45 / 223
ヤンデレ男の娘の取り扱い方2~デタラメブッキングデート~
42.故障
しおりを挟む
リビングに行くと、そこには既に昼食の用意が整えてあった。
スッとする酢の匂い。
テーブルに並べられた冷やし中華。
中央にガラス大皿が置かれ、ハムやきゅうりと言った具材や薬味が、円形に見栄え良く配置されていた。
隣の下に水受けの盆が敷かれたザルに、氷が幾つかと、湯で済みの黄色い中華麺が山と盛られている。
そして向かい合う僕と結城の席に、醤油酢の入った受け皿のドンブリと箸。
「もう、あーちゃんが遅いからぬるくなっちゃうよ」
結城が自分の席に座り、僕も着席する。
「物置に行かせたりするからだろ。氷が溶けてないから悪くなってないさ。いただきます」
両手を合わせて箸を取る。
「そりゃ、気を付けてるから食当たりはしないだろうけど……気温が高いと、どうしたって足が早いのよ」
「冷房付ければ良いじゃないか」
「……これでも付けてる」
妙に体感温度が高いのは気のせいではなかったらしい。
30度くらいだろうか。
さすがに室外より遥かに涼しいけれど。
「嘘だろう。エアコン壊れてるんじゃないか?」
「まっさか。送風口から冷気は出てるんだよ。フィルターだってついこの前掃除したばかりだし。家の中に冷気が出てくような穴もない。今年の夏は本当に変な感じ」
あまりの猛暑だと冷房が空気を冷やしきれないこともある。
だが午前中2階で寝転がっていた時は、そんなこともなかった。
「僕の部屋は?」
「あーちゃんの部屋も今は似たり寄ったりの状態。暑いものは暑いんだから仕方ないよ。ご飯食べて食べて。受け皿にスープ入れてあるから、自分で麺と好きな具材取ってね」
「珍しい食べ方だね」
いつもは最初からドンブリに醤油酢も麺も具材も入った、食べられるだけで出されていた。
「ちらし寿司みたいで楽しいでしょう?」
「え……うーん……どうだろう……」
箸で中華麺を掴む。
思いのほかゴッソリ絡み付いてきた。
折れそうなくらいしなるので、一旦ザルに下ろす。
「む……いつもと同じだとマンネリだと思ったから、楽しい趣向にしたのに! あーちゃんの為に! 目で楽しむのだって食事なんだから」
「あ……ありがとう」
麺を小分けに取ってドンブリによそう。
具材はどうしようか。
きゅうり、トマト、ハム、錦糸玉子、紅ショウガ。
適当に乗せる。
確かにちらし寿司、あるいはバイキングのように取り分ける楽しさはあるかも。
「あら、あーちゃん盛り付け上手いんだね。バランス良くて素敵」
「そう……?」
特に考えなしに自分の好きな物だけ取っただけであるが。
それにやはり、最初から盛り付けてくれた方が楽だ。
「ほら、ボクはエビさんをハート型にしたよ。あーちゃんラブ」
「器用だね。ところで具材にオクラはない?」
「オクラ? 今日はないなぁ。あーちゃんオクラ好きだっけ?」
「いや、この前テレビで観たから、ちょっと食べたかっただけ」
「ふぅん……今度野菜市で見かけたら買っておくよ」
ふと思い出したのだ。
前回の冷やし中華の後だったか、日中に寝転んでテレビ番組を眺めていたら、不意打ちで始まった健康番組。
その中でオクラを特集していた。
調理法の中に冷やし中華もあった。
マンネリ打破の為にした提案だったが……よくよく考えると、再び冷やし中華の催促をしただけの形になっている。
別の料理を打診すれば良かった……。
スッとする酢の匂い。
テーブルに並べられた冷やし中華。
中央にガラス大皿が置かれ、ハムやきゅうりと言った具材や薬味が、円形に見栄え良く配置されていた。
隣の下に水受けの盆が敷かれたザルに、氷が幾つかと、湯で済みの黄色い中華麺が山と盛られている。
そして向かい合う僕と結城の席に、醤油酢の入った受け皿のドンブリと箸。
「もう、あーちゃんが遅いからぬるくなっちゃうよ」
結城が自分の席に座り、僕も着席する。
「物置に行かせたりするからだろ。氷が溶けてないから悪くなってないさ。いただきます」
両手を合わせて箸を取る。
「そりゃ、気を付けてるから食当たりはしないだろうけど……気温が高いと、どうしたって足が早いのよ」
「冷房付ければ良いじゃないか」
「……これでも付けてる」
妙に体感温度が高いのは気のせいではなかったらしい。
30度くらいだろうか。
さすがに室外より遥かに涼しいけれど。
「嘘だろう。エアコン壊れてるんじゃないか?」
「まっさか。送風口から冷気は出てるんだよ。フィルターだってついこの前掃除したばかりだし。家の中に冷気が出てくような穴もない。今年の夏は本当に変な感じ」
あまりの猛暑だと冷房が空気を冷やしきれないこともある。
だが午前中2階で寝転がっていた時は、そんなこともなかった。
「僕の部屋は?」
「あーちゃんの部屋も今は似たり寄ったりの状態。暑いものは暑いんだから仕方ないよ。ご飯食べて食べて。受け皿にスープ入れてあるから、自分で麺と好きな具材取ってね」
「珍しい食べ方だね」
いつもは最初からドンブリに醤油酢も麺も具材も入った、食べられるだけで出されていた。
「ちらし寿司みたいで楽しいでしょう?」
「え……うーん……どうだろう……」
箸で中華麺を掴む。
思いのほかゴッソリ絡み付いてきた。
折れそうなくらいしなるので、一旦ザルに下ろす。
「む……いつもと同じだとマンネリだと思ったから、楽しい趣向にしたのに! あーちゃんの為に! 目で楽しむのだって食事なんだから」
「あ……ありがとう」
麺を小分けに取ってドンブリによそう。
具材はどうしようか。
きゅうり、トマト、ハム、錦糸玉子、紅ショウガ。
適当に乗せる。
確かにちらし寿司、あるいはバイキングのように取り分ける楽しさはあるかも。
「あら、あーちゃん盛り付け上手いんだね。バランス良くて素敵」
「そう……?」
特に考えなしに自分の好きな物だけ取っただけであるが。
それにやはり、最初から盛り付けてくれた方が楽だ。
「ほら、ボクはエビさんをハート型にしたよ。あーちゃんラブ」
「器用だね。ところで具材にオクラはない?」
「オクラ? 今日はないなぁ。あーちゃんオクラ好きだっけ?」
「いや、この前テレビで観たから、ちょっと食べたかっただけ」
「ふぅん……今度野菜市で見かけたら買っておくよ」
ふと思い出したのだ。
前回の冷やし中華の後だったか、日中に寝転んでテレビ番組を眺めていたら、不意打ちで始まった健康番組。
その中でオクラを特集していた。
調理法の中に冷やし中華もあった。
マンネリ打破の為にした提案だったが……よくよく考えると、再び冷やし中華の催促をしただけの形になっている。
別の料理を打診すれば良かった……。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる