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6 エルツ視点

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「よし、これで終わり! 綺麗になったねー」

 ブラウさんは掃除し終わった階段を眺めてそう言った。

 掃除中はいつも通り明るく振る舞っていたブラウさんが、ふぅ、とため息をつく。

「色々と疲れたし、お茶でも飲んで休憩しよう。ボクはサフィーロとグラナートにお茶を飲むか聞いてくるから、エルツは掃除用具を片付けてきて」

 ブラウさんは掃除用具を私に渡すと階段を上っていった。



 私は掃除用具を片付けて食堂に行くと、サフィーロ様とブラウさんが椅子に座って話をしていた。

 テーブルの上にはお茶の入ったカップが三つ置いてある。

「グラナートは飲まないって。エルツも座って一緒に飲もうよ」

「いえ、私は……」

「エルツ、話があるんだ。座ってくれないか」

 サフィーロ様にそう言われた私は断る事ができずに椅子に座った。


「さっきのゴルトとの会話、聞こえてた?」

 ブラウさんにそう聞かれた私は、はい、と答えた。

 すると、サフィーロ様が悲しそうに笑って言った。

「僕が外国語を話せないって事も聞かれちゃったか。勉強はしているんだけど、どうも上手くいかなくてね……」

 私は何も言えずにサフィーロ様から目を逸らした。

「ああ、ごめん。気を遣わせたかったわけではないんだ。エルツは外国語がわかるだろう? ゴルトがゴルトの息子と何を話していたのか教えて欲しくてね」

 私はゴルトとゴルトの息子の会話を思い出そうとしたが、ゴルトが言った『コイツは養子なんだよ』という言葉が邪魔をして他の事を思い出す事ができなかった。

 私には知らされていなかった事だが、聞いてしまったからには仕方ない。

 私はサフィーロ様の目を見て言った。

「ゴルトは、サフィーロ様は養子だと言っていました」

 私はサフィーロ様が驚くと思っていたが、そんな事はなかった。

 サフィーロ様はキョトンとした顔をする。

「それだけ? 他には?」

 ゴルトが養子の事を知っているのは当然のようなサフィーロ様の様子を見て、私は不思議に思った。

 ……養子の事は隠しているわけではないのだろうか?

 私は他に言っていた事を思い出そうとするが、養子の事が気になって集中できなかった。


「サフィーロが養子って事はみんな知っているからねぇ」

 ブラウさんはお茶菓子を食べながら言った。

 そうだったのか。 
 知らなかったのは私だけか……


 ブラウさんは私の顔を見るとサフィーロに聞いた。

「エルツに伝えてなかったの?」


 サフィーロ様は私を見る。

「お父様から聞いているだろう?」

「いえ……」

 そう答えると、サフィーロ様は驚いた顔をして私に謝り、養子の事を話してくれた。 


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