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間章 ソノサキの合間の話
間話30.溜まらないの?
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外﨑邸に監視込みのつもりで預けると逆に庄司陸斗の思うツボだったと狭山明良が前日痛い思いをして知ったせいと、外﨑宏太側から陸斗にさせる仕事を検討するためなのか『今日は臨時休業』と連絡もあって結城晴と陸斗はノンビリと2人きりで自宅に居たりする。距離感に関しては、まぁそれほどには近くはない。というのも出掛けに明良が『危ないなと思ったらオーナーに電話か、どこそれに逃げるんだよ』なんて訳の分からない忠告を再三に晴にしていたからである。そして不安げではあったものの明良は、『早く返るからね』としつこく過保護発言をしながら仕事に向かった訳で。
「ねぇ、晴。」
同棲中の2人は日頃から家事は分担制度なのか、見ているとキッチン仕事は明良がすることが多いようだ。流石にあの明良が昼ご飯のおかずまで準備していて、これは作り置きとかこれは昼用とか冷蔵庫に分別していれていて、それをホワイトボードに書き付けていくのには唖然とする。そして明良が出掛けてからの晴は、お休みは洗濯の日と言わんばかりにイソイソ洗濯を干しているのであった。新妻みたいだなぁなんて思いながら、眺めている背中に陸斗が問いかける。
「んー?何。」
「明良って普段からあんな過保護なの?めんどくない?」
正直言わせて貰うと、自分が恋人にあんな風に束縛されるのは陸斗的には無しだ。束縛されるのが面倒だから、陸斗自身は割合これまでの交際はドライな感じで過ごしている。お陰で本当に私の事好きなの?!なんて質問の後の破局を、これまでにも何度か経験したものであったが。
「え?」
振り返った晴がキョトンとしたところを見ると、あの過保護を過保護と捉えていないのが分かった。と言うことはこれが通常なのか、今回はそうなるべき理由があるのかとソファから眺めていた陸斗が気がついたように口を開く。
「あ?もしかして昨日セックスして疲れてるから、過保護なの?」
「はぁ?!ち、違うよ!!してないっ!昨日はしてないよっ!」
まぁなんと正直な反応だろうか。ベランダに射し込む陽射しの下でも分かるくらい質問の内容に真っ赤になって否定しまくる晴は、陸斗の目にもかなり可愛い。どうやらしてないのは事実のようだけど、そうなると明良は通常的にこんなに過保護ということなのだろうか。呆れるくらいの変化だよと思いながら眺めている陸斗に、変なこと聞くなと真っ赤になったままの晴がパタパタと洗濯籠を抱えて横切っていく。
あれってヤッパリ晴の方がネコちゃんってことかね?
ふとそんなことを思いながら、足音もなく晴の後を追う。ハタハタと手で顔を扇ぎ顔の赤みを何とかしようと足掻いている晴の肩に顎を乗せるようにして、陸斗は腰に手を回して抱き寄せていた。
「ねぇ、晴?」
「ふぁ?な、なに?」
自分が惚れられていると言われたわりには、晴はスキンシップ自体に拒絶感がなくて簡単に抱き寄せられてしまう。元々他人との距離感が近いタイプの人間だったのだろうが、これは確かに余りにも無防備過ぎて明良が苛立つのが目に見えるようだ。そんなんだから今もこうして腰を引き寄せられているのに、何のよう?とキョトンとした顔のまま。
「してないんだ?昨日。溜まんないの?」
「な、なんでそんな話し……っ陸斗ってそういうとこ駄目だと思うし!」
「え?男なら普通でしょ?」
乙女か?と笑いたくなるが、男なら普通と言った瞬間に晴が戸惑ったのが分かる。え?そうなの?と言いたげな戸惑いがあからさまに浮かんだ晴の顔に、陸斗は本当無防備だなと心の中で思う。普通の基準なんて何処にもあったもんじゃないが、割合相手との距離感が狭いタイプの人間はこの言葉に弱い。他人からこんなの普通でしょと押しきられて、そうなのかと巻き込まれる事が多いのがこのタイプだと陸斗は思っている。
「だって、普通付き合ってたら毎日とかしたくない?」
「う、え、と……え?う?」
「好きだもん、したくなるもんでしょ?ごめんね?俺がいるせいだよね?」
「え?あ?う……え?」
しおらしく謝り出した陸斗に面食らって、晴の返答が濁ってしまう。これまでの態度を見ていて陸斗という人間の基準を作りつつあった晴としては、こんな風に陸斗が素直にションボリと謝ってくるなんて思ってもいない。しかもここのところ弱いところばかりを見せられて、大人しく素直に自分達に従う陸斗の様子に『あれ?思ってるのと違う?』なんて思い始めていたところだったに違いないと思う。
「ええと………………えっと……。」
「それでさ?話し戻すけど、溜まんないの?晴は。」
「ええ?!」
背後から抱き締められ腰を引き寄せられたまま耳元で低く囁かれる声に、少し冷めようとしていた筈の晴の顔が再び真っ赤に変わる。熟れたトマトみたいな顔で晴がプルプルと首を振り答えを拒んだのに、陸斗はあからさまに深い深い溜め息をついて見せていた。
「り、陸斗?」
「普通なら溜まっちゃうって、そう思わない?」
諦めににた溜め息混じりの言葉に、抱き締められたままの晴が更に戸惑う。細くてしなやかな身体、しかもこうして抱き締めていると妙に色っぽく暖かい。引き寄せたまま腰を押し付けている内に、ジワリと自分の下半身が熱を持ち始めているのが分かって陸斗は深い溜め息をついて見せる。
「俺、…………ちょっとしんどいんだよね。」
低く熱を持った声にビクリと晴の身体が震えたのを感じたが、それには気がつかないふりをして晴の耳元で陸斗は明らかな溜め息をついて言葉を続けていた。
「だって、右手使えないしさ。」
ハッとしたように晴が、自分の腰を抱き寄せるギプスを当てた右腕を見下ろしたのが分かる。普通なら抱き寄せている時点で痛くないんじゃんとか動いてるしと言う話なのに、医学的な知識は何もない晴は自分がした事と言う負い目と共に陸斗の言葉に絡めとられめしまう。
「ここんとこ落ち込んでたから、全然抜いてないし…………。」
弱っていた自分の姿を見ていたからこそ晴はその言葉も鵜呑みに信じて、陸斗を肩越しに戸惑い怯える視線で見つめた。それを肌に感じてから視線を全く向けていなかった陸斗が、ふと気がついたように晴の顔を和な笑顔混じりに眺める。
「男同士だもん、そういうの分かってくれるよね?晴?」
全くもって他意がない様子で陸斗から同意を求められ、晴は何と答えていいのか分からずに言葉に詰まってしまう。そういうものなのかと問われても、晴自身としては余りそういう経験がない。というか成田了のセフレになるまで普通に彼女と交際していたのだし、わりと晴はそれほど性欲処理に困ることがないタイプでもあったのだ。それを見透かしているのか陸斗はパッと晴から手を離すと、賑やかにそろそろお昼ごはんだねと暢気に話を切り替えていた。
※※※
「こら!駄目だって。」
背後から伸びてきた手に向かって外﨑了が声をあげるのに、相変わらずの外﨑宏太は腰を抱き寄せ固定にかかる。昼食終わりの片付けが終わった瞬間のことで食器を奥のを待ち構えていたのに違いないが、キッチンはノータッチの約束はどうしたと了が不機嫌な声を投げつけた。
「調子は?ん?」
「お前が聞くな、お前が。」
