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15 グラナート視点
しおりを挟む翌日、俺はゴルトと二人で俺の家の前に来ていた。
「私が呼ぶまで君は少し離れたところで身を隠していてくれ」
「はい」
俺は玄関からは見えないが会話は聞こえる場所に移動した。
コンコン
玄関の扉を叩く音が聞こえた。
少しして扉が開く音がするとブラウの声が聞こえた。
「ゴルト様、先日は大変失礼いたしました」
「そんな事はどうでもいい。今日は御当主はいるか?」
「ええ。ただいま呼んでまいります」
しばらくすると父様の声が聞こえた。
「ゴルト様、お久しぶりです。先日は息子が失礼な事をしてしまい申し訳ございませんでした」
「いえいえ、お気になさらないでください」
そう言うとゴルトはいきなり外国語で話し始めた。
「〈ところで、今日私がここに来た理由はわかりますか?〉」
「〈……いえ〉」
「〈そうですか。……そういえば昨日は天気が良かったですがどこかに出かけましたか?〉」
「〈……昨日ですか?〉」
「〈ええ。答えられませんか?〉」
「〈いえ、そんな事はないですよ。昨日は……家にいました〉」
ゴルトはハハッと笑う。
「〈嘘はいけませんよ〉」
「〈……嘘ではないですよ。本当に家から出て——〉」
「〈昼頃馬車で街に行ったでしょう?〉」
「〈……〉」
「〈どうしてその事を隠すのですか?〉」
「〈……隠したわけでは——〉」
「〈家にいたと嘘をついたでしょう。なぜですか? ……あ、もしかして後ろめたい事があるから隠していたのでは? 例えば人を轢いてしまった……とか〉」
「〈……そんな事あるはずがないですよ〉」
「〈ああ、そうですか〉」
ゴルトは自国語で俺を呼んだ。
「出てきてくれ」
「はい」
俺がゴルトの近くにいくと、ゴルトは外国語で父様に聞いた。
「〈この少年に見覚えは?〉」
「〈……〉」
「〈見覚えはあるに決まっていますよね。あなたの馬車に轢かれた子どもなのですから〉」
父様はゴルトから目を逸らした。
「〈まさか子どもを轢いて逃げるとは……そんな人だとは思いませんでしたよ。あなたには良い印象を持っていたのですが残念です。きっと他の人もあなたに対して良い印象を持っているのでしょうが、今回の事を知ったらどう思うのでしょうね?〉」
「〈……誰にも言わないでください〉」
「〈私は口が軽いので重しがないと、うっかり誰かに話してしまうかもしれません〉」
「〈……重しとは?〉」
「〈わかりませんか?〉」
「〈……〉」
「〈その顔はわかっているようですね。用意ができたら私の屋敷に持ってきてください。……それではこれで失礼します〉」
そう言うとゴルトは俺を連れて屋敷に戻った。
屋敷に着いてからのゴルトはずっと上機嫌だった。
「一緒に来てくれて助かったよ。……そういえば昨日はここに泊まってもらったから、きっと君のご家族は心配しているだろう。そろそろ帰った方がいいのではないか?」
「……そうですね。お世話になりました。本当にありがとうございました」
俺は頭を下げてゴルトの屋敷を出た。
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