かのじょの物語

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10代の話

7.ともだち

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中学2年の春。
 色々なことがありすぎて、私は更に無口で無表情になっていた。そして、色々なことがありすぎて酷く人間不振になっていた。そして、オカルトに触れることは会話にしてはいけないのだと、今さらのように学びそれに関したことを口にするのを禁じることにしていた。

 新年度のクラス替えは幸運なことに新しいクラスメイトが殆どで、前年度のオカルト友人は合同の体育でも出会わないほど離れてくれたし、嫌な噂も耳にはいることもない。
一人で本を読むにはなにも問題のない環境を再び取り戻したというだけのことだった。
ある日、ふっと手元に影が射したので視線を開けると、自分とよく似たタイプの同級生の少女が立っている。
「いつも本読んでるね、そうじゃなきゃ絵描いてるよね。」
突然かけられた声に無表情のまま相手を見つめる。
身の丈も体型も私と変わらない、私と同じように縁の細い眼鏡をかけているが、天然パーマなのか黒い髪の毛は短く切り揃えられている。自己紹介の時の名前を手繰り寄せ彼女の意図を伺う。
「好きだから………何か用?カトウさん。」
小さく聞いた私の声に彼女は、私の手の中の本をトントンと指で指した。
「このシリーズ大好きなの、でも他の人は読んでるの見たことない。」
そう言われて視線をシリーズモノの何冊目かにあたる文庫本に下ろす。彼女は人懐っこい笑顔を浮かべて、私の目の前の席の椅子を引くと横座りに座った。
「昨日か一昨日は違うの読んでたよね?あっちは面白くなかったの?」
そんなに見られているのかと驚いたように眼を丸くして彼女をみる。しかし、思い出したように私はそうではないと小さく首を横に降った。
「読んだよ。読み終わったからこれを次に読んでる。」
今度は彼女が驚いたように眼を丸くした。
「読むの速いんだ。」
「そうなのかな?今まで気にしたことない。」
彼女はクスクスと笑って、内緒話をするように机の上に身を乗り出した。実はね、と小さく囁く。
「あなたのこと一年の時から気になってたんだ。」
一瞬あの終業式の後の出来事が記憶を掠めて表情が強張るが、目の前の同級生は気がつかなかったようにニッコリする。
「だって、図書室で借りる本ぜーんぶ先にあなたの名前があるんだもの。」


彼女は自己紹介の時にこの人なんだーってちょっと盛り上がっちゃったんだよと笑う。そして、本がない時、実はこっそりと描いている私の絵を上手いと褒めてくれた初めての人になった。
 私にとって彼女はオカルトに絡まない初めての友人となった人だった。
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