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間章 ちょっと合間の話3
間話68.一番好きなの
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耳元で強請る声と抱き寄せられた身体の熱さに酔わされて、何度も何度も口づけられるのに甘い吐息が唇から溢れ落ちる。あっという間にベットに連れ込まれていて、気が付けば衣服も全て剥ぎ取られて、自分は真っ先に全裸にされているのに榊恭平はなす術もなく横たえられていた。
「だめ、待って……?逃げないで……。」
身体を捩る恭平を逃がさないと自分を組み敷く源川仁聖が、見ている目の前で自ら服を乱暴に脱ぎ捨てていく。仁聖に腰に跨がられた状態の恭平は、目の前の滑らかな身体の動きに引き寄せられ魅せられ目を奪われてしまっている。
狡い…………
高校生の時と比較しても見事な肉体美に育っているのは言うまでもなくて、目の前にあるのは自分より遥かにしなやかで綺麗な体躯。仁聖が高三になったばかりの時、仁聖と恭平の身長は殆んど変わらないか、もしかすると恭平の方が少し高かったかもしれない。体つきだって元々運動部だった仁聖は恭平よりは少しガッシリした体格だったけれど、それだって全体として見たら恭平と大きな差はなかった。
「恭平…………。」
それなのにここで初めて触れられた時からまだ2年も経っていないのに、目の前の仁聖は既に10センチも恭平より背が高く、身体も全体的に一回りずつ筋肉の付き方が違う。完全に男になったその身体に、自分が与えられる快感がどんなものか確り刻み込まれてしまっている。
「ずる……い…………もぉ。」
「狡い?…………何が……?」
恭平の言葉に戸惑い憂い染みた大人の男の色気がその身体に漂い始めていて、どんなに視線を奪われないようにと思っても無理なのだ。何が狡いのかすら分からないと言う仁聖を思わず抱き寄せる恭平の腕に、仁聖が幸せそうに頬を擦り寄らせていく。
「…………ね、怖いから…………もっと、傍にいて……い?」
そんな仁聖がこれでもまだ成人になる迄にも数ヶ月を残していて、良く分からない不条理な怖さに怯え子供のように恭平に縋る。そんな仁聖を知っているのは自分一人だけなのだと言う現実に、奇妙な優越感に似た感情が沸き上がってしまう。それに恭平は思ず、回していた腕に力を込めて仁聖を誘うように抱き締めていた。
「恭平………、触る………よ?もっと……触っていいよね?」
熱っぽい声で強請るようにもっと触れさせてと請われ、男っぽい視線に射抜かれて肌に口づけられていくのに何も抵抗なんて出来ない。そうして甘く低い声で何度も名前を呼ばれながら、仁聖は肌をこ擦り合わせるようにのし掛かってくる。
「脚…………、広げて?」
言われるがままに左右に大きく広げられたしなやかな恭平の脚は、その逞しい腕に絡み付かれ高く抱え上げられていて膝を寄り合わせることもできないでいる。その上こんな恥ずかしい姿の両脚の間に、仁聖が深く身体を沈めてくるだけで心地よさに腰が浮いてしまう。
「恭平……すき…………大好き…………。」
「んぁ…………あ…………っ…………んん…………。」
耳朶に触れて首筋から丹念に愛撫をする仁聖の唇が降りていくのに、口を開くと喘ぎが溢れるしかないのが分かっているから恭平は思わず唇を噛む。それに気が付いた仁聖が幸せそうに緩んだ甘い瞳で、恭平の瞳を覗き込みながら幸せそうに囁いてくる。
「がまん、しないで………………きょうへ…………愛してる……………。」
「んぅ…………あぁ……っ!」
愛撫と唾液にテラテラと光る乳首が薔薇色に染められた白磁の肌に一際淫らで鮮やかに尖り、仁聖は更にそこに丹念に舌を這わせ指先を滑らせていく。指先と舌にツンッと固くしこり、仁聖に転がされる刺激に眉を寄せてしまう。そうして与えられ始める快楽に、見悶える恭平の腰がユラリとくねり僅かに動き出していた。
「気持ち、い?きょうへ…………。」
「んくぅ…………んんっ…………あぅっ!」
チュクチュクと湿った音を発てて固く尖った乳首を弄られるのに、脚を閉じることもできない恭平の腰がヒクヒクと跳ね上がってしまう。そうなると分かっていて仁聖が執拗に乳首に愛撫を繰り返して、淫らに立ち上がってしまった恭平自身の欲望の先端が仁聖の引き締まった腹に擦れだす。既に先端の鈴口からは止めどなくトロトロと蜜が溢れだしていて、擦れる仁聖の腹に淫らな糸を引くのが分かっていても堪えることができないでいた。
「く……ふぅっ!んっ!」
「そんな……チンポ……擦り付けて………………エロい、恭平ってば…………。」
お前がそうさせてると訴えようと恭平が熱い視線を向けると、幸せそうに自分を見つめてくる更に熱っぽい仁聖の瞳に真正面から捉えられてしまう。そんな反応をしている恭平の様子が、とても幸せなのだと仁聖はなおのこと肌に口づけを繰り返すのだ。
「ここ、真っ赤…………。ね……舐めるのと……吸うのと……噛むの……どれが好き?」
その言葉を溢しながら言葉通りの行動を乳首に施されるのに、思わず恭平の頬が濃い薔薇色に染め上がっていた。仁聖の唇から覗く舌先が先端を擽る様に撫で回し、熱い口腔内に飲み込まれ吸い上げられ、最後に甘く噛みつかれていく。
「ば、かぁ……そんな…………んんっ!」
「ふふ、可愛い……きょうへ……顔も……真っ赤だよ?でも。」
一番好きなのはどれ?なんてとんでもないことを幸せそうに問いかけながら、また繰り返される仁聖の愛撫に恭平は翻弄されて身悶えるしかない。そのどれもにガクガクする程の快感に飲まれる恭平にはどれがいいなんて答えようがないのに、仁聖は丹念にそれを何度も繰り返してくる。
「も、やぁ……ああっあぅっ……!」
「恭平…………どれが、い?」
耳元に甘い声で再び名前を呼ばれながら強く腰を押し付けられ、仁聖の熱い昂りが肌に擦られ脈打つのを感じて恭平は大きく喉をならしていた。
※※※
結城晴は仕事終わりの狭山明良に捕獲されて、2時間程前に既に帰途についていた。その後外崎邸には密かに別な訪問者が来ていて、その訪問者が帰り落ち着いたところで普段より遅めの夕飯にやっとなったところだ。
「はい、どーぞ。」
手早く夕飯の支度を終えた外崎了が、何時ものようにリビングのソファーの定位置に腰かけた外崎宏太の前にサイドテーブルを取り出す。目の前のテーブルに食事をセッティングされ、宏太は一足先に了に促されて食事を始めていた。
「少し熱いからな?」
「分かった。」
大概宏太の食事は目が見えなくても食べやすいようにと、同じ食器に盛り付けられサイドテーブルの決まった位置に一人分の食卓を作るのが外崎邸での定番。もうすっかりこのセッティングにも慣れたので今日は何だとメニューを説明されれば、宏太は一人で食事が出来るようになっている。(因みに今日は一番好きっぽい『ハンバーグ』だと言うが、基本的に了は宏太は『子供舌』だとか言う。味のハッキリしたものの方が好みだし少し甘目なものが好きで、基本子供が好むメニューが好きなんだよなと言われたのだ。そう言われるのが良いことなのか悪いことなのか分からないので、宏太は言われるがままだったりしている。)
「…………いただきます。」
素直にそう言って宏太が食べ始めたのを確認してから、了は立ち上がりキッチンの方に脚を向けていた。基本的に二人が一緒に食事を食べ始めることはなくて、了は宏太の食べる様子を眺めているか後から自分用のトレイを持ってきて食事を始める。それは宏太が食べにくくないかとか、余り食べ慣れない物だと皿をひっくり返したりして怪我をしたり火傷したりしないようにと了が先ずは確認しているからだった。
「味どう?濃くないか?」
「丁度いい…………旨い。」
宏太の答えに見えなくても分かる嬉しそうにしている気配を漂わせる了が、自分の分の食器を乗せたトレイを持って戻ってくると傍に座る。もう一人で食事するのに慣れたから危ないことはそうそうないのだから一緒に食べ始めてもいいと思うと言ってみたこともあるのだけれど、了には気になる面もあるのか『宏太が旨そうに食べるのを見てるのが楽しい』なんてことを言われもしてしまったりする。
元々食事に興味がない
味覚障害があったことを知らなかった宏太は全く食事に興味がなくて、了が傍にいてそれを改善するまでは食事は全て固形栄養剤や栄養剤のゼリーで済ませていた。必要な栄養とエネルギーさえとれれば良かっただけの食生活を塗り替えたのは了の食事なのだが、またそれが再発しないか心配しているのだと宏太は内心思う。
もう、そんなことないと思うが…………
実際今では了が作ったもの以外のものも少しずつ味が分かるようになって、時には了を連れて外食もするし、他の奴等を家に呼んでバーベキューなんてことまでしたりしている。因みに年末年始に炬燵があるならこれはしないとと、何故か了がやる気で鍋もしたわけで。これまで食に興味がなかった宏太は何度も鍋を食べたことは確かにあるのだが、別段特別でもないのに鍋をつついて旨いと思うなんて事自体が初めての経験だったりする。そう言う意味では一緒に食べられると言うことも案外幸せなのだけれど、普段の食事ではまだ頑なに了は後から食べることが多いのだ。
「どした?……考え事?こぉた。」
少しの間食事の手が止まっていたらしくて、そう問いかけられたのに気が付く。別段一緒に食べるのがどうこうと言うわけではないのだけど、そこが気になると一応言うべきかと考えていたら了は別なことを考えているのだと思ったらしい。
「風間の話?」
直前に来訪していた相手・刑事の風間祥太は、宏太の幼馴染み・遠坂喜一の元相棒。そして今では他の相棒と一緒に三浦和希の事件の担当をしていて、時折それに関係して宏太に手助けを求めることがある。ここ最近また近郊で三浦が幾つか事件を起こしていて、それに関連した情報を風間は欲しがっているのだ。
「いや…………。」
「…………まぁ仕方がないけどな……晴が接触してるし……。」
コンサルティング会社の社員である晴が駅前で三浦に接触したのはつい最近の事で、実はその日の内に別な場所で三浦は事件を起こしたらしい。つまりは晴が巻き込まれていた可能性もあったのだと知って、青ざめたのは晴だけにとどまる訳がなかった。とは言え風間が新たに欲しがっている情報は実は晴のことではないのだが、全く関係していないとはいいきれない。
「白鞘が…………ねぇ。」
結城晴の大学時代からの友人・白鞘千佳。ここ最近晴と明良の関係性に少し関わって問題の一つになっていた白鞘が、最後にここ近郊で見かけられたのは晴が三浦と喫茶店でお茶をした後の事だ。そしてその翌日を境に白鞘は会社を無断欠勤していて、現在消息も分からず行方不明になってしまっていた。勿論行方が分からなくなって直ぐ晴には問い合わせが来ていたが、あの日駅前の通りで別れてからの白鞘の足取りは晴には分からない。
何処……行ったのかな……あいつ…………
そう戸惑うばかりの晴に仕方がないとフルスペックを活用して、白鞘の足取りを宏太と了が探ってやったのはいうまでもない。あの夜白鞘は晴と分かれた後に一人で駅の反対側に移動し、花街の片隅の居酒屋に入って暫く飲んでいたようだ。その後も花街をフラフラしていたが、花街で誰かと意気投合でもしたようにカメラのない店舗を数店梯子していた。
これ誰だろ…………?
