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第四章 対抗試合! 茶道部に勝て

4-2 名前が美しいです!

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 姫川さんがいうことには、八月にペルセウス座流星群の観測をほかの学校の天文部と合同でする。星の観測は夜やるので、太陽が沈むまでの間、格闘ゲームで対抗試合をするということだ。

 星の観測というものは都会では光害があってよく見えない。

 おおとり女学院はこういう言い方はなんだが、光害のない田舎らしい。鳳女学院の屋上を借りて合同で星の観測をする。

 鳳女学院に姫川さんの知り合いがいて、彼女も格闘ゲームをするらしい。
彼女の名は九条沙織。茶道部部長でありながら鳳女子の生徒会長を兼任しているそうだ。すごい。

「その九条さんとはどこでお知り合いになったのですか?」
 わたしこと鳴海千尋は姫川さんに疑問を投げかけた。

「都内のゲームセンター。クレーンゲームにしか興味がないお客たちの中で平然と新作格闘ゲームをやりこんでいたわ。しかも連コインで」

※連コイン……コインを積み重ねてコンティニューを繰りかえす行為。

「そこで対戦して意気投合してRINNE交換したの」

※RINNE(リンネ)……この世界のSNSアプリ。

「お顔が広いんですね」
 村雨さんが称賛する。

「顔がヒロイン! 良いこというわね」
 姫川さんが天を指さす。この人の場合、本当に美少女なんだよなあ。

「ヒメ。謙虚って言葉知ってる?」
 折笠さんが問う。

「母親の子宮のなかに置いてきました」
「納得だわ」
 姫川さんと折笠さんは本当に息があってるなあ。

「ところで負けたらペナルティとかあるんですか」
 村雨さんからも矢継ぎ早に質問がでる。

「あいつらのSNSにうちらが弱いって書き込まれるだろうね」
「それは負けられませんね」

「わたしどうしよう。迷惑かけちゃうかもしれない」

「鳴海さん、なにも気にしないでいいのよ。あたしたちは楽しくゲームができればそれでいいの。そのためにeスポーツ部を設立しようとしているの。
 実はね。去年もeスポーツ部を発足するためにメンバー集めはしたの。でも、大会で結果を残すことに固執した一部の人たちとは訣別してあたしたちはいまのメンバーを集めた。あの人たちギスギスしてたから。そういうのはこの部ではなし。
 流星群当日は一日かけて相手の学校に移動します。田舎だからね。鳳女学院は全寮制なのでお風呂や食堂もあります。そこに寝泊まりして対戦と天体観測をします。なにか質問は?」

「対戦するのは九条さんだけなのですか?」
 村雨さんは律義にもメモを取りながらミーティングに参加している。

「いえ、格闘ゲームをたしなむ茶道部のメンバーが相手よ。九条さんは弱キャラの研究が好きで、弱いキャラで格上のキャラに勝つのが好きという男気に溢れた人。女子だけど。
 ほかのメンバーは七瀬一葉いちようと二ノ宮れん。七瀬は基本的に強キャラしか使わない。腕もいいから手ごわいよ。恋ちゃんは天才肌でどのキャラクターも使いこなす」

「なんてことかしら……!」
 村雨さんが驚愕の声をあげる。

「どうしたの。村雨さん⁉」
 村雨さんの驚きっぷりにわたしまで驚いてしまった。

「名前が美しいです。わたくしの小説に採用したいくらいです。超伝奇バイオレンスやジュヴナイル小説に登場しそうな名前です! その三人は超能力を使えますか? 世界の終末をかけて異能力者と闘っていますか?」

「聞いたことないけど、RINNEで聞いてみる」
 村雨さんのぶっ飛んだ質問を姫川さんはそのまま九条さんにRINNEで送った。


【お疲れ様~姫川です。突然だけど九条さん超能力使える?】

 姫川さんのスマホをみんなで覗きこんだ。しばらくして返信があった。

【初夏の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。ご質問に関して回答させていただきます。スプーンは力ずくで曲げられます。そのほか、寝ぐせで本日の湿度がわかります。超能力が使えることがバレてしまったので故郷のアンタレスに帰投します】

 九条さんからの返信は長文で必要以上に礼儀正しかった。そしてふざけていた。ちなみにアンタレスとはさそり座を構成する一等星。さそり座で一番明るい星である。

「使えるみたいネ!」
 姫川さんは一同を振りかえった。

「ズコー!」
 令和に昭和時代のズッコケをしてしまった。
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