耳元で問いかける宏太にヒンヤリした声を投げた了なのだが、宏太が問いかけているのは了が病で体調を崩したと言うよりも、自分の熱烈な愛情を受け止め微熱気味だった身体を労っているのは一応分かってはいる。数日前久々に話題の中で『成田』の父親の話をした時の了の反応が、宏太には心配事の種になったらしい。お陰で晴が帰宅した後、了はあっという間に裸に剥かれ余すことなく全身を愛撫されグズグズに蕩けさせられてしまって。
「可愛かった。」
蕩けさせられて了は散々に泣きわめき、宏太に懇願しながら激しく淫らに責め立てられ何度も失神するまで追い詰められてしまった。それを抱き締められたままの宏太から囁かれ、あられもなく脚を開き強請り注ぎ込まれたのをつい思い出してしまう。
「熱い、思い出したか?ん?」
「馬鹿、変態。」
「その変態が好きだろ?ん?」
なんで変態は容認なんだよと不貞腐れる了の手が完全に食器を離したのを感づいたのか、宏太の両腕が軽々と了の腰を抱きかかえ上げてしまう。どうして成人男子一人をこうも軽々と抱き上げるのかと、相変わらずの宏太の腕力に呆れずにはいられない。本当に無惨な傷跡があって歩行にだって障害がある筈なのに、最近では家の中では完全に自由自在なのだ。
「好きだろ?了。」
呆れ果ててしまうけれど、そんな男は実際のところ何よりも自分ファーストだと言うところが、宏太には勝てないなぁと思わさせる面でもあって。抱き上げられたまま身体を捻り首元に手を回す了に、宏太が下から覗き込むような仕草をしてくる。
「はいはい、好きです。愛してる。」
「おざなりだな、…………困ったな。」
想定とは違う返答が宏太から返ってきたのに、了は腕に抱き上げられたまま訝しげに眉を潜める。
「困る?」
「困った…………から、確かめないとな。」
そう言った途端に抱き上げられたままスルスルとキッチンの中で、あっという間に着ていた服を剥がされて行くのに目を丸くしてしまう。何とか宏太の手を制止しようにも何でまた抱き上げたまま、こんなに容易く服を脱がせられるのか分からない。あれよあれよと言う間に気がつけば全裸で抱き上げられていて、宏太の前には無防備な素肌が晒されている。
「馬鹿、よせって!馬鹿!」
レロ……と濡れた舌が肉感的な唇の合間から垣間見えた次の瞬間、痺れるような快感に背筋が震えて甲高い声がキッチンに響く。まだ陽射しの溢れるキッチンで濡れた音を立てて吸いたてられる突起は、数日前の刺激にまだホンノリ薔薇色に色づき腫れていて刺激に敏感なままだ。
「や、あんっあぁ!あ!」
熱く滑る舌先にヌリュヌリュと擦られ、何度も音を立てて甘く吸いあげられ、やがては軽く噛まれる刺激で腰があっという間に蕩けてしまう。足元に投げ捨てられた衣類や下着が淫らに視界を過るのを感じながら、気がつけばキッチンカウンターに浅く腰を乗せ大きく両脚を開かされてしまっていた。膝を抱えられるように肩に乗せられやっと痕の色を褪せさせ始めていた肌に、口付けで薔薇の花弁を散らされていく。
「ん、ふ、うっあふ、ぅ!あんっ!」
「ここ、好きか?ん?」
「んんっ、あぅん!」
乳首を指先でクニクニとキツく摘まみ引っ張るように捻られ責められながら、平らな腹に強く吸い付かれる刺激に仰け反ってしまう。不安定な体勢のまま気がつけばフックリ晴れた後穴を晒して、そこを指先がそっとなぞりあげてくる。
「ひぁ!ひゃぁ!!」
「イヤらしい穴だな、まだ腫れてるのにチュウチュウ指に吸い付く。」
「んくぅ!!ひぁん!」
耳を犯すような淫らに響く声。事実まだ散々に擦りたてられて果てていた了の穴は、熱をもってヒクヒクと蠢き宏太の指に音を立てて吸い付いてしまう。中もまだ腫れたままなのは分かっていて、宏太の指がチュプンと中に飲み込まれたのに甘い悲鳴があがる。
「ひんんっ!んぅ!んんっ!」
「あぁ、可哀相に……腫れて……熱くて…………狭いな。ん?」