やっと見つけた白鞘と誰かの画像に見いった了と晴だが、画の荒い画面ではそれが誰かは全く分からない。しかも顔形だけでなく冬の夜の完全な防寒具を身に付けた姿では、白鞘と一緒にいる人物の性別も実際には正確に判別が困難だった。少なくとも身長は晴と同じくらいだろうが、背の高い女性かもと言われると否定できない。身長は容易く履き物で変動するし、その人物の足音を聞き取ろうにも千鳥足の白鞘と一緒では宏太も上手く聞き取れなかったのだ。
くそ、相手が抱えて歩いてんな?……音の特徴が聞き取れねぇ……しかも
酔った白鞘が延々と晴との話を相手に語り続けていて、相手の声を単独で聞き取ろうとする宏太を大半邪魔しているのだという。そんなことはこれまでの経験でも珍しいと宏太が珍しく苦い顔をしたのに、晴と了も思わず顔を見合わせたくらいだ。
「相手…………アイツだと思ってるんだろ?」
そう、結論として宏太は白鞘があの夜に意気投合して歩き回った相手は、三浦和希ではないかと考えている。三浦は宏太がどんな技能を持っているかはまだ知らないだろうが、少なくとも画像以外の別な情報から自分を判別できる人間が警察側にいるのには気が付き始めている筈だ。その後電車に乗り込んで自分の生活圏に相手を連れ帰った白鞘は、そのまま足取りが掴めなくなってしまった。
「…………調べるなら手伝うから、先ずは飯。」
フゥと一息ついた了が諭すようにそう言ったのに、実際はその事を考えていたわけではないと宏太は思いつつ再び箸を動かす。風間が追っている事件は二つ、一応片方は被害者宅が犯行現場なので被害者の身元は判明している。もう一つの事件はまだ身元がハッキリしないというのは、被害者の遺体の最近の三浦の事件の中でも損壊が一際酷すぎたからだ。年代すらハッキリしない程の遺体の損壊は三浦にしては珍しいとも言えるのだが、同時に一つ何時もならやることをしていなかったという。恐らくそれは以前ホテル関係の情報を主体に得られる相園が話していたことだろうし、風間も少しそれに関して疑問に感じている様子でもあった。
「だめ、待って……?逃げないで……。」
身体を捩る恭平を逃がさないと自分を組み敷く源川仁聖が、見ている目の前で自ら服を乱暴に脱ぎ捨てていく。仁聖に腰に跨がられた状態の恭平は、目の前の滑らかな身体の動きに引き寄せられ魅せられ目を奪われてしまっている。
狡い…………
高校生の時と比較しても見事な肉体美に育っているのは言うまでもなくて、目の前にあるのは自分より遥かにしなやかで綺麗な体躯。仁聖が高三になったばかりの時、仁聖と恭平の身長は殆んど変わらないか、もしかすると恭平の方が少し高かったかもしれない。体つきだって元々運動部だった仁聖は恭平よりは少しガッシリした体格だったけれど、それだって全体として見たら恭平と大きな差はなかった。
「恭平…………。」
それなのにここで初めて触れられた時からまだ2年も経っていないのに、目の前の仁聖は既に10センチも恭平より背が高く、身体も全体的に一回りずつ筋肉の付き方が違う。完全に男になったその身体に、自分が与えられる快感がどんなものか確り刻み込まれてしまっている。
「ずる……い…………もぉ。」
「狡い?…………何が……?」
恭平の言葉に戸惑い憂い染みた大人の男の色気がその身体に漂い始めていて、どんなに視線を奪われないようにと思っても無理なのだ。何が狡いのかすら分からないと言う仁聖を思わず抱き寄せる恭平の腕に、仁聖が幸せそうに頬を擦り寄らせていく。
「…………ね、怖いから…………もっと、傍にいて……い?」
そんな仁聖がこれでもまだ成人になる迄にも数ヶ月を残していて、良く分からない不条理な怖さに怯え子供のように恭平に縋る。そんな仁聖を知っているのは自分一人だけなのだと言う現実に、奇妙な優越感に似た感情が沸き上がってしまう。それに恭平は思ず、回していた腕に力を込めて仁聖を誘うように抱き締めていた。
「恭平………、触る………よ?もっと……触っていいよね?」
熱っぽい声で強請るようにもっと触れさせてと請われ、男っぽい視線に射抜かれて肌に口づけられていくのに何も抵抗なんて出来ない。そうして甘く低い声で何度も名前を呼ばれながら、仁聖は肌をこ擦り合わせるようにのし掛かってくる。
「脚…………、広げて?」
言われるがままに左右に大きく広げられたしなやかな恭平の脚は、その逞しい腕に絡み付かれ高く抱え上げられていて膝を寄り合わせることもできないでいる。その上こんな恥ずかしい姿の両脚の間に、仁聖が深く身体を沈めてくるだけで心地よさに腰が浮いてしまう。
「恭平……すき…………大好き…………。」
「んぁ…………あ…………っ…………んん…………。」
耳朶に触れて首筋から丹念に愛撫をする仁聖の唇が降りていくのに、口を開くと喘ぎが溢れるしかないのが分かっているから恭平は思わず唇を噛む。それに気が付いた仁聖が幸せそうに緩んだ甘い瞳で、恭平の瞳を覗き込みながら幸せそうに囁いてくる。
「がまん、しないで………………きょうへ…………愛してる……………。」
「んぅ…………あぁ……っ!」
愛撫と唾液にテラテラと光る乳首が薔薇色に染められた白磁の肌に一際淫らで鮮やかに尖り、仁聖は更にそこに丹念に舌を這わせ指先を滑らせていく。指先と舌にツンッと固くしこり、仁聖に転がされる刺激に眉を寄せてしまう。そうして与えられ始める快楽に、見悶える恭平の腰がユラリとくねり僅かに動き出していた。
「気持ち、い?きょうへ…………。」
「んくぅ…………んんっ…………あぅっ!」
チュクチュクと湿った音を発てて固く尖った乳首を弄られるのに、脚を閉じることもできない恭平の腰がヒクヒクと跳ね上がってしまう。そうなると分かっていて仁聖が執拗に乳首に愛撫を繰り返して、淫らに立ち上がってしまった恭平自身の欲望の先端が仁聖の引き締まった腹に擦れだす。既に先端の鈴口からは止めどなくトロトロと蜜が溢れだしていて、擦れる仁聖の腹に淫らな糸を引くのが分かっていても堪えることができないでいた。
「く……ふぅっ!んっ!」
「そんな……チンポ……擦り付けて………………エロい、恭平ってば…………。」
お前がそうさせてると訴えようと恭平が熱い視線を向けると、幸せそうに自分を見つめてくる更に熱っぽい仁聖の瞳に真正面から捉えられてしまう。そんな反応をしている恭平の様子が、とても幸せなのだと仁聖はなおのこと肌に口づけを繰り返すのだ。
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「ば、かぁ……そんな…………んんっ!」
「ふふ、可愛い……きょうへ……顔も……真っ赤だよ?でも。」
一番好きなのはどれ?なんてとんでもないことを幸せそうに問いかけながら、また繰り返される仁聖の愛撫に恭平は翻弄されて身悶えるしかない。そのどれもにガクガクする程の快感に飲まれる恭平にはどれがいいなんて答えようがないのに、仁聖は丹念にそれを何度も繰り返してくる。
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「少し熱いからな?」
「分かった。」
大概宏太の食事は目が見えなくても食べやすいようにと、同じ食器に盛り付けられサイドテーブルの決まった位置に一人分の食卓を作るのが外崎邸での定番。もうすっかりこのセッティングにも慣れたので今日は何だとメニューを説明されれば、宏太は一人で食事が出来るようになっている。(因みに今日は一番好きっぽい『ハンバーグ』だと言うが、基本的に了は宏太は『子供舌』だとか言う。味のハッキリしたものの方が好みだし少し甘目なものが好きで、基本子供が好むメニューが好きなんだよなと言われたのだ。そう言われるのが良いことなのか悪いことなのか分からないので、宏太は言われるがままだったりしている。)
「…………いただきます。」
素直にそう言って宏太が食べ始めたのを確認してから、了は立ち上がりキッチンの方に脚を向けていた。基本的に二人が一緒に食事を食べ始めることはなくて、了は宏太の食べる様子を眺めているか後から自分用のトレイを持ってきて食事を始める。それは宏太が食べにくくないかとか、余り食べ慣れない物だと皿をひっくり返したりして怪我をしたり火傷したりしないようにと了が先ずは確認しているからだった。
