172 / 325
気持ちは変わるもの
31
しおりを挟む
「お前、重い」
凪がそう言ってようやく千紘は頭をどかした。しかし、凪に腕枕されてから既に30分以上は経っていた。その間、凪は頭を撫でることはしなかったが、掌を千紘の頭においたままそっとしておいてやった。
「居心地よかった」
「あっそ」
「交代しようか?」
「いい」
「じゃあ、次回」
「……気が向いたら」
絶対にヤダ。そう言われると思っていた千紘はまたもや驚かされるはめになった。なんだか前回までとは違う気がした。
自宅に入れる前とも違う気もした。確かにアダルトグッズを見せてからかった時には本気で怯えて怒っていたはずなのに、あれから凪の中で何が変わったのか千紘には想像もつかなかった。
けれど、理由などどうだってよかった。ほんの少しずつでも凪が自分を受け入れようとしてくれている気がしたのだ。その些細な変化を感じられただけで十分だった。
「お前、明日も仕事じゃないの?」
「仕事だよ。凪もでしょ?」
「俺はまぁ、11時からだから帰って十分寝れるし」
「……泊まってく?」
「泊まんねぇよ。仕事だろ」
「ん……。凪ならいつまで居てくれてもいいんだけど」
「俺も仕事なんだってば。帰るよ、そろそろ」
「残念」
穏やかに会話をして、凪は上半身を起こした。散乱したティッシュペーパーと濡れたシーツ。それを目にして凪は顔をしかめた。
「すげぇな……」
「ね。片付けておくからいいよ」
「部屋、思ったより綺麗でビックリした」
凪は率直な感想を述べた。もっと汚いと思っていたのに。清潔感たっぷりの男に似合う美しい部屋だった。なんとなくそれを伝えてやりたいと凪は思った。
「思ったよりってなに。俺、けっこう綺麗好きだよ」
「そうみたいだな。でも生活感なさすぎて自炊なんてしないだろうなって思う」
「んー、作れないこともないんだけどね。料理してる時間がもったいないっていうか。その時間あったらカットの練習できるし」
「料理できんのも意外」
思っていた人物像とはだいぶ違うようだと凪は目を丸くさせた。出会って数ヶ月、何度か体を重ねてみても、知らないことの方がが多い。お互いに深い話をしないから、ふとした瞬間に知ることになるのだ。
「凪は料理しそうだね」
「今はあんまり。セラピストやる前は金もなかったから自炊してたけど」
「お金に余裕出てきて金銭感覚狂った?」
「いや、そんなことないと思う。ただ、まあ自炊はしなくなったな」
「じゃあ、凪と一緒に住んだら俺が作るね」
にっこり笑う千紘に対し、凪はあからさまに嫌そうな顔をした。それから立ち上がって服を纏う。腰から下半身にかけて重くて鈍い痛みが走った。しかし、腹の中ではキュンと何かが疼き、凪は浅く息をついた。
凪がそう言ってようやく千紘は頭をどかした。しかし、凪に腕枕されてから既に30分以上は経っていた。その間、凪は頭を撫でることはしなかったが、掌を千紘の頭においたままそっとしておいてやった。
「居心地よかった」
「あっそ」
「交代しようか?」
「いい」
「じゃあ、次回」
「……気が向いたら」
絶対にヤダ。そう言われると思っていた千紘はまたもや驚かされるはめになった。なんだか前回までとは違う気がした。
自宅に入れる前とも違う気もした。確かにアダルトグッズを見せてからかった時には本気で怯えて怒っていたはずなのに、あれから凪の中で何が変わったのか千紘には想像もつかなかった。
けれど、理由などどうだってよかった。ほんの少しずつでも凪が自分を受け入れようとしてくれている気がしたのだ。その些細な変化を感じられただけで十分だった。
「お前、明日も仕事じゃないの?」
「仕事だよ。凪もでしょ?」
「俺はまぁ、11時からだから帰って十分寝れるし」
「……泊まってく?」
「泊まんねぇよ。仕事だろ」
「ん……。凪ならいつまで居てくれてもいいんだけど」
「俺も仕事なんだってば。帰るよ、そろそろ」
「残念」
穏やかに会話をして、凪は上半身を起こした。散乱したティッシュペーパーと濡れたシーツ。それを目にして凪は顔をしかめた。
「すげぇな……」
「ね。片付けておくからいいよ」
「部屋、思ったより綺麗でビックリした」
凪は率直な感想を述べた。もっと汚いと思っていたのに。清潔感たっぷりの男に似合う美しい部屋だった。なんとなくそれを伝えてやりたいと凪は思った。
「思ったよりってなに。俺、けっこう綺麗好きだよ」
「そうみたいだな。でも生活感なさすぎて自炊なんてしないだろうなって思う」
「んー、作れないこともないんだけどね。料理してる時間がもったいないっていうか。その時間あったらカットの練習できるし」
「料理できんのも意外」
思っていた人物像とはだいぶ違うようだと凪は目を丸くさせた。出会って数ヶ月、何度か体を重ねてみても、知らないことの方がが多い。お互いに深い話をしないから、ふとした瞬間に知ることになるのだ。
「凪は料理しそうだね」
「今はあんまり。セラピストやる前は金もなかったから自炊してたけど」
「お金に余裕出てきて金銭感覚狂った?」
「いや、そんなことないと思う。ただ、まあ自炊はしなくなったな」
「じゃあ、凪と一緒に住んだら俺が作るね」
にっこり笑う千紘に対し、凪はあからさまに嫌そうな顔をした。それから立ち上がって服を纏う。腰から下半身にかけて重くて鈍い痛みが走った。しかし、腹の中ではキュンと何かが疼き、凪は浅く息をついた。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
ショタ18禁読み切り詰め合わせ
ichiko
BL
今まで書きためたショタ物の小説です。フェチ全開で欲望のままに書いているので閲覧注意です。スポーツユニフォーム姿の少年にあんな事やこんな事をみたいな内容が多いです。
僕は肉便器 ~皮をめくってなかをさわって~ 【童貞新入社員はこうして開発されました】
ヤミイ
BL
新入社員として、とある企業に就職した僕。希望に胸を膨らませる僕だったが、あろうことか、教育係として目の前に現れたのは、1年前、野外で僕を襲い、官能の淵に引きずり込んだあの男だった。そして始まる、毎日のように夜のオフィスで淫獣に弄ばれる、僕の爛れた日々…。
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる