205 / 693
第十四章 蒼い灯火
間話3.あなたの体温
しおりを挟む
抱き締めて眠るし傍にいて一緒に食事をして、一緒に風呂にも入る、結城晴には四六時中ベタベタすんなと常々言われるが、それは安定の無視だ。それが当然の毎日の中で宏太に新しい理解が訪れた途端、一つ自分でも理解できない変化が起きていた。
勿論今までだって了には常に欲情するし盛るなと常々言われているから、自分の性欲が何時になく暴走しているという自覚はある。しかも一度結城と梨央にお前がしてるのはレイプだと説教されるくらいに目茶苦茶にしてしまったので、個人的には自制するつもりで愛撫で我慢していたのに今度はそれをネチッこいと了に指摘されてしまう有り様だ。まるでスイッチが入ったみたいに性欲の抑えが利かない状況が、なんでなんだろうと宏太自身も疑問に思う。
「……決まってんじゃない、そんなの。」
「何でだ?」
こんな話を吹っ掛けられて平然と答えられるのは志賀松理くらいなもので、『茶樹』で久保田惣一を前に問いかけてみたら・だ。カウンターに腰かけた松理が呆れたように口を開いて、松理が宏太の右手を持って空中に翳し人差し指と薬指を触る感触がする。
「人差し指と薬指で、薬指が長いと男性ホルモン優位って知ってる?」
「あ?」
人差し指に比べ、薬指が長い人間は性欲が強いらしい。所謂男らしいとされる性格の事が多く、男っぽい行動をとるタイプが多い。これは都市伝説なんかではなく基本的に、男性ホルモンは右手の指、女性ホルモンは左手の指にその影響を受けやすいと統計的調査を行っている研究まであるそうだ。胎児期に母親の胎内で浴びた男性ホルモンによってこの指比のバランスを決めるそうで、高濃度の男性ホルモンを受けた人間ほど薬指が人差し指より長くなる。販売もされている書籍にはそのような薬指の長い男性の特徴として、学力が高い、数学的能力に優れる、経済的に成功しやすい、体力ばっちり、スポーツ万能、音楽の才があるなどなど。薬指が長い男は最強?と思ってしまうほど、薬指が長い人は能力を持ち合わせているとしている。
「……それと、今の話と何が関係してる?」
「……今更だけど、あんた学説にもろハマリね?トノ。」
そしてデメリットとして薬指が長い男性は、刺激やスリルを好み、交通違反をしやすく、攻撃的で暴力的、犯罪行為をする可能性が高かったり、アルコール依存症のリスクがあるという。これは平均をとった結果だし否定する論文もあるが、男性らしいとされる面がホルモンでより強調されているのだ。つまり、外崎宏太は元々男性的な特徴が強い人間だと前提されていると松理はいいたいわけだ。
「だけどあんた、今まで淡白だったわよね?……仕事以外には殆ど抜きもしないし。」
「……欲求がわかねぇのに抜けるかよ。」
だからさぁ?と松理が更に言葉を続ける。宏太は何でもかんでも大概のことを上手くやり過ぎて目立って挫折をした経験がないから、なんでも流して生きてきた。誰かを好きになって、身を焦がすような恋をしてないのだというのだ。確かに言われればそうなのだが、それと今の状態が繋がらない。
「だからさ?対象がいないから、性欲感じなかったんでしょ?」
「なるほどね。松理が言いたいことは分かった。」
目の前の惣一が何でか宏太より先に納得したように頷く。未だに言われていることの意味が今一つ分からないでいる宏太に、呆れたように松理が結局それはあんたのノロケってことよと言ったのだ。
ノロケって何だよ……。
何時だかは分からないが、寝ていてそれが頭に過って突然に目が覚めた。目が見えないから暗いのかどうかも分からないが、腕の中でスヤスヤと寝息を立てて眠っている了の体温をソッと引き寄せて柔らかな髪に顔を埋める。柔らかで甘い匂い、心地よくて仕方のない肌に、触れるだけで宏太が安堵する体温。その癖、吐息に擽られていると腹にグッと響く何かがあって、気がつくと欲情にまるで抑えが効かなくなる。何か自分を獣に変えてしまうフェロモンでも、了は出しているんじゃないだろうかなんてことを思わず考えてしまう。
世の中にはそんなことがあるわきゃないのは分かってるんだが……
調教師と言う仕事では、媚薬とか言われる物に関わることが何度もあった。経営していた《random face》でも、パーティールームには塗り薬タイプの媚薬と呼ばれるクリームを準備していたのは事実だ。でも本音を言うと、その気もない人間に、使っただけで性的な気分にさせる薬は存在しないと知っている。
大体にして媚薬の存在自体がファンタジーの世界で、エロ小説なんかの媚薬は殆どは眉唾だ。歴史的にいえば食用となる野菜や果物、獣肉等の産地、知識が偏っていた前近代では、刺激性物質の入っている食材が媚薬とされていた。何しろ玉葱やチーズ、チョコレートなど現代では一般的な食材が過去には媚薬扱いされていたのだ。嗜好品が一般化している近年とは違って、昔の人間は刺激性物質や化学物質に全く晒されていなかったから薬効が顕在化しやすかったんじゃないかなんて説がある位だ。
よくある体が熱くなって欲しくてたまらないなんてのは、正直男の妄想でしかない。実際のところ局所的な血流の増加で感覚が鋭敏になっていることを使った方が言葉で自覚させることで、偽薬効果を促進しているだけ。媚薬の殆どは、所謂プラセーボ効果ってことなのだ。
大体な、メンソールで表面上の血管が拡張している状況で、擦りたてたらジンジンするのは当然だろう。
勿論酩酊させるなんて麻薬の類もあるが、あれだって興奮状態に追い込んで、それは媚薬の効果なんだよと囁くのだ。筋肉を弛緩させる?あれだって変に緊張で筋肉が強張らないから楽に快感に上り詰めるのと、自分ではどうにも出来ない理性の働かない状況に媚薬と言うキーワードが有効なだけ。
了が薬を仕込んだことだって酩酊して理性を鈍摩させておいて快感を与えるわけだから、同じ快感が欲しければ同じ状況になるしかないわけだ
それでも相手だった榊恭平が了の思うように堕ちなかったのは、ただ単純に薬で与えられる快感より芯が確りした何が榊にはあったと言うだけ。そういう相手を堕とす方法?それは完全に監禁して情報をシャットアウトして……いや、この話は止めておこう。勿論そうやって完全に堕としてやった人間もいるし、ワザと堕とさずに知恵をつけた女だっている。兎も角、完全な薬効を示す媚薬なんてものはファンタジーの世界にしかない。そんなことは十分に分かっている。
分かってる筈なのに、なんで今、自分のコントロールができないんだ。
その疑問に松理は男女の恋愛への向き合い方の差よねと笑って男は段々と理解する性質なのよと言うが、小説家でもないんだから抽象的な説明は理解できない。どうせならそこの情緒的なモノを理解できるように、事細やかに説明して欲しかった。
「ん……、ぅ。」
モソモソと腕の中の了が夢の中で吐息を溢して、そんなことを悶々と考えていた宏太の胸に無意識に身をすり寄らせる。以前に比べても最近とみにこうして寝ていると、了はすり寄ってきて可愛い吐息で擽ってくるのだ。前は抱き締めていると逃げようともがいたりしてたのに、最近じゃ少し間が開こうものなら潜り込んできて可愛い事この上ない。可愛すぎてそのまま雪崩れ込みたくなる、それを我慢して…………
※※※
「さと……る。」
熱っぽい掠れ声に揺り起こされて、了は夢の中から闇の中でボンヤリと目を瞬かせる。覆い被さるような影から吐息が熱く降りかかるのに夢現に見上げると、目の前で汗ばんだ肌に傷痕を赤く上気させて浮かせた宏太が強い色気を放つ。
「さとる……、頼む…………、起きろ……、さ、とる。」
普段とは全く違う、しかも今まで聞いたことのない程に欲情に完全に濡れる掠れ声。それが荒く熱を含んだ吐息の合間に震えるように落ちてきて、これはもしかして自分はエロい夢でも見てるのかと了はその姿を改めて見つめる。
「さ、とる……。」
ハァハァと溢れる荒い吐息の合間に、自分に触れる宏太の手が異様に熱い。もしかしてエロくて色っぽいなんて勝手に了が思ってるだけで、実は具合が悪くて熱でもあるとか?宏太はあんまりそういうことを口に出して言わないし、一緒に暮らしてから宏太はまだ体調を崩したこともない。
「こ、…………ぉた……?」
戸惑うような小さな声を聞き付けて宏太の熱い片手が、またいつの間にか脱がされてしまった了の裸の背中に滑り込んで軽々と体を抱き上げる。そして押し付けられた肌の熱さと汗が誘うように香って、気がつけば裸の膝の間に宏太の体がガッチリと挟まって燃えるみたいな熱を放っていた。
「さ、とる……頼む……。」
「な、に?」
不意に宏太の手にキュッと手を握られて下に引かれるのに、了はまだボンヤリした頭で宏太の動きを不思議な気分で目で追う。何処か痛むのと聞こうとした瞬間、了の手に触れたのは宏太の手よりも酷く熱くてヌルヌルに滑る硬い怒張だった。
「え。あ?……な?あ、こ、ぉた?」
覆い被さり抱き締められながら握らされた怒張は既にガチガチに熱く張り詰めていて、しかも手の中でビクンと強く脈打っている。それを握らされた瞬間カッと頬が熱をもって頭が冴えて手を離そうとするのに、余りの熱さに火傷しそうな怒張を握ったまま宏太の手で押さえ込まれてしまう。何が起きてるのか分からないのに汗ばんだ宏太の色気に当てられて、息が詰まりそうな上に体が反応して了も欲情し始めている。
「さ、とる、……さとる…………、さと……る…………、…ふ、ぅ。」
まるで耳を犯すように熱を含んだ快感に蕩けた宏太の声が、何度も何度も甘く低く自分の名前を囁きかけてくる。こんな声を出している宏太は今まで一度も見たことも聞いたこともないし、しかもこんな風に自分に逸物を握らせて手で包み込んでヌチュヌチュと刺激し始めて。
「……ふ…………っ、……さとる…………。」