分かってる癖にと本当なら叫びたいのに、中をなぞる指が与えてくるのは極上の快楽で言葉にならない。ユルリと腫れて狭い腸を擦られて、指先が前立腺をあやすように撫で回すのに悲鳴を上げてしまう。
「あぅ!ふぁ!!うぅ!!や、くぅ!」
「硬く腫れてる…………敏感だな?ん?」
甘い声で囁きながら、不安定な体勢のままそれを擦り上げられる。絶叫したくなるほどの快感に堪えようとして了が思わず身を縮め閉じられた歯がガチガチと鳴るのに、スイと伸びあがってきた宏太の唇が耳朶をねぶり囁く。
「口を開け、ほら…………あー……って…………。」
宏太の低く痺れるような甘い声に操られて、自然と唇がほどけて我慢しようとしていた快感への声が溢れ落ちてしまう。
「あぁあ、あぁ!あぁあ!」
一度崩れてしまうと中を指で擦られる快感には、もうどうしても堪えようが了にはなかった。キュウキュウと前立腺をなぞる宏太の指を食い締めて、あっという間に絶頂に上り詰めていく。
「あぁあ、い、く、あぁあ!」
「こら、駄目だろ?ん?」
完全に上り詰める寸前に唐突に指を引き抜かれ、あやすように耳元で囁かれるのに了はハクハクと酸素を求めるように身体を喘がせ震える。当然宏太の方だって分かっていてやっているのだけれど、快感の寸止めには理性なんて効く筈がない。
「うぁ、あ、あぁあ、や、やぁ!」
「俺は馬鹿なんだろ?ん?ちゃんと教えないと分からないぞ?了。」
何を教えろと?快感が溜まりきっているとでも?そう怒鳴り付けたくなるけれど、涼しい顔で宏太は了の唇を奪い甘い声で強請る。
「了は、どうされたい?ん?」
ソロソロと指でまた蠢く後穴の入り口を撫で回されるのに、そこが音を立てて指を飲み込み奥まで引き込もうとしてしまう。腫れ上がって普段より熱く狭くなっていて、指だけでもかなりの圧迫感なのは自分でも分かっている。それでもそこにあてがって奥まで貫かれるのに、指では足りないと了の身体が悲鳴を上げて求めていた。
「ねぇ、晴。」
同棲中の2人は日頃から家事は分担制度なのか、見ているとキッチン仕事は明良がすることが多いようだ。流石にあの明良が昼ご飯のおかずまで準備していて、これは作り置きとかこれは昼用とか冷蔵庫に分別していれていて、それをホワイトボードに書き付けていくのには唖然とする。そして明良が出掛けてからの晴は、お休みは洗濯の日と言わんばかりにイソイソ洗濯を干しているのであった。新妻みたいだなぁなんて思いながら、眺めている背中に陸斗が問いかける。
「んー?何。」
「明良って普段からあんな過保護なの?めんどくない?」
正直言わせて貰うと、自分が恋人にあんな風に束縛されるのは陸斗的には無しだ。束縛されるのが面倒だから、陸斗自身は割合これまでの交際はドライな感じで過ごしている。お陰で本当に私の事好きなの?!なんて質問の後の破局を、これまでにも何度か経験したものであったが。
「え?」
振り返った晴がキョトンとしたところを見ると、あの過保護を過保護と捉えていないのが分かった。と言うことはこれが通常なのか、今回はそうなるべき理由があるのかとソファから眺めていた陸斗が気がついたように口を開く。
「あ?もしかして昨日セックスして疲れてるから、過保護なの?」
「はぁ?!ち、違うよ!!してないっ!昨日はしてないよっ!」
まぁなんと正直な反応だろうか。ベランダに射し込む陽射しの下でも分かるくらい質問の内容に真っ赤になって否定しまくる晴は、陸斗の目にもかなり可愛い。どうやらしてないのは事実のようだけど、そうなると明良は通常的にこんなに過保護ということなのだろうか。呆れるくらいの変化だよと思いながら眺めている陸斗に、変なこと聞くなと真っ赤になったままの晴がパタパタと洗濯籠を抱えて横切っていく。
あれってヤッパリ晴の方がネコちゃんってことかね?
