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第四章 対抗試合! 茶道部に勝て
4-9 七瀬一葉VS村雨初音
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「わたくしが先鋒なのですね。緊張します」
村雨さんはうつむいて前髪に瞳が隠れてしまった。
「よろしくっす! わたし、七瀬一葉」
握手を求める彼女の指は絆創膏だらけ。
「お怪我をされているのですか」
「えへへへ。ネコちゃんがね」
「七瀬さんはネコ好きなのですが、なぜかネコから好かれない性格でして」
九条さんが憐れみを込めて補足説明する。
「そうだったのですね」
会場が温まったところで対戦がはじまった。
七瀬さんの持ちキャラクターはアサシンのヴェスミランだ。原作小説では第三巻に登場。主人公たちと死闘を繰り広げた。
対する村雨さんはアークメイジの紗良・ファーレイ。原作小説では第四巻に登場。東方の守護者とも云われる世界に三人しかいないアークメイジのひとりである。原作では戦闘シーンはなかったが、このゲームでプレイアブルキャラクターに昇格した。
ヴェスミランは接近戦を得意とするテクニカルキャラクター。
紗良は式神を駆使して戦ういわゆる設置系キャラクターだ。
※設置系キャラクターとは格闘ゲームにおいてヨーヨーや糸などのアイテムを設置して、連係必殺技を発動するキャラクター。
わたしたちは普段携帯型ゲーム機にダウンロードしたMODをプレイしているけど鳳女子茶道部は据え置き型ゲーム機をテレビに接続して対戦しているらしい。
テレビモニタは大迫力だ。
第一ラウンド。開始三秒。七瀬さん操るヴェスミランのジャンプ強キックからのコンボ(連続技)が極まった。
立ちパンチからまったく隙なく必殺技『シャドウエッジ』が発動する。
「いまのは……?」
わたしこと鳴海千尋は姫川さんを振りかえった。
「キャンセルよ。ほとんどの格闘ゲームでは通常技のモーション中にコマンドを入力すると通常技のモーションをキャンセルして必殺技をだせるの。これをキャンセルと呼ぶ。コンボにはキャンセルが必須」
姫川さんが説明する。
「わたし、できません」
わたしは思わずつぶやいた。
「鳴海さんたち一年生組との対戦ではあえて見せなかったの。自分には無理だって思ってほしくなかった」折笠さんがわたしを気遣った。
防戦一方の村雨さん。一ラウンド目はとられてしまった。
「ああっ、このままじゃ……」
わたしは情けない声をあげたが、姫川さんたち上級生は試合を静観している。
「村雨さん、目が死んでない」
「なにか狙ってるわね」
二戦目。七瀬さんは開始直後に一ラウンドと同じ連続技を狙ったが、村雨さん操る紗良は確実にガードした。村雨さんのガード効率が上がっている。接戦になった。ライフは互角。
そして確実に式神を設置していく。気がつけば四つの式神がヴェスミランを囲っていた。ヴェスミランはたまらず宙に逃げる。その隙を村雨さんは見逃さなかった。
超必殺技『四神降臨』発動。画面が暗転する。式神の設置数に合わせて威力が上がる技だ。最大数の式神を設置したのでガード無効化される。直撃したヴェスミランのライフは残り数ドット。そのとき紗良のライフも残りわずか。
「やった!」
わたしは思わず叫んだ。
その刹那。吹っ飛ばされたヴェスミランが地面に着地する瞬間。
ヴェスミランはダウン回避(AB同時押し)から猛ダッシュで距離を詰める!
たまらず村雨さんがガード方法にレバーを入力すると七瀬さんは不敵に笑った。
ヴェスミランの投げが紗良に極まる。投げはガード不能なのだ。KOだった。
つづく
村雨さんはうつむいて前髪に瞳が隠れてしまった。
「よろしくっす! わたし、七瀬一葉」
握手を求める彼女の指は絆創膏だらけ。
「お怪我をされているのですか」
「えへへへ。ネコちゃんがね」
「七瀬さんはネコ好きなのですが、なぜかネコから好かれない性格でして」
九条さんが憐れみを込めて補足説明する。
「そうだったのですね」
会場が温まったところで対戦がはじまった。
七瀬さんの持ちキャラクターはアサシンのヴェスミランだ。原作小説では第三巻に登場。主人公たちと死闘を繰り広げた。
対する村雨さんはアークメイジの紗良・ファーレイ。原作小説では第四巻に登場。東方の守護者とも云われる世界に三人しかいないアークメイジのひとりである。原作では戦闘シーンはなかったが、このゲームでプレイアブルキャラクターに昇格した。
ヴェスミランは接近戦を得意とするテクニカルキャラクター。
紗良は式神を駆使して戦ういわゆる設置系キャラクターだ。
※設置系キャラクターとは格闘ゲームにおいてヨーヨーや糸などのアイテムを設置して、連係必殺技を発動するキャラクター。
わたしたちは普段携帯型ゲーム機にダウンロードしたMODをプレイしているけど鳳女子茶道部は据え置き型ゲーム機をテレビに接続して対戦しているらしい。
テレビモニタは大迫力だ。
第一ラウンド。開始三秒。七瀬さん操るヴェスミランのジャンプ強キックからのコンボ(連続技)が極まった。
立ちパンチからまったく隙なく必殺技『シャドウエッジ』が発動する。
「いまのは……?」
わたしこと鳴海千尋は姫川さんを振りかえった。
「キャンセルよ。ほとんどの格闘ゲームでは通常技のモーション中にコマンドを入力すると通常技のモーションをキャンセルして必殺技をだせるの。これをキャンセルと呼ぶ。コンボにはキャンセルが必須」
姫川さんが説明する。
「わたし、できません」
わたしは思わずつぶやいた。
「鳴海さんたち一年生組との対戦ではあえて見せなかったの。自分には無理だって思ってほしくなかった」折笠さんがわたしを気遣った。
防戦一方の村雨さん。一ラウンド目はとられてしまった。
「ああっ、このままじゃ……」
わたしは情けない声をあげたが、姫川さんたち上級生は試合を静観している。
「村雨さん、目が死んでない」
「なにか狙ってるわね」
二戦目。七瀬さんは開始直後に一ラウンドと同じ連続技を狙ったが、村雨さん操る紗良は確実にガードした。村雨さんのガード効率が上がっている。接戦になった。ライフは互角。
そして確実に式神を設置していく。気がつけば四つの式神がヴェスミランを囲っていた。ヴェスミランはたまらず宙に逃げる。その隙を村雨さんは見逃さなかった。
超必殺技『四神降臨』発動。画面が暗転する。式神の設置数に合わせて威力が上がる技だ。最大数の式神を設置したのでガード無効化される。直撃したヴェスミランのライフは残り数ドット。そのとき紗良のライフも残りわずか。
「やった!」
わたしは思わず叫んだ。
その刹那。吹っ飛ばされたヴェスミランが地面に着地する瞬間。
ヴェスミランはダウン回避(AB同時押し)から猛ダッシュで距離を詰める!
たまらず村雨さんがガード方法にレバーを入力すると七瀬さんは不敵に笑った。
ヴェスミランの投げが紗良に極まる。投げはガード不能なのだ。KOだった。
つづく
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