まるで何時もの自分みたいに宏太が完全に快感に飲まれていて、了の手で宏太が今にも絶頂に達しようとしている。ゴクリと了の喉がなるのにすら反応も出来ずに、熱い肉棒が手の中でビクビクと脈打っていく。宏太が熱く湿った吐息が耳元に押し付けられ甘い声で名前を繰り返すのに、聞いている了の全身が思わず震える。
こんな…………エロい……、凄い…………どうしよう……
抱かれている時では自分が酩酊しているから見えないだけなのか、それとも本当にこれが始めての事なのか混乱しながらも耳元の声が感極まって甘く蕩けていく。
「悪い……がまん、でき……ふ、くぅ……、さとる、もっと……強くだ。」
甘い。こんなに甘く熱を含んだ切ない声を宏太が出すなんて、眩暈がしてしまいそうな程にイヤらしくて飲み込まれそう。握りしめた怒張の熱さも先走りの汁の滑る熱さも、何時もより遥かに熱くて握っている手が火傷しそうだ。でも、このまま宏太に絶頂に果てて欲しくない、そう思うと手が唐突にそれを解き放つ。
「んん…………、さ、とる………?」
熱い吐息をハッと何度もその口から吐きながら、体を抱き締めていた手が緩んで戸惑いに満ちた表情がその口元に浮かぶ。視界の絶頂の寸前まで追い込まれつつあった歪に縫い合わされている亀頭の先から、粘りけのある熱い雫が糸を引いて了の太股にツゥッと滴り落ちる。歪なのに酷く淫らで悩ましい肉棒が了が与える刺激を欲しがってヒクヒクと揺れているのを、了は息を飲んで無言のまま見つめた。
「さとる…………、い、やか……?」
嫌だったから手を離したのかと問いかけられて、そうだとも違うとも言えない。だって、そうだし違うからと頭の中で呟きながら、切ない声で宏太の名前を呟く。目がもし見えていたら今の顔を見ただけで、きっと宏太は了が何を望んだか気がついた筈だと了は心の中で思う。欲情しきって自分を欲しがっている宏太を見せられて、それをこんな風に手で終わらせるなんて嫌に決まっている。宏太が果てるなら……
「……こぉ、た、手、…………じゃ駄目……。」
宏太の体を太股で挟み腰を擦り付けるようにして強請る了の掠れ声に、宏太は一瞬も隙を与えずに了の脚を手で掬い上げて力強くのし掛かった。前戯も何もないままガチガチに下折たつ太い怒張を根本迄一気に捩じ込まれ体が軋むのに、何時もより熱くて滑る怒張が奥を穿つ快感が走る。
「んぅっ!」
「く、ぅ!さと、る!」
粘膜が削ぎ落とされるような激しい熱を含んだ挿入に、一瞬で絶頂に上り詰め目の前がチカチカと眩んでしまう。なのに何時もとこれが違うのは挿入した方の宏太も熱い吐息を放ち、飲み込まれた怒張を跳ねらせて中に勢いよく精を吐き出していた。
「あぁあ……っ!あつ、いっ!ああっ!」
「俺もだ……、あつい…………さとる……。」
甘い声でそういいながら再び腰を動かし始める宏太の姿に、了もあっという間に同じくらいに、そしてそれ以上に激しくて強い快感に押し流されていく。
※※※
我慢するつもりだった。
朝了が目が覚ましてからキスして、自分が我慢ができるかは別として。気持ち良さそうに眠っている了を無理矢理起こして事に及ぶのは可能だが、何しろ連日は駄目と散々言われている。だから肌に触れて抱き締めて眠るので満足するつもり。そう考えながら服を脱がせていただけで、まるで最中みたいな可愛い声を了があげなければそう出来ていた筈だ。
「ん、……こ、……ぉた…………、んんぅん……。」
何の夢を見ているのか可愛く微かに宏太の名前を呼ぶ了の声に反応したのは、下半身の方が早かった。自分に呆れるが暫く待っても一向に萎える気配はないし、大体にして全裸に剥かれて撫でられてもスウスウ寝息を立てて腕の中に収まっている了に欲情してるんだから萎える筈がない。
これは……まいったな…………。
何年どころか何十年振りに自慰でおさめるしかないと溜め息をつき、仕方無しに滑らかで傷一つない肌に触れながら煮え滾るような欲望に下折たつ怒張を握りしめる。とは言えこうなると自慰でネタにするのも腕の中の了なのには呆れるしかないが、頭の中にまだ目が見えていた時の了の抱かれる姿を思い出す。
快感に桜色から薔薇色に変わっていく肌、滑らかな背中に刻み込まれた鮮やかな花弁のような口付けの跡、ピンク色の乳首や艶かしい陰茎まで、頭の中に残っている了の艶やかな肢体を思い浮かべる。そうして記憶の中で甘い声をあげる了をネタに扱き始めたのが、大きな間違いだったと気がついたのはその暫く後のことだった。男の性欲が先ずは視覚から起こるってのは何かで読んだ記憶があるんだが、どうしても頭の中の了では宏太は満足できなかったのだ。現実に肌に触れた指先に甘い吐息が直に触れるのと、記憶の中の了とがどうしても噛み合わない。愛しくて仕方がない了の体温と記憶の中の了が噛み合わなくて、どんなに扱いていても宏太はいくにいけないのだ。
なんだ、これ?