ふとそんなことを思いながら、足音もなく晴の後を追う。ハタハタと手で顔を扇ぎ顔の赤みを何とかしようと足掻いている晴の肩に顎を乗せるようにして、陸斗は腰に手を回して抱き寄せていた。
「ねぇ、晴?」
「ふぁ?な、なに?」
自分が惚れられていると言われたわりには、晴はスキンシップ自体に拒絶感がなくて簡単に抱き寄せられてしまう。元々他人との距離感が近いタイプの人間だったのだろうが、これは確かに余りにも無防備過ぎて明良が苛立つのが目に見えるようだ。そんなんだから今もこうして腰を引き寄せられているのに、何のよう?とキョトンとした顔のまま。
「してないんだ?昨日。溜まんないの?」
「な、なんでそんな話し……っ陸斗ってそういうとこ駄目だと思うし!」
「え?男なら普通でしょ?」
乙女か?と笑いたくなるが、男なら普通と言った瞬間に晴が戸惑ったのが分かる。え?そうなの?と言いたげな戸惑いがあからさまに浮かんだ晴の顔に、陸斗は本当無防備だなと心の中で思う。普通の基準なんて何処にもあったもんじゃないが、割合相手との距離感が狭いタイプの人間はこの言葉に弱い。他人からこんなの普通でしょと押しきられて、そうなのかと巻き込まれる事が多いのがこのタイプだと陸斗は思っている。
「だって、普通付き合ってたら毎日とかしたくない?」
「う、え、と……え?う?」
「好きだもん、したくなるもんでしょ?ごめんね?俺がいるせいだよね?」
「え?あ?う……え?」
しおらしく謝り出した陸斗に面食らって、晴の返答が濁ってしまう。これまでの態度を見ていて陸斗という人間の基準を作りつつあった晴としては、こんな風に陸斗が素直にションボリと謝ってくるなんて思ってもいない。しかもここのところ弱いところばかりを見せられて、大人しく素直に自分達に従う陸斗の様子に『あれ?思ってるのと違う?』なんて思い始めていたところだったに違いないと思う。
「ええと………………えっと……。」
「それでさ?話し戻すけど、溜まんないの?晴は。」
「ええ?!」
背後から抱き締められ腰を引き寄せられたまま耳元で低く囁かれる声に、少し冷めようとしていた筈の晴の顔が再び真っ赤に変わる。熟れたトマトみたいな顔で晴がプルプルと首を振り答えを拒んだのに、陸斗はあからさまに深い深い溜め息をついて見せていた。
「り、陸斗?」
「普通なら溜まっちゃうって、そう思わない?」
諦めににた溜め息混じりの言葉に、抱き締められたままの晴が更に戸惑う。細くてしなやかな身体、しかもこうして抱き締めていると妙に色っぽく暖かい。引き寄せたまま腰を押し付けている内に、ジワリと自分の下半身が熱を持ち始めているのが分かって陸斗は深い溜め息をついて見せる。
「俺、…………ちょっとしんどいんだよね。」
低く熱を持った声にビクリと晴の身体が震えたのを感じたが、それには気がつかないふりをして晴の耳元で陸斗は明らかな溜め息をついて言葉を続けていた。
「だって、右手使えないしさ。」
ハッとしたように晴が、自分の腰を抱き寄せるギプスを当てた右腕を見下ろしたのが分かる。普通なら抱き寄せている時点で痛くないんじゃんとか動いてるしと言う話なのに、医学的な知識は何もない晴は自分がした事と言う負い目と共に陸斗の言葉に絡めとられめしまう。
「ここんとこ落ち込んでたから、全然抜いてないし…………。」
弱っていた自分の姿を見ていたからこそ晴はその言葉も鵜呑みに信じて、陸斗を肩越しに戸惑い怯える視線で見つめた。それを肌に感じてから視線を全く向けていなかった陸斗が、ふと気がついたように晴の顔を和な笑顔混じりに眺める。
