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間章 ちょっと合間の話3
間話46.遊んでなんか
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「外崎さん!!」
罵声に近いような血相をかえた声で電話をしているのは言うまでもなく狭山明良で、当の明良自身ほんの十五分か二十分前に結城晴が店を出たのを『耳』で聞いていて晴を迎えに行くと外崎邸から駅前に向かったばかりだった。その明良がこのタイミングでこんなにも血相を変えるなんてことは一つ位しか想定できない。とは言え事態を把握するのに電話口の外崎宏太はどうした?と問いかけ、電話の向こうでは丁度隣に来ていた模様の外崎了も眉を潜めて耳を傾ける。
「晴の行方調べてください!晴と白鞘がどこ行ったか!!」
その夜、晴と二人で酒席を持った白鞘知佳。この駅近郊ではなく数駅離れた沿線に一人で暮らす白鞘知佳だから、駅の構内とか改札で二人は別れる筈だった。それに晴だって明良と暮らす駅の南側、伊呂波は北側だから構内を抜けて来る筈なのに何時になっても見つからないという。そこまで心配することじゃないと思うだろうが、今日は白鞘と会うからと事前に晴はちゃんと明良に説明しているし、話が終わって白鞘と別れたら明良に連絡するとも言ったのだ。
あれは結構、酔ってる…………絶対…………
『耳』越しに聞いた店を出ようとしていた時の晴の声。晴の話していた口調はかなり緩慢で呂律が怪しくて、普段明良と一緒の時ならヘロヘロになっていて甘えたに切り替わり抱きついて来ていてもおかしくない段階。そして酔った時の晴は格段に明良には甘えたになるけれど、あれが明良だけにすることとは言えない。何しろ以前源川仁聖や榊恭平に対しては、ベロベロの泣き上戸で絡み酒をしていたのは一度見たのだ。けれど、古くからの友人と飲んでどちらが強く出るのかは明良も知らないことだった。でも甘えたになっても絡み酒になっていても、どちらにせよ今の晴だったら明良に連絡をすることを放置するとは思えない。
もし何処かで倒れていたら
とか、そんなことまで考えて酷く不安にもなってしまう。それにしても別れて帰る筈の白鞘の姿すら何処にも見えないなんて。酔った晴をどこかに放置したなんて考えられないけれど、そうでなく二人きりで何処かに……消えたのだとしたら、そんなの見たら回し蹴りを我慢できる気がしない。
『おい、少し落ち着け!暴走すんなよ?明良!』
思わず暴走ってなんだよ!と電話に向かって明良は怒鳴りたくなる。けれど、それより二人が居酒屋・伊呂波を出て駅に向かったとして、そう考えながら晴の姿を探して明良は辺りを必死に見渡していた。
※※※
普段とは違って身体の中の浅い部分を、指でクチクチと執拗に掻き回される奇妙なもどかしさ。
ボンヤリする酒精の強い眠気の向こうで、晴は脚を大きく広げて快感に眉を寄せ目を閉じながらそれに身悶える。ヌプヌプクチュクチュと音を立てて入り口を何度も何度も浅く出し入れされる指の動きがもどかしくて、もっと深く・もっと何時ものように気持ちよくしてと心が強請っている。他人の熱のこもる身体にのし掛かられ脚を大きく広げ片足を抱き上げられて、脚を閉じることも出来ないまま指で入り口を寛げられ続けているのに思わず淫らに腰がくねってしまうのだ。
「んぅ、や…………。いり、ぐちらけ……クチュクチュ、すんの、やだぁ……んんっ、も、っとぉ。」
晴の強請る言葉に息を飲むような気配がして、晴の思いを察したようにクプリと指が根本まで深く埋め込まれていく。その後にヌチュヌチュと更に大きな音を立てて指が深く抜き差しされ始めていくのに、それでもまだ何かが違う。何時もと違って上手く気持ちいい場所を外して体内に触れるような感覚に、晴はなおのこと焦燥感が強くなってしまって震えながら強請る。
「やぁ、も、っと……ぉ、いつ、もみた……にぃして……ぇ、んんんっ。」
何時ものように。もっと。そう必死に繰り返す声に、ヌチュッヌチュッとはしたない湿った音を立てて大きく掻き回される。滑る後孔の中を指先が撫でていき、やっと何時ものようにコリコリと硬くしこった前立腺を撫で始めるのに晴は大きく身体を震わせていた。
「あ、んんっ、そこ、あっ!あぁそれっ!あん、あぁんっ。」
クリクリ………コリコリと指先が引っ掻けるようにしてそこを掠めて撫でるのに晴の声が自然と跳ねて、眉を寄せて目を閉じた晴はベットに沈んだまま喘ぎ続けていた。それでも普段みたいに酩酊するどうしようもない程の快感は、その指からはまだ得られていない。そんなよく分からない不快感に戸惑い混乱しながら、それでも次第に高まる身体の反応はジワジワと背筋を這い上がる。
…………寝具………………ベットの…………寝心地が違う………………のか……な?