今の了の声が聞けたらあっという間に気持ちよくなれるし、了が直に触れたら尚更気持ちいいと思う。頭の中の記憶では全然足りない、刺激が足りないんじゃなく温度が足りない。甘さも熱も記憶では補えないと気がついて思わず了の頬を撫でると、了が無意識に宏太の手にすり寄り親指の付け根に柔らかな唇が吸い付く。その瞬間に理性が弾けて我慢が効かなくなって、宏太は咄嗟に了を揺り起こしていた。
その後はもうどうにもならない。
了に触れられて扱かれていく寸前で手を離された時には、宏太自身も焦れすぎて頭が真っ白になった。ところが更にその先の了のお強請りは、余りにも破壊力があり過ぎて我慢できずに襲いかかり捩じ込んだのだが、了の体内の熱さに宏太は産まれて始めて一瞬で気を持っていかれたのだ。しかもその後もその快感は全く引かず、何時までも蕩けるほどに熱く痺れるような極上の快感を与え続ける。
「……こぉ、…………たぁ?」
トロンとした夢見心地の声が腕の中から、宏太の事を呼ぶ。理性なんてものが粉微塵になってブチキレた宏太は、産まれて初めて完全に抑えの利かない獣に成り果てた。今までの事なんて可愛いもんだ。気持ち良過ぎて、何度も了が絶頂に一瞬失神するのに気がついていても宏太は全く止められなかった。これ以上は駄目だと分かっていても全く止められなくて、今まで感じたことのない了の体内の熱さにがむしゃらに突きこんで無我夢中で了を犯し尽くしたのだ。それを了に指摘されたら、今回ばかりは流石に宏太も何日間かは了のゲストルームへの避難を堪えるしかない。頬に触れる了の吐息に少し不安混じりの緊張を浮かべたのに、了は気がついていない様子でもう一度甘い声で宏太を呼ぶ。
「……悪かった……。」
ここは素直に先に謝っておくしかないと先手を打った筈の宏太の言葉に、トロンとした顔の了は腕の中で不思議そうに何に謝ってるんだ?と問い返す。
「怒って…………ないのか?」
オズオズとそう問いかける宏太に了は意図が掴めない様子で、眠たげに身を更にすり寄せると宏太の体に腕を回す。そうして何でか胸に頬を当てて幸せそうにクスクスと笑うのだ。
「こ、ぉたも、オナニー、するんだ?」
「あ?」
「エロかった……、凄く。」
俺だってといいかけたのだが、実際には今まで殆どと言っていいほど自慰はしてこなかったのに改めて気がつく。何しろ外崎宏太は大概相手がいるか、相手がいなくなってからは大概が調教中で性欲が溜まるなんてことはなかった。何しろ言った通り元は淡白な質な筈なのだ。
そうか、これが松理の言っていたやつか……
つまり相手に困ることもないし、相手でそこそこ気持ち良くなれば満足していた。ところが了に恋をした宏太は、了と触れあうのが心地よくてもっとと強請ってしまうようになったのだ。しかも普通なら自慰で消化できる筈のものが、頭の中の昔の了と言うおかずでは自慰でいけないことに気がついてしまったのはかなり痛い。またこれで同じことになったら、
「……こぉた、すき……。」
甘い声にそんなことを囁かれて、えっ?と思わず意識が了に奪われる。肌をすり寄せながら甘えるみたいに胸の中に潜り込んできて、小さな声でもう一度『すき』と繰り返されるとドッドッと激しく動悸がするし頬が熱い。抱き締めると尚更嬉しそうに胸の中で可愛く繰り返す了に、胸が一気に一杯に満たされてしまった気がする。了の可愛い『すき』が胸から溢れてしまいそうで、抱き締めたまま口から感情が溢れ落ちていく。
「愛してる……。」
「ふふ、…………俺も、……あいしてる。」
そう甘く囁きながらトロトロと眠りに落ちていく了に、宏太は参ったなと改めて自分の大きな変化に面食らってしまうのだった。
勿論今までだって了には常に欲情するし盛るなと常々言われているから、自分の性欲が何時になく暴走しているという自覚はある。しかも一度結城と梨央にお前がしてるのはレイプだと説教されるくらいに目茶苦茶にしてしまったので、個人的には自制するつもりで愛撫で我慢していたのに今度はそれをネチッこいと了に指摘されてしまう有り様だ。まるでスイッチが入ったみたいに性欲の抑えが利かない状況が、なんでなんだろうと宏太自身も疑問に思う。
「……決まってんじゃない、そんなの。」
「何でだ?」
こんな話を吹っ掛けられて平然と答えられるのは志賀松理くらいなもので、『茶樹』で久保田惣一を前に問いかけてみたら・だ。カウンターに腰かけた松理が呆れたように口を開いて、松理が宏太の右手を持って空中に翳し人差し指と薬指を触る感触がする。
