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第二部
第七幕 都立第三高校 外環
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校舎に沿って正門へ向かう最中、周囲が闇に包まれているのに気がつく。まるでポッカリ黒のスポットでも当てたように校舎も、周囲の住宅も暗く沈んでいる。そんな不思議な光景は今まで見たことがなく、孝は思わず立ち尽くした。冬の空気で辺りが冷えているのは分かっているが、それだけでは説明しきれない暗い辺り。ゾクリと思わず身を震わせたくなるような悪寒が再び背筋を走り、同時に冷たい風が背中に吹き付けてくる。
まるで廃墟みたいだ。
自分の通い慣れた高校の校舎が、全く別なもののように見えて戸惑う。静まり返った辺りに不意に地響きと一緒に目が眩むような閃光が走ったのは、そんな時だった。足元を突き上げるような揺れに、孝は今しないといけないことを思い出しながら背後を振り返る。
閃光の元は校舎よりも先の体育館の中のようだ。
逆にその方があの訳のわからない空間になっている生徒指導室からは離れているから、そう無意識の中で考えた孝は智美の言葉をもう一度思い返す。
「そこにいるのは誰だ!」
怒声にも聞こえる声が孝の思考を寸断し、意識を前に引き寄せる。しかし、孝は予想だにしない場所に似合わぬ服装をした男性の姿に、自分は何を見ているのかと目を瞬かせた。
「……生徒のようだ。」
「まだ残っていたのか、人騒がせな。」
「あれではないな?」
口々に言う言葉が彼らの目的が自分でないことだけは理解させる。目の前の男が身に付けているのは托鉢僧のような墨染の衣に脚絆に草鞋。だが雲水と違うのは、網代笠もなければ袈裟文庫も頭陀袋もない。孝がそれくらいの理解が出来ていることも関係ない様子で、相手の内の独りが躊躇いがちに孝に声をかける。
「一先ずこちらへ。」
そう言われ大人しく従うが、相手の緊張感が奇妙な壁を感じさせた。闇に慣れた瞳で見渡すと校庭にも同じ様相の人間の姿が、二人か三人の固まりになって砂を踏んでいる。
なんなんだ……この人達は……。
奇妙な人間の集団。この状況で最も目にしそうなのは警察官な筈なのに、ここには一人もあの見慣れた制服がいない。まるで出た筈なのに、ここもまだ異空間のままみたいだと心の中で呟いた瞬間背筋が冷えた。
闇に統制のある感覚で動く、奇妙な人間の集団。
そう考えた瞬間、再びズンッと鈍い地響きが足元を突き上げ、目の前の男が怯えた声をあげるのに咄嗟に孝は駆け出した。暗闇で不意に駆け出した孝に、男が困惑した制止の声を張り上げる。訳がわからない状況だが、少なくとも智美の保護者であればあの車では来るはず。なら車を停められる場所を先に確認するのが、先決だと暮明を駆けながら孝は考える。ところが予想外の行動に出た孝に、僧侶擬き達も予想外の行動に出た。駆け出した孝の事を取り押さえようと、何人かが囲みを作り出したのだ。
相手は自分より体格は上で、歳も上だろうと暗い視界を鋭く見渡して孝は思案する。まさか取り押さえようと動くとは思わなかったが、邪魔な動きをされるのが困ると言うことかもしれない。つまりは、この集団はここで何かをしようと画策しているということか。
こっちは智美の保護者を探さないとならないのに。
香坂智美は礼慈と口にした。智美が名前で呼ぶと言うことは、かなり智美にとって近しい人間なのだろう。だが、学校に呼び出される保護者なのに、智美は相手を下の名前で呼び父や兄とは一言も言わなかった。あの智美の性格なら、自分の血縁者ならそう自分に告げた筈だ。
香坂智美の保護者と言う人間は、もしかすると家族ではないのかもしれない。
そうなると容姿では判別出来ない可能性がある。そう思考した瞬間、唐突に目の前に大きな人影が飛び出して来た。回り込んだ僧服の男が目の前に立ちはだかり、前を塞いで手を伸ばしてきたのだ。咄嗟に腕を潜り抜けすり抜けたが、孝の中に一瞬怒りに似た焦りが滲む。
そっちはそっちの好きなことをしててくれよ、こっちはこっちの事情があるんだから。