寝具が明良と一緒にくるまって眠っている普段の、あの心地よい肌触りじゃない。そう言えば自分はどうやって家まで帰ったっけ?と頭の中がボンヤリと自分に問いかけてきていた。明良に電話しなきゃと店を出る時に考えると同時に、今日は一緒に来ないでと自分が頼んだのに明良が迎えにきてくれているんじゃないかなんて自己中心的なことを思いもする。
明良が……五十嵐ハルの時みたいに…………
言わなくても何時ものように傍で見守ってくれていて、直ぐ一緒に帰ろうと抱き締めてくれるんじゃないかなんて酷く自分勝手なことを考えてもいた。来ないでと言ったのは自分なのに、それを明良が覆して勝手に傍に来てくれてなんてムシがよすぎる。それなのに心の何処かでそうしていて欲しくて、店をでた瞬間に自分が辺りを視線だけで探していたのに気がついてしまう。
凄く勝手だよな………………でも、明良にいて欲しかった…………我儘だけど…………
快楽の中にいる筈なのに。あれ?何で自分はこんな風に冷静に考え事してる?なんてことを今は考えてしまう。何時もの明良とのセックスならこんな風に冷静に何か考えるなんて晴には出来る訳がないのに、余りにも何時もとはこの感覚が違うから。それでも晴が酔いのせいでまだボンヤリとしているのは変わらないし、ヌチュヌチュとはしたない音を立てて体内を二本の指が掻き回しだしているのは現実。
「んぅ、んっあぁっあ!」
前立腺を捏ね回されるのに背筋が仰け反り、差し込まれた指が更に動きを変えていく。ただ肉襞を指の腹で擦るだけでなく、深く掻き回して差し込まれた二本の指が入り口を左右に広げて寛げてしまう。空気を含まされるような体内の感覚に、腰の辺りが奇妙なひきつれたような感じを訴えてくる。
「んぁあ!あぅ!!ひぁ!」
指が行う開いたり閉じたりの繰り返しにガクガクと全身が震えていて、その開閉のせいで自分の尻の孔がクパッと音を立てているように感じてしまう。開かれ閉じられ、しかもその合間に乳首や他の部分にも片方の空いた手が触れてくるのに翻弄される。
「ひら、くの、やぁ…………指……やだぁんん…………や……くぅん!」
「…………や?…………やなの?」
くぐもった低い興奮を滲ませた声でそう耳元に問いかけられ、思わず晴はコクコクと頭を縦に振る。
「開く、の、やだぁ、クパクパするの、やぁ。」
何時もと違うその愛撫のやり方では、自分の身体は余り心地よさを感じないと訴えようにも言葉が上手く紡げない。どうして何時ものような熱さを直ぐに与えてもくれないのかと問いかけたいのに、それでも喘ぐ吐息は上手く声にならないのだ。何でこんなにも何時もと違うのか自分でもよく分からないまま、晴は息を上げて頬を染めて覆い被さる肩に縋る。その姿に息を詰めたように見つめる覆い被さっているものの視線を、晴自身も肌に直に感じていた。
「んぅ!」
チュプンッと音を立てて指を無造作に体内から引き抜かれて、甲高く悲鳴じみた甘い声を思わずあげてしまう。そして意識の外でカチャカチャというベルトを外す音を聴いて、覆い被さる熱が何時もとは違うのに晴は戸惑いながらパチパチと瞬きを繰り返す。
そうして見つめる自分の視界は、やはりどこか何時もと違っておかしい。見覚えのない天井に見覚えのない落ち着かない色合いの壁、室内の匂いも何時もの晴と明良の暮らす明良の匂いがする室内じゃないのに晴は更に戸惑う。
「ぁ…………き……らぁ…………?」
戸惑いに満ちた自分の声は、酷く頼りなくて弱々しい。そうして自覚した違和感の中に自分の脚を担ぎ股の間に身体を沈めている筈の身体は見えるのに、あの艶やかな明良のサラサラの黒髪が見えない。晴の目の前には自分より更に茶色の短髪が揺れていて、そこにはギラギラと興奮に獣のような瞳で自分を見下ろしている見慣れた顔立ち。
明良…………じゃ…………ない…………
晴は戸惑いながら再び瞬きを繰り返し、そのよく知る筈の男が自分の股間に向けて自らの怒張を抜き出しているのを、そしてそれが自分の後孔に押し当てたのを信じられないモノを見ているように見下ろしていた。
なんで…………あれ?…………これ、どういうこと……?
入り口を狙い定めて押し当てられた白鞘知佳の怒張の熱が、何故か逆にヒヤリと晴の背筋を凍らせる。我に返った自分はほぼ全裸で、自らの股間を曝した知佳に組み敷かれていた。しかも片足を脚を担がれ全てを曝して、今にも掻き回され綻ばされた後孔に知佳の逸物を捩じ込まれようとしているのだ。
「ち、か?」
戸惑い掠れた晴の呼ぶ声が聞こえないのか目の前で舌舐りした知佳はより腰を押し付けてきて、今にも先端がめり込んで来そうな圧力が身体にかかる。それにヒッと呼吸が喉の奥で氷のように張り付いて、晴は喘ぐことも出来ずに息を飲む。
「…………いい、よな?…………も。」
良くない、何も良くない。欲情して腰を突き込もうとする身体を思わず晴は押し退けようともがくけれど、酔いのせいか体勢のせいなのか上手くはねのけることが出来ない。しかも覆い被さる身体が重くのし掛かり息もつけない晴の身悶える姿は、なおのこと知佳の欲情を煽るばかりで。のし掛かられ耳朶をねぶられながら右の手首を押さえ込まれ、左の脚は知佳の右腕に高く上げて担がれていて。男同士とは思えないはしたない格好の上に、晴はこれに録な抵抗も出来ない。
「や、だ、チカ、や、やめ。」
「晴、力抜いて、欲しいんだろ?チンポ…………な?」
耳元で熱っぽく囁かれる声にゾッとするのは、自分がそこまでに知佳に強請るような動きを訳も分からずしていたのだと晴にも分かってしまうからだ。酔っていて明良だと勘違いしていたなんて、そんなの理由にならないのは分かっている。それでも我に返った晴には、これを受け止める程の気持ちなんかない。
「や、ちが、ちがう、やだ!やめ、チカっやだ!!」
グチグチと知佳の熱く膨れた先端が体内にめり込もうと入り口を押し続けて、晴は喉をひきつらせて拒絶の声を溢す。もがいてジタバタしても逃げる手立てがない晴の耳元で、奇妙な低い笑いが起きる。
「好きな人と上手くいかなかったんだよな?晴。だから、こんな跡…………つけられるくらい遊んでんの?」