「人差し指と薬指で、薬指が長いと男性ホルモン優位って知ってる?」
「あ?」
人差し指に比べ、薬指が長い人間は性欲が強いらしい。所謂男らしいとされる性格の事が多く、男っぽい行動をとるタイプが多い。これは都市伝説なんかではなく基本的に、男性ホルモンは右手の指、女性ホルモンは左手の指にその影響を受けやすいと統計的調査を行っている研究まであるそうだ。胎児期に母親の胎内で浴びた男性ホルモンによってこの指比のバランスを決めるそうで、高濃度の男性ホルモンを受けた人間ほど薬指が人差し指より長くなる。販売もされている書籍にはそのような薬指の長い男性の特徴として、学力が高い、数学的能力に優れる、経済的に成功しやすい、体力ばっちり、スポーツ万能、音楽の才があるなどなど。薬指が長い男は最強?と思ってしまうほど、薬指が長い人は能力を持ち合わせているとしている。
「……それと、今の話と何が関係してる?」
「……今更だけど、あんた学説にもろハマリね?トノ。」
そしてデメリットとして薬指が長い男性は、刺激やスリルを好み、交通違反をしやすく、攻撃的で暴力的、犯罪行為をする可能性が高かったり、アルコール依存症のリスクがあるという。これは平均をとった結果だし否定する論文もあるが、男性らしいとされる面がホルモンでより強調されているのだ。つまり、外崎宏太は元々男性的な特徴が強い人間だと前提されていると松理はいいたいわけだ。
「だけどあんた、今まで淡白だったわよね?……仕事以外には殆ど抜きもしないし。」
「……欲求がわかねぇのに抜けるかよ。」
だからさぁ?と松理が更に言葉を続ける。宏太は何でもかんでも大概のことを上手くやり過ぎて目立って挫折をした経験がないから、なんでも流して生きてきた。誰かを好きになって、身を焦がすような恋をしてないのだというのだ。確かに言われればそうなのだが、それと今の状態が繋がらない。
「だからさ?対象がいないから、性欲感じなかったんでしょ?」
「なるほどね。松理が言いたいことは分かった。」
目の前の惣一が何でか宏太より先に納得したように頷く。未だに言われていることの意味が今一つ分からないでいる宏太に、呆れたように松理が結局それはあんたのノロケってことよと言ったのだ。
ノロケって何だよ……。
何時だかは分からないが、寝ていてそれが頭に過って突然に目が覚めた。目が見えないから暗いのかどうかも分からないが、腕の中でスヤスヤと寝息を立てて眠っている了の体温をソッと引き寄せて柔らかな髪に顔を埋める。柔らかで甘い匂い、心地よくて仕方のない肌に、触れるだけで宏太が安堵する体温。その癖、吐息に擽られていると腹にグッと響く何かがあって、気がつくと欲情にまるで抑えが効かなくなる。何か自分を獣に変えてしまうフェロモンでも、了は出しているんじゃないだろうかなんてことを思わず考えてしまう。
世の中にはそんなことがあるわきゃないのは分かってるんだが……
調教師と言う仕事では、媚薬とか言われる物に関わることが何度もあった。経営していた《random face》でも、パーティールームには塗り薬タイプの媚薬と呼ばれるクリームを準備していたのは事実だ。でも本音を言うと、その気もない人間に、使っただけで性的な気分にさせる薬は存在しないと知っている。
大体にして媚薬の存在自体がファンタジーの世界で、エロ小説なんかの媚薬は殆どは眉唾だ。歴史的にいえば食用となる野菜や果物、獣肉等の産地、知識が偏っていた前近代では、刺激性物質の入っている食材が媚薬とされていた。何しろ玉葱やチーズ、チョコレートなど現代では一般的な食材が過去には媚薬扱いされていたのだ。嗜好品が一般化している近年とは違って、昔の人間は刺激性物質や化学物質に全く晒されていなかったから薬効が顕在化しやすかったんじゃないかなんて説がある位だ。
よくある体が熱くなって欲しくてたまらないなんてのは、正直男の妄想でしかない。実際のところ局所的な血流の増加で感覚が鋭敏になっていることを使った方が言葉で自覚させることで、偽薬効果を促進しているだけ。媚薬の殆どは、所謂プラセーボ効果ってことなのだ。
大体な、メンソールで表面上の血管が拡張している状況で、擦りたてたらジンジンするのは当然だろう。
勿論酩酊させるなんて麻薬の類もあるが、あれだって興奮状態に追い込んで、それは媚薬の効果なんだよと囁くのだ。筋肉を弛緩させる?あれだって変に緊張で筋肉が強張らないから楽に快感に上り詰めるのと、自分ではどうにも出来ない理性の働かない状況に媚薬と言うキーワードが有効なだけ。
