鮮明な月

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間章 狂宴・成田了の事象

12.

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「宏太ーぁ、どこチャンネル合わせとけばいい?」
「んー。エコー聞いとけ、今向こうから連絡待ちだ。」

正直どこが経営コンサルタントだよと、力一杯怒鳴ってやりたい。これってどう見ても盗聴つーんだろがと、了は冷ややかな視線で宏太を眺めながらも言われた通りに駅前のカラオケボックスに仕掛けられた盗聴器のチャンネルを繋ぐ。リビングは以前よりも更に異様な巨大な機械で溢れていて、誰か人が来ることなんか想定もしてないように見える。ソファーや応接に向いた場所なんかなくて、コンサルタント業的な顔合わせは外でと言うあたり尚更胡散臭い。
とは言え了が働き始めたと言うか手伝い始めて、本当に依頼主相手に報告書も出しているから実際に経営コンサルタントもしているようなのだ。しかも、その報告書がちゃんとしたものだったのには呆れてしまう。そして、目下宏太は書類を作成中で、時折音声認識で文面を作成中。

「そっちだけやってたら、超まともなのにな。」
「ああ?これを作るための情報収集だろうが。」

嘘つけ盗聴は半分以上趣味だろと思うが、まあ宏太のやることだと諦めもする。既にここ数日で仕事も手伝うと言う事から了も機器の操作は教えられたから、迷いはなくチャンネルの起動は可能だ。

「ん?」

繋いだヘッドホンの中には、なんとまあカラオケボックスとは思えない淫らな声が既に響いている。駅前のカラオケボックスエコーの一番奥の部屋に、この今聞いているチャンネルは仕掛けてあるのだが、正直了も一度は入ったことがある部屋だったのには驚きだ。奥まっていて少し店員の目が届きにくい二階の廊下の先、廊下が途中で曲がっているから部屋の前まで来ないと中も見えないのだ。しかし、世の中何処でもそういう気分になったら、即行動に移す人間ってものがいるらしいことには呆れてしまう。

そういや、あのボックスやり部屋があるとか噂あったもんなぁ

駅前にあるカラオケボックスにはやり部屋と呼ばれるセックスオッケーの部屋がある等と言う噂は都市伝説だと思っていた。が、実際には呆れてしまうがカラオケボックスなんぞで、徐にセックスしたくなる人間は山のようにいるものらしい。そう言えば結城晴も最初に駅のトイレで一回捩じ込んでやって依頼、ホテルの廊下でしたがったり公園でしたがったりした。公園の木立の中は了にとっては鬼門だとは流石に言えず、やむを得ず駅のトイレで黙らせてやった事がある。ところがそれに味をしめた晴はどうも露出に嵌まったらしく、会っていない時に独りで外で裸になって扱く写メまで撮ってきた事がある。

それ、他人に見つかったら回されるか、捕まるぞ?

そう言ったら回される方を期待しているとしか思えない、反応をされて人間って嵌まると危ねぇなぁなどと他人事のように考えたものだ。因に結城晴の現状と言えば、現在ではネコがスッカリ身に付いたらしく何度か了にモーションをかけてきたりしてはいる。自分から前科ものと捨てておいて起訴されないとなりゃ、もう一度セックスしないかとは中々なものだ。
それにしても人のことは言えないが世の中、本当にアブノーマルなセックスを好む人間が、一気に増えたようでと呆れ混じりに耳を済ます。了のカラオケボックスの盗聴はこれで二度目だが、前回はなんと男二人と女が激しくやっている真っ最中だったのには呆れてしまった。しかも、女は上下でなく前後に男根を嵌められ、獣の咆哮のように喘ぎまくり。相手の男の呼ぶ名前だけ聞けばアイドルかと思えたが、経過を聞いていたら高校生の子供がいる中年女性だったようだ。しかも宏太はその中年女性の事を知っている風で、相変わらず親ネコは盛んだなと呟き苦笑いしていた。どうやら以前何か関わる機会があって、中年女の夫婦生活にトドメを刺す手伝いをしたんだと言う。

「それって違法じゃねぇの?」
「友達が困ってたから情報提供しただけだぞ?ホテル出禁くらいは自己責任じゃねぇか?ん?」

ホテルが出禁だからってボックスでふしだらな事を進んでする母親では、その子供は了みたいに育ちそうで思わず憐れになってしまう。せめて子供が例えば敬虔なクリスチャンとかで、まともに育つことを祈るばかりだ。まあ、自分のように親の背を見て、同じく奔放に育つ可能性はかなり高いと思うが。

「後始末が大変で宮が困るからな、やり始めたら入るように教えてやってんだよ。」

宮とはエコーの店長の宮直行のことで、一見すると冴えないバイトにしか見えないが案外機転の利く男なのだ。バイトにしか見えないから、わざわざ始まって性行為を隠せない状況になった辺りに間違ったふりで扉を開けて大騒ぎする。

《な、何やってんですか!!あんたたちぃ!!うわぁ!け、けいさつぅ!!》

等と叫ぶ声が棒読みでも、してる方にしてみれは十分牽制になる。慌てて店舗を飛び出して行くがエコーは前払い制で、なにせ室内で性行為を見られているから払い戻しを申し出るにはバツが悪い。と言うわけで、一時間もしくは二時間分の部屋代はそのまま売り上げに計上され、店内の防犯設備に投資される仕組みになりつつある。
今までそうしなかったのに急に方向転換したのは、去年の夏ぐらいに変態野郎のせいで警察沙汰になったからなのだと言う。元々よしとしていたわけではないが変態野郎の行動が余りにも不快だった宮店長は、心機一転エコーではボックス内での性行為を防ぐことにしたのだと言う。ところが店舗としては三人目位の宮店長の願いも空しく、長年の積み重ねのせいかボックスでの性行為は後をたたない。早速廊下には監視カメラはつけたものの、全部の部屋にはまだ導入出来ず仕方がないからその気配がする客は噂のやり部屋に入れて始まったら店員が偶然を装ってノックするか、効果がなきゃ警察を呼ぶ方向にしたらしいのだ。

「ホテルくらいいきゃいいのに。なんでボックスかねぇ。」

そう了がブチブチいいながら合わせると、先ほど言った既に始まっている音がしていたのだ。『耳』に近いソファーのギシギシ軋む音が、喘ぎの合間に響きわたる。

《ああ、これ凄い…気持ちいい……ううっ。》
《はは、凄いな、こんな簡単に咥えこんで。慣れてるんだ?ケツに突っ込む方が好き?チンポあんまり固くなんないんだね。》
《うん、穴の方が好きぃ……ああ……太い、いい…。》

ハスキーな掠れた声に一瞬おやおやと目が細められる。声からしてどうやらボックスの中で交合っている真っ最中が、男同士だと了は気がついたのだ。

《誰か来たらアナルにチンポ咥え込んでるの丸見えだよ?こんな風に股開いて下から突っ込まれて恥ずかしくないの?》
《ああ!言わないで!雌チンポも、マンコも丸見えで、太いのにズコズコされてるの恥ずかしいっ…。》
《何が恥ずかしいの?自分で脚おっぴろげて、股がっててさ?エロいよね、本当。》

グッポグッポとはしたない注挿音が響き、突っ込まれている方の甘い女のように喘ぐ声が聞こえる。どうやら背面座位で男が相手を抱えあげて、下から逸物を捩じ込んでいるという風だ。

《ああん、気持ちいいのぉ!グポグポ奥まで、もっと沢山捩じ込んでぇ!》
《はは、おっきな声だして、店員さん来ちゃうぞ?》

いや、来ちゃうぞってホントに来るぞ?そんなに大声でさぁと呆れたように頬杖をつくと、期待に潤んだネコの声がする。ネコとは言うまでもなく入れられている方の事で、いれている方はタチと言うわけだ。

《あふぅ!み、見られたら、まわされちゃう?》
《なんだ、回されたかったの?変態だね?じゃ、店員さん呼ぼうか?一緒にしてくれるかもよ?》 
《ああん、そんなの…マンコにチンポ二本とか入れられちゃうの……?濡れちゃう…俺のマンコ。》

いやもう、そこまでセックス好きならせめてラブホくらい行ってやれよ、なんでボックスだよと思ってたが、どうやらネコが半端ない露出狂だったらしい。しかも大分男に入れられ慣れている気配なのは、言葉からでもよく分かる。自分の孔を女性器と言うくらい、男と沢山していると言うわけだ。自分も恭平をなぶるのにそんな言葉使ったっけなぁなどと、ほんの一週間もない程度のことなのに遠い過去の事のように考える。でも、恭平はその言葉を泣きながら堪えたんだよなと思うと、ボックスで戯れるネコは随分とビッチに聞こえてしまう。恐らくこの様子だとこのビッチネコは、二人の男に一度に同じ場所に逸物を捩じ込まれた経験があるのだろう。

《ああ!もっと、もっと抉って激しくズコズコしてぇ。結腸まで嵌めてぇ!》

結腸とは肛門から直腸を遡った先の事で、肛門から直腸は二十センチほど。まあ、そうそう結腸まで届く逸物はお目にかからないが、直腸もくねっているから届いた感でもあるかもしれない。等と冷ややかに考えながら聞いているが、

《変態だなぁ、メスイキして見せて、ほら。》
《ああん!奥に嵌まるぅ!くるぅ!いいっ!メスになっちゃうぅ!もっとぉ!》

甘ったるい声が強請りながら男に更に先を促すのを聞きながら、了は呆れながらヘッドホンを外して宏太の方を眺める。

「なぁ?もう始まってっけど。」
「ああ?!んなはずねぇな。」

でも、ほらとヘッドホンを渡した了に耳を押し当てた宏太の顔色が僅かに曇る。喘ぎまくる声はヘッドホンから微かに漏れていて、宏太は何故か訝しげにその声に耳を澄ます。その表情はまるでその声に聞き覚えがあると言いたげで、やがて微かに顔色を変えた宏太が変化があったら教えろと呟く。そうしてメスのように喘ぎまくる声を聞きながら、宏太がどこかに電話をするのを眺める。

《ああ!凄いな、君の中、そこらの女より、ずっと、いいよ!ケツマンコ、いいよ!》
《嬉しい、もっと奥まで捩じ込んで沢山種つけしてぇ!俺種付けセックス大好き!ああッ!ゴリゴリくるぅ!太い雄チンポ好きぃ!》

ヒイヒイ泣きながら淫語を叫びまくるネコに、不意にこいつ本当に感じてるのかなと疑問が浮かび上がる。確かに感じまくっているように聞こえなくもないが、根本的な感覚として聞こえないものがあるのだ。

《女の子みたいな顔して、すっげぇ淫乱だな!自分もでっかいチンポしてて、チンポ狂いかよ!はは!》
《ああ、言わないでェ!俺のクリトリスおっきくて恥ずかしいのぉ!マンコしてぇ!嵌め殺してぇ!》

ズポズポグチュグチュという注挿音が激しく続いていて、淫語が室内には飛び交っている。その言葉はアダルトビデオ張りなのに、何かが足りない。

《ああん!いくぅいっちゃうう!》
《はは!変態!出しも起ちもしねぇんだ?ほんとクリチンポなんだ?!おお!トロマンすげぇ!!絡んで締めてるぞ!》
《ふふ、もっとしてぇ!種付けしてぇ!奥に種付けぇ!》
《本当変態だなぁ、そうだ、他に友達呼んでやろうか?》
《ああん、ほんとぉ?チンポ沢山で種付けしてくれるのぉ?》

どう聞いてもネコの方が淫乱でヨガっている筈なのに、何故かその声が何処か冷淡に聞こえる気がして背筋が寒くなる。そうだ、本当に太くて捩じ込まれて歓喜しているなら、もう少し自分の肉棒や乳首なんかの快楽を訴えてもいいような気がする。しかも、こんなに激しく突っ込まれて、トコロテンも潮吹きもなし。いやするのが当然といっているわけではないが、ここまで淫語を叫び続ける位ならその快楽は知っていてもおかしくない気がする。背後では青ざめた顔で椅子に片手をついて、宏太が電話をしている声がしていた。

