上 下
62 / 69

14 グラナート視点

しおりを挟む


「〈今のって警察の人でしょ?〉」

「〈ああ〉」

「〈どうして相手の言う事を聞いたの? 前に警察の弱みも握ってるって言ってなかった?〉」

「〈それが、私が脅していた奴は警察を辞めたんだよ。前にソイツに会った時に今までは私の行動に目を瞑っていたが、自分は辞めるからもうそれはできないと言われてね。これからは一件でも警察に被害報告が入ると逮捕しなくてはいけないから、その前にこの国から出ていった方がいいと言われたんだ。まあ、ソイツは私が捕まると今まで自分が揉み消していた事がバレるからさっさと私をこの国から追い出したいのだろう。さっき来ていた男はソイツの部下なんだよ〉」

「〈なるほどね。警察を辞めた後もその人を脅し続ける事はできないの?〉」
 
「〈相手が警察だったから脅せていたが、辞めたらもう弱みでも何でもない事なんだよ〉」

「〈そっかぁ。じゃあこの国を出ていくしかないんだね。……もしくはこれからは真っ当に生きるとか?〉」

 息子の言葉にゴルトは鼻で笑った。

「〈何を言っているんだ。私は真っ当に生きているだろう?〉」

 今度は息子がハハハッと笑う。

「〈そうだね。これは失礼しました〉」

「〈若い女と結婚さえできれば、もうこんな国に用はない。言われなくてもさっさと出ていってやるさ〉」

「〈……それじゃあ僕はもうお役御免かな?〉」

「〈いや、お前も一緒に着いてきてもらう〉」

「〈あ、そうなの? 若いお嫁さんを捕まえる餌の役目が終わったからもう必要ないんじゃない?〉」

「〈息子がいると何かと便利なんだよ〉」

「〈へぇ、そうなんだ。……それじゃあこれからもよろしくね、ゴルトさん〉」 

「〈ああ〉」

 会話が終わるとバタンと扉が閉まる音が聞こえる。

 俺はゴルトが来る前にさっきの部屋に戻った。

 
 ……ゴルトと息子の会話を聞いて色々な情報を手に入れる事ができた。

 息子は、自分の事をゴルトが若い嫁を捕まえるための餌だと言っていた。

 それに、お役御免という言葉や最後のゴルトさんという呼び方からして、もしかしたら彼は本当の息子ではなく息子のフリをしているだけなのかもしれない。

 ……いや、彼は本当にゴルトの息子で普段は一緒に暮らしていないので父と呼び慣れていないだけで一緒に暮らしている事を役目だと言っている可能性もあるか。

 息子の事は確証がないのでゴルトの弱みとは言えないが警察の話は……?

 今のゴルトは警察に被害報告をされると困るという事は、ゴルトが父様を脅したとしたらそれはゴルトとの取引材料になるのでは?

 コンコン

「失礼します」

 使用人の女性が部屋に入ってきた。

「客室にご案内します」

「あ、ありがとうございます」


 客室に案内してもらった俺は、ベッドに横になったが緊張と興奮で眠る事ができなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)姉と浮気する王太子様ー1回、私が死んでみせましょう

青空一夏
恋愛
姉と浮気する旦那様、私、ちょっと死んでみます。 これブラックコメディです。 ゆるふわ設定。 最初だけ悲しい→結末はほんわか 画像はPixabayからの フリー画像を使用させていただいています。

(完)妹が全てを奪う時、私は声を失った。

青空一夏
恋愛
継母は私(エイヴリー・オマリ伯爵令嬢)から母親を奪い(私の実の母は父と継母の浮気を苦にして病気になり亡くなった) 妹は私から父親の愛を奪い、婚約者も奪った。 そればかりか、妹は私が描いた絵さえも自分が描いたと言い張った。 その絵は国王陛下に評価され、賞をいただいたものだった。 私は嘘つきよばわりされ、ショックのあまり声を失った。 誰か助けて・・・・・・そこへ私の初恋の人が現れて・・・・・・

(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。 なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと? 婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。 ※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。 ※ゆるふわ設定のご都合主義です。 ※元サヤはありません。

本の虫令嬢は幼馴染に夢中な婚約者に愛想を尽かす

初瀬 叶
恋愛
『本の虫令嬢』 こんな通り名がつく様になったのは、いつの頃からだろうか?……もう随分前の事で忘れた。 私、マーガレット・ロビーには婚約者が居る。幼い頃に決められた婚約者、彼の名前はフェリックス・ハウエル侯爵令息。彼は私より二つ歳上の十九歳。いや、もうすぐ二十歳か。まだ新人だが、近衛騎士として王宮で働いている。 私は彼との初めての顔合せの時を思い出していた。あれはもう十年前だ。 『お前がマーガレットか。僕の名はフェリックスだ。僕は侯爵の息子、お前は伯爵の娘だから『フェリックス様』と呼ぶように」 十歳のフェリックス様から高圧的にそう言われた。まだ七つの私はなんだか威張った男の子だな……と思ったが『わかりました。フェリックス様』と素直に返事をした。 そして続けて、 『僕は将来立派な近衛騎士になって、ステファニーを守る。これは約束なんだ。だからお前よりステファニーを優先する事があっても文句を言うな』 挨拶もそこそこに彼の口から飛び出したのはこんな言葉だった。 ※中世ヨーロッパ風のお話ですが私の頭の中の異世界のお話です ※史実には則っておりませんのでご了承下さい ※相変わらずのゆるふわ設定です ※第26話でステファニーの事をスカーレットと書き間違えておりました。訂正しましたが、混乱させてしまって申し訳ありません

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 4巻発売中☆ コミカライズ4/16より連載開始】

婚約破棄ですか? では、最後に一言申しあげます。

にのまえ
恋愛
今宵の舞踏会で婚約破棄を言い渡されました。

悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい

たなぱ
BL
生前、社畜だったおれの部屋に入り浸り、男のおれに乙女ゲームの素晴らしさを延々と語り、仮眠をしたいおれに見せ続けてきた妹がいた 人間、毎日毎日見せられたら嫌でも内容もキャラクターも覚えるんだよ そう、例えば…今、おれの目の前にいる赤い髪の美少女…この子がこのゲームの悪役令嬢となる存在…その幼少期の姿だ そしておれは…文字としてチラッと出た悪役令嬢の行いの果に一家諸共断罪された兄 ナレーションに 『悪役令嬢の兄もまた死に絶えました』 その一言で説明を片付けられ、それしか登場しない存在…そんな悪役令嬢の兄に転生してしまったのだ 社畜に優しくない転生先でおれはどう生きていくのだろう 腹黒?攻略対象×悪役令嬢の兄 暫くはほのぼのします 最終的には固定カプになります

処理中です...