了が薬を仕込んだことだって酩酊して理性を鈍摩させておいて快感を与えるわけだから、同じ快感が欲しければ同じ状況になるしかないわけだ
それでも相手だった榊恭平が了の思うように堕ちなかったのは、ただ単純に薬で与えられる快感より芯が確りした何が榊にはあったと言うだけ。そういう相手を堕とす方法?それは完全に監禁して情報をシャットアウトして……いや、この話は止めておこう。勿論そうやって完全に堕としてやった人間もいるし、ワザと堕とさずに知恵をつけた女だっている。兎も角、完全な薬効を示す媚薬なんてものはファンタジーの世界にしかない。そんなことは十分に分かっている。
分かってる筈なのに、なんで今、自分のコントロールができないんだ。
その疑問に松理は男女の恋愛への向き合い方の差よねと笑って男は段々と理解する性質なのよと言うが、小説家でもないんだから抽象的な説明は理解できない。どうせならそこの情緒的なモノを理解できるように、事細やかに説明して欲しかった。
「ん……、ぅ。」
モソモソと腕の中の了が夢の中で吐息を溢して、そんなことを悶々と考えていた宏太の胸に無意識に身をすり寄らせる。以前に比べても最近とみにこうして寝ていると、了はすり寄ってきて可愛い吐息で擽ってくるのだ。前は抱き締めていると逃げようともがいたりしてたのに、最近じゃ少し間が開こうものなら潜り込んできて可愛い事この上ない。可愛すぎてそのまま雪崩れ込みたくなる、それを我慢して…………
※※※
「さと……る。」
熱っぽい掠れ声に揺り起こされて、了は夢の中から闇の中でボンヤリと目を瞬かせる。覆い被さるような影から吐息が熱く降りかかるのに夢現に見上げると、目の前で汗ばんだ肌に傷痕を赤く上気させて浮かせた宏太が強い色気を放つ。
「さとる……、頼む…………、起きろ……、さ、とる。」
普段とは全く違う、しかも今まで聞いたことのない程に欲情に完全に濡れる掠れ声。それが荒く熱を含んだ吐息の合間に震えるように落ちてきて、これはもしかして自分はエロい夢でも見てるのかと了はその姿を改めて見つめる。
「さ、とる……。」
ハァハァと溢れる荒い吐息の合間に、自分に触れる宏太の手が異様に熱い。もしかしてエロくて色っぽいなんて勝手に了が思ってるだけで、実は具合が悪くて熱でもあるとか?宏太はあんまりそういうことを口に出して言わないし、一緒に暮らしてから宏太はまだ体調を崩したこともない。
「こ、…………ぉた……?」
戸惑うような小さな声を聞き付けて宏太の熱い片手が、またいつの間にか脱がされてしまった了の裸の背中に滑り込んで軽々と体を抱き上げる。そして押し付けられた肌の熱さと汗が誘うように香って、気がつけば裸の膝の間に宏太の体がガッチリと挟まって燃えるみたいな熱を放っていた。
「さ、とる……頼む……。」
「な、に?」
不意に宏太の手にキュッと手を握られて下に引かれるのに、了はまだボンヤリした頭で宏太の動きを不思議な気分で目で追う。何処か痛むのと聞こうとした瞬間、了の手に触れたのは宏太の手よりも酷く熱くてヌルヌルに滑る硬い怒張だった。
「え。あ?……な?あ、こ、ぉた?」
覆い被さり抱き締められながら握らされた怒張は既にガチガチに熱く張り詰めていて、しかも手の中でビクンと強く脈打っている。それを握らされた瞬間カッと頬が熱をもって頭が冴えて手を離そうとするのに、余りの熱さに火傷しそうな怒張を握ったまま宏太の手で押さえ込まれてしまう。何が起きてるのか分からないのに汗ばんだ宏太の色気に当てられて、息が詰まりそうな上に体が反応して了も欲情し始めている。
「さ、とる、……さとる…………、さと……る…………、…ふ、ぅ。」
まるで耳を犯すように熱を含んだ快感に蕩けた宏太の声が、何度も何度も甘く低く自分の名前を囁きかけてくる。こんな声を出している宏太は今まで一度も見たことも聞いたこともないし、しかもこんな風に自分に逸物を握らせて手で包み込んでヌチュヌチュと刺激し始めて。
「……ふ…………っ、……さとる…………。」
まるで何時もの自分みたいに宏太が完全に快感に飲まれていて、了の手で宏太が今にも絶頂に達しようとしている。ゴクリと了の喉がなるのにすら反応も出来ずに、熱い肉棒が手の中でビクビクと脈打っていく。宏太が熱く湿った吐息が耳元に押し付けられ甘い声で名前を繰り返すのに、聞いている了の全身が思わず震える。