「仕事中悪いな、喜一。もしかしたらなんだが、………あいつがエコーにいるかもしれん、……ああ、……そうだ。」

あいつ?ということはどちらかが宏太の知っている人間ということか?しかも相手が遠坂喜一ということは、警察絡みの問題がある人間ということかと了は目を丸くする。

「いや、……宮に電話をしても出ねぇんだ。まさかとは思うがな…、ああ、店舗もでねぇ。………ああ、悪いな、頼んだ。」

そう言い電話を切った宏太が、どうなってる?と問いかけてくる。エコーの部屋の中は未だに交合いの真っ最中で、ネコが出して出してとせがむ甘え声で満ちていた。

《ああ!出そう!出しちゃうよ!》
《種付けしてぇ!!マンコに沢山種付けして孕ませてぇ!》

状況を告げると宏太は不快そう一端チャンネルを切れと手を動かす。言われた通りスイッチを落としてヘッドホンを外した了は、顔色の悪い宏太に近寄る。

「宏太、大丈夫かよ?」

戸惑いながらかける声に宏太はふと顔を向けると、悪いがベットまで手を引いてくれと呟く。普段なら室内は一人で動くのに問題のない宏太の言葉に、目を丸くしながらそんなに具合が悪いのかと手をとる。確かに何時もと違って冷たい汗をかいている宏太の手に驚きながら、ベットまで導くと腰を下ろした宏太がそのまま了の手を握りしめた。

「大丈夫か?水がなんか飲む?」
「了。」
「何だよ。」
「傍にいろ。」

グイと引き寄せられ抱き締められ抵抗しようとしたが、青ざめた宏太の顔色に戸惑う。そのまま押し倒されて何でか身体にのし掛かられ、了は更に困惑しながら首元に押し付けられる宏太の顔を覗き込もうともがく。

「アイマスクじゃねぇから見んな。グロいのは分かってる。」
「俺そんなこと言ってねぇし、サングラスが食い込んでいてぇんだよ。この体勢がいいならそれ外せよ。」

そう言うと苛立つように宏太がサングラスを外して床に投げる。おいこら、眼鏡後で踏むぞと言っても宏太は気にもせずに、顔を埋めたまま動こうとしない。何気なく首元に触れてみて初めて、宏太がグッショリと冷たい汗をかいているのに了は目を丸くした。

「おい、宏太。具合悪いんなら……。」
「黙ってろ……こうしてれば、少しすれば治まる。」

んなわけあるかと言っても、宏太は押し付けられたままの顔を上げようともしない。なんだこりゃと内心では思いながら、やがて確かに宏太の身体が体温を取り戻していくのが分かる。こんな風になる宏太を初めて見ると思いながら、了はそれがさっきの声のせいかと気がつく。何かこうなるような原因がさっきの交合いの声にはあったのかと、身動きも出来ずにボンヤリと考え込んでいるうちに体温のせいかウトウトと微睡み始めてしまっていた。



※※※



ヌルリと快楽にかわる感触が口の中を犯していて、同時に体内を探り回るものがクリクリと歓喜のスイッチを擦る。蕩けてしまう甘美な快感に思わず喘ぐと、低く笑う声と同時に更に体内を掻き回しながら足を大きく更に開かせられるのが分かった。痛みを感じるほどに喉元肌に吸い付かれ、掻き回され満たされる感触に快感が弾けて仰け反り喘ぎが溢れる。

……くそ……腹が立つな……。

掠れた声がそう微かに呟き何度も乱暴なくらいに唇を塞ぎ舌を絡めて吸い上げながら、体内に音を立てて注挿される長い節くれだった指の感触に腰が甘く震える。

腹が立つってなんだよ………

思わずそういったような気がするが、宏太はそれには答えてくれず腕を自分の首に絡めろと命令された。素直に従うとまるで正常位で怒張を挿入される女みたいに足を抱え上げられ、唇を塞がれ犯されながら指で激しく掻き回される。その快感に堪らずに絶頂に悶えると、熱を宿すような宏太の声が耳に吹き込まれた。

「了。」

自分を呼ぶ声に我に返ると必死に宏太の首に腕を絡ませしがみつきながら、孔を掻き回され何度も口付けられ喘がされている自分に気がつく。ウトウトしていた隙に了は再び全裸に剥かれていて、半分眠りながら既に中はグズグズに蕩けさせられて啼かされていたのだ。

「了、どうだ?気持ちいいか?」
「な、んで、こんな、あっ!あうっ!ああっ!」

自分と宏太の腹にズリズリと擦られ押し潰される了の怒張が、孔を探る宏太の指の刺激で先端からトロトロと止めどなく白濁を漏らしている。少しでも疑問を口にしようとすると宏太の唇に塞がれて舌を絡められ、了にはもうただ喘ぐことしか出来ない。何処までが夢で何処からが現実なのか分からずに啼かされるのに、正直了は混乱しているのだ。

何に……腹が立つんだ?あんた。……それともあれは夢か?

