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閃光王子
十七
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アルベルトとレオンが飛行船に乗り込みフェルトへ帰っている最中、部屋に軟禁されているヴェイン公に呼ばれた。二人が部屋に入るとヴェイン公が申し訳なさそうに口を開いた。
「アルベルト君、レオン君。すまなかったな。フェルトに、そしてファルブル家に戦いを挑むなんて事はやはり無謀な行いだった。アルベルト君がいなくなった後の我が国の身の振り方を考えての事だったのだが……レオン君の力を甘く見ていた。
聞けば君は自分の力を過小評価しているようだが、決してそんな事は無い。現に君がただその場にいるだけで周囲の人間はただ立ちすくむ他無かった。アルベルト君、レオン君、そして孫へと続いて行く君達の一族はやはり大きな可能性を持った特別な一族なのだ。君達と手を組んで生きて行くのが一番だというのが今の私の結論だ。私の軍は油田から即刻撤退させよう」
レオンは照れて鼻を掻いた。
「ドーン連邦についてはどうするおつもりですか?」
「うむ……実はな、私がこの戦争を主導しているように見えたかもしれないが本当は違う。私の方はフェルト国内のブルズカンパニーと手を組んだが、もう一つの大きな力はドーンの、特にハクトウの方なのだ」
「ではヴェイン公が投降した後も、このまま油田を巡ってドーン連邦の、またはハクトウの軍勢と戦う事になるのでしょうか?」
「いや……私が撤退、というか裏切ったのを見て向こうも手を引くだろう。私がフェルトに付いた後の兵力差を考えるとな」
レオンが口を挟んだ。
「気になった事があるんですが聞いてもいいですか?」
「何かね?」
「俺を誘拐した連中の事です。最初はあなたが誘拐を依頼したと思っていたんですが、メイが別の人間に引き渡されたのを知って少し疑問に思ったんです。自分の娘を売るなんてさすがにおかしいですよね。でも演説ではあなたが父上に油田に行かないよう説得したかのような発言をしてました。どういう事なんでしょう?」
「誘拐して時間を稼ぐという目的は同じだったんだがね、私が手配した人間はチンピラのような変装をしてしばらく軟禁しておくという程度の物だったんだ。しかし少し雑だったようでね、荒っぽくなってしまった上に反撃した君達に返り討ちに遭ってしまったのだよ」
「え? じゃあ最初に襲って来たのがヴェイン公の手配した人間て事ですか?」
「そうだ。しかしその後君達は違う人間が手配した者達に誘拐された。実際に君達を監禁していたのは同じタイミングでドーン側が用意した人間だ。しかし向こう側が用意した人間はレオン君以外はどうでもよかったらしく、メイは金のため別の人間に引き渡されてしまった。向こうもまさかそんな行動に出るとは思ってなかったらしい。それでサソリ君に頼んで救出してもらったのだ」
「本当に危なかったんですね」
アルベルトは窓際に立って眼下に広がるフェルトを眺めた。
「ガラハドといってフェルトのクーデターに加担していた人物でした。私の父の死にも関わっていた男です」
グリードは目を見開いた。
「鳥肉を爆弾に変える魔法使いのグレイと行動を共にしていた男か! そんなに危険な連中を雇うとは……パーン大佐は何を考えているんだ!」
「パーン大佐?」
「奴等を手配したハクトウ軍の大佐だよ。メイを嫁がせようとした男だ。姓は分からないが父親も軍人だったそうでな。なかなか優秀な男だと思っていたんだが……ガラハドと繋がりがあったとはな」
グリードはため息をついた。
「今回は私がした事はことごとく裏目に出てしまった。何か埋め合わせができるといいんだが……」
レオンは少し考えて口を開いた。
「あっじゃあ一つ用意して欲しい物があります」
「何かな?」
「アルベルト君、レオン君。すまなかったな。フェルトに、そしてファルブル家に戦いを挑むなんて事はやはり無謀な行いだった。アルベルト君がいなくなった後の我が国の身の振り方を考えての事だったのだが……レオン君の力を甘く見ていた。
聞けば君は自分の力を過小評価しているようだが、決してそんな事は無い。現に君がただその場にいるだけで周囲の人間はただ立ちすくむ他無かった。アルベルト君、レオン君、そして孫へと続いて行く君達の一族はやはり大きな可能性を持った特別な一族なのだ。君達と手を組んで生きて行くのが一番だというのが今の私の結論だ。私の軍は油田から即刻撤退させよう」
レオンは照れて鼻を掻いた。
「ドーン連邦についてはどうするおつもりですか?」
「うむ……実はな、私がこの戦争を主導しているように見えたかもしれないが本当は違う。私の方はフェルト国内のブルズカンパニーと手を組んだが、もう一つの大きな力はドーンの、特にハクトウの方なのだ」
「ではヴェイン公が投降した後も、このまま油田を巡ってドーン連邦の、またはハクトウの軍勢と戦う事になるのでしょうか?」
「いや……私が撤退、というか裏切ったのを見て向こうも手を引くだろう。私がフェルトに付いた後の兵力差を考えるとな」
レオンが口を挟んだ。
「気になった事があるんですが聞いてもいいですか?」
「何かね?」
「俺を誘拐した連中の事です。最初はあなたが誘拐を依頼したと思っていたんですが、メイが別の人間に引き渡されたのを知って少し疑問に思ったんです。自分の娘を売るなんてさすがにおかしいですよね。でも演説ではあなたが父上に油田に行かないよう説得したかのような発言をしてました。どういう事なんでしょう?」
「誘拐して時間を稼ぐという目的は同じだったんだがね、私が手配した人間はチンピラのような変装をしてしばらく軟禁しておくという程度の物だったんだ。しかし少し雑だったようでね、荒っぽくなってしまった上に反撃した君達に返り討ちに遭ってしまったのだよ」
「え? じゃあ最初に襲って来たのがヴェイン公の手配した人間て事ですか?」
「そうだ。しかしその後君達は違う人間が手配した者達に誘拐された。実際に君達を監禁していたのは同じタイミングでドーン側が用意した人間だ。しかし向こう側が用意した人間はレオン君以外はどうでもよかったらしく、メイは金のため別の人間に引き渡されてしまった。向こうもまさかそんな行動に出るとは思ってなかったらしい。それでサソリ君に頼んで救出してもらったのだ」
「本当に危なかったんですね」
アルベルトは窓際に立って眼下に広がるフェルトを眺めた。
「ガラハドといってフェルトのクーデターに加担していた人物でした。私の父の死にも関わっていた男です」
グリードは目を見開いた。
「鳥肉を爆弾に変える魔法使いのグレイと行動を共にしていた男か! そんなに危険な連中を雇うとは……パーン大佐は何を考えているんだ!」
「パーン大佐?」
「奴等を手配したハクトウ軍の大佐だよ。メイを嫁がせようとした男だ。姓は分からないが父親も軍人だったそうでな。なかなか優秀な男だと思っていたんだが……ガラハドと繋がりがあったとはな」
グリードはため息をついた。
「今回は私がした事はことごとく裏目に出てしまった。何か埋め合わせができるといいんだが……」
レオンは少し考えて口を開いた。
「あっじゃあ一つ用意して欲しい物があります」
「何かな?」
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