冷静にあろうとしながら孝は自分よりも体格のいい、それでも多々隙を伺わせる僧服の男性を投げ飛ばしたいと一瞬思う。強い怒り任せの衝動に、自分が駆られたのを孝は自覚した。しかし、彼を外に出した智美の言葉が過ぎる。もしかして車を見ているかもと、思い直し問いかけように相手は有無を言わさず孝を取り押さえようと手を伸ばすばかりだ。
ただ大人しくそろとしか言わない男性の耳を貸さない態度に、その戸惑いは怒りに変わり焦りに相乗していく。
「人を探さないといけないんだ!まだ、中に。」
そう口にしながら孝にもあの場所を、相手になんと表現したらいいのか分からずにいる。せめてほんの少しでいいから話しをさせてくれと、苛立ちが沸き上がった。すると背後に追い付いた他の男が、孝の腕を後ろから掴んでくる。
「くそ!人の話を聞けって!」
「全く手間かけさせるな!クソガキ!」
「早く取り押さえて、規制から摘まみ出せ!」
「人の話を聞けよ!」
こちらの話など聞く気もなく暗がりの中、腕をとられ苛立ち緊張した態度を崩さない男達の様子。何を言っても変わらない。そう不意に相乗された怒りが瞬間的に爆発して沸点を越えるのを、孝は自分の中に自覚した。
幼い頃から何度もいやと言うほど繰り返して、身についたしなやかな動作。それは異母兄には全く及ばなくとも、常人に比べれば遥かに俊敏で滑らかな一瞬の動きだった。自分を引きずるように話を聞かない僧服の男の腕に、自分の腕を反し絡めたかと思うと捩るようにして押さえつけ引き落とす。地面に倒れこんで驚きの声をあげた男を意図も容易く組み敷いて、孝は普段上げることのない荒げた声に怒りが滲む。
「人の話しくらい聞け!!馬鹿野郎!こっちは人を探してるって言ってるんだ!!」
何も知らず愚かにも逃げ遅れただけの少年と、僧服の男達は馬鹿にして侮っていた。だが、意図された孝の流麗な動作に、息を飲んだその僧服の男性が目を見開く。地面に組み敷かれた方が、自分より二回りも華奢な孝にされているとは思えないほどガッチリと身動きもとれず鋭い悲鳴を微かに上げる。
怒りに凍りつくような視線の先で、不意に闇の中に同じような僧服の人間が霞むように姿を見せた。それに気がついて孝はその異様な状況に息を呑んで、辺りを囲まれた事に微かに舌打ちする。
人数が多すぎる、組討を使っても抜けるまで時間を食ってしまう。
ありえない現実に更にありえない状況が加わって頭がショートしそうな気がするが、逆にその感覚が酷く心の中を冷やして冷静さも生み出す。周囲の人影を手元を緩める事無く見回し、状況を把握し打開する方法を探る。隙のない普段の彼とは違う視線が、闇の中で流動的な滑らかな動きを見せる。
「何をモタモタしてるんです?あなた方はするべき事ををなさい!」
不意に濃い闇の中で風を切るかのような鋭い声が響き、緊迫するかのような雰囲気を切り裂いた。かと思うとその声の主はふっと空気を緩めるかのように、僧服の人垣の向こうから孝の前に姿を見せた。
酷く印象的な独特の宝石のような瞳の輝きをした青年に、孝は他の者にない気配を感じて微かに眉を顰める。舞にも似た優雅な青年の身のこなしや周囲の様子から、目の前の人物がこの得体の知れない集団を指揮しているのは間違いないと孝は迷わず判断していた。
「当家の者が失礼なことしました、申し訳ありません。」
穏やかに聞こえる声音の向こうには、決然とした意志の強さが漂う。僧服の男と違って彼がその耳を塞いでいる様子ではない事を見た、孝はするりと捩り上げていた手を離した。腕をさする男が文句を言いたげに視線を彼に向けるのを感じながらも、場の雰囲気に口を挟むことはせず、音をたてて闇の中に姿を隠していく。
「ここは今危険なようです、貴方は生徒さんですね?」
穏やかにも聞こえる声に孝は小さく頷いてから、戸惑いながらも口を開く。
「友人がまだ中にいるんです。彼は足が悪いので、彼の家の方を探してます。」
一瞬その言葉に目の前の青年の様子が変わるのを感じ、自分の言葉に何か考える部分がある存在だという事に気がつく。その黒曜石の瞳を持つ青年はゆるく結われた長い黒髪を揺らし自分の肩越しに、確実に彼が先ほどまで居た場所を伝えたわけでもないのに見据えた。
「智美さんはまだ中に?」
戸惑いを含んだその声音に孝は目の前の人物が香坂智美のいっていた人物なのだと確信を持つ。そして、その迷わず自分がいた場所をみる確かな視線に、智美が言った「ここから出せる者がいる」という言葉を脳裏に思い浮かべる。目の前の相手はあの空間のことを、確かに見ていのだ。そう考えた孝は不安に揺らぎかけていた気持ちが、ホッと安堵したのを心の何処かで感じていた。
※※※
軋み続ける壁の音は単調に、頭にまるで録音された物のように続いている。一度穴を開けた時に巻き込んだ空気は既に過去のもので、どんよりと空気は重さを持って地を這い始めた。
腐り始めたか……
都市下でのゲート出現時にも中心地に近くなるほどに、体調に異変を訴える比率は高くなっていた。あの時は半径はキロ単位で中心地までは、大概がかなり距離を持てていた筈だ。だが、中心に近ければ近いほど、草木は枯れ腐敗すらしていたと報告がある。今自分がいるこの異界は先程の開けた穴の断面からすれば、かなり圧縮された密度の濃い妖気で繭のように固められている様子だ。
つまり腹の中みたいなものだろ?化け物め。
根のような妖気の外見的な特徴。空気の変化の度合い。水気に躊躇いのない行動。それに、つい先日青龍と顔を合わせた人外。条件としては恐らくは木気の人外の可能性がありそうだと、頭の中で囁く。
その閉じられた空間の中でやるべき事を見つけようと働かせた頭は、気休め程度とは言え床に黒板の脇にあったチョークを手にする。
「参るな、全く。」
手馴れた手つきで難度の高い漢字を、幾つも書き連ねていく智美の手には迷いがない。
「耳なし芳一になった気分だよ、全く。最低だ。」
独り言のように文句を言いながら書き連ねた漢字を繋ぎ円を描くとコツリと中心に杖を突き、彼は静かにその場に立ったままその漢字の羅列を暗唱し始める。
数分前から室内の空気は濁った死臭を感じさせ、ジワジワと自分の体力を削いでいくのが分かる。それを完全に押し留める能力は彼にはない。できることといえば気休め程度の結界を張るくらいだが、この結界とて知識であって彼自身にはどの程度効き目があるか見ることは出来ないものだった。しかし、微かに死臭が緩んだような気がして彼は暗唱を止める事無く微かに目を細める。
見ることの出来ない者が呪文を唱え身を隠す。
先ほどの独り言のたとえが強ち遠くない気がして、智美は微かに苦笑を浮かべた。逃げることもできないままここで巻き込まれて死にたい訳ではない。だが智美に今出来る事は、数少ないのもまた事実だった。
※※※
夜の帳が深く落ちる校庭には普段点いているはずの照明灯の明かりも無く、周囲の音も奇妙なほどに静まり返っていた。事実近隣の民家すら、電気を消して静まり返って無人の廃墟に見える。それはこの時間帯では到底ありえないことではある。だが、あの空間ほど現実離れした世界を目の当たりにして、孝は自分の中の認識を訂正した。
未だに生徒指導室のある辺りは、まるで一段と深い闇に包まれている。少し離れた友村礼慈を待ちながら、微かにその身を震わせた孝は不意に自分の後ろのポケットで先ほどまで機能の全てを失っていたスマホの音に思わず飛び上がる。慌てて取り出した着信に孝はふと眉を顰め、思わず耳を押し当てた。
「父さん…?学校から連絡が……。」
押し当てた受話器の先で告げられる様々な事柄に、今まで冷静に見えていた孝の表情が一瞬にして青ざめ、そして更に困惑に変わるのに振り返った黒曜石の瞳は気がついた。一瞬、孝は息を呑んだように目の前の礼慈の瞳を見つめ、更に再び自分がいた場所を見つめる。
電話の向こうで父親の声が、母親が倒れたことを告げる。そして病院のテレビで、都立第三高校に起きた異常事態を知ったと言う。同級生の親に連絡をとり、確かではないが危険物を持った人間が校内に侵入したのだと情報が流れた。生徒も教師も帰宅しているし、周辺住民も避難したという情報が耳を通り抜ける。そして、母が倒れた為に父は異母兄に迎えを頼んだことも、時間的に当にその人は学校に着いてもおかしくない。その上、孝とも異母兄とも連絡が取れなくなってもう大分経つという言葉が不安げに電話の向こうで揺れる。
「まさか…………兄さんが?」
そう言いながら、もう一度自分が校舎を眺める。スマホの画面には連続してメールとLINEが舞い込み始め、メールを開くと自分と智美と担任の土志田との連絡を乞う文面が目に入る。
先生も……、もしかして、兄さんも?
困惑に手が揺れるのが分かって、孝は視線を校舎に向けた。智美は戻るなと言ったが、智美だけでなく兄も先生もあの空間に残しているのだとしたら。
瞬間、その視界の先にフワリと校庭を横切る人影が、鈍い光を放つように浮かんだのに彼は気がついた。その姿を眺めた瞬間孝はスマホの存在を忘れ、その上校舎の中に兄がいるに違いないと心の何処かで確信のような感覚が湧き上がったのを感じながら思わず声を上げていた。
「仁!!」
孝自身にも、自分が何故そう確信したのかは分からない。だがそこに立つ異母兄の家に居候している青年の姿に孝は迷わずそう感じ、思わず目の前の黒曜石の瞳を持つ青年の横をすり抜けてその姿に向かって駆け出そうとしていた。驚くほどすばやい制服姿の青年の動きに驚きながら振り返った友村礼慈の瞳は、そこに空間の全てと同化するかのような姿を見つけて、思わず駆け寄ろうとした制服姿の青年の腕を掴み引き止める。
思わぬ礼慈の行動に驚きを隠せない孝の視線を受けながら、その黒曜石の瞳は不意に輝きを増したかのように煌き始めた。人間の瞳が自発的に発光する、そんなあり得ない姿に孝は唖然として立ち尽くす。その視線を肌に感じながら、礼慈は闇の中に浮かんでいるようなその姿を見つめた。
「彼も……僕の、同級生です!」
自分を引き止める腕を咎める様な声が、闇の中を滑るように校庭にも響く。しかし、ほんの数十メートルも離れていない場所に居る青年の姿は全く反応しないままに、フワリと夢遊病者のように歩を進め自分達がこれから向かおうとしていた場所に向かっていく。
その姿に微かな震えが自分の体内から起こるのを、友村礼慈は感じていた。
それは、表側は虚無にしか見えない。だが、そこにいるのは虚無だけではなく、何かが混在した存在だと彼の目には映った。
何かもっと大きなもの。
彼が今まで見たものには無い存在が、その体の奥深くにある。
震えに伴った一瞬の腕の緩みを見逃さずに、自分の手をするりと抜けた制服姿の青年が駆け寄る。それを一瞬遅れて追った礼慈は、その虚無の奥に潜む強い気配に気圧されそうになる自分に忌々しさすら感じながら心の中で舌打ちする。
まさか…彼が…。
そう思った瞬間一歩先を行っていた青年が、夢遊病者のようなの姿の腕を掴んだ。
「仁?!兄さんは何処だ?!……仁!」
その瞬間その言葉に目の前の孝の言う兄が、誰なのか礼慈は気かついていた。あの青年を保護しているのは、白虎。白虎には兄弟はいない筈なのに、その後ろ姿は確かに彼に何処か似かよって見える。
「仁!聞こえないのか?!兄さんは?!鳥飼信哉は何処なんだ!」
鳥飼信哉。
その名前にパズルのピースがはまるように、不意に繋がったような気がして夢遊病者のような青年は闇の中で大きく眼を見開いていた。
見開かれているのに何も見ていないような仁の瞳は、孝の記憶の片隅に何かを揺り起こす感覚を伴って真っ直ぐに射抜いた。
前にも同じ…ものを……み、……た
それが何を指すのか、何時の事だったのか。
孝の中の記憶はすっぽりと抜け落ちていたが、確かにその感覚は経験があった。何か得体の知れない強い波動のようなものが、自分の中にある何かを揺さぶり体を突き抜けていく。その感覚は冷たい刃物のようで、痛みを伴わないのが不思議な程鋭く突き抜ける。
なにか……、思い…だ、す……?
だが、それが何か思い出す前に、孝の理性が全てを激しく拒絶した。それに触れることも思い出すことも、全てを拒否して、理性はまるで闇を滑り落ちるように意識を放棄する。
目の前に立っていた制服姿の体が不意に糸が切れるかのように崩れ落ちる。それを咄嗟に抱きとめながら礼慈は、息を呑んだままその姿を見上げた。
ここ幾ばくかの期間で友村礼慈が眼にした様々な異例は、今までの先例となった異例に比較しても遥かに度を越えている。
執拗に四神にまとわりつく異例という言葉。
同時に異例と叫ばれる自分と高坂智美。
そうして、現状の異変の数々だ。
要と呼ばれるものの存在。
短い期間で病んだ地脈の穴。
世に20年以上もの間潜み続けた人外の存在。
人間の体でありながら四神以外の気を宿す者の出現。
そして、それ以上の何かを体内に宿す目の前の青年。
その青年の体からは紛れも無く強い土気の気配と、それを追うような激しい火気の気配が滲んでいる。土気だけでも異様なのに、目の前の青年の瞳は炎を宿すように真紅の光を浮かばせていた。
ありえない…彼が話にあった青年だとしても…。
その瞬間不意に大きな音を立てて、自分達が向かおうとしていたはずの体育館の屋根を突き破り帯のような菌糸にも似た妖気の本流が溢れる。轟音と同時に更に壁の一部を突き崩し、空に向かってそれは音をたてて弾けていた。
まるで廃墟みたいだ。
自分の通い慣れた高校の校舎が、全く別なもののように見えて戸惑う。静まり返った辺りに不意に地響きと一緒に目が眩むような閃光が走ったのは、そんな時だった。足元を突き上げるような揺れに、孝は今しないといけないことを思い出しながら背後を振り返る。
閃光の元は校舎よりも先の体育館の中のようだ。
逆にその方があの訳のわからない空間になっている生徒指導室からは離れているから、そう無意識の中で考えた孝は智美の言葉をもう一度思い返す。
「そこにいるのは誰だ!」
怒声にも聞こえる声が孝の思考を寸断し、意識を前に引き寄せる。しかし、孝は予想だにしない場所に似合わぬ服装をした男性の姿に、自分は何を見ているのかと目を瞬かせた。
「……生徒のようだ。」
「まだ残っていたのか、人騒がせな。」
「あれではないな?」
口々に言う言葉が彼らの目的が自分でないことだけは理解させる。目の前の男が身に付けているのは托鉢僧のような墨染の衣に脚絆に草鞋。だが雲水と違うのは、網代笠もなければ袈裟文庫も頭陀袋もない。孝がそれくらいの理解が出来ていることも関係ない様子で、相手の内の独りが躊躇いがちに孝に声をかける。
「一先ずこちらへ。」
そう言われ大人しく従うが、相手の緊張感が奇妙な壁を感じさせた。闇に慣れた瞳で見渡すと校庭にも同じ様相の人間の姿が、二人か三人の固まりになって砂を踏んでいる。
なんなんだ……この人達は……。
奇妙な人間の集団。この状況で最も目にしそうなのは警察官な筈なのに、ここには一人もあの見慣れた制服がいない。まるで出た筈なのに、ここもまだ異空間のままみたいだと心の中で呟いた瞬間背筋が冷えた。
闇に統制のある感覚で動く、奇妙な人間の集団。
そう考えた瞬間、再びズンッと鈍い地響きが足元を突き上げ、目の前の男が怯えた声をあげるのに咄嗟に孝は駆け出した。暗闇で不意に駆け出した孝に、男が困惑した制止の声を張り上げる。訳がわからない状況だが、少なくとも智美の保護者であればあの車では来るはず。なら車を停められる場所を先に確認するのが、先決だと暮明を駆けながら孝は考える。ところが予想外の行動に出た孝に、僧侶擬き達も予想外の行動に出た。駆け出した孝の事を取り押さえようと、何人かが囲みを作り出したのだ。
相手は自分より体格は上で、歳も上だろうと暗い視界を鋭く見渡して孝は思案する。まさか取り押さえようと動くとは思わなかったが、邪魔な動きをされるのが困ると言うことかもしれない。つまりは、この集団はここで何かをしようと画策しているということか。
こっちは智美の保護者を探さないとならないのに。
香坂智美は礼慈と口にした。智美が名前で呼ぶと言うことは、かなり智美にとって近しい人間なのだろう。だが、学校に呼び出される保護者なのに、智美は相手を下の名前で呼び父や兄とは一言も言わなかった。あの智美の性格なら、自分の血縁者ならそう自分に告げた筈だ。
香坂智美の保護者と言う人間は、もしかすると家族ではないのかもしれない。