何で宏太はこんなに了の事を、快楽で責め続けるのかも未だに分からない。こんなに狂いそうなほど執拗にいつまでも愛撫されるなんて、長い付き合いなのに今迄されたことがないのだ。昔了が願った時には一度も与えてくれなかったのに、願わなくなった今になって宏太にこんなに延々と与えられ続ける。

「可愛い声だして、そんなに孔と乳首が気持ちいいのか?ん?」

しかも、以前は指や玩具でいたぶることはしても、口付けたり舐めたりなんてするのを見たことがないのだ。初めてされる口付けはネットリと甘く頭の芯が痺れて腰が抜けてしまいそうだし、乳首をヌルリと舐めてキツく吸われると快感に腰が震えて達してしまいそう。その上相手はどんな風にすると音が大きく聞こえ、了が羞恥に耳を犯されるのか迄熟知している。

「も、やめ、あうっやめろよぉっくううっ!」
「やめて欲しがってるように聞こえないな?ほら、孔のここが気持ちいいんだろ?ん?やらしい尻孔しやがって。」
「あああっ!やだっ!そこ、擦んなよぉ!やぁっ!!」

前立腺を擦り上げられビクビクッと身体が絶頂に跳ねるのを宏太の身体で押し潰されながら、再び強く舌を吸われ絡めとられる快感に頭が酩酊していく。了が弱々しくやめてくれとどんなに懇願しても、宏太には止める気が全くない。それが容赦ない快楽責めで、直に肌に伝わってくる。

「やだっ頼むからも、止めてっ!あっ!ああっ!いくっ!」
「気持ちいいか?了。俺に女にされて気持ちいいか?ん?」
「やあぁっ!!あっ!あっ!やめっ!あっ!いいっ!!いっ!いくっ!いくぅ!ああっ!!」

怒張には全く触れられないのに、延々と責められる孔と乳首と口付けだけ。しかも快感に震えれば震えるほど、更に宏太に言葉でも追い込まれていく。女にしてやると告げ責め立てられ、本当に全てが狂いそうな程痺れて気持ちいい。

「やめ…っくるうっ…あうっ!あううっ!い、くうぅう!」
「狂わせて欲しいならタップリ狂わせてやる。俺しか分からなくなるくらい、狂わせてやる。」

悲鳴をあげても宏太が全く止める素振りすら見せないのに、遂には涙が溢れてくるのが分かる。嬉しいのか悲しいのか訳がわからない。愛撫は嬉しいのに狂うほど愛撫される理由は、宏太が以前の傍に置いた右京の身代わりにするためだと思うと絶望的な気分になるのだ。それなのに、どんなに顔にその絶望を表しても、宏太にはそれは全く見えない。

「これからずっと俺の傍にいろ、分かったな?」

囁くように耳を犯す言葉に息が詰まる。墓地で佇んでいた宏太の背中と、今の愛撫が繋がっているのはよく分かっていた。それでも傍にいられたらいいと考えたのに、こんな風に愛撫され溶かされたら理性が弾けてしまう。だけど言う通り傍にいたいけど、宏太が欲しいのは自分じゃないのだ。

何時までも執拗に愛撫したいのは右京であって、俺じゃないんだろ?

そう感じる心が痛くて苦しいのに、宏太に与えられる快楽に勝てない自分もいる。身代わりが嫌なら宏太から離れてしまえばいいだけなのに、宏太が与えてくれるものが嬉しくてそれすらも選べないのだ。

あんたは狡い……

求めていた時にはくれなかったのに、今更こんなに与えられて絡めとられる。そして、この感情が何なのかすら教えてもくれないのだ。

「俺の傍にしか、いられないようにしてやる。もっと、可愛く啼けよ、ほら。」
「ひんっ!ああっ!や、擦っ!あっ!あっ!いっちゃっ!漏れちゃ……っ!」
「ほら、潮吹きながらいけよ、啼きながらいけ。」

さっきのネコとは全く違ってグリグリと宏太の指先に前立腺を転がされ、了は腰を何度も突き上げるようにして大量の潮吹きしながら体を突っ張らせて絶頂する。男なのに何度もこうしていかされて、この快感に飲まれてしまう。了は痙攣しながら再び宏太の指に踊らされ、透明な歓喜の潮を吹き上げていた。
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