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第九章 悪役とは。

想いは口に出さないと伝わらない。

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 ーー…そんな気持ちで年月を過ごしてしまったことをあの日私は凄く後悔した。
 側近参謀として活躍してからさらに二十年が経った私は御主人様の右腕とまで周りから称賛されるほど成長した。
 右腕はエイムさんなのでは?と言えば本体からは僕は相棒であって右腕じゃないからいいのと返されました。
 だから私も自信を持って御主人様の為に尽力しました。
 御主人様の主である魔王が魔界からヒト族の世界へと侵攻することになれば大魔将軍は乗り気で出たように見えましたが私達はついていきました。
 その先にあったのは魔界とはまた違う彩りのある世界だった。

『ーー…おお~、空は青いし緑が多い。魔界とは景色が違うな。』
『やはり?御主人様はこの世界をご存知なのですか?』
『えっ!?あ、ああ!魔王様が魔法でこの世界を見せてくれていたのでな。だが実際に見てみると美しい世界だと思わないか?』

 何故か焦りを見せた御主人様を不思議に思いつつも私もヒト族の世界は綺麗だと感じていた。
 それから御主人様を含んだ四天王が率いる魔王軍は次々と小国を潰して回り占領していきました。
 このままいけば大した年月をかけずに大半の大陸が手に入ると考えられていたのですがある情報が入ってきたことで魔王は御主人様に任務を与えました。
 魔族の根本的である闇属性を消滅させることが出来るとされる聖属性。
 つまり私達にとってはヒト族の世界で厄介なものであった光属性よりも危険な属性が存在するのだ。
 ただしそれを使えるのは[聖女]と呼ばれる存在と[聖剣]。
 魔王はその二つの探索と入手を御主人様に命令した。

『ーー…ふむ、どうやら聖剣は遥か昔から見られていないようだ。メディア、探索に長けた者を連れて聖女を見つけよ。』
『はっ!必ず見つけ出してみせます!』

 御主人様の命令で聖女と呼ばれる存在を探索した私は都や街ではなく村にいることを突き止める。
 私達は一斉に襲撃して聖女を奪い取ろうと提案したが御主人様は一体で向かうと申しましたので信じてお任せすることにしました。
 結果はさすが御主人様。なんと聖女だけを連れ去って帰還してみせたのです。

『えっ!?護送するのですか!すぐに始末するべきでは!?』
『それなんだが魔王様の命令でな。魔界に連れてこいだそうだ。』

 しかも闇属性の封印によって聖女を拘束すればヒト族の世界に二度と聖女は現れなくなるだろうというのが魔王の考えだったことを聞けば支配の為ならば仕方ないと私も納得し御主人様と一緒に収監されている聖女を見に行った。
 白金の長髪に村娘の格好をした聖女は私の神眼と同じ黄金色の瞳でこちらを見上げてきた。

『移送するまで我の眷属が面倒を見る。』
『私を殺さないのですか?』
『ふん、魔王様の命令なのでな。』

 短いやり取りの後に御主人様は私にその日の見張りを任せて下さった。
 聖女と呼ばれるヒト族の女性はこの世界の夜になろうとも両手を合わせ瞼を閉じたまま大人しくしていた。

『何をしているのですか?』

 これまでにも幾度かヒト族の移送を見てはいたがほとんどが命乞いをしたり泣き喚いたり怒りを見せてきたというのにとても冷静な様子が気になって私は尋ねてみた。

『祈っております。』
『祈り?助けを誰に祈るというのです?あなた方の神という存在ですか?』
『いいえ、助けを祈っておりません。私の大切な人の無事を祈っているのです。』

 瞼を閉じたまま聖女はそう返してきた。
 大切な人、ですか…。
 私にとって御主人様がそうであるように聖女にもそういう存在がいるのでしょうか。
 などと思いながら聖女の移送が決まった翌日にとんだ横槍が入ってきました。
 何処から嗅ぎ付けてきたのか四天王の一角にして獣魔じゅうま族軍の長、獅子のレーヴェが乗り込んできたのだ。
 連中は魔王の指示で運搬役を任されたと主張し書状まで見せてきた。
 頭まで筋肉な奴がそんなことに手を回せるはずがないのでおそらく他の四天王からの入れ知恵でしょう。