幾つものキスマークのついた肌をなぞる知佳の指。そして囁かれた言葉が心に突き刺さって、晴は凍りついていた。確かに成田了への晴の恋は自業自得の失恋で終わっていて、晴は何人かその後自分に会う相手がいないのかと同性での経験を重ねたのは事実だ。でもそれを知っているのはその相手だけの筈で、以前から晴の周囲にいる人間には殆ど知られていない筈。当然白鞘知佳だって晴が知奈と別れて了に失恋した後に、どんなことをしていたかなんて知らない筈で何気なく口にしただけの言葉なんだと晴だって分かっている。それなのに、知佳に遊んでいると囁かれて、こんなにも心が切り裂かれたように傷ついてしまう。何を見て知佳が晴をそう判断したか、それでもそんな理由はさておき自分がそんな風に見えるという事実だけでも、その現実だけでもこんなにも今は心に痛いのだ。
遊んでなんか…………ない…………
失恋の後に了のような人を探したのは事実だけど了のように晴に接してくれる人はいなくて、結局ここにきて再び了に出逢って自分は了の事が好きなんだなと再確認したくらいだった。でも、了は外崎了になっていて、外崎宏太と本当に幸せそうに仲睦まじく暮らしている。そして、自分はそれを第三者としても友人としても見ているのも凄く好きで。そうして、また了に再び失恋していた晴は、その後に運命的にこうして明良と出逢ってしまったのだ。そして傍に明良がいるから、晴はこうして
「晴…………。」
「ひ…………ぅ…………っ!」
低き声で名前を呼ばれながらグチッと湿った音を立てて知佳の怒張の先端が体内に押し込まれ、晴の喉がひきつった音を立てて大きく仰け反っていた。そしてひきつったのは喉だけじゃなくて全身の筋肉が強張り、こうして望まぬ陵辱では身体も拒むのを知ってしまう。何時もなら明良と繋がる時なら自然と緩み綻んで喜んで受け入れていくモノが、いまここでは苦痛と不快感でしかなくて。まるで受け止められないのに、晴は苦痛に悲鳴を思わず上げていた。
「ひぐっ!!!あううっ!!!」
罵声に近いような血相をかえた声で電話をしているのは言うまでもなく狭山明良で、当の明良自身ほんの十五分か二十分前に結城晴が店を出たのを『耳』で聞いていて晴を迎えに行くと外崎邸から駅前に向かったばかりだった。その明良がこのタイミングでこんなにも血相を変えるなんてことは一つ位しか想定できない。とは言え事態を把握するのに電話口の外崎宏太はどうした?と問いかけ、電話の向こうでは丁度隣に来ていた模様の外崎了も眉を潜めて耳を傾ける。
「晴の行方調べてください!晴と白鞘がどこ行ったか!!」
その夜、晴と二人で酒席を持った白鞘知佳。この駅近郊ではなく数駅離れた沿線に一人で暮らす白鞘知佳だから、駅の構内とか改札で二人は別れる筈だった。それに晴だって明良と暮らす駅の南側、伊呂波は北側だから構内を抜けて来る筈なのに何時になっても見つからないという。そこまで心配することじゃないと思うだろうが、今日は白鞘と会うからと事前に晴はちゃんと明良に説明しているし、話が終わって白鞘と別れたら明良に連絡するとも言ったのだ。
あれは結構、酔ってる…………絶対…………
『耳』越しに聞いた店を出ようとしていた時の晴の声。晴の話していた口調はかなり緩慢で呂律が怪しくて、普段明良と一緒の時ならヘロヘロになっていて甘えたに切り替わり抱きついて来ていてもおかしくない段階。そして酔った時の晴は格段に明良には甘えたになるけれど、あれが明良だけにすることとは言えない。何しろ以前源川仁聖や榊恭平に対しては、ベロベロの泣き上戸で絡み酒をしていたのは一度見たのだ。けれど、古くからの友人と飲んでどちらが強く出るのかは明良も知らないことだった。でも甘えたになっても絡み酒になっていても、どちらにせよ今の晴だったら明良に連絡をすることを放置するとは思えない。
もし何処かで倒れていたら
とか、そんなことまで考えて酷く不安にもなってしまう。それにしても別れて帰る筈の白鞘の姿すら何処にも見えないなんて。酔った晴をどこかに放置したなんて考えられないけれど、そうでなく二人きりで何処かに……消えたのだとしたら、そんなの見たら回し蹴りを我慢できる気がしない。
『おい、少し落ち着け!暴走すんなよ?明良!』
思わず暴走ってなんだよ!と電話に向かって明良は怒鳴りたくなる。けれど、それより二人が居酒屋・伊呂波を出て駅に向かったとして、そう考えながら晴の姿を探して明良は辺りを必死に見渡していた。
※※※
普段とは違って身体の中の浅い部分を、指でクチクチと執拗に掻き回される奇妙なもどかしさ。
ボンヤリする酒精の強い眠気の向こうで、晴は脚を大きく広げて快感に眉を寄せ目を閉じながらそれに身悶える。ヌプヌプクチュクチュと音を立てて入り口を何度も何度も浅く出し入れされる指の動きがもどかしくて、もっと深く・もっと何時ものように気持ちよくしてと心が強請っている。他人の熱のこもる身体にのし掛かられ脚を大きく広げ片足を抱き上げられて、脚を閉じることも出来ないまま指で入り口を寛げられ続けているのに思わず淫らに腰がくねってしまうのだ。
「んぅ、や…………。いり、ぐちらけ……クチュクチュ、すんの、やだぁ……んんっ、も、っとぉ。」
晴の強請る言葉に息を飲むような気配がして、晴の思いを察したようにクプリと指が根本まで深く埋め込まれていく。その後にヌチュヌチュと更に大きな音を立てて指が深く抜き差しされ始めていくのに、それでもまだ何かが違う。何時もと違って上手く気持ちいい場所を外して体内に触れるような感覚に、晴はなおのこと焦燥感が強くなってしまって震えながら強請る。
「やぁ、も、っと……ぉ、いつ、もみた……にぃして……ぇ、んんんっ。」
何時ものように。もっと。そう必死に繰り返す声に、ヌチュッヌチュッとはしたない湿った音を立てて大きく掻き回される。滑る後孔の中を指先が撫でていき、やっと何時ものようにコリコリと硬くしこった前立腺を撫で始めるのに晴は大きく身体を震わせていた。
「あ、んんっ、そこ、あっ!あぁそれっ!あん、あぁんっ。」
クリクリ………コリコリと指先が引っ掻けるようにしてそこを掠めて撫でるのに晴の声が自然と跳ねて、眉を寄せて目を閉じた晴はベットに沈んだまま喘ぎ続けていた。それでも普段みたいに酩酊するどうしようもない程の快感は、その指からはまだ得られていない。そんなよく分からない不快感に戸惑い混乱しながら、それでも次第に高まる身体の反応はジワジワと背筋を這い上がる。
…………寝具………………ベットの…………寝心地が違う………………のか……な?
寝具が明良と一緒にくるまって眠っている普段の、あの心地よい肌触りじゃない。そう言えば自分はどうやって家まで帰ったっけ?と頭の中がボンヤリと自分に問いかけてきていた。明良に電話しなきゃと店を出る時に考えると同時に、今日は一緒に来ないでと自分が頼んだのに明良が迎えにきてくれているんじゃないかなんて自己中心的なことを思いもする。
明良が……五十嵐ハルの時みたいに…………
言わなくても何時ものように傍で見守ってくれていて、直ぐ一緒に帰ろうと抱き締めてくれるんじゃないかなんて酷く自分勝手なことを考えてもいた。来ないでと言ったのは自分なのに、それを明良が覆して勝手に傍に来てくれてなんてムシがよすぎる。それなのに心の何処かでそうしていて欲しくて、店をでた瞬間に自分が辺りを視線だけで探していたのに気がついてしまう。
凄く勝手だよな………………でも、明良にいて欲しかった…………我儘だけど…………
快楽の中にいる筈なのに。あれ?何で自分はこんな風に冷静に考え事してる?なんてことを今は考えてしまう。何時もの明良とのセックスならこんな風に冷静に何か考えるなんて晴には出来る訳がないのに、余りにも何時もとはこの感覚が違うから。それでも晴が酔いのせいでまだボンヤリとしているのは変わらないし、ヌチュヌチュとはしたない音を立てて体内を二本の指が掻き回しだしているのは現実。
「んぅ、んっあぁっあ!」
前立腺を捏ね回されるのに背筋が仰け反り、差し込まれた指が更に動きを変えていく。ただ肉襞を指の腹で擦るだけでなく、深く掻き回して差し込まれた二本の指が入り口を左右に広げて寛げてしまう。空気を含まされるような体内の感覚に、腰の辺りが奇妙なひきつれたような感じを訴えてくる。
「んぁあ!あぅ!!ひぁ!」
指が行う開いたり閉じたりの繰り返しにガクガクと全身が震えていて、その開閉のせいで自分の尻の孔がクパッと音を立てているように感じてしまう。開かれ閉じられ、しかもその合間に乳首や他の部分にも片方の空いた手が触れてくるのに翻弄される。
「ひら、くの、やぁ…………指……やだぁんん…………や……くぅん!」
「…………や?…………やなの?」
くぐもった低い興奮を滲ませた声でそう耳元に問いかけられ、思わず晴はコクコクと頭を縦に振る。
「開く、の、やだぁ、クパクパするの、やぁ。」
何時もと違うその愛撫のやり方では、自分の身体は余り心地よさを感じないと訴えようにも言葉が上手く紡げない。どうして何時ものような熱さを直ぐに与えてもくれないのかと問いかけたいのに、それでも喘ぐ吐息は上手く声にならないのだ。何でこんなにも何時もと違うのか自分でもよく分からないまま、晴は息を上げて頬を染めて覆い被さる肩に縋る。その姿に息を詰めたように見つめる覆い被さっているものの視線を、晴自身も肌に直に感じていた。
「んぅ!」
チュプンッと音を立てて指を無造作に体内から引き抜かれて、甲高く悲鳴じみた甘い声を思わずあげてしまう。そして意識の外でカチャカチャというベルトを外す音を聴いて、覆い被さる熱が何時もとは違うのに晴は戸惑いながらパチパチと瞬きを繰り返す。
そうして見つめる自分の視界は、やはりどこか何時もと違っておかしい。見覚えのない天井に見覚えのない落ち着かない色合いの壁、室内の匂いも何時もの晴と明良の暮らす明良の匂いがする室内じゃないのに晴は更に戸惑う。
「ぁ…………き……らぁ…………?」
戸惑いに満ちた自分の声は、酷く頼りなくて弱々しい。そうして自覚した違和感の中に自分の脚を担ぎ股の間に身体を沈めている筈の身体は見えるのに、あの艶やかな明良のサラサラの黒髪が見えない。晴の目の前には自分より更に茶色の短髪が揺れていて、そこにはギラギラと興奮に獣のような瞳で自分を見下ろしている見慣れた顔立ち。
明良…………じゃ…………ない…………
晴は戸惑いながら再び瞬きを繰り返し、そのよく知る筈の男が自分の股間に向けて自らの怒張を抜き出しているのを、そしてそれが自分の後孔に押し当てたのを信じられないモノを見ているように見下ろしていた。
なんで…………あれ?…………これ、どういうこと……?
入り口を狙い定めて押し当てられた白鞘知佳の怒張の熱が、何故か逆にヒヤリと晴の背筋を凍らせる。我に返った自分はほぼ全裸で、自らの股間を曝した知佳に組み敷かれていた。しかも片足を脚を担がれ全てを曝して、今にも掻き回され綻ばされた後孔に知佳の逸物を捩じ込まれようとしているのだ。
「ち、か?」
戸惑い掠れた晴の呼ぶ声が聞こえないのか目の前で舌舐りした知佳はより腰を押し付けてきて、今にも先端がめり込んで来そうな圧力が身体にかかる。それにヒッと呼吸が喉の奥で氷のように張り付いて、晴は喘ぐことも出来ずに息を飲む。
「…………いい、よな?…………も。」
良くない、何も良くない。欲情して腰を突き込もうとする身体を思わず晴は押し退けようともがくけれど、酔いのせいか体勢のせいなのか上手くはねのけることが出来ない。しかも覆い被さる身体が重くのし掛かり息もつけない晴の身悶える姿は、なおのこと知佳の欲情を煽るばかりで。のし掛かられ耳朶をねぶられながら右の手首を押さえ込まれ、左の脚は知佳の右腕に高く上げて担がれていて。男同士とは思えないはしたない格好の上に、晴はこれに録な抵抗も出来ない。
「や、だ、チカ、や、やめ。」
「晴、力抜いて、欲しいんだろ?チンポ…………な?」
耳元で熱っぽく囁かれる声にゾッとするのは、自分がそこまでに知佳に強請るような動きを訳も分からずしていたのだと晴にも分かってしまうからだ。酔っていて明良だと勘違いしていたなんて、そんなの理由にならないのは分かっている。それでも我に返った晴には、これを受け止める程の気持ちなんかない。
「や、ちが、ちがう、やだ!やめ、チカっやだ!!」
グチグチと知佳の熱く膨れた先端が体内にめり込もうと入り口を押し続けて、晴は喉をひきつらせて拒絶の声を溢す。もがいてジタバタしても逃げる手立てがない晴の耳元で、奇妙な低い笑いが起きる。
「好きな人と上手くいかなかったんだよな?晴。だから、こんな跡…………つけられるくらい遊んでんの?」
幾つものキスマークのついた肌をなぞる知佳の指。そして囁かれた言葉が心に突き刺さって、晴は凍りついていた。確かに成田了への晴の恋は自業自得の失恋で終わっていて、晴は何人かその後自分に会う相手がいないのかと同性での経験を重ねたのは事実だ。でもそれを知っているのはその相手だけの筈で、以前から晴の周囲にいる人間には殆ど知られていない筈。当然白鞘知佳だって晴が知奈と別れて了に失恋した後に、どんなことをしていたかなんて知らない筈で何気なく口にしただけの言葉なんだと晴だって分かっている。それなのに、知佳に遊んでいると囁かれて、こんなにも心が切り裂かれたように傷ついてしまう。何を見て知佳が晴をそう判断したか、それでもそんな理由はさておき自分がそんな風に見えるという事実だけでも、その現実だけでもこんなにも今は心に痛いのだ。
遊んでなんか…………ない…………
失恋の後に了のような人を探したのは事実だけど了のように晴に接してくれる人はいなくて、結局ここにきて再び了に出逢って自分は了の事が好きなんだなと再確認したくらいだった。でも、了は外崎了になっていて、外崎宏太と本当に幸せそうに仲睦まじく暮らしている。そして、自分はそれを第三者としても友人としても見ているのも凄く好きで。そうして、また了に再び失恋していた晴は、その後に運命的にこうして明良と出逢ってしまったのだ。そして傍に明良がいるから、晴はこうして
「晴…………。」
「ひ…………ぅ…………っ!」
低き声で名前を呼ばれながらグチッと湿った音を立てて知佳の怒張の先端が体内に押し込まれ、晴の喉がひきつった音を立てて大きく仰け反っていた。そしてひきつったのは喉だけじゃなくて全身の筋肉が強張り、こうして望まぬ陵辱では身体も拒むのを知ってしまう。何時もなら明良と繋がる時なら自然と緩み綻んで喜んで受け入れていくモノが、いまここでは苦痛と不快感でしかなくて。まるで受け止められないのに、晴は苦痛に悲鳴を思わず上げていた。
「ひぐっ!!!あううっ!!!」
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