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第二章 バスケ部からの逃亡者
2-1 村雨さんどうしてバスケ部入っちゃったの⁉
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わたしこと鳴海千尋が女子校である琴流女学院に入学して一ヶ月。
わたしは学校の授業が終わると天文部の部室に行き、天文部の先輩である姫川さんに格闘ゲームの指導を受けることになった。
プレイしているゲームは『メディウム・オブ・ダークネス』通称MOD。
ライトノベル原作の格闘ゲームである。
原作小説は『セカイが壊れるオトがする -Medium of Darkness-』という。治癒魔法だけが発動しない魔法世界で癒やしの女神を復活させるために冒険をする物語だ。
このゲームは『セカイが壊れるオトがする』の登場キャラクターを格闘ゲームに落とし込んでいる。レバー+ABCDの四ボタンの操作で実に多彩なアクションがだせる。
Aが小パンチ、Bが小キック、Cが強パンチ、Dが強キック。これにレバー操作を組み合わせて必殺技がだせるようになっている。必殺技のコマンドはキャラクターによって特徴がある。ライフゲージのほかに必殺技ゲージがあり、これがたまると超必殺技をだせる。
コマンドとは格闘ゲームの操作キャラクターの必殺技をだすための入力キーのこと。たいていのキャラクターは下・右下・右+パンチボタンなどのコマンド入力で技がでるようにプログラムされている。わたしは指だこができるまでコマンドを練習したが、ままならなかった。
「先輩、コマンドがでません……」
「あたしのことは姫川さんでいいわよ」
そう言ったのは天文部部長の姫川天音さん。天文部を隠れ蓑にeスポーツ部を立ち上げる野望を持つ。見た目は聖少女なのにわがまま暴君。
「キャラクターを変えてみましょうか」
そう提案したのは折笠詩乃さん。天文部副部長。彼女も美少女だが姫川さんとはタイプが違う。姫川さんがスリム体形なのにたいして、折笠さんはグラマラス体形で包容力がある。
「溜めキャラなんていいんじゃないかしら」
折笠さんに勧められて溜めキャラのベルナディスを選ぶことにした。
溜めキャラとは入力キーを一定方向に溜めてからコマンドを入力して技をだすキャラクターのことである。
溜めキャラとは相性が良いみたいで必殺技がだせるようになりつつあった。
でも、こんなことで大会なんてでられるのかなあ。
姫川さんたちは格闘ゲームの大会GEBOに出場して実績をつくるつもりなのだ。
天文部顧問である護国寺先生にはもちろん秘密である。
五月の半ばになりかけたころ。わたしはいつものように教室で午後のホームルームを聞きながら教室全体を眺めていた。隣の席の女の子が寄りかかってきた。どうしたんだろう。
「村雨さん? どうしたの」
彼女に呼びかけると村雨さんは虚ろな目で応えた。
村雨さんはわたしの席の隣で、色白で黒髪長髪、前髪を上品に額の中央でわけている。前髪が長く影が薄く見えるが、顔だちを見ると目鼻立ちがよく、器量よしである。言葉遣いが丁寧なお嬢さんだ。ブルーフレームの眼鏡に隠された瞳も大粒。
色白で、顔にほくろが三つもあるが左目のまぶたの上、くちびるの下、左あごに奇跡の三角形に配置されていて彼女の個性を魅力的にするのに一役買っていた。
「部活……部活に行かなくては……」
彼女の声はようやく聴きとれるほどか細かった。
「部活? 村雨さん何部だっけ?」
「バ……バスケ部。はぁはぁ」
彼女は苦しそうに胸を押さえた。
「大変! 先生! 村雨さんが……」
わたしが声をあげようとすると村雨さんは必死の表情で制止した。
「いいの。部活に行かないと先輩に殺されるから」
「殺されるってどういうこと⁉」
声を荒らげたわたしを先生が見とがめた。
「そこ、うるさいぞ」
いったんホームルームが終わってから詳しい事情を訊くと、彼女が所属するバスケ部では朝練・昼練・夕方練、そして夜練。土日祝日返上で練習しているらしい。
村雨さんは入部以来、一日も休日がなかったらしい。練習のし過ぎだ。明らかにブラック部活である。
はっきりいって村雨さんは運動部向けの性格をしていないし、体つきも華奢である。
どうしてバスケ部入っちゃったんだろう。
中間テスト前の数日間、一般の生徒は勉強のため授業がないのだが、その期間も練習するらしい。さらにテスト当日の午後も練習の予定が入っているという。そんなに練習してなんになるんだろう?
村雨さんは明らかに顔色が悪い。今日はお休みするように忠告したのだが彼女は礼をいいながら部活棟に向かってしまった。
大変だ。彼女を救うことはできないだろうか?
