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14 グラナート視点
しおりを挟む「〈今のって警察の人でしょ?〉」
「〈ああ〉」
「〈どうして相手の言う事を聞いたの? 前に警察の弱みも握ってるって言ってなかった?〉」
「〈それが、私が脅していた奴は警察を辞めたんだよ。前にソイツに会った時に今までは私の行動に目を瞑っていたが、自分は辞めるからもうそれはできないと言われてね。これからは一件でも警察に被害報告が入ると逮捕しなくてはいけないから、その前にこの国から出ていった方がいいと言われたんだ。まあ、ソイツは私が捕まると今まで自分が揉み消していた事がバレるからさっさと私をこの国から追い出したいのだろう。さっき来ていた男はソイツの部下なんだよ〉」
「〈なるほどね。警察を辞めた後もその人を脅し続ける事はできないの?〉」
「〈相手が警察だったから脅せていたが、辞めたらもう弱みでも何でもない事なんだよ〉」
「〈そっかぁ。じゃあこの国を出ていくしかないんだね。……もしくはこれからは真っ当に生きるとか?〉」
息子の言葉にゴルトは鼻で笑った。
「〈何を言っているんだ。私は真っ当に生きているだろう?〉」
今度は息子がハハハッと笑う。
「〈そうだね。これは失礼しました〉」
「〈若い女と結婚さえできれば、もうこんな国に用はない。言われなくてもさっさと出ていってやるさ〉」
「〈……それじゃあ僕はもうお役御免かな?〉」
「〈いや、お前も一緒に着いてきてもらう〉」
「〈あ、そうなの? 若いお嫁さんを捕まえる餌の役目が終わったからもう必要ないんじゃない?〉」
「〈息子がいると何かと便利なんだよ〉」
「〈へぇ、そうなんだ。……それじゃあこれからもよろしくね、ゴルトさん〉」
「〈ああ〉」
会話が終わるとバタンと扉が閉まる音が聞こえる。
俺はゴルトが来る前にさっきの部屋に戻った。
……ゴルトと息子の会話を聞いて色々な情報を手に入れる事ができた。
息子は、自分の事をゴルトが若い嫁を捕まえるための餌だと言っていた。
それに、お役御免という言葉や最後のゴルトさんという呼び方からして、もしかしたら彼は本当の息子ではなく息子のフリをしているだけなのかもしれない。
……いや、彼は本当にゴルトの息子で普段は一緒に暮らしていないので父と呼び慣れていないだけで一緒に暮らしている事を役目だと言っている可能性もあるか。
息子の事は確証がないのでゴルトの弱みとは言えないが警察の話は……?
今のゴルトは警察に被害報告をされると困るという事は、ゴルトが父様を脅したとしたらそれはゴルトとの取引材料になるのでは?
コンコン
「失礼します」
使用人の女性が部屋に入ってきた。
「客室にご案内します」
「あ、ありがとうございます」
客室に案内してもらった俺は、ベッドに横になったが緊張と興奮で眠る事ができなかった。
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