29 / 69
3 グラナート視点
しおりを挟む部屋にはエルツと二人だけになった。
「旦那様が倒れる前にどんなお話をされていたんですか?」
「……どうしてそんな事を聞くんだ?」
「先程旦那様が倒れた時の状況を聞いて、お二人がされていた話の内容に旦那様がショックを受けて倒れた可能性があるのではないかと思いまして」
そんな……父様が倒れたのは俺のせいだったのか?
エルツは父様は大丈夫だと言っていたが、もし重症だったら……
俺のせいで父様が……
「あくまで可能性の話です。てすが、もしそれが理由だとしたら、また同じ様な事が起こるかもしれません。そうならないために、旦那様が倒れる直前の会話だけでもいいので教えて頂く事はできませんか? 話をしているご本人は気がつかない事も、第三者が聞けば何かわかるかもしれないですから」
「……ゴルトという金持ちが家にきた時の話をしていたんだ」
「そうですか。ゴルトがきた時は私も玄関の近くにいて、話の内容は聞こえていました」
俺が二階から見た時は兄様とブラウの姿しか見えなかったから、エルツはゴルトの事を知らないと思っていたがあの場にいたのか……
「父様は、ゴルトに物を落とした時みたいに印象が悪くなる行動をとると将来大変な思いをするのは俺自身だ、と。……俺はこの家を継ぐつもりなんてないのに」
父様も兄様も、どうしてわかってくれないんだ。
「なぜ後を継ぎたくないのですか?」
「……」
「長い間グラナート様にだけ本当の事を言わなかったお二人の言う通りにするのが嫌だからですか?」
……違う。
そんな理由じゃない。
「グラナート様が変わられたのは、サフィーロ様が養子だと知ってからだという事を聞きました。ずっと嘘をつき続けてきたお二人の事が憎いから嫌がらせのために問題行動を起こしているのですか?」
「違う!」
俺はそんな事思っていないのに。
どうして……
「どうしてお前も父様もそんな事を言うんだ……」
「違うのなら、なぜ養子の事を知ってから旦那様やサフィーロ様に対する態度が変わったのですか?」
「それは……俺にだけずっと嘘をついていたのを知って最初は悲しかったけど、それが怒りに変わっていって……それで……」
一年前、養子の事を知って悲しかったはずなのに、なぜか涙は出なかった。
その代わり自分でも抑えきれない怒りがわいてきたんだ……
「そうでしたか。使用人達への態度が悪くなったのも同じ理由ですか?」
「ああ」
「女性の使用人に対しては特に強く当たっていたと聞きましたが、それはなぜですか?」
「あの女達は……」
俺は昔の記憶を思い返した。
0
お気に入りに追加
389
あなたにおすすめの小説
婚姻初日、「好きになることはない」と宣言された公爵家の姫は、英雄騎士の夫を翻弄する~夫は家庭内で私を見つめていますが~
扇 レンナ
恋愛
公爵令嬢のローゼリーンは1年前の戦にて、英雄となった騎士バーグフリートの元に嫁ぐこととなる。それは、彼が褒賞としてローゼリーンを望んだからだ。
公爵令嬢である以上に国王の姪っ子という立場を持つローゼリーンは、母譲りの美貌から『宝石姫』と呼ばれている。
はっきりと言って、全く釣り合わない結婚だ。それでも、王家の血を引く者として、ローゼリーンはバーグフリートの元に嫁ぐことに。
しかし、婚姻初日。晩餐の際に彼が告げたのは、予想もしていない言葉だった。
拗らせストーカータイプの英雄騎士(26)×『宝石姫』と名高い公爵令嬢(21)のすれ違いラブコメ。
▼掲載先→アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ
悪役令嬢はお断りです
あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。
この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。
その小説は王子と侍女との切ない恋物語。
そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。
侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。
このまま進めば断罪コースは確定。
寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。
何とかしないと。
でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。
そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。
剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が
女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。
そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。
●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_)
●毎日21時更新(サクサク進みます)
●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)
(第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
悪女は愛より老後を望む
きゃる
恋愛
――悪女の夢は、縁側でひなたぼっこをしながらお茶をすすること!
もう何度目だろう? いろんな国や時代に転生を繰り返す私は、今は伯爵令嬢のミレディアとして生きている。でも、どの世界にいてもいつも若いうちに亡くなってしまって、老後がおくれない。その理由は、一番初めの人生のせいだ。貧乏だった私は、言葉巧みに何人もの男性を騙していた。たぶんその中の一人……もしくは全員の恨みを買ったため、転生を続けているんだと思う。生まれ変わっても心からの愛を告げられると、その夜に心臓が止まってしまうのがお約束。
だから私は今度こそ、恋愛とは縁のない生活をしようと心に決めていた。行き遅れまであと一年! 領地の片隅で、隠居生活をするのもいいわね?
そう考えて屋敷に引きこもっていたのに、ある日双子の王子の誕生を祝う舞踏会の招待状が届く。参加が義務付けられているけれど、地味な姿で壁に貼り付いているから……大丈夫よね?
*小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
契約婚で公爵夫人始めます!〜貴族社会のゴタゴタ?ブラック企業の百倍マシよ〜
歌龍吟伶
恋愛
従業員は時給700円で雇ったパートばかり、サービス残業も当たり前。そんな職場で働いていた清川静香。
親も亡くし天涯孤独の身で働けるだけ有り難いと自分に言い聞かせ、18歳から必死に働いてきた彼女はある日突然死してしまう。
享年25歳、恋も知らず長年の疲労が溜まり過ぎた事による過労死だった…
しかし彼女は目を覚ました。
見知らぬファンタジーな世界に放り込まれ、訳もわからぬまま森を彷徨っているときに出会ったのは公爵令息。
彼から契約婚を持ちかけられたことにより始まる貴族生活は、華やかで煌びやかだけれど女達の嫉妬による嫌がらせの嵐!
しかし死ぬまでブラック企業で働いた静香は、時給千円くださるのなら引き受けます!とやる気を見せるのであった---
※コメント欄のネタバレ設定しておりません、ご注意ください
※『聖女ですが拳闘士なので拳で語ります』と同じ世界ですが、深い繋がりはありません
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる