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脅しの存在
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料理が運ばれてくると、千紘は手際よく取り皿に料理を配り、凪の目の前に置いた。
「お食べ」
「……ありがとう。こういうことやらないヤツかと思ってた」
凪は牛タンのワイン煮込みを見つめて言った。今のところ自分勝手な印象しかない千紘が、自ら取り分けるなんて想像できなかったのだ。
「俺だってそのくらいやるよ」
「ふーん」
軽く返事をした凪は、手を合わせてから料理を口に運んだ。その瞬間、目を見開くほど旨味が口内へと広がった。
「うっま……」
驚愕する凪の姿に、千紘はふふっと小さく笑う。同じように千紘も一口食べると「うん。やっぱ美味いよねー」と嬉しそうに言った。
「んで、いつになったらお前は俺を諦めるわけ?」
「ん? 諦めないよ。凪が俺のモノになるまで」
「いやいや……俺は男は無理だって言ったじゃん」
「でももう女の子じゃイケないんでしょ?」
「そうと決まったわけじゃない。たまたま体調が悪かっただけだ」
千紘が最初から体だけでも凪が求めてくるよう仕掛けていたと知ったからか、女性とのセックスで絶頂を迎えられないことを隠すことはしなかった。
けれど、どうしてもそれを認めたくない自分がいる。まだ千紘に抱かれてから日が浅いから、元の体に戻るまでに時間がかかるのかもしれない。そんな期待もまだ残っている。
「たまたま体調悪いことがずっと続くの? あれからけっこう経ってるよね?」
「うっるせーな! じきに戻るからいいんだよ!」
「そう? 戻らなかったらいつでも頼ってね」
「絶対ヤダ。つーか、写真消せよな」
「まだまだ。デートは始まったばっかじゃない」
凪はうんざりした顔で、肉を頬張った。どんな心境であれ、美味いもんは美味いんだな。と少し恨めしくもなる。
「凪はいつから彼女いないの?」
「なんだよ……。今の仕事始める前からいないけど」
「ほしいって思わないの?」
「思わないわけじゃないけど、この仕事してたら無理だろ。セラピスト辞めてでも付き合いたいって思う人に会ったこともないし、どうせ女と寝るなら金もらった方がいいし」
「凪お金に困ってるの?」
千紘にとっては素朴な疑問だった。単純に風俗で働くといったら金銭的に不自由している印象だったから。凪はどうしてこの仕事をしてるのか、根本的なことは何も知らなかった。
「お食べ」
「……ありがとう。こういうことやらないヤツかと思ってた」
凪は牛タンのワイン煮込みを見つめて言った。今のところ自分勝手な印象しかない千紘が、自ら取り分けるなんて想像できなかったのだ。
「俺だってそのくらいやるよ」
「ふーん」
軽く返事をした凪は、手を合わせてから料理を口に運んだ。その瞬間、目を見開くほど旨味が口内へと広がった。
「うっま……」
驚愕する凪の姿に、千紘はふふっと小さく笑う。同じように千紘も一口食べると「うん。やっぱ美味いよねー」と嬉しそうに言った。
「んで、いつになったらお前は俺を諦めるわけ?」
「ん? 諦めないよ。凪が俺のモノになるまで」
「いやいや……俺は男は無理だって言ったじゃん」
「でももう女の子じゃイケないんでしょ?」
「そうと決まったわけじゃない。たまたま体調が悪かっただけだ」
千紘が最初から体だけでも凪が求めてくるよう仕掛けていたと知ったからか、女性とのセックスで絶頂を迎えられないことを隠すことはしなかった。
けれど、どうしてもそれを認めたくない自分がいる。まだ千紘に抱かれてから日が浅いから、元の体に戻るまでに時間がかかるのかもしれない。そんな期待もまだ残っている。
「たまたま体調悪いことがずっと続くの? あれからけっこう経ってるよね?」
「うっるせーな! じきに戻るからいいんだよ!」
「そう? 戻らなかったらいつでも頼ってね」
「絶対ヤダ。つーか、写真消せよな」
「まだまだ。デートは始まったばっかじゃない」
凪はうんざりした顔で、肉を頬張った。どんな心境であれ、美味いもんは美味いんだな。と少し恨めしくもなる。
「凪はいつから彼女いないの?」
「なんだよ……。今の仕事始める前からいないけど」
「ほしいって思わないの?」
「思わないわけじゃないけど、この仕事してたら無理だろ。セラピスト辞めてでも付き合いたいって思う人に会ったこともないし、どうせ女と寝るなら金もらった方がいいし」
「凪お金に困ってるの?」
千紘にとっては素朴な疑問だった。単純に風俗で働くといったら金銭的に不自由している印象だったから。凪はどうしてこの仕事をしてるのか、根本的なことは何も知らなかった。
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