『いいだろう。せいぜいゲートまでしっかり送り届けてみせろ。』
『ふん!お前なんぞに言われるまでもない!せいぜい聖剣とかやらを地味に探していろ!』

 御主人様に失礼な物言いをしたレーヴェはこちらの援軍を断って聖女を持ち逃げ同然に移送していった。

『ねぇいいのマスター?あいつに手柄を取られちゃうかもしれないよ?』

 一緒に見送っていたヒト族の子ども姿に成っていたエイムさんの質問に私も同じ気持ちだったので顔を見上げてみる中で御主人様は返した。

『構わん。こういう展開ってだからな。高確率で失敗するものだ。』
『ストーリー…?』
『あるある…?』

 どういう意味なのか全くわからず私はエイムさんと一緒に首を傾げた。
 でも御主人様が失敗すると断言するのならば獣魔軍による聖女の移送が失敗に終わるということだろうか?
 だから御主人様はレーヴェが援軍を断ったのを素直に受け入れ見送ったのでしょうか。
 そんな疑問を持ちながら五日経った頃に報告が入ってきた。
 なんと移送していた聖女をヒト族が奪還してみせたらしい。
 しかもその中にあの聖剣を携えた者がおり移送に使っていたレーヴェの獣魔軍が手痛い損害を受けたという驚きの情報も付いてだった。
 部下に任せて自分は他所に行っていたレーヴェは魔王から叱責を受けていい気味だとは思いましたが御主人様まで叱責されたのには私個人としては不満を感じました。
 でも失敗がわかっていたからこそ被害を生まない為に援軍をあっさり諦めてみせたのはさすが御主人様だと尊敬しました。

『よもやあの男が聖剣に選ばれるとはな。これより彼をこの世界で言う勇者と命名する。各員対峙した場合には油断するな。全力で挑むように。』

 勇者…聖剣を扱い聖女と同じく聖属性を出せる存在が現れたことに御主人は私達に警戒を促して下さった。
 魔王は御主人様に再び聖女の捕縛を命令してきたのだが、探索の途中で問題が起きる。
 聖女がヒト族の国に囚われてしまったのである。
 どうやらこちらの世界は一枚岩ではないようで聖女を独占しようとしたらしい。
 しかも聖女の力の一端を借りて光属性の強力な結界によって私達魔族どころか勇者一行すら弾かれ何人たりとも入れなくなっていた。
 なので私は結界を作っている塔に向けて魔法に長けた者を集め一斉攻撃による突破を提案しましたが、御主人様は予想外の作戦を出してきました。

『我が変装して勇者パーティーに紛れ込む。』

 一緒に聞いていたエイムさんと私は御主人様の出した作戦に唖然とした。
 そんな私達を前に御主人様はその作戦の詳細を記載した書類を二枚ずつ渡して下さった。
 と言っても内容は少々突拍子もないものでしたが…。
 勇者一行に紛れ込んで塔の破壊を手伝い、しかも一緒に聖女を助けたところで正体を明かし連れ去る。
 後半の部分はする意味があるのでしょうか?

『よいかエイム、メディア。この作戦は極秘作戦である。よってなるべく他の眷属が接触しないように君達で手を回しておいてくれ。』

 御主人様の指示にエイムさんは極秘作戦という響きが気に入ったのか元気よく返事してやる気を見せていましたので私も了承することにしました。
 勇者一行に潜入した御主人様は時々私とエイムさんに連絡して行く先々にいた眷属の移動を依頼してくださったので被害は軽微に抑えられました。
 まあ他の四天王らへの勇者一行による被害は私とエイムさんの知るところではありませんが。
 暫くして御主人様から私とエイムさんに連絡が入る。
 どうやら塔の破壊に成功するかもしれないので付近に待機してほしいとの連絡だった。
 極秘作戦なので私とエイムさんだけで現地に向かい待機していると本当に塔の一つが破壊され結界が解かれた。
 ですが、結果を先に言うならば聖女の捕縛には失敗してしまったのです。
 鳥型に変身したエイムさんに乗って私は御主人様の魔力を辿って空から合流しようとした最中の出来事でした。
 突然御主人様が感知できる建物から聖属性と闇属性の激しい衝突を感じ、次の瞬間一部の壁が爆発したのです。
 驚いたエイムさんが滞空する中で私は白煙の中に御主人様がいることを感知した。