こんな…………エロい……、凄い…………どうしよう……
抱かれている時では自分が酩酊しているから見えないだけなのか、それとも本当にこれが始めての事なのか混乱しながらも耳元の声が感極まって甘く蕩けていく。
「悪い……がまん、でき……ふ、くぅ……、さとる、もっと……強くだ。」
甘い。こんなに甘く熱を含んだ切ない声を宏太が出すなんて、眩暈がしてしまいそうな程にイヤらしくて飲み込まれそう。握りしめた怒張の熱さも先走りの汁の滑る熱さも、何時もより遥かに熱くて握っている手が火傷しそうだ。でも、このまま宏太に絶頂に果てて欲しくない、そう思うと手が唐突にそれを解き放つ。
「んん…………、さ、とる………?」
熱い吐息をハッと何度もその口から吐きながら、体を抱き締めていた手が緩んで戸惑いに満ちた表情がその口元に浮かぶ。視界の絶頂の寸前まで追い込まれつつあった歪に縫い合わされている亀頭の先から、粘りけのある熱い雫が糸を引いて了の太股にツゥッと滴り落ちる。歪なのに酷く淫らで悩ましい肉棒が了が与える刺激を欲しがってヒクヒクと揺れているのを、了は息を飲んで無言のまま見つめた。
「さとる…………、い、やか……?」
嫌だったから手を離したのかと問いかけられて、そうだとも違うとも言えない。だって、そうだし違うからと頭の中で呟きながら、切ない声で宏太の名前を呟く。目がもし見えていたら今の顔を見ただけで、きっと宏太は了が何を望んだか気がついた筈だと了は心の中で思う。欲情しきって自分を欲しがっている宏太を見せられて、それをこんな風に手で終わらせるなんて嫌に決まっている。宏太が果てるなら……
「……こぉ、た、手、…………じゃ駄目……。」
宏太の体を太股で挟み腰を擦り付けるようにして強請る了の掠れ声に、宏太は一瞬も隙を与えずに了の脚を手で掬い上げて力強くのし掛かった。前戯も何もないままガチガチに下折たつ太い怒張を根本迄一気に捩じ込まれ体が軋むのに、何時もより熱くて滑る怒張が奥を穿つ快感が走る。
「んぅっ!」
「く、ぅ!さと、る!」
粘膜が削ぎ落とされるような激しい熱を含んだ挿入に、一瞬で絶頂に上り詰め目の前がチカチカと眩んでしまう。なのに何時もとこれが違うのは挿入した方の宏太も熱い吐息を放ち、飲み込まれた怒張を跳ねらせて中に勢いよく精を吐き出していた。
「あぁあ……っ!あつ、いっ!ああっ!」
「俺もだ……、あつい…………さとる……。」
甘い声でそういいながら再び腰を動かし始める宏太の姿に、了もあっという間に同じくらいに、そしてそれ以上に激しくて強い快感に押し流されていく。
※※※
我慢するつもりだった。
朝了が目が覚ましてからキスして、自分が我慢ができるかは別として。気持ち良さそうに眠っている了を無理矢理起こして事に及ぶのは可能だが、何しろ連日は駄目と散々言われている。だから肌に触れて抱き締めて眠るので満足するつもり。そう考えながら服を脱がせていただけで、まるで最中みたいな可愛い声を了があげなければそう出来ていた筈だ。
「ん、……こ、……ぉた…………、んんぅん……。」
何の夢を見ているのか可愛く微かに宏太の名前を呼ぶ了の声に反応したのは、下半身の方が早かった。自分に呆れるが暫く待っても一向に萎える気配はないし、大体にして全裸に剥かれて撫でられてもスウスウ寝息を立てて腕の中に収まっている了に欲情してるんだから萎える筈がない。
これは……まいったな…………。
何年どころか何十年振りに自慰でおさめるしかないと溜め息をつき、仕方無しに滑らかで傷一つない肌に触れながら煮え滾るような欲望に下折たつ怒張を握りしめる。とは言えこうなると自慰でネタにするのも腕の中の了なのには呆れるしかないが、頭の中にまだ目が見えていた時の了の抱かれる姿を思い出す。
快感に桜色から薔薇色に変わっていく肌、滑らかな背中に刻み込まれた鮮やかな花弁のような口付けの跡、ピンク色の乳首や艶かしい陰茎まで、頭の中に残っている了の艶やかな肢体を思い浮かべる。そうして記憶の中で甘い声をあげる了をネタに扱き始めたのが、大きな間違いだったと気がついたのはその暫く後のことだった。男の性欲が先ずは視覚から起こるってのは何かで読んだ記憶があるんだが、どうしても頭の中の了では宏太は満足できなかったのだ。現実に肌に触れた指先に甘い吐息が直に触れるのと、記憶の中の了とがどうしても噛み合わない。愛しくて仕方がない了の体温と記憶の中の了が噛み合わなくて、どんなに扱いていても宏太はいくにいけないのだ。
なんだ、これ?