そうなると容姿では判別出来ない可能性がある。そう思考した瞬間、唐突に目の前に大きな人影が飛び出して来た。回り込んだ僧服の男が目の前に立ちはだかり、前を塞いで手を伸ばしてきたのだ。咄嗟に腕を潜り抜けすり抜けたが、孝の中に一瞬怒りに似た焦りが滲む。
そっちはそっちの好きなことをしててくれよ、こっちはこっちの事情があるんだから。
冷静にあろうとしながら孝は自分よりも体格のいい、それでも多々隙を伺わせる僧服の男性を投げ飛ばしたいと一瞬思う。強い怒り任せの衝動に、自分が駆られたのを孝は自覚した。しかし、彼を外に出した智美の言葉が過ぎる。もしかして車を見ているかもと、思い直し問いかけように相手は有無を言わさず孝を取り押さえようと手を伸ばすばかりだ。
ただ大人しくそろとしか言わない男性の耳を貸さない態度に、その戸惑いは怒りに変わり焦りに相乗していく。
「人を探さないといけないんだ!まだ、中に。」
そう口にしながら孝にもあの場所を、相手になんと表現したらいいのか分からずにいる。せめてほんの少しでいいから話しをさせてくれと、苛立ちが沸き上がった。すると背後に追い付いた他の男が、孝の腕を後ろから掴んでくる。
「くそ!人の話を聞けって!」
「全く手間かけさせるな!クソガキ!」
「早く取り押さえて、規制から摘まみ出せ!」
「人の話を聞けよ!」
こちらの話など聞く気もなく暗がりの中、腕をとられ苛立ち緊張した態度を崩さない男達の様子。何を言っても変わらない。そう不意に相乗された怒りが瞬間的に爆発して沸点を越えるのを、孝は自分の中に自覚した。
幼い頃から何度もいやと言うほど繰り返して、身についたしなやかな動作。それは異母兄には全く及ばなくとも、常人に比べれば遥かに俊敏で滑らかな一瞬の動きだった。自分を引きずるように話を聞かない僧服の男の腕に、自分の腕を反し絡めたかと思うと捩るようにして押さえつけ引き落とす。地面に倒れこんで驚きの声をあげた男を意図も容易く組み敷いて、孝は普段上げることのない荒げた声に怒りが滲む。
「人の話しくらい聞け!!馬鹿野郎!こっちは人を探してるって言ってるんだ!!」
何も知らず愚かにも逃げ遅れただけの少年と、僧服の男達は馬鹿にして侮っていた。だが、意図された孝の流麗な動作に、息を飲んだその僧服の男性が目を見開く。地面に組み敷かれた方が、自分より二回りも華奢な孝にされているとは思えないほどガッチリと身動きもとれず鋭い悲鳴を微かに上げる。
怒りに凍りつくような視線の先で、不意に闇の中に同じような僧服の人間が霞むように姿を見せた。それに気がついて孝はその異様な状況に息を呑んで、辺りを囲まれた事に微かに舌打ちする。
人数が多すぎる、組討を使っても抜けるまで時間を食ってしまう。
ありえない現実に更にありえない状況が加わって頭がショートしそうな気がするが、逆にその感覚が酷く心の中を冷やして冷静さも生み出す。周囲の人影を手元を緩める事無く見回し、状況を把握し打開する方法を探る。隙のない普段の彼とは違う視線が、闇の中で流動的な滑らかな動きを見せる。
「何をモタモタしてるんです?あなた方はするべき事ををなさい!」
不意に濃い闇の中で風を切るかのような鋭い声が響き、緊迫するかのような雰囲気を切り裂いた。かと思うとその声の主はふっと空気を緩めるかのように、僧服の人垣の向こうから孝の前に姿を見せた。
酷く印象的な独特の宝石のような瞳の輝きをした青年に、孝は他の者にない気配を感じて微かに眉を顰める。舞にも似た優雅な青年の身のこなしや周囲の様子から、目の前の人物がこの得体の知れない集団を指揮しているのは間違いないと孝は迷わず判断していた。
「当家の者が失礼なことしました、申し訳ありません。」
穏やかに聞こえる声音の向こうには、決然とした意志の強さが漂う。僧服の男と違って彼がその耳を塞いでいる様子ではない事を見た、孝はするりと捩り上げていた手を離した。腕をさする男が文句を言いたげに視線を彼に向けるのを感じながらも、場の雰囲気に口を挟むことはせず、音をたてて闇の中に姿を隠していく。
「ここは今危険なようです、貴方は生徒さんですね?」
穏やかにも聞こえる声に孝は小さく頷いてから、戸惑いながらも口を開く。
「友人がまだ中にいるんです。彼は足が悪いので、彼の家の方を探してます。」
一瞬その言葉に目の前の青年の様子が変わるのを感じ、自分の言葉に何か考える部分がある存在だという事に気がつく。その黒曜石の瞳を持つ青年はゆるく結われた長い黒髪を揺らし自分の肩越しに、確実に彼が先ほどまで居た場所を伝えたわけでもないのに見据えた。
「智美さんはまだ中に?」
戸惑いを含んだその声音に孝は目の前の人物が香坂智美のいっていた人物なのだと確信を持つ。そして、その迷わず自分がいた場所をみる確かな視線に、智美が言った「ここから出せる者がいる」という言葉を脳裏に思い浮かべる。目の前の相手はあの空間のことを、確かに見ていのだ。そう考えた孝は不安に揺らぎかけていた気持ちが、ホッと安堵したのを心の何処かで感じていた。
※※※
軋み続ける壁の音は単調に、頭にまるで録音された物のように続いている。一度穴を開けた時に巻き込んだ空気は既に過去のもので、どんよりと空気は重さを持って地を這い始めた。
腐り始めたか……
都市下でのゲート出現時にも中心地に近くなるほどに、体調に異変を訴える比率は高くなっていた。あの時は半径はキロ単位で中心地までは、大概がかなり距離を持てていた筈だ。だが、中心に近ければ近いほど、草木は枯れ腐敗すらしていたと報告がある。今自分がいるこの異界は先程の開けた穴の断面からすれば、かなり圧縮された密度の濃い妖気で繭のように固められている様子だ。
つまり腹の中みたいなものだろ?化け物め。
根のような妖気の外見的な特徴。空気の変化の度合い。水気に躊躇いのない行動。それに、つい先日青龍と顔を合わせた人外。条件としては恐らくは木気の人外の可能性がありそうだと、頭の中で囁く。
その閉じられた空間の中でやるべき事を見つけようと働かせた頭は、気休め程度とは言え床に黒板の脇にあったチョークを手にする。
「参るな、全く。」
手馴れた手つきで難度の高い漢字を、幾つも書き連ねていく智美の手には迷いがない。
「耳なし芳一になった気分だよ、全く。最低だ。」
独り言のように文句を言いながら書き連ねた漢字を繋ぎ円を描くとコツリと中心に杖を突き、彼は静かにその場に立ったままその漢字の羅列を暗唱し始める。
数分前から室内の空気は濁った死臭を感じさせ、ジワジワと自分の体力を削いでいくのが分かる。それを完全に押し留める能力は彼にはない。できることといえば気休め程度の結界を張るくらいだが、この結界とて知識であって彼自身にはどの程度効き目があるか見ることは出来ないものだった。しかし、微かに死臭が緩んだような気がして彼は暗唱を止める事無く微かに目を細める。
見ることの出来ない者が呪文を唱え身を隠す。
先ほどの独り言のたとえが強ち遠くない気がして、智美は微かに苦笑を浮かべた。逃げることもできないままここで巻き込まれて死にたい訳ではない。だが智美に今出来る事は、数少ないのもまた事実だった。
※※※
夜の帳が深く落ちる校庭には普段点いているはずの照明灯の明かりも無く、周囲の音も奇妙なほどに静まり返っていた。事実近隣の民家すら、電気を消して静まり返って無人の廃墟に見える。それはこの時間帯では到底ありえないことではある。だが、あの空間ほど現実離れした世界を目の当たりにして、孝は自分の中の認識を訂正した。
未だに生徒指導室のある辺りは、まるで一段と深い闇に包まれている。少し離れた友村礼慈を待ちながら、微かにその身を震わせた孝は不意に自分の後ろのポケットで先ほどまで機能の全てを失っていたスマホの音に思わず飛び上がる。慌てて取り出した着信に孝はふと眉を顰め、思わず耳を押し当てた。
「父さん…?学校から連絡が……。」
押し当てた受話器の先で告げられる様々な事柄に、今まで冷静に見えていた孝の表情が一瞬にして青ざめ、そして更に困惑に変わるのに振り返った黒曜石の瞳は気がついた。一瞬、孝は息を呑んだように目の前の礼慈の瞳を見つめ、更に再び自分がいた場所を見つめる。
電話の向こうで父親の声が、母親が倒れたことを告げる。そして病院のテレビで、都立第三高校に起きた異常事態を知ったと言う。同級生の親に連絡をとり、確かではないが危険物を持った人間が校内に侵入したのだと情報が流れた。生徒も教師も帰宅しているし、周辺住民も避難したという情報が耳を通り抜ける。そして、母が倒れた為に父は異母兄に迎えを頼んだことも、時間的に当にその人は学校に着いてもおかしくない。その上、孝とも異母兄とも連絡が取れなくなってもう大分経つという言葉が不安げに電話の向こうで揺れる。
「まさか…………兄さんが?」
そう言いながら、もう一度自分が校舎を眺める。スマホの画面には連続してメールとLINEが舞い込み始め、メールを開くと自分と智美と担任の土志田との連絡を乞う文面が目に入る。
先生も……、もしかして、兄さんも?
困惑に手が揺れるのが分かって、孝は視線を校舎に向けた。智美は戻るなと言ったが、智美だけでなく兄も先生もあの空間に残しているのだとしたら。
瞬間、その視界の先にフワリと校庭を横切る人影が、鈍い光を放つように浮かんだのに彼は気がついた。その姿を眺めた瞬間孝はスマホの存在を忘れ、その上校舎の中に兄がいるに違いないと心の何処かで確信のような感覚が湧き上がったのを感じながら思わず声を上げていた。
「仁!!」
孝自身にも、自分が何故そう確信したのかは分からない。だがそこに立つ異母兄の家に居候している青年の姿に孝は迷わずそう感じ、思わず目の前の黒曜石の瞳を持つ青年の横をすり抜けてその姿に向かって駆け出そうとしていた。驚くほどすばやい制服姿の青年の動きに驚きながら振り返った友村礼慈の瞳は、そこに空間の全てと同化するかのような姿を見つけて、思わず駆け寄ろうとした制服姿の青年の腕を掴み引き止める。
思わぬ礼慈の行動に驚きを隠せない孝の視線を受けながら、その黒曜石の瞳は不意に輝きを増したかのように煌き始めた。人間の瞳が自発的に発光する、そんなあり得ない姿に孝は唖然として立ち尽くす。その視線を肌に感じながら、礼慈は闇の中に浮かんでいるようなその姿を見つめた。
「彼も……僕の、同級生です!」
自分を引き止める腕を咎める様な声が、闇の中を滑るように校庭にも響く。しかし、ほんの数十メートルも離れていない場所に居る青年の姿は全く反応しないままに、フワリと夢遊病者のように歩を進め自分達がこれから向かおうとしていた場所に向かっていく。
その姿に微かな震えが自分の体内から起こるのを、友村礼慈は感じていた。
それは、表側は虚無にしか見えない。だが、そこにいるのは虚無だけではなく、何かが混在した存在だと彼の目には映った。
何かもっと大きなもの。
彼が今まで見たものには無い存在が、その体の奥深くにある。
震えに伴った一瞬の腕の緩みを見逃さずに、自分の手をするりと抜けた制服姿の青年が駆け寄る。それを一瞬遅れて追った礼慈は、その虚無の奥に潜む強い気配に気圧されそうになる自分に忌々しさすら感じながら心の中で舌打ちする。
まさか…彼が…。
そう思った瞬間一歩先を行っていた青年が、夢遊病者のようなの姿の腕を掴んだ。
「仁?!兄さんは何処だ?!……仁!」
その瞬間その言葉に目の前の孝の言う兄が、誰なのか礼慈は気かついていた。あの青年を保護しているのは、白虎。白虎には兄弟はいない筈なのに、その後ろ姿は確かに彼に何処か似かよって見える。
「仁!聞こえないのか?!兄さんは?!鳥飼信哉は何処なんだ!」
鳥飼信哉。
その名前にパズルのピースがはまるように、不意に繋がったような気がして夢遊病者のような青年は闇の中で大きく眼を見開いていた。
見開かれているのに何も見ていないような仁の瞳は、孝の記憶の片隅に何かを揺り起こす感覚を伴って真っ直ぐに射抜いた。
前にも同じ…ものを……み、……た
それが何を指すのか、何時の事だったのか。
孝の中の記憶はすっぽりと抜け落ちていたが、確かにその感覚は経験があった。何か得体の知れない強い波動のようなものが、自分の中にある何かを揺さぶり体を突き抜けていく。その感覚は冷たい刃物のようで、痛みを伴わないのが不思議な程鋭く突き抜ける。
なにか……、思い…だ、す……?
だが、それが何か思い出す前に、孝の理性が全てを激しく拒絶した。それに触れることも思い出すことも、全てを拒否して、理性はまるで闇を滑り落ちるように意識を放棄する。
目の前に立っていた制服姿の体が不意に糸が切れるかのように崩れ落ちる。それを咄嗟に抱きとめながら礼慈は、息を呑んだままその姿を見上げた。
ここ幾ばくかの期間で友村礼慈が眼にした様々な異例は、今までの先例となった異例に比較しても遥かに度を越えている。
執拗に四神にまとわりつく異例という言葉。
同時に異例と叫ばれる自分と高坂智美。
そうして、現状の異変の数々だ。
要と呼ばれるものの存在。
短い期間で病んだ地脈の穴。
世に20年以上もの間潜み続けた人外の存在。
人間の体でありながら四神以外の気を宿す者の出現。
そして、それ以上の何かを体内に宿す目の前の青年。
その青年の体からは紛れも無く強い土気の気配と、それを追うような激しい火気の気配が滲んでいる。土気だけでも異様なのに、目の前の青年の瞳は炎を宿すように真紅の光を浮かばせていた。
ありえない…彼が話にあった青年だとしても…。
その瞬間不意に大きな音を立てて、自分達が向かおうとしていたはずの体育館の屋根を突き破り帯のような菌糸にも似た妖気の本流が溢れる。轟音と同時に更に壁の一部を突き崩し、空に向かってそれは音をたてて弾けていた。
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