「男同士だもん、そういうの分かってくれるよね?晴?」
全くもって他意がない様子で陸斗から同意を求められ、晴は何と答えていいのか分からずに言葉に詰まってしまう。そういうものなのかと問われても、晴自身としては余りそういう経験がない。というか成田了のセフレになるまで普通に彼女と交際していたのだし、わりと晴はそれほど性欲処理に困ることがないタイプでもあったのだ。それを見透かしているのか陸斗はパッと晴から手を離すと、賑やかにそろそろお昼ごはんだねと暢気に話を切り替えていた。
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「こら!駄目だって。」
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「調子は?ん?」
「お前が聞くな、お前が。」
耳元で問いかける宏太にヒンヤリした声を投げた了なのだが、宏太が問いかけているのは了が病で体調を崩したと言うよりも、自分の熱烈な愛情を受け止め微熱気味だった身体を労っているのは一応分かってはいる。数日前久々に話題の中で『成田』の父親の話をした時の了の反応が、宏太には心配事の種になったらしい。お陰で晴が帰宅した後、了はあっという間に裸に剥かれ余すことなく全身を愛撫されグズグズに蕩けさせられてしまって。
「可愛かった。」
蕩けさせられて了は散々に泣きわめき、宏太に懇願しながら激しく淫らに責め立てられ何度も失神するまで追い詰められてしまった。それを抱き締められたままの宏太から囁かれ、あられもなく脚を開き強請り注ぎ込まれたのをつい思い出してしまう。
「熱い、思い出したか?ん?」
「馬鹿、変態。」
「その変態が好きだろ?ん?」
なんで変態は容認なんだよと不貞腐れる了の手が完全に食器を離したのを感づいたのか、宏太の両腕が軽々と了の腰を抱きかかえ上げてしまう。どうして成人男子一人をこうも軽々と抱き上げるのかと、相変わらずの宏太の腕力に呆れずにはいられない。本当に無惨な傷跡があって歩行にだって障害がある筈なのに、最近では家の中では完全に自由自在なのだ。
「好きだろ?了。」
呆れ果ててしまうけれど、そんな男は実際のところ何よりも自分ファーストだと言うところが、宏太には勝てないなぁと思わさせる面でもあって。抱き上げられたまま身体を捻り首元に手を回す了に、宏太が下から覗き込むような仕草をしてくる。
「はいはい、好きです。愛してる。」
「おざなりだな、…………困ったな。」
想定とは違う返答が宏太から返ってきたのに、了は腕に抱き上げられたまま訝しげに眉を潜める。
「困る?」
「困った…………から、確かめないとな。」
そう言った途端に抱き上げられたままスルスルとキッチンの中で、あっという間に着ていた服を剥がされて行くのに目を丸くしてしまう。何とか宏太の手を制止しようにも何でまた抱き上げたまま、こんなに容易く服を脱がせられるのか分からない。あれよあれよと言う間に気がつけば全裸で抱き上げられていて、宏太の前には無防備な素肌が晒されている。
「馬鹿、よせって!馬鹿!」
レロ……と濡れた舌が肉感的な唇の合間から垣間見えた次の瞬間、痺れるような快感に背筋が震えて甲高い声がキッチンに響く。まだ陽射しの溢れるキッチンで濡れた音を立てて吸いたてられる突起は、数日前の刺激にまだホンノリ薔薇色に色づき腫れていて刺激に敏感なままだ。
「や、あんっあぁ!あ!」
熱く滑る舌先にヌリュヌリュと擦られ、何度も音を立てて甘く吸いあげられ、やがては軽く噛まれる刺激で腰があっという間に蕩けてしまう。足元に投げ捨てられた衣類や下着が淫らに視界を過るのを感じながら、気がつけばキッチンカウンターに浅く腰を乗せ大きく両脚を開かされてしまっていた。膝を抱えられるように肩に乗せられやっと痕の色を褪せさせ始めていた肌に、口付けで薔薇の花弁を散らされていく。
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「ここ、好きか?ん?」
「んんっ、あぅん!」
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「ひぁ!ひゃぁ!!」
「イヤらしい穴だな、まだ腫れてるのにチュウチュウ指に吸い付く。」
「んくぅ!!ひぁん!」
耳を犯すような淫らに響く声。事実まだ散々に擦りたてられて果てていた了の穴は、熱をもってヒクヒクと蠢き宏太の指に音を立てて吸い付いてしまう。中もまだ腫れたままなのは分かっていて、宏太の指がチュプンと中に飲み込まれたのに甘い悲鳴があがる。
「ひんんっ!んぅ!んんっ!」
「あぁ、可哀相に……腫れて……熱くて…………狭いな。ん?」
分かってる癖にと本当なら叫びたいのに、中をなぞる指が与えてくるのは極上の快楽で言葉にならない。ユルリと腫れて狭い腸を擦られて、指先が前立腺をあやすように撫で回すのに悲鳴を上げてしまう。
「あぅ!ふぁ!!うぅ!!や、くぅ!」
「硬く腫れてる…………敏感だな?ん?」
甘い声で囁きながら、不安定な体勢のままそれを擦り上げられる。絶叫したくなるほどの快感に堪えようとして了が思わず身を縮め閉じられた歯がガチガチと鳴るのに、スイと伸びあがってきた宏太の唇が耳朶をねぶり囁く。
「口を開け、ほら…………あー……って…………。」
宏太の低く痺れるような甘い声に操られて、自然と唇がほどけて我慢しようとしていた快感への声が溢れ落ちてしまう。
「あぁあ、あぁ!あぁあ!」
一度崩れてしまうと中を指で擦られる快感には、もうどうしても堪えようが了にはなかった。キュウキュウと前立腺をなぞる宏太の指を食い締めて、あっという間に絶頂に上り詰めていく。
「あぁあ、い、く、あぁあ!」
「こら、駄目だろ?ん?」
完全に上り詰める寸前に唐突に指を引き抜かれ、あやすように耳元で囁かれるのに了はハクハクと酸素を求めるように身体を喘がせ震える。当然宏太の方だって分かっていてやっているのだけれど、快感の寸止めには理性なんて効く筈がない。
「うぁ、あ、あぁあ、や、やぁ!」
「俺は馬鹿なんだろ?ん?ちゃんと教えないと分からないぞ?了。」
何を教えろと?快感が溜まりきっているとでも?そう怒鳴り付けたくなるけれど、涼しい顔で宏太は了の唇を奪い甘い声で強請る。
「了は、どうされたい?ん?」
ソロソロと指でまた蠢く後穴の入り口を撫で回されるのに、そこが音を立てて指を飲み込み奥まで引き込もうとしてしまう。腫れ上がって普段より熱く狭くなっていて、指だけでもかなりの圧迫感なのは自分でも分かっている。それでもそこにあてがって奥まで貫かれるのに、指では足りないと了の身体が悲鳴を上げて求めていた。
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