今の了の声が聞けたらあっという間に気持ちよくなれるし、了が直に触れたら尚更気持ちいいと思う。頭の中の記憶では全然足りない、刺激が足りないんじゃなく温度が足りない。甘さも熱も記憶では補えないと気がついて思わず了の頬を撫でると、了が無意識に宏太の手にすり寄り親指の付け根に柔らかな唇が吸い付く。その瞬間に理性が弾けて我慢が効かなくなって、宏太は咄嗟に了を揺り起こしていた。
その後はもうどうにもならない。
了に触れられて扱かれていく寸前で手を離された時には、宏太自身も焦れすぎて頭が真っ白になった。ところが更にその先の了のお強請りは、余りにも破壊力があり過ぎて我慢できずに襲いかかり捩じ込んだのだが、了の体内の熱さに宏太は産まれて始めて一瞬で気を持っていかれたのだ。しかもその後もその快感は全く引かず、何時までも蕩けるほどに熱く痺れるような極上の快感を与え続ける。
「……こぉ、…………たぁ?」
トロンとした夢見心地の声が腕の中から、宏太の事を呼ぶ。理性なんてものが粉微塵になってブチキレた宏太は、産まれて初めて完全に抑えの利かない獣に成り果てた。今までの事なんて可愛いもんだ。気持ち良過ぎて、何度も了が絶頂に一瞬失神するのに気がついていても宏太は全く止められなかった。これ以上は駄目だと分かっていても全く止められなくて、今まで感じたことのない了の体内の熱さにがむしゃらに突きこんで無我夢中で了を犯し尽くしたのだ。それを了に指摘されたら、今回ばかりは流石に宏太も何日間かは了のゲストルームへの避難を堪えるしかない。頬に触れる了の吐息に少し不安混じりの緊張を浮かべたのに、了は気がついていない様子でもう一度甘い声で宏太を呼ぶ。
「……悪かった……。」
ここは素直に先に謝っておくしかないと先手を打った筈の宏太の言葉に、トロンとした顔の了は腕の中で不思議そうに何に謝ってるんだ?と問い返す。
「怒って…………ないのか?」
オズオズとそう問いかける宏太に了は意図が掴めない様子で、眠たげに身を更にすり寄せると宏太の体に腕を回す。そうして何でか胸に頬を当てて幸せそうにクスクスと笑うのだ。
「こ、ぉたも、オナニー、するんだ?」
「あ?」
「エロかった……、凄く。」
俺だってといいかけたのだが、実際には今まで殆どと言っていいほど自慰はしてこなかったのに改めて気がつく。何しろ外崎宏太は大概相手がいるか、相手がいなくなってからは大概が調教中で性欲が溜まるなんてことはなかった。何しろ言った通り元は淡白な質な筈なのだ。
そうか、これが松理の言っていたやつか……
つまり相手に困ることもないし、相手でそこそこ気持ち良くなれば満足していた。ところが了に恋をした宏太は、了と触れあうのが心地よくてもっとと強請ってしまうようになったのだ。しかも普通なら自慰で消化できる筈のものが、頭の中の昔の了と言うおかずでは自慰でいけないことに気がついてしまったのはかなり痛い。またこれで同じことになったら、
「……こぉた、すき……。」
甘い声にそんなことを囁かれて、えっ?と思わず意識が了に奪われる。肌をすり寄せながら甘えるみたいに胸の中に潜り込んできて、小さな声でもう一度『すき』と繰り返されるとドッドッと激しく動悸がするし頬が熱い。抱き締めると尚更嬉しそうに胸の中で可愛く繰り返す了に、胸が一気に一杯に満たされてしまった気がする。了の可愛い『すき』が胸から溢れてしまいそうで、抱き締めたまま口から感情が溢れ落ちていく。
「愛してる……。」
「ふふ、…………俺も、……あいしてる。」
そう甘く囁きながらトロトロと眠りに落ちていく了に、宏太は参ったなと改めて自分の大きな変化に面食らってしまうのだった。
0
お気に入りに追加
249
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる