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ヤンデレ男の娘の取り扱い方2~デタラメブッキングデート~

158.咎咲と景山

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「元気だった?」

 結城がもう一人にも話しかける。
 どちらとも面識があるようだ。

「あ……うん……そうだね。見ての通り息災。体はね」

 一方で、もう一人の少女は小柄な少女と対照的に大柄だった。
 目測で身長170はある。
 僕よりノッポだ。
 中学生女子としては平均を大きく超えていた。

 髪型は運動部員のようなベリーショート。
 背の高さも相まって、着る物を着れば高校生か大学生の男子と言われても頷ける。
 だが絶対に運動部ではなかった。
 金髪に洗髪している。三郎のような異質な髪色ではなく、ヘアカラーによる人工的な着色。
 生え際数センチが地毛の黒が伸びてプリン髪になっていた。

 顔の目鼻立ちはかなり整っている。
 彫りが深く、純正の日本人ではなくハーフよりの顔立ちだ。
 美人、というよりは美形という言い方がしっくりくる。

 ほとんど非行少女のようなおっかない風体だが、小柄な方の少女よりは大人しめな印象を受けた。
 それは小柄な子への彼女の視線が、慈しみだけでなく心配もあったからだ。
 結城とじゃれあう様子に、複雑そうにしている。
 また、容姿に比べて浴衣は純白地に白百合の柄。しっとり落ち着いて大人びた服柄である。
 彼女の不良じみた派手さに比べ、お世辞にも似合っていると断言できない。
 浴衣に団扇より、ライダースーツにバイクだ。

「大変だったでしょ? 困ってることとかない?」

「平気。自分たちのことだもの。2人でなんとかしてるよ」

 ……誰だ?
 誰なんだ、この少女2人は。
 同年代くらいで結城と親交があるなら同級生か。
 しかし居ただろうか、同じクラスに。それとも別のクラスに。

 思い出せない。
 というのは少々語弊がある。
 元々僕は、人の面相を覚えるのが得意ではない。
 しばらく会わないだけで、特徴をぼんやりとしか覚えていられなくなる。

 それも今は外にいる。
 同じ学生服を着ているならまだしも、私服の同級生は案外分からないものだ。
 雰囲気が違うだけで名前と容姿が一致しなくなる。
 ただ、こうまで特徴のある知人を覚えていないことなどあるのか。

「……でね、そうだよね、あーちゃん?」

「……は?」

 それまで少女と会話していた結城に、急に話題を振られて我に返る。
 何の話だ。
 というより、相手が誰だか分からないので話題の共有に窮する。
 名前も分からないのでは、不用意な発言で赤っ恥を掻きかねない。

「……うん。そう、かな?」

 当たり障りのない返事をしたつもりだったが、僕を除いたその場の3人は訝しんだ。
 異常を感知し、結城が眉をひそめる。
 返答の仕方もおかしかったかもしれない。
 内情をすぐに察して、彼は次にこう言った。

「ボクとあーちゃんは、違うよ。咎咲さん、景山さん」

 咎咲……景山……。
 あっ、そうか。
 ようやく符合した。
 彼女らはやはり僕と同じクラスの同級生だ。
 正確には元クラスメイト。

 夏季長期休暇に入る前、同性愛カップルであることが露見し、冷やかした他クラスの生徒と殴り合いの喧嘩をした挙句、停学か退学になった2人の女生徒が彼女ら。
 厳密には暴力沙汰を起こしたのは、小柄な咎咲の方で、殴り合いといっても一方的に他クラスの生徒を袋叩きにしただけのようだ。
 景山は途中で止めに入ったとも風の噂で聞いた。

 意外にも、小柄で大人しそうな咎咲の方が好戦的で堪忍袋の緒が細い。
 見た目には派手な景山の方が暴力沙汰を起こしそうであるから、人の外見の印象は必ずしもあてにならないといえよう。

 ……いや、何かおかしい。
 僕の記憶に残る、咎咲と景山。
 小柄な方が咎咲で、大柄な方が景山?
 体格は逆だったような……。
 2人の背格好を思い出そうとすると、何故か咎咲の方がタッパがあり景山の方がちんちくりんだった。
 気のせいか。
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