「味どう?濃くないか?」
「丁度いい…………旨い。」
宏太の答えに見えなくても分かる嬉しそうにしている気配を漂わせる了が、自分の分の食器を乗せたトレイを持って戻ってくると傍に座る。もう一人で食事するのに慣れたから危ないことはそうそうないのだから一緒に食べ始めてもいいと思うと言ってみたこともあるのだけれど、了には気になる面もあるのか『宏太が旨そうに食べるのを見てるのが楽しい』なんてことを言われもしてしまったりする。
元々食事に興味がない
味覚障害があったことを知らなかった宏太は全く食事に興味がなくて、了が傍にいてそれを改善するまでは食事は全て固形栄養剤や栄養剤のゼリーで済ませていた。必要な栄養とエネルギーさえとれれば良かっただけの食生活を塗り替えたのは了の食事なのだが、またそれが再発しないか心配しているのだと宏太は内心思う。
もう、そんなことないと思うが…………
実際今では了が作ったもの以外のものも少しずつ味が分かるようになって、時には了を連れて外食もするし、他の奴等を家に呼んでバーベキューなんてことまでしたりしている。因みに年末年始に炬燵があるならこれはしないとと、何故か了がやる気で鍋もしたわけで。これまで食に興味がなかった宏太は何度も鍋を食べたことは確かにあるのだが、別段特別でもないのに鍋をつついて旨いと思うなんて事自体が初めての経験だったりする。そう言う意味では一緒に食べられると言うことも案外幸せなのだけれど、普段の食事ではまだ頑なに了は後から食べることが多いのだ。
「どした?……考え事?こぉた。」
少しの間食事の手が止まっていたらしくて、そう問いかけられたのに気が付く。別段一緒に食べるのがどうこうと言うわけではないのだけど、そこが気になると一応言うべきかと考えていたら了は別なことを考えているのだと思ったらしい。
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「いや…………。」
「…………まぁ仕方がないけどな……晴が接触してるし……。」
コンサルティング会社の社員である晴が駅前で三浦に接触したのはつい最近の事で、実はその日の内に別な場所で三浦は事件を起こしたらしい。つまりは晴が巻き込まれていた可能性もあったのだと知って、青ざめたのは晴だけにとどまる訳がなかった。とは言え風間が新たに欲しがっている情報は実は晴のことではないのだが、全く関係していないとはいいきれない。
「白鞘が…………ねぇ。」
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何処……行ったのかな……あいつ…………
そう戸惑うばかりの晴に仕方がないとフルスペックを活用して、白鞘の足取りを宏太と了が探ってやったのはいうまでもない。あの夜白鞘は晴と分かれた後に一人で駅の反対側に移動し、花街の片隅の居酒屋に入って暫く飲んでいたようだ。その後も花街をフラフラしていたが、花街で誰かと意気投合でもしたようにカメラのない店舗を数店梯子していた。
これ誰だろ…………?
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「相手…………アイツだと思ってるんだろ?」
そう、結論として宏太は白鞘があの夜に意気投合して歩き回った相手は、三浦和希ではないかと考えている。三浦は宏太がどんな技能を持っているかはまだ知らないだろうが、少なくとも画像以外の別な情報から自分を判別できる人間が警察側にいるのには気が付き始めている筈だ。その後電車に乗り込んで自分の生活圏に相手を連れ帰った白鞘は、そのまま足取りが掴めなくなってしまった。
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