『ぬうう!…よもやロサリオ聖騎士団にこれ程の奥義があろうとは…!』

 煙が晴れて見えてきたのはエイムさんと一緒に作ったとされる自慢の漆黒の大盾と左足の表面に薄くヒビが入っている御主人様が建物の外で宙に浮いている姿だった。

『マスター!』

 それを見てエイムさんが降下して御主人様の隣に向かう。
 私から何かあったか尋ねてみると御主人様は簡潔に語る。
 勇者一行と一緒に首謀者を倒し聖女を取り戻した御主人様は作戦通り正体を明かして逆襲してみせた。
 結界が解かれてから聖女を助けるまで道のりで疲弊していた勇者一行は御主人様の攻撃に追い詰められあと少しで聖剣と聖女の両方を奪えると思った矢先のことだった。
 聖女奪還に同行していたロサリオ聖騎士団の団長が自分の魔力を大きく高めるとなんと聖属性の攻撃を放ったらしいのだ。
 全く予想外の攻撃に御主人は大盾で防御してみせ壁を突き破るほどに吹き飛ばされたのだという。

『御主人様!身体に異常は!?』
『動く分には問題ない。だが、聖女は諦めるしかないな。』

 そう返す旦那様の視線の先には剣を前に突き出した態勢で止まっているヒト族の男性と聖女の前に勇者一行とロサリオ聖騎士団が出て固めていた。
 こちらは御主人様と私とエイムさんしかいないし、聖属性を受けた御主人様の身が心配で状況的に不利が大きかった。

『仕方ないな…ふぅ……フハハハ!やるではないかサパスよ!よもやこの大魔将軍がダメージを受けようとは思わなかった!ここは退かせてもらうとしよう!しかし次こそは聖女を貰い受ける!』

 一息ついてから御主人様は言うと私とエイムさんに顔を向けてきたので静かに同意して空高く飛んで去ることにしました。
 下から待て!大魔将軍!という勇者の声が聞こえてくるのを無視して速度を上げて私達はその場を後にした。

『ねぇマスター?本当に大丈夫?どこか痛くない?』
『盾で防いだから直接受けてはいない。でも念のために戻ったらメンテナンスをするから頼むぞ二人とも。』

 空を飛びながら私達に優しく言ってくれる御主人様にエイムさんは返事してみせるが私の心臓はドキドキして気の抜けた返事をしてしまいました。
 結局聖女の捕獲に失敗してしまった御主人様は魔王からお叱りの言葉を受けてしまいました。
 でもまさか魔力と生命力を全て使って聖属性を放つ技が存在するなんて知らなかったし予想外だったのですから仕方ないと思うのは私だけでしょうか…。
 他の四天王からも陰口を叩かれたことに私はとても悔しい想いで御主人様に愚痴を溢したのですが。

『失敗を悔やんでも仕方ないのだメディア。それより失敗しても生き延びたことを喜ぶべきだ。』
『何故ですか?現に御主人様の悪口が流れてきて私はとても不愉快です。』
『ふっ、言いたい奴には言わせておけばいい。我々は反省して次に活かせるのだからな。』

 そう言って御主人様は私の頭を撫でて気にしない様子を見せてくれました。
 反省して活かす。
 御主人様にある教訓の一つであり眷属らにも伝えてあること。
 だから戦闘で敗退して生き延びた眷属がいても御主人様は決して強くは叱らず短く説教だけしてから対策を提示してみせ生存率を上げてくれたことが幾度もありましたから私達の信頼はとても高いものでした。

『さて、追跡は続けるとして少しは挽回しないと魔王様に言われそうだ。暫くは侵略を重点的に行うぞ。』
『はい!どこまでもお供いたします!』

 それから御主人様と私達は少しの間都や村等を侵略し貢献してみせました。
 まるで勇者一行に潜入していなかった寂しい時間を埋めてもらえるような実に有意義な侵攻でした。
 島を一つ占領した頃に御主人様へ朗報が入ってくる。
 どうやら勇者の聖剣が錆び付いて力を発揮出来なくなっているというのだ。
 これは好機とばかりに御主人様は手勢を連れて出撃することを決意する。
 しかし私やエイムさんという側近は連れていかず下級兵のみの構成でした。
 何故かと私が尋ねれば御主人様はロサリオ聖騎士団を牽制する任務を与えて下さった。
 確かに前回のような攻撃をまたされては困ると判断してその時の私は二つ返事で了承してしまった。
 だからこそ、撤退の通知を受けて帰還した時に私は背筋が凍る想いを目の当たりにしてしまう。

『御主人様!?右腕をどうされたのですか!?』
『む、メディア…。』

 ちょうど魔界に一度帰還しようとしていた御主人に追いついた私は右腕の上腕から先がなくなっていたことに驚く。
 今まで御主人様が一部分を失くされたことなんて私は見たことがないからこそでした。

『お身体は!?コアに異常はありませんか?』
『だ、大丈夫だメディア。ただ久しぶりに部品が欠けたから在庫が欠品していてな。報告と一緒に魔界へ行って調達してくる。留守は任せたぞ。』

 心配する私に御主人様は左手を軽く振って返せば魔界へと帰っていった。
 後でエイムさんら側近の方々に聞けば御主人様はあと一歩まで勇者一行を追い込んでみせたらしい。
 しかしそこで勇者と聖剣が覚醒し聖属性による特大の一撃を放ってみせ御主人様は右腕を失いながらも避けてみせたものの下級兵士の軍勢はその攻撃だけで半壊させられたという。
 故にその威力と右腕を失くしたことを踏まえて御主人様にとってはまた予想外なことが起きたので渋々撤退することになったのだと知った。
 アンデッド系を主軸にしたとはいえ下級兵士の軍勢が一撃で半壊させられるほどなんて。
 もし御主人様に直撃していたらと考えてしまった私は胸の奥がひどく痛みその日は眠れませんでした。



 ーー…そしてあの日を迎えてしまう。
 魔界から帰還した御主人様は魔王から北の大陸にある魔空城まくうじょうの防衛を命じられた。
 その間にもレーヴェや他の四天王は御主人様を除いて全て勇者一行に倒され形勢が向こうに傾いていた。
 だから魔界に繋がるゲートを支える魔空城の防衛を御主人様が担うこととなりました。
 城から離れなくなってしまった御主人様は眷属の私達を大陸のあちこちに配置させて【念間話術トランシーバー】を通じて指揮することで侵攻を続けた。

『はぁ…悔しいものだ。指揮するだけしか出来ないなんて。』
『いやいやマスター。そこは将軍なんだから僕達を信じてどっしり構えててよ。』
『そうです。御主人様も少しは休息を取っててください。私から見ても御主人様は動き回り過ぎています。』
『そうだぜ親分。皆の気持ちを尊重しやがれってんだ。』

 通話越しに私達眷属側から言われた御主人様は諦めたように了承してくださった。
 そんな他愛ない会話が繰り広げられていき私はこのまま勇者が魔空城にやってこないことを心の隅で願っておりました。
 ですが、願いと現実は噛み合いませんでした。
 あれは私が報告がてら御主人様のお側にいた日に森林を根城とするエルフ族の組織灰の一団から勇者一行が空を飛ぶ船に乗って魔空城を目指しているという報告が舞い込んできたのです。

『とうとうやってきたか勇者よ。メディア、非戦闘員を集めよ。巻き込まれない為に城から逃がす。』
『はい、すぐに集めます。』

 御主人様の指示を聞いて私は魔空城の広間にケット・シーらを集める。
 私が最後の非戦闘員を連れて広間に戻ってきた頃、そこには既にサンウォーカーのトミコ、甲虫の女王マザーケーファーのトウロウケンさんもいた。

『これで全員だな。トミコ、トウロウケン。君達には非戦闘員と共にこの城から逃がす。』
『将軍様…!』
『殿…!』

 御主人様から出た言葉にトミコとトウロウケンさんは察したように呼ぶ。
 眷属の中でも御主人様の信頼が高いお二方に非戦闘員の保護を任せて逃がすことを選んだということはそれだけ激しい戦闘が予想されるからだと。
 相手は覚醒させた聖剣を携える勇者と聖女がいる精鋭。それこそ魔空城が破壊されるほどのレベルになるのかもしれないからこそのご判断なのでしょうと私は思いました。

『トミコは下の森へ、トウロウケンは大陸の西側にある洞窟に転移させる。できるなら末永く暮らせ。』
『っ…承知いたしました将軍様。』
『ですが殿!私共は殿の勝利を願っております!』

 トミコとトウロウケンさんからの返事を聞いてから御主人様は二つのグループを転移させた。
 ところがそれで全部ではなくもう一つ非戦闘員のグループが残っていた。

『御主人様、このグループの担当はまだ来ていないようですが…?』

 私のその問いかけに背中を向けたまま御主人様は黙ってしまう。
 ドキッと私の鼓動がまさかという疑問に高鳴った直後だった。

『…ご、御主人様?何故、何故答えて下さらないのですか?』
『……許せメディア。眷属スキル【強制執行ソーサー】!』

 次の瞬間、私の身体が動けなくなる。
 名前と効果しか聞いたことがなかった眷属スキル【強制執行ソーサー】。
 一定の範囲内にいる眷属の意思に関係なく主人の思い通りに動かすことができる。
 他の四天王は捨て駒にする為によく使っていた非情の眷属スキル。
 でも私が知る限り御主人様は一度も使ったことがなかったスキルの一つだった。

『君は南西のもはや無人島になった島に転移させる。』

 御主人様がそう言うと発動させた転移陣へと私の身体が勝手に動いてしまう。
 …嫌です、嫌です嫌です嫌です!
 こんな、こんな無理矢理お別れさせられるなんて嫌です御主人様!

『何故ですか!?何故私を転移させるのですか!?勇者達が迫っている今、私は戦力になるはずです御主人様!』

 身体は勝手に動いてしまうが口はそうでなかったので私は御主人様にいっぱい訴え出た。
 役に立つとたくさんアピールしてみせたが表情の見えない御主人様はケット・シーと共に全身が魔法陣に入ってしまった私へと大きな手を伸ばして頭に乗せた。

『メディア、君は我の娘だ。』
『っ!…御主人、様……。』
『親は子の為ならば頑張れるものだ。親は子に生きていて欲しいと願いたいものだ。つまりは、君にここで死んで欲しくないのだ。』

 そう告げると頭から手が離れ背を向けてしまう御主人様。
 このままでは転移させられてしまうと思った私の中で焦りと不安が一気に沸き上がった。
 御主人様はきっと次の勇者一行との戦いを最終決戦だと思っている。
 もしかしたら、万が一でも、これが今生の別れになると考えてしまった私の胸からずっとずっと秘めていた想いが溢れた。

『す…です……好きです!』
『メディア…。』
『好きです!愛しています御主人様!親としてではなく、あなた様を愛しています!心からずっと愛しています!だから死ぬ時まで御側にいさせてください御主人様ぁ!』

 こんなことならもっと早く想いを吐き出せばよかった。
 エイムさんに言われた時には否定してしまったこの想いをちゃんと御主人様に伝えればよかった。
 気づいた時には御主人様に気に入っていただけた蒼い瞳から涙をたくさん流しながら私は想いを伝えていた。

『…末永く生きよメディア。願わくば、我のことなど忘れて幸せにな。』

 最後に御主人様がそう告げ転移を発動させたので私は力いっぱい呼ぶも視界は虚しく暗転してしまったのでした。
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