた。
俺はポチで、俺はペットで、俺の生殺与奪の権限は雪兎にあって、俺は雪兎の気持ち一つでどうにでもなる。
それはこの法治国家で許されるようなものとは到底思えない。けれど、俺は養子としてこの家に来ているし、殺す時は病気か事故だとでも言わせるのだろう。外から見て法律に引っ掛かるものはない──その周到さが恐ろしい。

「ポチ、ゆきのこと好き?」

「え?  え、ええ、好きですよ」

ゆき……って、ゆきって言った!?  え、一人称ゆきになってたよな今!  何それ可愛い。
俺はこの家の異常さや自分の立場の危うさ全てを忘れ、雪兎に愛を伝えた。

「大好きですユキ様。頭のてっぺんから足のつま先まで、ぜーんぶ大好きです。食べちゃいたいくらい……」

性的な意味で、ね。

「愛してます、誰よりも……俺が、ユキ様を愛してます」

俺はそう言いながら雪兎を膝に乗せ、涙に濡れた頬を舐める。雪兎はくすぐったそうに笑い、俺の背に回した手で服をきゅっと掴んだ。
その小動物的な可愛らしさが、俺の理性を奪っていく。

「ユキ様……愛してますっ……ん、ゆきっ……すき、俺が一番、雪兎を愛せる。俺が……」

「や、ちょっ……ポチ。やめてよ」

雪兎の頭をがっちりと抱き、舌を頬から耳へ移動させる。雪兎は耳が弱い、かなり敏感な性感帯だ。泣き止んだばかりで弱っていて、俺に好きだと言った今なら、耳を攻めて感じさせて、その気にさせれば──抱ける!

「何言ってるんですかユキ様……犬はこうやって、主人をっ……舐めて、愛情表現するんですよ」

「こんなの、別に嬉しくないし……」

「そう言わないでくださいよ、ご主人様」

少し声を低くして囁いて、ふっと息をかける。
雪兎の体がびくんと跳ねたのを確認して、唇を重ねる。舌は入れずに、優しく口を塞ぐだけのキスを繰り返す。

「分かりました?  ユキ様、俺がユキ様を愛してるって」

「…………分かった。ごめんね、嫌いなんて言って」

潤んだ瞳で上目遣い。それに俺の理性は弾け飛ぶ。
雪兎を抱き上げてベッドに運び、覆いかぶさる。雪兎はようやく俺の狙いを理解して、垂れた首輪の紐を引く。

「ぐっ……ぅ、ダメ、ですよ。そんなに引っぱっちゃ……あっ、苦しぃ、でしょ?」

「ならやめて!」

「は、ぁ……ねぇユキ様、俺言いましたよね、ユキ様にっ……される、ことなら、なんでも気持ちいいって。首輪……ぁ、もっと引いてみてくださいよ」

紐を絡めた手首ごと、雪兎の手を頭の上で押さえつける。
首輪がさらに引っ張られて、俺はもう声も出せなくなった。酸素がどんどんと体内から無くなっていく、頭が回らなくなる、顔が熱く、視界が白くなる。
俺はそのまま──雪兎の上に倒れた。
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