この一件でわたしは姫川さんの『聖少女暴君』としての一面を垣間見るのであった。
※『セカイが壊れるオトがする -Medium of Darkness-』はうお座の運命に忠実な男の関連作品です。小説家になろうサイト、カクヨムサイトにて全話公開されています。この作品に登場する架空の格闘ゲームは作者の前作の世界観がモチーフですが、予備知識ゼロでも楽しめるよう工夫されています。
わたしは学校の授業が終わると天文部の部室に行き、天文部の先輩である姫川さんに格闘ゲームの指導を受けることになった。
プレイしているゲームは『メディウム・オブ・ダークネス』通称MOD。
ライトノベル原作の格闘ゲームである。
原作小説は『セカイが壊れるオトがする -Medium of Darkness-』という。治癒魔法だけが発動しない魔法世界で癒やしの女神を復活させるために冒険をする物語だ。
このゲームは『セカイが壊れるオトがする』の登場キャラクターを格闘ゲームに落とし込んでいる。レバー+ABCDの四ボタンの操作で実に多彩なアクションがだせる。
Aが小パンチ、Bが小キック、Cが強パンチ、Dが強キック。これにレバー操作を組み合わせて必殺技がだせるようになっている。必殺技のコマンドはキャラクターによって特徴がある。ライフゲージのほかに必殺技ゲージがあり、これがたまると超必殺技をだせる。
コマンドとは格闘ゲームの操作キャラクターの必殺技をだすための入力キーのこと。たいていのキャラクターは下・右下・右+パンチボタンなどのコマンド入力で技がでるようにプログラムされている。わたしは指だこができるまでコマンドを練習したが、ままならなかった。
「先輩、コマンドがでません……」
「あたしのことは姫川さんでいいわよ」
そう言ったのは天文部部長の姫川天音さん。天文部を隠れ蓑にeスポーツ部を立ち上げる野望を持つ。見た目は聖少女なのにわがまま暴君。
「キャラクターを変えてみましょうか」
そう提案したのは折笠詩乃さん。天文部副部長。彼女も美少女だが姫川さんとはタイプが違う。姫川さんがスリム体形なのにたいして、折笠さんはグラマラス体形で包容力がある。
「溜めキャラなんていいんじゃないかしら」
折笠さんに勧められて溜めキャラのベルナディスを選ぶことにした。
溜めキャラとは入力キーを一定方向に溜めてからコマンドを入力して技をだすキャラクターのことである。
溜めキャラとは相性が良いみたいで必殺技がだせるようになりつつあった。
でも、こんなことで大会なんてでられるのかなあ。
姫川さんたちは格闘ゲームの大会GEBOに出場して実績をつくるつもりなのだ。
天文部顧問である護国寺先生にはもちろん秘密である。
五月の半ばになりかけたころ。わたしはいつものように教室で午後のホームルームを聞きながら教室全体を眺めていた。隣の席の女の子が寄りかかってきた。どうしたんだろう。
「村雨さん? どうしたの」
彼女に呼びかけると村雨さんは虚ろな目で応えた。
村雨さんはわたしの席の隣で、色白で黒髪長髪、前髪を上品に額の中央でわけている。前髪が長く影が薄く見えるが、顔だちを見ると目鼻立ちがよく、器量よしである。言葉遣いが丁寧なお嬢さんだ。ブルーフレームの眼鏡に隠された瞳も大粒。
色白で、顔にほくろが三つもあるが左目のまぶたの上、くちびるの下、左あごに奇跡の三角形に配置されていて彼女の個性を魅力的にするのに一役買っていた。
「部活……部活に行かなくては……」
彼女の声はようやく聴きとれるほどか細かった。
「部活? 村雨さん何部だっけ?」
「バ……バスケ部。はぁはぁ」
彼女は苦しそうに胸を押さえた。
「大変! 先生! 村雨さんが……」
わたしが声をあげようとすると村雨さんは必死の表情で制止した。
「いいの。部活に行かないと先輩に殺されるから」
「殺されるってどういうこと⁉」
声を荒らげたわたしを先生が見とがめた。
「そこ、うるさいぞ」
いったんホームルームが終わってから詳しい事情を訊くと、彼女が所属するバスケ部では朝練・昼練・夕方練、そして夜練。土日祝日返上で練習しているらしい。
村雨さんは入部以来、一日も休日がなかったらしい。練習のし過ぎだ。明らかにブラック部活である。
はっきりいって村雨さんは運動部向けの性格をしていないし、体つきも華奢である。
どうしてバスケ部入っちゃったんだろう。
中間テスト前の数日間、一般の生徒は勉強のため授業がないのだが、その期間も練習するらしい。さらにテスト当日の午後も練習の予定が入っているという。そんなに練習してなんになるんだろう?
村雨さんは明らかに顔色が悪い。今日はお休みするように忠告したのだが彼女は礼をいいながら部活棟に向かってしまった。
大変だ。彼女を救うことはできないだろうか?
この一件でわたしは姫川さんの『聖少女暴君』としての一面を垣間見るのであった。
※『セカイが壊れるオトがする -Medium of Darkness-』はうお座の運命に忠実な男の関連作品です。小説家になろうサイト、カクヨムサイトにて全話公開されています。この作品に登場する架空の格闘ゲームは作者の前作の世界観がモチーフですが、予備知識ゼロでも楽しめるよう工夫されています。
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