GATEKEEPERS  四神奇譚

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第三部

第六幕 沿岸部研究施設内

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風が滑るように強く通路を吹き抜けたのに、亜希子がハッと息をつくと辺りを見渡す。亜希子の様子に気がついた看護師と和希が振り返り、同時に辺りの空気が変わったのにも気がつく。多賀亜希子はそれを構うでもなくグルリと視線を動かして何かを追う仕草をするのに、気がついた看護師が戸惑いを浮かべた。

「亜希子?」
「待って…………、他にも……施設の中を歩き回ってる人がいるわ…………。」

それってこの風に関係する?と和希が聞くと、そうねと亜希子は更に足元を見透かすように視線を動かす。亜希子の赤い縁の眼鏡が光を反射して、一瞬彼女の瞳が自然に青く光ったように輝く。

「この階じゃなくて地上……でもないのね、……地下……ね。」

その言葉に看護師が凍りつく。
実は施設の案内板なんてものは、地上の建物にはほんの僅か体裁を整える程度にしか存在しない。地上三棟が横並びに建てられ廊下数本で繋がる建物は、外装は一見すると古めかしく見えるようにわざと作られている。ところが、内部は古そうに見せかけていても、異常な程に気密性も高い近代的設備。特に真ん中の建物の内部は、完全な近代施設なのだ。それに三つの建物の中で地下の設備に降りられるのは実は今いる真ん中の一棟だけで、それは地上の建物の案内板には一つも記載されていない。しかも一見すると分からない作りの管理扉を二つ抜けた特殊な通路かエレベーターで降りないと、地下の棟にはいけないのだ。地下の施設の方が実は地上より広大で、看護師で隔離設備に入れても設備の全ては分からない。正直なところその設備に勤務していて、地下から殆ど上がってこない人間もいるとかいう噂まである。大体にしてこの施設の所長の東条ですら、就任の際の訓示でしか顔を見たことがない位なのだ。

「…………そう言えば看護師さんは、何で集められたところに行かなかったの?」

不意に問いかけられた言葉に、看護師は更に驚いたように何故知っているの?と不安気に呟く。確かに実は朝に看護師に地下施設の会議室に集まるよう連絡があった。だがこれこそ好機とトイレで息を潜めて隠れてやり過ごして、動き回る人気が減ったところで看護師は密かに地下にある監視室に忍び込んだのだ。だけど隔離されている人間には隔離室の外の放送は聞こえない筈だったし、大体にしてそれは放送でもない口頭での連絡だった。

「ああ、ごめんなさい。…………聞こえてると思わないわよね。私、凄く耳が良いの。」

バカなことを。凄く耳がよいで簡単には済まされる筈ではないと、我に返ってしまったら逆にここでこの二人といる現実にパニックになりそうだ。

ここに収監されるのは人間と思わないように。

あの気持ちの悪い蛇のような目をした所長に言わせると、ここに来る予定なのは人間の皮を被った化け物だという。そんなのは妄想か過剰表現だと、配属の訓示を聞いて誰もが考えた。国家公務員として看護師をしていたが配属を承諾すればそれまでの給料の倍。そんな破格の高給だったから迷わなかったのに、こんな奇人変人の部下だなんて・だから高給なのかと誰もが同じことを考えたし、最初はマトモな仕事すらなくて感染予防のプロテクターの訓練ばかり。てっきりこれから感染リスクの高い病原菌を持った病人を研究するから、人間と思うなというのだと考えすらしていた。

ちょっと、見た?隔離AからC。

何の変哲もない若い青年ばかり三人もあのとんでもない隔離室にいれられて、もう一人は地下の研究室から移せなくてDに入れられないとぼやくのを聞いた。入れられないってなに?そう思ったけど、誰も研究室には近づけないから、真実は四人目はいないで看護師達は話を終えたくらいだ。
隔離Cの金髪の青年に部屋が暑いだろと謝られたのには驚いたが、部屋が暑いのは空調のせいで青年が謝ることじゃない。しかもその部屋に入る装備は別空調の空気だから、自分には室温は問題がなくて。でもそんなことを気にかけてくれる青年の方が、あの所長よりずっと親切そうで人間臭くて嫌いになれないくらい。

人間だと思わないように

冗談でしょと誰もがずっと思ってたけれど、自分が『ロキ』に頼まれた事を済ませて看護師が現実に目にしたのはまさに人間以外の存在が起こした地獄だった。ゲームや映画のように、人間ではないものが人間に襲いかかる世界。ナースステーションの窓から敷地内を地下から逃げてきた研究員らしい人間が、脱兎の如く逃げ惑う。

あれってどういうこと?

逃げた方がいいのかと頭に浮かべた途端、不定形生物が追いかけてきて研究員が悲鳴をあげて襲われ溶かされるのを呆然と見つめた。実際には何処かに地下から直通の出入り口があるのかもしれないと思ったのは、他にも何人かが敷地に飛び出してきたからだ。だけど、逃げてきたものは皆同じ末路を辿るのを彼女は声も出せずに見ていた。同時に突然集められていた筈の看護師が能面みたいな顔で半分フラフラしながら戻ってきて、施設を歩き回り他の集められていなかった職員を容赦なく殴って昏倒させて引きずっていく。看護師だから薬品の取り扱いにも長けていて麻酔を使って昏倒させられた様子の人間もいれば、素手で殴られ殴った方の看護師の手がグチャグチャになっているのも見た。だけど、同僚だった筈の看護師は痛みすら感じていないし、よく見ればその目は死人と同じで白濁している。

目が見えてない。

それに先に気がつけたのは、幸運だった。同僚だった人達は既に看護師も警備も関係なくて声を出したり走ったりすると顔を向けて襲ってきて、生きてようが死んでようが構わず廊下の奥・地下に向かって人を引きずっていくのだ。おまけに外に出ると足音に反応して不定形が襲ってくるのもいるのが分かっていて、看護師は逃げることも出来ずに震えながらあの場所に踞り何分なのか何時間なのか分からない地獄のような時間を過ごしていた。
そして目の前の女性は時折奇妙な動きをしてそれが元同僚の動きに少し似ている上に、尚且つ隔離されていたら知る筈のない事を知っている。この女性の部屋には入ったことがないが本当に隔離されていた人間だろうか、そう疑問にもったら今にも駆け出して逃げ出したくなっているのに気がつく。私服で現れた金髪の人のよさそうな青年と、穏やかな様子の女性。でも二人が人間なのかどうなのか調べる術もない。

「怯えてるよ、亜希子。」
「…………そうよね、じゃあ自分でいくわ。看護師さんは逃げて良いから鍵をちょうだい。」

サラリとそういわれて彼女は当然のように白い手を差し出した。
ここで鍵を渡しても、既に中の人間はとうに食われて死んでいるかも、他の看護師に引きずり出されて連れていかれているかも、でも部屋は防音だからまだ中にいて、しかも死んでいなかったら?もし彼女が本当は人喰いの化け物だったら?それに自分が鍵を渡したら、自分は人殺しを手助けしたことにはならないだろうか。それとも鍵を渡して逃げるのが一番だろうか。その疑問がありありと看護師の顔に浮かび上がったのに、溜め息混じりに横にたつ青年が困ったなと言いたげな顔をする。



※※※



経路を確めて連れだって歩き続け既に二つ目の部屋の起動停止をして二人目の青年を解放したばかり、残りはこの先の残り一つの未だに稼働している部屋だ。

「隔離Aですって、芸がないネーミングよね?そう思わない?」
「ほんとさ、姉さんって暢気だよね、俺はどっちの兄さんも神様過ぎて怖くて死にそうだよ。」

ふったち曰く槙山忠志も宇佐川義人も自分のような『間の子』、混じり物ではないのだという。あれでよく生きてられるよ、体が弾けとんでもおかしくないなんて言うからには、何かの純度が高いということなのだ。それがふったちの目にはどう見えるのか、ロキにはまるで想像も出来ない。でも少なくともあと一人は居るわよといったら、ふったちはウンザリした顔で来なきゃ良かったと呟く。本当は『ロキ』の伴侶かついてくる筈だったのに、街の騒動と政治家が絡んで大騒ぎなので街の方を任せたのだ。街では花街が大騒動になっているから、情報統制が得意な『ロキ』の伴侶の力はどうしても必要だったろう。

「怖くて死ぬならとっくに何回か死んでるくせに。」
「あのさぁ、そういうのとは…………。」

不意にふったちの声が凍る。しかもゾワゾワと見る間に全身に鳥肌をたてて、この施設の地下部分の外周を回る通路を勢いよく振り返ったかと思うとヤバいと呻くように呟く。ここまでの道のりはふったちの悪食のお陰で、殆ど何も起きていないに等しい。不定形生物も看護師ゾンビもふったちにしてみれば大した差ではなくて、大概が顔を見るなと言った次の瞬間にふったちの不味いという悪態とともに消え去っている。基本的には悪食とはいっても生でなんか食わないとブツブツいうから、普段の表だった仕事の時みたいに調理すればと『ロキ』が言ったら下拵えだけでウンザリしそうな臭いだから嫌だと不貞腐れていた。ところが、今のふったちはまるで部屋に閉じ込められていた青年達と顔を会わせた時のように青ざめている。

「ねぇさん!急いで早くっ!」

驚く彼女をふったちは慌てて肩にヒョイと米俵のように担ぐと、それこそ脱兎の如く目的地に向かって駆け出す。後ろ向きに何なのよと叫ぶ彼女の視線の先に、何でか暗闇がそれこそ今自分達が歩いてきた奥から音もなく忍び寄ってきていて、それが頭上の電気が消しながら追ってきているのだと気がついた。

「ねぇさん!早く最後の部屋の起動停止して!!あれはヤバい!俺喰えない!神様擬きなんか喰ったら俺の方が殺られちゃうよっ!!」

悪食だと自分を称して、大概の化け物であれば怖くもなんともない。それはふったちに言わせれば、曰くの深い血筋を重ねている力が強い化け物が自分いうことなのだという。その経立ですら、あの青年達並みに駄目だと感じるものが、悪意を放ちながら追いかけてきている。

「解放に来たの、ばれたのねぇ。」
「ほんと、ねぇさんってマイペースだなぁっ?!!」

意図は理解できなくても背後からにじり寄って来ているものが危険で、目下ホラー映画の死亡フラグというやつがという奴が背後からせまってきているのだけは流石に沸き上がる冷や汗からわかる。端末の操作だけが生きているのが何よりだけどと、揺れる肩の上で端末を操作し続ける彼女の視界に闇は見る間に迫ってきていた。



※※※



「鍵をちょうだい、看護師さん。」

ヒヤリとするような繰り返される言葉に、手に握ったままの鍵が掌に食い込むのを感じる。地上の隔離病室に殆ど回ってきていないが、確か後何人か高校生まで含めた人間が隔離されていると聞いていた。自分にだって暫くあっていないが、歳の離れた高三になる弟がいる。それを考えると彼女の言うがまま鍵を渡してしまっていいのか、それが判断できなくて凍りついてしまう。
それに青年がどうする?と問いかけるのに、彼女は静かに暫く思案した様子をうかがわせたかと思うと深い溜め息をついた。

「仕方がないわね…………」

仕方がないってどういうこと?そう考えた途端に、目の前の彼女の瞳が完全に青く光っているのに気がつく。まるで蛇に睨まれた蛙のように、視線を離すこともできず吸い込まれるようにその瞳を覗きこむ。
深淵の縁のよう深く暗く、しかも所長の東条に似ているけれど完全な蛇の瞳。それが自分の意識を取り込んでしまう。逃げ出したくても全く逆らうこともできないで、このまま他の人間のように頭から溶かされて食べられてしまうのだと絶望する。そうでなければ蛇のように頭から飲み込まれ、腹の中で溶かされるのだ。あまりにも深くて強い絶望に、思考を手放し、やがては意識すら失っていた。

気がついたら、そっと息を殺して、逃げるの、音をたてずに

深淵の淵でそんな声が囁くのに、彼女はハッと我に返った。気がつくといつの間にか敷地の外れのフェンスが破れたところに立っていて、敷地から足を踏み出そうとしてる自分の足が勝手にそこから敷地の外に踏み出していく。敷地から逃れた途端、意識はハッキリして白衣姿の彼女は背後の幽霊屋敷のような建物を振り返った。

私、どうやってここに?

意識のない状態で中央の棟から端の棟を通り、しかも不定形が蠢いている筈の敷地を通り抜けていた。悲鳴をあげそうになるのに、頭にこびりついた声が音をたてずにと繰り返す。

あの二人は?

そう考えた瞬間、自分だけが手にしていた筈の鍵が消えているのに気がつく。そうして彼女はジリと後退り音をたてないように、息を潜めてその場を無意識に離れ始めていた。

ヒョウ

無意識に歩き続ける看護師の背後で、ほんの微かな何かが哭く声が古めかしい建物の中から響いている。
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